平成16年第1回定例会(自31日 至329日)

世田谷区議会会議録

2004年3月29日 平成16年度予算に対する討論


○宍戸教男 議長 次に、四十八番木下泰之議員。

   〔四十八番木下泰之議員登壇〕

◆四十八番( 木下泰之 議員) 一般会計予算に反対、その余の特別会計には賛成の立場で討論を行います。一般会計予算に反対するということは、当然のことながら熊本区政に対してもノーと言うことであり、野党を貫くということであります。

 予算編成での道路予算、前年度比三五%の増額は、二倍の速度で道路整備を行うという区長の言葉を裏打ちするものであり、一方で行われた平成十六年度からの道路整備部の新設と用地買収権限を財務部から同部に移すという組織改正は、熊本区政が道路族区政であることを公言したということであります。用地買収権限を財務部から新設の道路整備部に移すということは、道路整備のための用地買収のみならず、文化施設や福祉施設の用地買収の際にも道路整備部が権限を握るということであって、道路整備部が区政の主導権を握るということにほかなりません。

 大場区政のときから同じようなことを繰り返し述べてまいりましたが、私は、二十一世紀は環境の世紀でなければならず、二十世紀を通じて行われてきた近代化への過信と人間のおごりを改めるべき世紀であるというふうに考えております。サステイナブルディベロップメントは日本語では持続的開発とか持続的発展とか訳されておりますが、一九九一年のリオデジャネイロの環境会議で定式化したこの言葉が、二十一世紀のパラダイムを展望した国際的なキーワードであることは間違いありません。先に近代化した諸国は公害を垂れ流してきたのに、後発の国に規制をかけようとする先進国の身勝手さへの反発から環境問題での南北紛争まで生じた中で、国際合意として定式化されていったのが持続的発展、サステイナブルディベロップメントでした。

 サステイナブルとは辛うじて支えるという意味合いを持つ言葉であり、サステイナブルディベロップメントは地球環境と人類生存のために楽天的な近代化論に反省を迫り、先に近代化を遂げた国々にはとりわけて自省を促すという内容を持つ概念なのであります。CO2排出規制のための京都議定書がその精神の上に成り立っていることは説明を要しないでしょう。

 こういった時代状況において区政にあっては、真に緑と調和し、なおかつ環境に配慮した住宅地世田谷の経営に心を砕くべきであり、決して道路優先、車優先、不動産開発優先でよいわけはございません。日本の都市計画制度は、道路を通すことによって周辺の土地の高度利用が可能になるように仕組まれていますから、道路を通すことは周辺の不動産開発、市街地再開発に直結します。目のかたきのように扱われている世田谷の農道から転用された狭い道は、低中層の住宅地や庭の緑を守り、過度の自動車の進入や保有あるいは使用を妨げているという効果を持っております。このことはサステイナブルな価値観や生活を考えれば、むしろ最先端だと言うべきなのであります。

 今回、優先整備を発表した区部都市計画道路は、下北沢、二子玉川、成城といった再開発予定地に特化しており、世田谷区政がバブル期の反省のかけらすらないことがよくわかります。

 補助幹線道路整備については、相も変わらず防災性向上を便法として挙げておりますが、そもそもガソリンを積んで走る車が充満する道路は危険施設になりこそはすれ、道路を通したからといって危険が回避されるわけではありません。防災を言うのであれば、小型消防自動車の配備や消火栓の配置、身近な空き地が必要ですし、防災時のマンパワーや民間にとっての防災ノウハウが何よりも重要になります。

 下北沢の問題を申し上げます。

 下北沢は町全体がそぞろ歩いて楽しめる町となっております。この町が演劇や音楽の町として独特の文化を形づくり、住んでみたい町の三本の指に入るほどの人気のある町であるということはご承知のことと思いますが、この町のよさは路地で織りなす回遊性にあります。車も通っていますが、この町では遠慮がちにしております。小田急線と井の頭線が交差するこの町は、車に依拠しなくても商売が成り立つ町ですし、車を遠慮がちにさせていることが、この町のよさを引き出しているということにもなります。

 この町に補助五四号線を熊本区長は通そうとしております。私は再考を求めるものであります。熊本区長は今議会で、下北沢は伝統のある町であり、よりよい町として発展させたいという趣旨の答弁をなさいましたが、この町に二十六メートルもの道路が貫くことになれば、この町はことごとく破壊されてしまいます。どこにでもある車と高層の町にしていいものか。道路整備だけでも数百億円、さらに、再開発に莫大な金をかけて町の魅力を消してしまっては元も子もありません。井の頭通りが拡幅された現在、東西交通のためにも補助五四号線をつくる必要はもはやないのであります。

 熊本区長になってから旧大場時代の不正事件の発覚が相次ぎましたが、今議会中に玉川支所街づくり課の隅切り工事での不正発注事件が発覚いたしました。狭隘道路拡幅事業の測量をめぐる不正発注や、五支所すべてにわたる街づくり課でのコンピューター不正購入事件と同根の事件が起こったにもかかわらず、またの発覚は、道路整備やまちづくりを担当するセクションといった建築・土木現場での不正が常態化していることが明らかになったわけですが、最大の問題は、たび重なる不祥事にもかかわらず、その報告でさえ虚偽報告をしてはばからないという体質です。この虚偽報告を私が指摘しても、担当者やこの報告を総括した平谷助役は、今でも基本的には反省の弁を語っていないのであります。

 玉川土木の事件は、隅切りの工事を平成十一年三月に百三十六万五千円で口頭で契約し、しかも、三回に分けて支払うことをこれも口頭で約束し、その後、未支払いになり、後に平成十二年八月に一回分を払って、残りの二回分を払い残したと都市整備委員会が緊急招集され、報告されたものです。未払い分を八十七万二千五百二十円と報告し、専決処分を行い、今議会中に本議会承認を得ようと思ったのでしょうが、そうはできませんでした。私が、未払い分八十七万二千五百二十円が正しいかどうか疑わしいと指摘したからであります。

 問題は課長のレベルで簡単に決裁できる五十万円枠にあります。係長が起こした事故でありますが、課長決裁のレベルでは係長の裁量で何とでもなるという職場が実に多いらしいのであります。だから、平成十一年三月に発注した工事は百三十六万五千円としたにもかかわらず、三回の支払いを口頭約束しました。この百三十六万五千円も、妥当な見積もりであるのかどうかはやぶの中であります。

 平成十二年八月の支払いは四十九万二千四百八十円ですが、これは決して平成十一年三月の工事分ではありません。新たに行った改修工事として支払われたと都市整備委員会では担当者が答弁しております。つまり、虚偽の契約と支払いがここに生じていたことを認めたわけであります。ということは、平成十一年三月の工事への支払いは行われていません。行われていないのではなくて、行えないと言った方が正確でしょう。問題は、初めから一回の工事をするつもりではなかったのであるから、その後の支払いは虚偽の工事発注に基づかなければ支払えない仕組みなのであります。かくて事情が変わって払えなくなってしまった。この事案は、未払い金額を本当に査定などできるのかどうかも極めて疑わしいのであります。

 私は、今回の事件とその処理のあり方に接して、測量事件もコンピューター不正購入事件も、再度精査し直すべきであるというふうに考えるようになりました。契約はどうなっていたのか、業者とのつき合いや関係がどういうものであったのか。これを解明しなければ、全貌を把握したことにはなりません。区長は再調査を指示し、しかるべき対応を即刻とるべきであります。北沢支所に聞いて答えなかったコンピューター購入不正の際の文房具業者Cはだれなのか、造園業者Aはだれなのか、水増し請求の手口はどのようにして行われたのか調べるべきであります。

 決算議会のときから注意を促してまいりましたが、監査委員の調査は不十分だったことをあえて指摘しておきます。予算委員会の代表委員の出席は二度もけられてしまいましたが、ここで聞いておられる監査委員も確実にいらっしゃる。監査委員の責務を果たすつもりであれば徹底的に調べるべきであります。区長には、すべての事案について業者まで含めた監査請求を行うよう、重ねて求めるものであります。

 いずれにせよ、道路整備やまちづくりを担当するセクションで相次いでいるにもかかわらず、用地買収権限を新設の道路整備部に集中するというのは、泥棒に追い銭を与えるということにほかなりません。そのような区政でよいのかどうかが真剣に問われているということを申し上げて、討論といたします。

○宍戸教男 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。