平成16年第1回定例会(自31日 至329日)

世田谷区議会会議録

2004年3月10日
「平成15年度一般会計補正予算(第5次)」、「世田谷区組織条例の一部を改正する条例」、
「世田谷区財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例の一部を改正する条例」への反対討論


○宍戸教男 議長 これより意見に入ります。

 なお、意見についての発言時間は、議事の都合により十分以内といたします。

 発言通告に基づき発言を許します。

 四十八番木下泰之議員。

   〔四十八番木下泰之議員登壇〕

◆四十八番( 木下泰之 議員) ただいま委員長報告のあった議案第七号「平成十五年度世田谷区一般会計補正予算(第五次)」及び議案第十一号「世田谷区組織条例の一部を改正する条例」、議案第十五号「世田谷区財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例の一部を改正する条例」の三件について、反対の立場からの討論を行います。

 議案第七号の第五次の一般会計補正予算につきましては、問題点が多々ありますが、次の点を例示し反対の理由を述べます。

 土木費について都市計画総務費の補正を行っていますが、この補正は小田急線の連続立体交差事業に関するものであります。

 ご承知のように、小田急線連続立体交差事業は喜多見〜梅ケ丘間における高架事業の違法性について裁判所で争われており、東京地裁で違法判決が下されていたものであります。昨年の暮れに東京高裁は、沿線の環境側道予定地の地権者原告の本体事業への事業認可取り消しの原告適格を認めないとすることによって、第一審東京地裁判決を覆しました。高裁判決が複々線化事業と在来線の連続立体交差事業を不当に切り離し、在来線部分の連続立体交差事業の認可処分のみで足りるとしていることとあわせて考えますと、小田急線の連続立体交差事業の本体事業の認可処分を争えるのは在来線を所有している小田急電鉄のみということになり、沿線住民はおろか、国民のだれも争えないという極めて不可解かつ不当な判決なのであります。住民側原告はこの前代未聞の不当判決に直ちに上告し、裁判は現在、最高裁で争われております。国民の裁判権にかかわる憲法問題を含むだけに、上告審は全国の注目を集めております。

 さて、補正予算は高裁判決に向けて、東京都と小田急電鉄が既成事実を何としてでもつくろうと行った突貫工事を容認、追認するものにほかなりません。小田急線については、在来線の騒音が違法であるとの判断が国の公害等調整委員会で下されております。かてて加えて、事業が違法とされた一審判決後に昼夜を問わず加速して行われた高架突貫工事には住民の批判が集まり、住民は夜間工事の差しとめの仮処分申請を行い、東京都や小田急電鉄は、夜間工事の原則禁止に同意せざるを得ませんでした。

 今回の補正予算を見ると、東京都や小田急電鉄がいかに突貫工事に邁進してきたかが数字となって明確になっております。平成十五年度の七月に夜間工事の原則差しとめの合意が成っても、このありさまであります。

 ところで、この間、世田谷区民の生活や環境を守るべき世田谷区は一体何をやっていたのか。裁判所の夜間工事抑制のための努力をしり目に、世田谷区は東京都や小田急と一緒になって、区民の声を無視し続けてきたと言うべきでしょう。平成十四年度中に、私は夜間騒音問題解決のため区は努力をすべきだとこの壇上から訴えましたけれども、当局者は鉄道法の例外規定を盾に、一顧だにしなかったわけであります。

 区民の生活や健康を守る立場からは、地財法を盾にとっても、少なくとも耐え難い夜間工事の抑制は区長自らが申し入れるべきであったものであります。したがって、かかる突貫工事追認を含む補正予算に対して反対であると表明しておきます。

 次に、議案第十一号「世田谷区組織条例の一部を改正する条例」についてでありますが、この条例は子ども部と道路整備部の新設を理由としております。問題点は三つあります。第一に、世田谷区を道路族中心区政としてしまうことです。第二に、男女共同参画と子育てを切り離してしまう危惧があるということ、第三に、住民参加決定を行いやすい地域分権型行政を集権型トップダウン型に戻してしまったこと、この三つです。

 とりわけ道路整備部新設は、熊本区政が文字どおり道路族区政になってしまう危惧を抱くものです。条例改正では、総合支所の街づくり部に権限を移されていた分権型道路行政を新設の道路整備部に移し、土地の取得及び処分についても財務部から同部に移しています。土地の取得及び処分の権限を道路整備部に全部移してしまっては、公園用地の取得も、文化遺産取得のための土地取得も、公共施設建設のための用地取得もすべて、また、あらゆる土地処分のすべてを道路整備部が統括することになってしまいます。これまで土地取得及び処分が財務部にあったのは妥当なことであります。区政全体の財務状況を把握し、さまざまな分野の政策課題調整の中で土地取得や処分の優先順位は決めていかなければならないからであります。ところが、土地の取得及び処分を、道路づくりを主たる任務とする道路整備部に一元的に預けてしまってよいはずがありません。

 私は、区議三期目になりますが、この間、世田谷区の組織改正では環境部が廃止され環境対策室に格下げされ、また、みずとみどりの課が都市整備部に移されるなど、環境重視から都市整備・土木重視に転換してきたことに危惧を表明し、そういった組織改正には反対してまいりました。今回の組織改正は、環境後退の域を超えて道路整備一点重視の区政への再編を図るものであり、断じて容認できるものではありません。これでは熊本道路族区政と呼ばれなければならないでしょう。区長の本質見たりという思いです。

 第二の男女参画と子育てを切り離してしまうのではないかという危惧は、ジェンダー見直し論やその論者への意図的攻撃の風潮が最近強まっている中で感じているものであります。子・男女と言われたセクションが全国に先駆けて果たしてきた先進的役割が、子ども条例の制定準備過程を経て減ぜられ、伝統的子ども観、あるいは伝統的ジェンダー論に屈服してきた歴史ではないかと思っております。今回の改正がこの流れを一挙に加速するのではないかと危惧するものです。どうかこの危惧を超えて現場で頑張ってきた方々の奮闘を期待するものです。子ども部新設自体に反対するものではありませんが、子ども部の所掌事項の二が、児童及び母子の福祉に関することとのみあり、旧来からの観念を変えていないことが気がかりであります。母子福祉だけでよいわけはありません。父子福祉も必要な時代になってきているのであります。父子問題も包含した表現に改めるべきであります。

 第三の、住民参画型から集権型、トップダウン型に戻りつつあることへの危惧は、大場区政の時代のやり方がそのままでいいと言っているのではありません。むしろ分権型、住民参加型にしながら、結局は住民参加を形骸化してきた大場区政二十八年の罪は大きいと言わなければなりません。だからといって、集権型、トップダウン型に戻ることは、時代の趨勢からの逆行にほかなりません。市民が行政と互角に政策決定過程に参画できるシステムづくりや、行政の説明責任や情報開示が必要とされているのであり、これを保障するためには、中央との関係をガラス張りにした分権システムこそ必要です。今回の道路整備部新設による総合支所からの道路づくり決定権限の剥奪と土地取得及び処分の同部による一元管理は、その意味からいっても反対せざるを得ません。

 最後に、議案第十五号「世田谷区財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例の一部を改正する条例」への反対を述べます。

 今回の改正は、ものづくり学校という具体的な株式会社で行う特定の民間の事業対象を想定してつくられたものであります。今回の改正案は新たに、事業者が、区民にものづくりについて学び、または体験することができる機会を提供し、創業を支援し、及び区民の地域交流活動を促進するための事業をものづくりに関する事業として整備し、及び運営するために使用をするときにも、無償または時価よりも低い貸付料で貸し付けることができることにする条例改正ですが、これは憲法違反であります。世田谷区財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例は、憲法第八十九条、公の財産の支出利用の制限を前提としての条例である以上、国や公共団体が公的性格の強いものに使用する際と災害などの緊急避難的なものに使われることに限られております。この条例をあえて改正して、特定の株式会社に、しかも条文上、他への転貸まで認めているのは明らかに憲法違反であり、間違っていると指摘し、反対討論とします。

 ちなみに、憲法第八十九条、公の財産の支出利用の制限は、「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」と書いてあります。

 以上で反対討論といたします。

○宍戸教男 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。

 これで意見を終わります。



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