平成 16 年第 1 回臨時会(自 1 30 日 至 1 30 日)

世田谷区議会会議録

2004年1月30日 請願処理案件への反対討論


平成16年  1月 臨時会
世田谷区議会会議録第一号
一月三十日(金曜日)

○宍戸教男 議長 次に、日程第四を上程いたします。

   〔河上次長朗読〕

△日程第四 請願の処理

○宍戸教男 議長 本件に関する委員会の審査報告は、お手元に配付してあります。

 これより意見に入ります。なお、意見についての発言時間は、議事の都合により一人十分以内といたします。

 発言通告に基づき、順次発言を許します。

 四十八番木下泰之議員。


     〔四十八番木下泰之議員登壇〕


◆四十八番( 木下泰之 議員) 平一五・三五号、三七号、三八号について不採択との委員会の議決が報告され、それぞれの委員長報告に賛成か反対かの態度が求められておりますが、一人会派無党派市民といたしましては、この三つの請願については、いずれも賛否が分かれ、継続審査を主張した会派があり、審議がいまだ不十分であることから、継続審議を主張いたします。したがって、不採択の提案には反対いたします。

 請願は憲法第十六条に基づく国民の基本権の一つです。たった一人でも請願をする権利が認められていることは言うまでもありません。請願に特段の不備があるのであれば不採択も妥当なこともあるでしょうが、こういった事案はまれなものであります。ところが、最近、継続審査を求める会派が存在するにもかかわらず、初回の審査で多数決によって、あえて葬り去るという事例がふえております。これには大いに問題があると考えるものであります。

 もとより、かつての世田谷区議会での従前の請願の処理方法に問題がなかったわけではありません。全会派一致を請願採択のならわしとし、そうでないものは、たった一回の審議で継続とされると二度と審議されず、いわばたなざらしとなってしまった事案が余りにも多かったからであります。その反動として、最近では多数を頼んで不採択とするケースがふえておりますが、これもまた行き過ぎではないでしょうか。請願の審査は、区議会の審査の中で区民の直接の声を審査する重要な機会であります。賛否にかかわらず、審査を通じて区政の抱える問題点を明らかにすることは重要なことであると考えます。賛否が分かれた事案について継続審査とする場合、特別の事案を除いて、審議の再開と時期を明示した上での継続とするべきであります。審議を尽くした上での採決は必要であるとは考えております。

 今回の事案のうち、平一五・三七号は「臨時職員などの公正な賃金等の確保に関する陳情」、三八号は「『パート・派遣労働者などの適正な労働条件の整備及び均等待遇を求める』政府・関係省庁への意見書等採択に関する陳情」であります。いずれも最低賃金の保障や労働条件の改善を求めるものであり、請願の内容に私自身は異論を持っておりますが、日本の経済危機克服の政策が勤労者国民の犠牲の上に成り立っている昨今、労働環境や最低賃金制の問題はもう少し掘り下げて議論すべき課題であると思うからであります。

 さて、平一五・三五号は「中高層建築物に関わる認可手続きのあり方と条例遵守強化に関する請願」についてでありますが、これは審議の過程からいって、その不採択そのものに大きく疑義を挟む事案であります。平一五・三五号は、法律改正により民間検査機関が参入した建築審査体制での中高層建築物に係る建築違反事例に危惧を抱いた区民からの請願で、条例での罰則規定を含む厳しい建築規制を求めたものであります。

 この事案は都市整備委員会で審査対象となり、私も審議に加わった事案であります。私は当初、請願の文言のままでは通しにくいが、議会としての議論、研究の上、趣旨に沿った立法活動が必要であることから、その審議の継続を主張いたしました。請願の趣旨の中に、たとえ条例制定技術上、あるいは区議会や区政の慣例からいって難しい問題提起があったとしても、区民の請願の趣旨を酌み取り、よりよい条例づくりや制度づくりに努めるのが、区議会に区民から課せられた課題であります。民間検査機関が建築審査に参入したことでさまざまな問題が引き起こされている現実こそ、区議会として対応しなければならない課題であることは言うまでもありません。

 請願不採択の立場から採決を望む会派がありましたが、委員長の、反対、継続審査と意見が分かれていますので、継続したいと思いますとの提案に、不採択を主張する会派から異義が申し立てられ、継続とすることへの賛否が求められました。採決を行いましたが、その結果は可否同数でありました。委員長採決となりましたが、驚くべきことに、ここで委員長は継続に反対したのであります。

 私はこの態度を区議会常任委員会の委員長たる者がとるべきではないと考えます。みずから、反対、継続と意見が分かれておりますので、継続としたいと思いますと、委員長みずから提案しておきながら、賛否の段になり、委員長の裁決で不採択では、論理矛盾も甚だしいと言わなければなりません。また、これは議会の議長や委員会の委員長がとるべき議事運営上の大原則、現状維持主義に背反、違反していると言わなければなりません。私は委員会で異義を申し立てましたが、異義申し立てを正副委員長は、これをともに却下、請願案件は否決されてしまいました。

 都市整備常任委員会は従来人事とは打って変わって、委員長が民主党、副委員長が政策会議と異色の体制となっているだけに、今回の議事に対する正副委員長のこのような取り仕切りについては残念でなりません。請願番号平一五・三五号の処理は、世田谷区議会の請願処理に大きな禍根を残すと言わなければなりません。したがって、とりわけこの請願処理については、議員各位が問題点に留意して採決に臨んでもらいたいと訴えるため、あえてこの壇上に立ちました。

 残念なことではありますが、現状の世田谷区議会の議会運営制度では、本日、本会議が開かれ、請願の処理が行われるというのに、常任委員会の議事録すらでき上がっていないのであります。また、にもかかわらず、請願処理に当たっては、審議経過抜きの文書での結果のみについての委員長報告しかなく、審議経過がわからないようになっております。こういう不合理は、国民の憲法上の権利である請願を取り扱うには余りにも不備があると言わなければなりません。

 最近、議運で請願処理の対応を見直そうとの動きが出ておりますが、一部から主張されているような請願権を狭める方向での処理対応には、私は大きな危惧を抱いております。区民の請願は区政の原点だということを忘れてはなりません。

 日本国憲法第十六条は次のように書かれております。「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない」。世界史的に言っても、権力の横暴を抑制するための請願運動から議会は生まれたということを、私たち議員としてはいっときも忘れてはならないと思うのであります。

 以上申し上げまして、請願処理案件三件への反対討論とさせていただきます。(拍手)

○宍戸教男 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。