平成 15 年第 4 回定例会(自 11 26 日 至 12 5 日)

世田谷区議会会議録

2003年12月5日 「世田谷区産業振興基本条例の一部を改正する条例」への反対討論


○宍戸教男 議長 以上で区民生活委員長の報告は終わりました。

 これより意見に入ります。なお、意見についての発言時間は、議事の都合により一人十分以内といたします。

 発言通告に基づき、順次発言を許します。

 四十八番木下泰之議員。

   〔四十八番木下泰之議員登壇〕


◆四十八番( 木下泰之 議員) 最初に、議案第百二十七号「世田谷区産業振興基本条例の一部を改正する条例」に反対の立場から討論を行います。

 今回の改正部分は、第四条への次の二項の追加です。「商店街において小売店等を営む者は、商店街の振興を図るため、その中心的な役割を果たす商店会への加入等により相互に協力するよう努めるものとする。」それから、「商店街において小売店等を営む者は、当該商店街が地域の核としてにぎわいと交流の場となるのに資する事業を商店会が実施するときは、応分の負担等をすることにより当該事業に協力するよう努めるものとする。」という二点であります。

 この改正案については新聞報道もなされておりますが、朝日新聞での報道は、世田谷区が商店会への加入の努力義務や商店会の実施する事業への負担協力への努力義務を課す、全国でも珍しい条例をつくるという趣旨のことを言っておりますが、だれでも考えつきそうなこういった条例が全国的に制定されてこなかった背景こそ、この際、十分に考えてみる必要があります。

 私は、最近の世田谷の条例づくりは非常に乱暴なものが多過ぎるとつくづく思います。オウム問題での安全安心条例を初め、今議会でのごみ持ち去り禁止の清掃・リサイクル条例改正、そして、本条例は憲法や法律に抵触していると言わざるを得ません。

 商店街振興組合法の第四条の基準及び原則では、二に「組合員又は会員が任意に加入し、又は脱退することができること。」と定めてあります。つまり、商店街というものは任意加盟だし、脱退も自由なのであります。商店街振興組合法にこのように規定されているにもかかわらず、本条例中の「その中心的な役割を果たす商店会への加入等により相互に協力するよう努めるものとする」とするのは、明らかにこの法律に背反し、違法な条例と言うほかありません。

 言わずもがなのことでありますが、我が国の憲法は第二十一条に結社の自由を定めてあり、どのような団体を結成しようと自由であります。また、これと裏腹に、どのような組織や団体にも強制加入を個人が強いられるいわれはないはずであります。努力目標だから許されるとでも弁解が聞こえそうですが、この改正案が通れば、事実上の強制力を持って機能するであろうことは見てとれます。戦前の大政翼賛会や隣組の歴史を我々日本人は持っております。強制加入につながるような条例はつくるべきはありません。

 しかも、商店会は利益共同団体ではありませんか。できるだけ多くの地域の商店が加わるように、その組織が行う事業や運営に工夫を凝らして、自主的に加入をふやす以外に王道はないはずであります。このような強制組織をつくれば、既存ボス支配が強まることはあったとしても、闊達な商店街運営が生まれるわけはありません。むしろ、世田谷区産業振興基本条例の一部を改正する必要があるとすれば、商店街振興組合法四条三項に規定がある「組合は、特定の政党のために利用してはならない。」との条項をより厳しく盛り込むべきであります。

 商店街には多額の補助金がつぎ込まれているという実態があります。そうでありながら、商店街会長が区議会議員ということも実際に多くあるし、例えばさきの選挙で、ある商店街振興組合の組合事務所が特定政党の議員候補者の事務所として使われていたことがありましたが、これは明らかに商店街振興組合法に違反していると言わなければなりません。

 こういった商店街の私物化を放置しながら、本来任意加盟であるべき商店会に加入をいわば強制するような条例をつくることは極めて危険な動きであると考えます。こういった条例を許してしまうと、次は町会への加入努力義務が条例制定されても不思議ではないと言わなければなりません。

 大規模店舗が商店街の中に進出している昨今、商店街の空洞化が問題になっており、これへの対応策だとの弁解もあるでしょう。しかし、根本的に間違っております。大店舗やテナントの商店、飲食店などがこぞって加盟するようになるためには商店街活動自体の魅力にかかっているのであり、それこそ自助努力で切り開いていくしかないのであります。

 一つ問題提起をしておきましょう。それは、テナントに入っている店舗の重要性です。例えば、下北沢は古い商店と最先端の店舗が混在する商業地域ですが、双方がまちの魅力を引き出しております。テナント店舗や飲食店の努力がまちの活力を生み出しているにもかかわらず、既存商店街組織は相変わらず古い商店のみが中心となっているという実態があります。これを変えていくためには、既存商店会への加入を半ば強制することでは改革は進みません。まずは行政や既存政党との癒着関係を清算することであり、開かれた商店会を新たにつくっていくことでしか活力は生まれません。

 商店街は再開発圧力に伴って、古い商店ほどテナント貸しに傾き、商売を本気で考えなくなってきているのが実情ではないでしょうか。商店が店舗貸し業になってしまい、物販や飲食やサービスの商売を本気で考えなくなったら終わりです。商店街改革を言うのであれば、利権の温床になったり、特定政党の拠点としての跳梁跋扈するような、そういった商店街活動こそ改めるべきであり、いわば強制的な加入を求める今回のような条例案は出すべきではないと申し上げておきましょう。条例案に反対するものであります。

 次に、議案第百二十八号についてでありますが、この町区域の変更は、小田急線の連続立体交差事業に伴うものであります。この事業について、東京地裁は違法の判決を下し、来る十二月十八日には東京高裁の判決が下されます。東京地裁で違法の判決が出ており、これが覆っていない以上、軽々に町区域の変更を行うべきではありません。したがって反対いたします。

 議案第百四十二号「世田谷区立地区会館条例の一部を改正する条例」については、地区会館を廃止して道路代替用地とするものですが、このような土地利用には反対いたします。

 以上三件について反対討論といたします。


○宍戸教男 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。

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「世田谷区清掃・リサイクル条例の一部を改正する条例」への反対討論

○宍戸教男 議長 これより意見に入ります。

 なお、意見についての発言時間は、議事の都合により一人十分以内といたします。

 発言通告に基づき、順次発言を許します。

 四十八番木下泰之議員。

   〔四十八番木下泰之議員登壇〕


◆四十八番( 木下泰之 議員) 「世田谷区清掃・リサイクル条例の一部を改正する条例」に反対の立場から討論を行います。

 今回の改正案は、再利用の対象となる廃棄物の収集または運搬の禁止などについて定める必要があるとして提案されたものですが、全くもって不可解な条例と言うほかありません。資源ごみが持ち去られるのがけしからぬ、持ち去りはよくないという区民の声が立法の趣旨だと担当者は説明しますが、資源ごみリサイクルの実態を区民が正しく知ったならば、そういった声は皆無になるだろうというのが私の実感です。

 区は、今回の持ち去り禁止の条例を提出するに当たり、この条例をつくると、区回収量増加による資源売却益の増加が見込まれると宣伝してまいりました。まさにこのことが、モニターでのアンケート調査で七割が持ち去りはけしからぬ、そういったことになったわけですけれども、情報操作の最たるものだと思います。

 新聞紙だけを考えても、資源ごみ回収が始まった平成十二年度が一万二千五百トン、平成十五年度がほぼ一万トンですから、二千五百トン以上が持ち去られていると推定されています。しかし、持ち去りは平成十二年度から行われているでしょうから、実際の数字はもっと大きくなるはずであります。

 最小に見積もって二千五百トンとしておきましょう。この二千五百トンを紙問屋に引き渡すと約一千万円です。その分、世田谷区があたかも損をしてきたかのように見えます。ところが、これは収集、運搬の費用を見積もっていない数字であります。収集・運搬費用を加算すれば、持ち去りを許さないと頑張れば頑張るほど、区がごみにかけるコストはかさむことになるのであります。

 持ち去りが完全になくなったとして、二千五百トンを区が契約している民間会社が行うと、一日一台の契約車両が人件費込みで効率よく六トンを処理したとして四万円ということであります。トン当たり六千六百七十円。計算すると、二千五百トン収集・運搬費用は一千六百六十七万円ほどになります。そうすると、資源が一千万円で売れたとしても、六百六十七万円余計にかかるということになります。さらに、もしこの収集、運搬を区の清掃職員が担うことになれば、トン当たりコストは二倍強かかっておりますから、二倍として三千三百三十万円、資源売却費を差し引いても二千三百三十万円余計にかかることになります。

 しかも、この条例を制定した場合には、パトロールを行い、ビデオ撮影までして監視作業を行うというのであります。その費用は、少なく見積もっても月に二百万円はかけるということでありますので、それだけで年間二千四百万円。瓶や缶の資源ごみの問題もあり、量がふえればふえるほど経費はかさみますので、この条例を制定することにより、新たに世田谷区がごみ処理に要する金はさらにふえるということになるわけであります。

 現在、資源ごみ収集は、清掃職員が七割、区委託の民間が三割のエリアを受け持っていると言われております。持ち去りごみがなくなった場合には、清掃職員と区委託の民間業者への仕事がふえるという関係にあります。つまり、持ち去りがけしからぬといって、これを禁止した結果、見えてくるのは区の収集・運搬費用の増加と監視費用の増大です。持ち去り分は区支出分がただであることを忘れてはなりません。この事実を世田谷区は区民に丁寧に知らせているでしょうか。この事実を知っても、なお持ち去りがけしからぬということになるのでしょうか。極めて疑問であると言わなければなりません。

 結局、この条例をつくることによって、どこがもうかるのか、得をするのかというと、それは区のお抱えの民間業者ということになります。行政は、今さらごみ量がふえたとしても、二倍のコストのかかる清掃職員の増加には向かわず、お抱え民間委託業者への仕事量をふやすという方向に向かうことは確実であります。

 資源ごみを平成十二年から行政が引き受けることになり、今の体制が発足しましたが、そこで行われたのは民間業者の選別です。この選別の外にいる業者の一部が起こしているのが持ち去り行為ということになりますが、この持ち去りを取り締まることは、選別され囲い込まれた委託業者の利益を守るという関係にあります。世田谷ではこの民間委託業者は、区内に事業所を置く業者にのみ参加資格のある、世田谷リサイクル協同組合が一手に引き受けることになっております。

 なお、ちなみにこの協同組合には、区の総務部長を務め、さらには監査委員も歴任した清水潤三氏が顧問として就任していることを見落としてはならないでありましょう。同氏は、平成十一年の選挙では大場区長に弓を引く形で区長候補として出馬し、落選後、その年にこの協同組合に顧問として就任し、現在に至っているのであります。本年四月の選挙に同氏がどのような立場をとられたかは知るよしもありませんが、こういった区からの天下り体質の、癒着体質の世田谷リサイクル協同組合の利益になるような条例の制定にきな臭さを感じるのは私だけでありましょうか。

 リサイクルの原点に返ってみましょう。かつては新聞紙などは、ちり紙やトイレットペーパーと引きかえに民間業者が持っていきました。旧来からのこの民間業者の活用や新規参入も含めて、資源ごみ回収は初めから民間に任せるシステムを追求していけば、今のような混乱を生ずることはなかったはずであります。

しかし、高上りの行政回収を基本とし、そこに民間業者を一部囲い込んで委託すれば、行政利権がそこに生まれ、また、高上りの行政回収に引っ張られて、高上りの資源ごみ回収システムが成り立つのは当然の成り行きであったわけであります。

 その矛盾が、底辺労働者にも一部支えられた持ち去り回収を生む結果になっております。古紙や金属の需要には相場変動が伴いますが、調整的な補助金の支給を考えても、初めから資源ごみについては、すべて民間ベースで還流できるシステムをこそ追求するべきで、構築するべきであったはずであります。

 私は、行政がごみ回収や資源化を高コストをかけてやるべきではない。むしろ、ドイツで既に実施されているように、生産者側に資源回収システムを構築させるよう仕向ける誘導政策こそ必要だということを何度もこの区議会で述べてまいりました。電気製品やパソコンは問題を残しながらもドイツ型に近づいてきております。古紙需要が高まっている今、必要なことは持ち去りを禁止するなどというばかなことに血道を上げて追及するのではなくて、すべての不定形紙をも資源回収できるようなシステムの構築をこそ、行政は知恵を絞って編み出す努力をすべきときなのではないでしょうか。行政益や行政周辺で抱え込んだ特定業者の権益を守ることから物事を発想するべきではありません。

 さて、今回の条例改正は、資源ごみ回収システムの行政の失敗を警察的強権的手法で乗り切ろうとする試みでありますが、これはそもそも無理があるし、法的な規制力も持ち得ないと言わなければなりません。人権問題から考えても極めて問題であります。民法上からいっても、廃棄したごみを拾うことは自由であります。それを条例でもって規制し、犯罪とすることは許されないことであるし、犯罪としての立件も不可能であると言わなければなりません。そうであるのに、条例で規制し、持ち去りがいけないという規範を無理につくろうとすれば、ごみを再利用するために一般市民が持ち去る行為や、路上生活者のやむにやまれぬごみあさりまでが犯罪視、白眼視されることになります。

 また、監視カメラやビデオカメラによる罰則実施のための現認作業が行われるようになれば、一般市民のプライバシーを侵すことにもなります。持ち去り行為によって、実は区財政も便益を受けているにもかかわらず、これを犯罪視し、職員を動員し、莫大な金をかけ、非合理な資源回収システムを墨守する、一体何の意味があるのでしょうか。

 また、本来犯罪でないことを犯罪に仕立て上げる条例をつくり、持ち去りを禁止する条例をつくることは、不況のさなか、持ち去り業者に組み込まれているであろう底辺労働者の職を奪い、また、路上生活者のごみあさりさえ禁止することにもつながり、人の命を奪うことになるということも警告しておきたいと思います。

 このような条例の立法がされることを心から恥ずることを表明し、反対討論といたします。(拍手)

○宍戸教男 議長 傍聴人の方に申し上げます。ご静粛にお願いします。傍聴人の方には拍手は禁止されておりますので、ご静粛にお願いします。

 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。