平成 15 年第 4 回定例会(自 11 26 日 至 12 5 日)

世田谷区議会会議録

2003年11月28日 一般質問


○宍戸教男 議長 次に、四十八番木下泰之議員。

   〔四十八番木下泰之議員登壇〕


◆四十八番( 木下泰之 議員) 最初に、小田急線下北沢区間の在来線跡地の緑道計画とまちづくり計画についてお聞きいたします。

 下北沢区間というのは、梅ケ丘以東代々木上原駅までの区間を言います。地下駅の成城学園前駅を除き、高架で事業が進められ、事業認可が違法との東京地裁判決を受けている喜多見駅〜梅ケ丘駅間とは異なり、この下北沢区間の連続立体交差事業については小田急線を二線二層で地下に潜らせるという都市計画決定が本年一月三十一日になされました。あわせて、補助五四号線と区画街路一〇号線や補助二六号線の都市計画変更あるいは決定がなされ、世田谷代田、下北沢、東北沢の駅前広場の構想等も明らかにされました。

 ところが、不思議なことに、在来線跡地の利用については、素案説明会でも、都市計画案の説明会でも在来線跡地の利用計画は示されず、その後現在に至るまで東京都も区もその構想を明らかにしてきませんでした。何度か議会で私は質問してまいりましたが、区の担当者の答えは今後検討していくとの一点張りでした。

 しかし、最近、都への情報開示請求で入手したところ、これが開示されたものですけれども、平成十二年十月にまとめられたその報告書には、在来線跡地利用については立派な緑道計画が提示されてありました。同報告書の五章の四は、鉄道敷地利用計画の検討として、避難路としても有用な歩行者道路の必要性が緑道計画として図表を伴い明記されていたのであります。この最後のところに図表まで示されて、緑道計画がきちっと書かれております。

 世田谷区はこれまで、同調査報告書は都からは見せてもらえないと言い張ってきました。しかし、一方で少なくとも次のようにも弁解していたのです。必要な情報はその都度東京都から聞いており、不都合はない。そもそも法定の連続立体事業調査の結論を無視して世田谷区が連続立体交差事業の関連事業を行えるはずはありません。しかも、在来線跡地の利用に関しては前々から議論になっており、このことを抜きに、高架がいいか、地下がいいかの議論を詰めることすらできないはずであります。調査報告書の段階で方針が提示されているにもかかわらず、世田谷区にはその情報すらも伝わっていないということはどういうことでしょうか。それでまちづくりに責任が負えるのでしょうか。事の経過について、どうか正直に話していただきたい。

 この報告書がまとめられた平成十二年十月、このとき何があったか。担当者はよくご存じのはずであります。梅ケ丘以西の事業認可取り消し訴訟の東京地裁判決は平成十三年十月。ちょうど一年前の平成十二年十月、担当の東京地裁、藤山裁判長は、住民側代替案を評価し和解勧告を国と東京都に提示しました。国と東京都はこれを拒否し、結果、住民の裁判勝利へと突き進んだことはご承知のとおりであります。

 このときの住民側代替案とは、住民側専門家が提案した明治神宮から多摩川に連なる緑の生態コリドー計画、すなわち、新宿から成城までの地下鉄をつくり、下北沢区間においては鉄道跡地の緑道を、また、既に立ち上げてしまった高架橋は緑道に転用するというものでした。下北沢地下化の後の在来線跡地について東京都が報告書で用意した利用計画は、まさにこの住民側の代替案計画に合致するものでありました。そうであるがゆえに、都も区も調査報告書で緑道方針を決めていたにもかかわらず、裁判結審を二カ月後に控えた平成十三年四月実施の素案の説明会において、また、その後現在に至るも、これを発表することができなくなってしまったというのが真相ではないでしょうか。

 ともあれ、情報開示で東京都が緑道計画を法定の連続立体事業調査報告書で方針として示していることが明らかになりました。この重みを消し去るわけにはまいりません。世田谷区は、報告書で示された鉄道跡地の緑道計画をどのように位置づけ対応されるのか、お示しいただきたい。

 あわせて、この報告書を読めば一目瞭然なことですが、事の是非は別として、連続立体交差事業は道路特定財源で行う街路事業として位置づけられており、鉄道事業と道路事業、関連事業が一体的なものとして組み立てられていることは言うまでもありません。報告書では、それらの一連の事業のスケジュールまで示しております。この連続立体交差事業の枠組みの中で補助五四号線や区画街路一〇号線を世田谷区が受けた以上、区民に対し、この事業予算を明示することは義務ではないでしょうか。一体、世田谷区が請け負った事業は概算でどのくらいになるのでしょうか。

 下北沢の関連事業の当面の事業費として百億円が示されたことがありますが、これはどの範囲の事業費なのか明示していただきたい。

 また、区が受けた補助五四号線についての松蔭学園から環七までの事業費は概算いかほどか。関連する事業費はいかほどか。何百億円もの予算になるでありましょうが、タックスペイヤーたる区民に示していただきたい。

 また、全国有数の歩いて楽しめる魅力ある路地の町、下北沢をわざわざ破壊することになるこの補助五四号線の整備事業は害悪そのものだと私は考えます。商業施設や民家を莫大な予算で買収しなければ実現できない北沢地区の補助五四号線こそ、廃止すべき区部都市計画道路の典型であると考えます。世田谷区都市整備方針、地域整備方針提案検討会議中間報告でも、参加した区民から北沢地域の都市計画道路についての見直し提案が出されています。コストと便益評価を含め世田谷区はどのような検討をこの道路に対してなしたのかを明らかにしていただきたい。

 次に、小田急事業認可取り消し訴訟と区の対応についてお聞きしておきます。

 高裁判決が十二月十八日に予定されておりますが、小田急線連続立体交差化事業については、世田谷区も側道整備や街路事業の一部や関連事業、まちづくり事業を担当し、地財法による分担金も支出している以上、事業の当事者であります。認可取り消しの判決は区の施策に多大な影響を与えますが、第一に当事者としての自覚があるのかどうかをお尋ねしておきたい。その上で、判決に対してはどのような対応をされるつもりなのかをお伺いしておきます。

 高裁で重ねて行政の違法行為が指弾された場合には、一番身近な行政として区民の側に立つべきであるというふうに考えますが、いかがお考えか。聞く耳を持つ区長のご見識をお伺いしておきたいと思います。

 世田谷区の土地利用と総合設計制度につきましては、他会派からの同様の質問がありましたので、時間の都合もあり、改めて都市整備委員会あるいは予算委員会で問いただすことにいたします。

 最後に、区長の幼児教育についてのビジョンをお聞きいたします。

 区長は、政治の基本は教育だとおっしゃっており、教育問題に熱心であると自負されております。しかしながら、その教育熱心な区長が区立幼稚園廃止を政策として何ゆえ打ち出してきたのか、そのつながりというか脈絡をつかみかねております。そもそも、区立幼稚園を廃止してしまったならば、区教育委員会が管轄する幼児教育の現場を失うことになります。私立幼稚園への補助は確かに区長部局が管轄しておりますが、教育方針に口を挟むべき筋合いのものではないことは言うまでもありません。

 一方、先般の小学校の不祥事で、学校改革には区への人事権の移管が必要だと叫ばれておりますが、区立幼稚園こそ区教育委員会が人事権を唯一掌握している学校にほかなりません。区や区民が主体性を持って教育の刷新や実験を試みるとしたならば、区立幼稚園をおいてほかにないのではないでしょうか。私は、教育は低学年ほど、教える教師の能力を必要とすると認識しております。ましてや、人格形成の一番大事な時期にある幼稚園教育は無限の可能性を持つとともに、その教育に携わる者はより高度な知識と感性と経験を必要としているのではないでしょうか。学級崩壊などという現象が広がる中で、幼児教育の重要性が叫ばれております。大事なことは、幼児教育の質をいかに高めるかということではないでしょうか。

 経験豊かな優秀な幼稚園の先生を世田谷区が抱えているとして、そのために人件費が高いとしたら、それは区の財産として大事にすべきではないでしょうか。人件費だけが高くて質が悪いとしたら論外ですし、そうあってはなりませんが、教育については単に量で推しはかるより、質で物を見ていく必要があるのではないでしょうか。現実の区立幼稚園の教育の質がよいのであれば、すぐにでもその資産を生かすことができるでしょうし、公立であることによって質を高めることができるならば、その可能性を追求すべきでしょう。

 とりわけて幼児教育のあり方を構想することは、教育問題での最大の難問かもしれません。だからといって、世田谷区が人事権も握っているせっかくの幼児教育の場を放棄することは、まさに教育の放棄にほかなりません。教育がすべての基本と言われている以上、行革の観点から幼稚園廃止を方針として語る前に、熊本区長は幼児教育のビジョンとして何を考えているのか、まずは語るべきではないでしょうか。どうかお聞かせください。

 壇上からの質問といたします。(発言する者あり)


○宍戸教男 議長 ご静粛にお願いします。

   〔熊本区長登壇〕


◎熊本 区長  木下議員のご質問にお答えいたしますが、何と口早な言葉でいろいろ言われたものですから聞き落としたところもあろうかと思いますが、要約しますと、幼児教育についての私の考え方はどうだということだと思いますが、よろしいですか。(笑声)

 私は常に申しておりますように、すべての施策の基本は教育にある、そして、人づくりを基本とする教育こそがすべての原点であると、機会あるごとに申しております。その中で、人間形成に当たって幼児期が極めて重要な時期であるのは当然です。この重要な時期、子どもへの施策を幼児教育という言葉でするならば、すべてが幼児教育につながらなくてはならないと思っております。

 三つ子の魂百までという言葉がございますけれども、子どもを分け隔てすることなくして、幼稚園、保育園、そして子どもが健やかに育つことができるような環境づくりを区の責務として、また区の責任者として総合的に取り組んでみたい、これが私の考えでございます。よろしくご理解のほどお願いをいたします。

 そのほかにつきましては所管より答弁いたします。

 以上です。


◎株木 都市整備部長 私からは二点のご質問にお答えいたします。

 まず、連続立体事業調査と区のまちづくり計画についてでございますけれども、お尋ねの連続立体交差事業調査につきましては、小田急線の代々木上原駅〜梅ケ丘駅間の約二キロの区間を対象として連続立体交差事業の緊急性を検討するとともに、都市計画決定に必要な概略の事業計画を作成することを目的に東京都が平成十二年度に実施した調査でございます。この調査におきましては、沿線区域の現況調査や都市計画の総合的検討を行った上で、鉄道の連続立体交差計画の概略事業計画を策定するとともに、各駅周辺のまちづくりなどについても概略的な検討が行われております。

 なお、報告書には、鉄道敷地利用計画についても一部触れられておりますけれども、連続立体交差事業による高架下部分や地上部を実際利用することができるまでには長時間を要することが通例となっていることから、連続立体交差事業調査の段階では鉄道敷地の利用計画については抽象的、概括的に行うべきものと聞いており、本報告書においても概略的な検討を行ったものと認識しております。

 これまで必要な情報を入手していると申し上げてきましたけれども、これは一例としては、世田谷区が交通広場の都市計画案を作成する際に必要となる都市高速鉄道の都市計画線や駅舎の区域などの情報を必要な時点で東京都から入手しておりましたので、申し上げてきたものでございます。

 鉄道敷地の利用につきましては、本年四月に策定した駅周辺街づくりの整備計画を踏まえまして、東京都及び鉄道事業者と協議を行ってまいりたいと考えております。

 次に、小田急事業認可取り消し訴訟と区の対応についてのお尋ねでございますけれども、小田急線連続立体交差事業認可取り消し訴訟の控訴審につきましては、十月三十日に結審いたしまして、判決の言い渡しが十二月十八日に予定されてございます。議員も熟知されていると存じますけれども、本控訴審における被告は、都市計画事業の認可を東京都に与えた国土交通省の関東地方整備局長と訴訟参加している東京都知事でございます。区内の鉄道交通の基幹をなす小田急線にかかわる訴訟でございまして、また、連続立体交差事業を促進してまいりました世田谷区といたしましても、判決については大きな関心を持っております。

 判決が出されるに当たりどのような対応を考えているのかとのご質問でございますけれども、世田谷区は訴訟の当事者ではございませんので、判決を待って適切に対応してまいりたいと考えております。

 以上でございます。


◎谷田部 北沢総合支所長 補助五四号線の事業費の関係の質問がございました。

 補助五四号線につきましては、小田急線の連立交差事業の完成にあわせて、駅前事業の整備に関連して、接続に必要なことであるとか、また、歩行者の回遊性ある魅力あるまちづくりの基軸となり、地域防災上の向上の観点からも優先して整備することが必要であるということで事業を現在進めているところでございます。

 先ほどもお話にございましたけれども、連続立体事業調査を東京都が行いましたけれども、この中では事業費の積算はしてございません。その後、十三年の三月に区議会の予算特別委員会だったというふうに記憶しておりますけれども、事業費として概算約百億円というふうな答弁をさせていただいております。これは、土地、建物、営業補償、そういった物件調査も含めまして具体的なものではございませんけれども、概算の区域面積と平均的な物件補償費から概算としてはじいたものでございます。

 区域としましては、最優先で整備を予定している茶沢通りから区画街路一〇号線までの補助五四号線と、それから区画街路一〇号線の広場との区間の、道路の長さにして百八十メートルとそれから駅前広場の五千三百平方メートル分の概算で、大ざっぱな概算をお示ししたところでございます。

 この正確な事業費ということでございますけれども、現在、六月に現況測量の説明会を行い、また、今月もっと具体的な用地測量説明会を行って測量調査等を実施している段階でございます。そういった具体的な事業費算出の基礎資料を確定した上で、土地代ですとか補償費、建物費、工事費、こういったものをもろもろ積み上げて事業費を算出することになります。したがいまして、今後、事業認可に当たって明らかにしていくものでございまして、調査、調整を行いまして事業費を詰めてまいります。ただ、財政の平準化を図りながら、なおかつ国庫補助、都市計画交付金などさまざまな財源を獲得しながら活用していきたいというふうに思っております。

 以上でございます。


◆四十八番( 木下泰之 議員) 鉄道事業者との協議というふうに言っておりますけれども、この調査が小田急に委託されていたということは事実ですか。それだけ答えてください。


◎株木 都市整備部長 これは都の内部調査ということで、委託先までは私どもは承知してございません。

 以上でございます。


◆四十八番( 木下泰之 議員) 渡辺副参事からそれは聞いたばかりです。ですから、それは事実だと思います。それはもう一度ちゃんと答えてください。

 それから、教育問題につきましては、これは区が唯一任命できる任命権があるものですから、ぜひしっかりやっていただきたいということをお願いしておきます。



◎谷田部 北沢総合支所長 今、 木下議員がおっしゃいましたように、最近、ごく最近、私どもの方で東京都に確かめたところ、小田急電鉄だというふうに伺いました。

 以上でございます。


○宍戸教男 議長 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。