平成15年第3回定例会(自917日 至1020日)

世田谷区議会会議録

2003年9月29日 平成15年度第二次補正予算への反対討論


○宍戸教男 議長 これより意見に入ります。
 なお、意見についての発言時間は、議事の都合により十分以内といたします。
 発言通告に基づき、発言を許します。
 四十八番木下泰之議員。

   〔四十八番木下泰之議員登壇〕

◆四十八番( 木下泰之 議員) 第二次補正予算に反対の立場からの討論を行います。

 平成十五年度の当初予算は、退任した大場前区長が骨格予算としてではなくて通常の予算として組んだわけでありますが、この予算の枠組みを基本として六月の一次補正も今回の二次補正も組まれております。この点で、熊本区政は大場区政を踏襲しているわけであります。したがって、当然のことながら、すべての予算に反対の立場から全補正予算に反対いたします。

 一般会計の補正予算の中から具体的な問題点の一つを申し上げておきましょう。今回の二次補正予算には、補助二一六号線及び補助二一七号線の検討調査を早期事業化を目的として行うとし、道路新設改良事業費として計上されております。一方、東京都は、平成十五年度中に、区部における都市計画道路の整備方針を策定する作業を通じて、区部都市計画道路について抜本的な見直しをすることを都民に表明しており、世田谷区に対しても都市計画道路見直し作業をすることを求めてきております。

 去る六月議会での第一次補正予算への反対討論の際に、私は、都市計画道路の抜本的見直しは世田谷の都市基盤整備に重大な変更をもたらすものであるだけに、区民からの意見聴取や区としての精査な検討は十二分になされなければならないとして、具体的検討の予算措置をとるべきであるとの意見を述べました。ところが、今回の二次補正では、本来なされるべき都市計画道路の全体計画についての見直しについての予算を計上するどころか、個別具体的な道路である補助二一六号線、二一七号線について、これをつくることを前提に調査予算が計上されているのであります。

 物事には手順というものがございます。区部の都市計画道路にプライオリティーをつけて、つくるものとつくらないものを仕分けし、予算を重点配分しようというのが、財政難の現在、東京都が出してきた都市計画道路見直し方針のはずでありました。将来つくるべきものとそうでないものとを仕分けして、区部における都市計画道路の整備方針を策定しようというからには、平成十五度中は区部の都市計画道路づくりは一度凍結して作業を行うことが合理的であることは論をまちません。ところが、補助二一六号線、補助二一七号線について、早期事業化と称して平然と世田谷区としての予算づけがなされるということは一体どういうことでしょうか。

 世田谷区には未着手の補助幹線都市計画道路がたくさんあります。これらは、戦後、占領時に強引に碁盤の目のように整備するよう都市計画線が引かれたものであるものがほとんどであります。そのため、現にある道路とは無関係に、おびただしい民家の立ち退きを前提に、定規で一直線に計画線が引かれており、いつ完成するともわからない路線を抱え込むことになりました。区部におけるこれらの補助幹線を含めて、都市計画道路の見直しはまさに抜本的になされなければ意味がありません。

 ところで、熊本区長は、基盤整備重視を訴えて当選されました。二倍の速度で道路づくりを進める、強制収用も辞さないとまで言っておられます。

 私、一人会派無党派市民の立場について述べれば、区長の考え方とはまさに対極にあります。世田谷の緑や良好な住環境は、これらの補助幹線道路がむしろ進まなかったことで確保されてきたという側面があり、防災上の配慮のための既存道路の一部拡幅や一定の道路づけは必要としても、碁盤の目上の補助幹線のすべての整備を行うべきではないと私は考えます。補助幹線道路の廃止を含め、歩行者・自転車優先道路への転換、並木の義務づけやトラム等の公共交通の導入などを行い、環境の世紀にふさわしい道路のあり方を模索すべきだというのが私の立場であります。

 車中毒の方々からいえば、基盤整備がおくれていると非難されている世田谷は、むしろ、自動車への過度の依存社会からの脱却という今日的な課題からいえば、時代の最先端に立っていると言っても過言ではないのであります。

 例えば下北沢についていえば、井の頭線と小田急線が交差する公共交通の利便性ゆえ、歩いて楽しめる繁華街としてこの町は発展してまいりました。このよさを生かすことこそ必要であり、この町を分断し、呼び寄せてしまうことになる二十六メートルもの道路、補助五四号線は、通すべきではありません。例えば、補助二一六号線、補助二一七号線や補助一二八号線、補助五二号線などの整備は、閑静な住宅地、文教地区を貫くことによって周辺環境を一変させてしまうでしょう。本当に世田谷の環境を守ろうとするならば、これらの道路を延伸、拡張することに慎重でなければなりません。

 区長の立場は、私の立場からすると、相入れない道路推進であります。しかし、そうであったとしても、道路推進派にとっても、区部の都市計画道路の抜本的な見直し作業は必要なのではないでしょうか。すべてをつくろうとすることがどうかしていると思います。また、何でもばんばんつくれる時代とは異なってきているのであります。また、どの道路を優先的に整備するかという立場に立っても、世田谷区の道路網のプライオリティーの見直し作業は今こそ必要なことではないでしょうか。

 都市計画法は、昭和四十四年に新法に切りかわるまで、戦前の欽定憲法下の都市計画法が生きていました。市民に相談をする必要もなく、官僚独裁によって決められたのが世田谷区の中にある多くの都市計画道路です。これらの都市計画道路の必要性の有無を根底から問うことが今こそ求められているはずであります。

 東京都が平成十五年度中に見直し作業をすると言っているにもかかわらず、熊本区長は、世田谷区内の道路計画のプライオリティーについて方針を提示するでもなければ、各道路の必要性、不必要性について区民と相談する気もないようであります。これでは、ただやみくもに、都市計画で決まっている都市計画道路は道路用地の強制買収も辞さず、二倍の速度で道路をばんばんつくっていくと言っているにすぎないのであります。

 東京都が区部都市計画道路の見直し作業中であるにもかかわらず、世田谷区が二本の都市計画道路補助線の早期実現の調査のみ行って、一方で、この時期に世田谷区が区内都市計画道路の見直しのための調査の補正予算すら計上しないということは、惰性で道路計画を進めるというふうに思われてなりません。惰性でやみくもに二倍もの速度で道路を進めるということは、基盤づくりを重視しているというよりも、二倍の速度で道路予算を消化するということを言っているにすぎないのであり、土建屋に奉仕することであっても、都市のあり方をまじめに考えているのではないというふうに思えます。

 もう一つ指摘しておかなければならないことがございます。聞く耳を持つという熊本区長のポスターでの宣伝文句がありました。聞く耳を持つ、そうであれば、当然、今回の補正予算でなされなければならないにもかかわらず、なされていないことについて指摘しておきましょう。それはいわゆる区立幼稚園廃止発言に対する対応です。

 六月議会で区長が区立幼稚園については廃止を含めて検討すると言ったことで、小さな子どもさんを持つ父母を中心に廃止反対の声が区議会にも届くようになってまいりました。各会派も既に代表質問や一般質問で取り上げております。私は、区長が区立幼稚園の廃止を口にする以上、まずは区長みずからがその制度改変のビジョンを示すべきであると考えます。当然、幼稚園教育のあり方、幼保一元化の問題、少子化問題、社会教育との関係、これらの問題を避けては通れないと思います。しかしながら、幼稚園問題については、教育のありようについては、六月議会ではもちろんのこと、九月議会の前半ではビジョンさえ語られておりません。

 幼稚園問題は、幼児教育の問題であるだけに、単なる効率やむだを省くといった行革の観点からだけでは政策を構築できない問題であることはおわかりのことであるというふうに思います。現在のところ明確なビジョンさえ示せないというのであれば、幼稚園の廃止の是非を含めて、その検討を区民参加で進めていくことしかあり得ないのではないかと思う次第であります。しかしながら、そういった補正予算は組まれておりません。今回の補正予算には、教育分野で新しい時代に対応した教育の推進として、コンサルタントに依頼するための一般的な教育ニーズ実態調査予算しか予算化されておりません。

 六月議会で物議を醸すような問題提起をしたのですから、聞く耳を持つと表明している以上、幼稚園問題についての意見聴取の機会を広く設けたり、審議会を設置するなどの予算措置こそ必要なのではないでしょうか。もし思いつきで公立幼稚園廃止論を語ったのであるとするならば、直ちに前言は撤回されるべきであるというふうに考えます。

 道路問題にしても、保育問題にしても、公約どおりにどうか聞く耳だけは持っていただきたい。このことを表明して、第二次補正予算への反対討論といたします。

○宍戸教男 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。

 これで意見を終わります。