平成15年第2回定例会(自611日 至620日)

世田谷区議会会議録

2003年6月20日 「平成十五年度世田谷区一般会計補正予算(第一次)」案及び「世田谷区手数料条例の一部を改正する条例」案への反対討論


○宍戸教男 議長 これより意見に入ります。
 なお、意見についての発言時間は、議事の都合により一人十分以内といたします。
 発言通告に基づき、順次発言を許します。

 四十八番木下泰之議員。
   〔四十八番木下泰之議員登壇〕


◆四十八番(木下泰之 議員) 議案第五十九号「平成十五年度世田谷区一般会計補正予算(第一次)」案及び議案第六十号「世田谷区手数料条例の一部を改正する条例」案にそれぞれ反対の立場から討論を行います。

 最初に、補正予算について申し上げます。

 本予算については、大場区政が組んだ予算ですが、私は反対してまいりました。熊本区長にかわったということもあり、大幅な予算の組み替えをおやりになるのかと思ったら、一億四千二百十四万円の小型の補正予算ということになりました。区長選挙で大場区政の後継者を表明した水間候補にも、熊本候補にも反対してきた私としては、当然、補正予算にも反対であります。

 しかし、事前に配られた賛否一覧を見ると、私と下条議員、共産党を除くと、すべてが補正予算に賛成であります。もともと熊本区長を推薦した自民党は別として、大場後継の水間さんをおやりになった方々がことごとく熊本さんの補正予算に賛成をされるという。一体、区長選は何であったのか、激しい選挙戦は一体何だったのか、与党であることをなぜそんなに求めるのか、不可解であります。

 さて、第一次補正予算を見ていきますと、キーワードは治安、パトロールということになるでしょう。補正予算一億四千二百十四万円のうち、実に八千七百九十六万円、六割が治安やパトロール費用ということになっております。

 大場区政の最後の年度に、オウム問題をきっかけに安全安心まちづくり条例なるものが成立いたしました。区民に治安活動を推奨し、補助金をも出すという治安条例として、私はこの条例に反対いたしました。また、いつの間にか警察官が世田谷区の職員として出向している危うさも指摘してまいりました。世田谷区にポイ捨て条例ができたときも、私はモラルを罰則で律しようとするべきではないと反対してまいりましたが、千代田区には歩きたばこ禁止条例ができたことが、マスコミでは一般的には好意的に報ぜられております。そうこうしていると、世田谷ではわんわんパトロールなるものが駐在所のお巡りさん主導でできて、これもまたよいことだというふうに報じられております。そして、とうとう東京都知事は、長らく空きポストとしていた副知事に警察官僚を充てるという。あわせて、石原知事肝入りの東京都の安全・安心まちづくり条例が提案されるということにもなってまいりました。

 一方で、有事立法が、国会の十分な審議もないままに、国民の権利保護を後回しにして成立いたしました。イラク戦争への加担で国際テロにさらされる客観情勢は増している上に、輪をかけて今度はイラク本土に自衛隊まで派遣をする法律を用意する。北朝鮮情勢はお笑い番組までが過剰に危機をあおる。何か狂い始めていないでしょうか。

 世田谷に戻して考えてみましょう。パトロールの腕章を巻いて犬の散歩をすることが犯罪の防止に役に立つでしょうか。空手や柔道など格闘技に覚えのある学生を集めてパトロールすることで安心な町をつくることができるでしょうか。町に民間交番をつくることにいかほどの意味があるでしょうか。

 なぞ解きをしましょう。すべての活動は警察との協力が前提になっているということであります。もし警察との協力関係なしに私的な武装集団が出現して治安に当たったとしたら、これは排除されることはどなたもおわかりのことと思います。

 警察と行政との関係はいかにあるべきか。警察と市民の関係はいかにあるべきか。こういった基本的な問題意識を持って検証、検討を加えないうちから、行政が警察の下請になったり、市民が警察の下請になることは、日本の歴史をひもとけば危険きわまりないということがおわかりになると思います。

 警察組織は武装した特別な一つの組織体であります。市民を守ることもあれば、守らないこともある。国家の立場から市民や行政を監視し、国家を握る一部の権力に奉仕することさえあります。戦前の治安維持法下の警察の役割がどんなものであったかはおわかりだと思うし、戦後は民主警察となったとは建前では言うけれども、戦前の組織は解体されずに戦後も継承されております。

 また、そもそも治安が悪化し検挙率が下がっていることに警察組織としての問題点はなかったのか。オウム問題や拉致問題に警察がきちんと取り組めなかったのはなぜなのか。交番や駐在のお巡りさんが少ないのはなぜなのか。安心安全を本来的に守るべき警察組織のあり方の議論さえ国会や都議会や区議会でできていない現状こそ、まずは改めるべきなのではないでしょうか。組織としては、他の先進国でそうであるように、警察にも労働組合を置くべきだし、市民や行政や議会が警察を監督できるシステムを早急につくるべきなのであります。その上で、必要とあればお巡りさんをふやしたらいいのであります。

 そういった基本的なことがないがしろにされたまま、警察に盗聴権を与えてしまうという危うさに気づくことこそが、安全安心を市民みずからつくり出していく第一歩なのではないでしょうか。

 今回の補正予算では、雇用対策予算の大半をパトロール要員の経費として計上しておりますが、このことは雇用対策上も好ましくありません。本当に職を必要としている人がパトロール要員としてふさわしいとは限らないからであります。したがって、今回の補正予算については、内容からいっても同意することは到底できないと言わなければなりません。

 補正予算については、本来、当然予算化すべき重要な事項が欠落しているということもここで指摘しておきたいと思います。熊本区長は、重点政策の課題として都市基盤の整備を掲げました。その中核は道路ということになるのでしょう。

 ところで、道路整備に関しては、東京都が思い切った方針転換をいたしました。都市計画道路は従来動かすことのできぬ計画として、実施のめどが立とうが立つまいがいじらないというのが原則でありました。ところが、東京都と二十三区は本年三月二十六日に「区部における都市計画道路の整備方針(中間のまとめ)」を公表し、この中で具体的な都市計画道路の必要性の検証を行い、必要のある路線とそうでない路線との区分けをし、その対応の取りまとめを十五年度中にまとめることを示し、五月三十一日までに東京都の担当部局へ都民の意見を知らせるように求めていたのであります。インターネットでこれは公表されており、問い合わせ先には二十三区のそれぞれの担当部局が明示されております。

 都市計画道路の抜本的見直しは、都市計画地上の区民の権利制限の解除問題も伴う重要事項ですし、世田谷の都市基盤整備に重大な変更をもたらすものであるだけに、区民からの意見聴取や区としての精査な検討は十二分になされなければなりません。

 ところで、世田谷区と同様の住宅地である練馬区では、区の広報で同中間取りまとめと意見照会を区民に伝えているにもかかわらず、世田谷区では区報を通じての同様な努力は払われておりませんでした。また、現在五支所単位で行われている地域整備方針の提案検討会議でも、区部における都市計画道路の整備方針でさえ、参加した区民にもきちんと情報提供されていないのが実情です。

 熊本区長が基盤整備を重点課題として掲げるからには、当然、具体的検討のための補正予算をおとりになり、区民との懇談や区としての検討を十二分に行うための予算化をするべきであると思いますし、そうするものと思っておりましたが、そういった予算も本補正予算には一切ございません。これはどうしたわけでございましょうか。区民にも広く知らせることもなく、密室で事を運ぼうとしているのでありましょうか。補正予算にさえ組まれていないということは極めて不自然でありますので、指摘をしておきます。

 さて次に、世田谷区手数料条例の一部を改正する条例案についてですが、この条例案は、住基ネットを拡充するために、住民基本台帳カードを八月二十五日から導入するに当たっての利用料金を定めております。私は住基ネットそのものに反対であります。選挙公約にも反対を掲げてまいりました。したがって、私は反対いたします。

 以上、二つの議案への反対討論といたします。


○宍戸教男 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。