平成15年第2回定例会(自611日 至620日)

世田谷区議会会議録

2003年6月13日 一般質問


○宍戸教男 議長 次に、四十八番木下泰之議員。
   〔四十八番木下泰之議員登壇〕


◆四十八番( 木下泰之 議員) 無党派市民の木下泰之です。通告に基づき、三期目、最初の一般質問を行います。

 最初に、私の考え方を述べ、区長にご見解をお伺いしたいと思います。

 小泉首相登場以来、構造改革、構造改革と耳にたこができるぐらい言われ続けてまいりました。残念ながら、三年たっても景気がよくなる兆候は見られません。都市再生の中身が超高層ビル、マンションのメジロ押しです。にもかかわらず、デフレスパイラルが進行し、失業者が町にあふれ、治安は悪化しています。構造改革というけれども、むしろ小泉内閣は、バブル以来続いてきた実需を捨てた経済構造に飲み込まれ、翻弄されているとしか思えないのであります。

 改革すべき構造は、日本の土建・官僚国家体質、土地本位制からの脱却であり、金融をもてあそぶギャンブル経済を捨て、実需に基づいた実体経済を再構築していくことではないでしょうか。実需創設のためには緊縮政策ではなく積極経済政策が必要でしょう。しかし、それは旧態依然とした乗数効果の低い鉄とコンクリートへの土建、土木への公共投資であってはならないでしょう。

 さて、実需とは何か、言いかえれば社会のニーズとは何か、人類のニーズは何かということであります。私は、それは持続可能な社会の構築に向けた需要であるというふうに考えております。世界はそう向かわざるを得ません。十九世紀、二十世紀と続いた近代化の負の遺産を我々が解決していかなければ、人類に未来はないというところまで来ているのであります。

 原子力発電の負の側面が露呈して、東電の原発が全部とまりました。化石燃料による発電でしのいでおりますが、今こそエコクリーンエネルギーへの転換こそ求められていることは間違いありません。エネルギーの転換は石炭から石油への転換期がそうであったように、産業構造を大きく転換いたします。二十一世紀がエコロジー産業革命に動く予兆とは言えないでしょうか。

 私は構造改革という場合、必要な構造改革は緑への構造改革、すなわちエコロジーに向けた構造改革であるというふうに考えております。二十三区中、八十万ものを人口を抱え、しかも、有数の住宅地域である世田谷区。私は緑への構造改革、エコロジー産業革命の担い手は、まさにここ世田谷にあると言いたいのであります。シンプル、スモール、スローな社会、環境を重視し、緑豊かな自然に囲まれた簡素で身軽でゆったりとした社会をこそ、世田谷は目指すべきだというふうに考えます。そうすれば、世田谷から東京を変え、日本を変えることができます。

 具体的には、世田谷の町を高層化から守り、不必要な道路づくりや大規模再開発から撤退し、むしろ違法とされた小田急高架は地下化に転換し、高架構造物や、下北沢の鉄道跡地や、地下化が予想される京王本線、大井町線の跡地に緑のコリドーをつくっていく。補助幹線の一部は自転車・歩行者道路やトラムに変えていく。民有地の緑を守るために、緑を保全することを条件に相続税の減免を実現する。生産緑地は後継者がいない場合、市民農地として活用し、安易に宅地に転用しない。道路財源や大規模再開発費を削るかわりに、傷ついた都会を環境共生型に修復していくための公共投資や政策誘導、規制は積極的に行う。リサイクルを民間での経済循環過程に全面的に移行し、リサイクル産業を育成する。ワークシェアリングを推奨し、豊かな生活時間を創設するとともに、福祉サービス産業を充実させ、非効率な役人業務を減らし、役人を削減させ、民間に移転させていく。逆に公的職務でなければならない職種は積極的に残す。訪ねてみたい緑豊かな町をつくり、世田谷から流れを変えるためには、そういった努力が必要なのではないでしょうか。

 熊本新区長は、重点課題として道路を中心とした基盤整備と言うけれども、どうも高度成長期の土建・官僚体制を温存し、いまだにミニバブルに期待する守旧派、抵抗勢力に思えてならないのですが、ご見解をお伺いいたします。

 次に、緑への構造改革を進めるという観点から、砧公園に風力発電を、小中学校に太陽発電をとの提案をし、ご見解をお聞きしておきたいと思います。

 通告書の詳細には書いておきましたが、まずは東電の原発停止による電力不足と危機管理、現状認識と対応策についてお聞きしておきます。また、クリーンエネルギーへの代替への区の考え方、風力発電、コージェネ、太陽電池、燃料電池などについてどのようなお考えをお持ちかもお聞かせください。

 私は、エネルギー危機が深刻な今だからこそ、エコクリーンエネルギー都市宣言を行い、省エネを超えて自前のエネルギー政策を世田谷区は持つべきだというふうに思います。エコクリーンエネルギーへの転換の象徴として、風力発電を砧公園に建てたらどうでしょうか。風車だからといって、ドン・キホーテを思い浮かべないでください。風車は今や有力な電力源として技術発展を遂げております。実際に建ててみるということが、区民を自然エネルギーに駆り立てる、まさにダイナモとなるでありましょう。

 また、今夏、小学校にはクーラーが初めて導入されますが、このことを契機に、世田谷の小中学校のすべてに、さらには区の施設全部に太陽発電機を導入する準備に入るということをお勧めいたします。そして、太陽光・風力発電、バイオマス、コージェネ導入や、緑を使った省エネなどの区民、区内業者の利用、燃料電池研究も視野に入れた、世田谷区としてのエコクリーンエネルギー戦略を策定することであります。風力発電も太陽光発電もスケールメリットがあり、普及すればするほど安くなります。世田谷が動くことによって全国の自治体に波及させ、ひいては民間に波及させるという効果を持ちます。

 また、小中学校や公園は災害避難所にもなっており、災害時の緊急発電に役立つとともに、国から補助金もこのことによって上乗せでつくことになっております。とりわけ小中学校では教育的な効果も期待できます。ピーク時の電力を地域で受け持つだけでも、大規模発電の需要を大幅に下げ、CO2の発生削減や、危険な原子力発電を安楽死させることが可能になります。

 省エネから一歩進んで、エコロジー産業革命を世田谷からダイナミックに巻き起こすというのがみそであります。これは地域経済を超え、日本を改革することにもつながる大胆な取り組みというふうに言えましょう。太陽光発電について言えば、ある住宅プレハブメーカーが最近売り出した住宅では、十五年で太陽電池設備経費のもとがとれ、光熱費がゼロとなるということであります。販売してから大変よく売れているそうであります。燃料電池実用化のニュースもご承知のとおりです。

 こういった流れを加速させるためにも、エコクリーンエネルギー都市宣言と一連の取り組みを、ぜひ実現させてほしいと願いますが、いかがお考えでしょうか。

 次に、用賀一丁目のマンション計画と総合設計制度についてお伺いいたします。

 用賀一丁目のマンション建設問題は、他会派も代表質問で取り上げましたが、明確な答弁がいただけておりません。このマンション建設問題は、第一種低層住居専用地域への総合設計制度適用がふさわしいか否かという問題です。

 世田谷区の環境審議会は、世田谷区環境基本条例の規定に基づき、この事案について、当該計画は総合設計制度の本来の趣旨である良好な市街地環境を形成するという目的に照らして、総合設計制度を利用して容積率、高さの規制緩和をする必要があるとすることについては著しい疑念があるとしている以上、これに沿った要請を直ちに東京都に行うべきであります。

 区長は、環境基本条例による審議会の意見への遵守義務があると考えますが、見解をお示しいただきたいと思います。

 また、関連して北烏山の超高層百メートルマンションの総合設計についてお聞きいたします。

 北烏山のマンションも総合設計制度の適用の許可申請が東京都に提出されておりますが、深沢二丁目の都立大跡地へのマンション建設問題で、環境審議会が示した周辺地域と同様の用途にダウンゾーニングすべきであるとの意見を踏襲し、意見を述べるべきであります。高度地区を認めたとしても、区がこのほど方針として示した絶対高さ制限は三十メートル及び四十五メートルでありますから、絶対高さ制限方針以下に抑えよと東京都に要請するのが筋であります。どのように対処するのか、お伺いしたいと思います。

 以上、壇上からの質問とさせていただきます。(拍手)

   〔熊本区長登壇〕

◎熊本 区長  木下議員の質問にお答えいたします。

 まず、シンプル、スモール、スローな社会を目指した政策への転換をというご質問でございます。

 私は、世田谷再生構想とも言うべき基本計画の策定では、審議会において地域生活者の視点や環境を機軸の一つとして議論していただきたいと思います。申すまでもなく、時代は集中から分権、画一から多様、産業中心から生活中心の経済社会へと変わりつつあります。人々は精神的にゆとりある生活の実現を求めております。このような流れのもとに、基本計画の策定に当たっては、魅力的で安全安心な生活を区民のだれもが享受できる世田谷の実現に向け取り組んでまいりたいと考えております。

 いま一つ、基盤整備についてお触れになりましたけれども、世田谷区の現状を見たときに、私はやはり政治の基本はそこに住む人々の生命と財産を守ることが第一と受けとめております。その観点から、道路を整備することによって災害時の住民の生命と財産を守る、そのことに対応することが緊急を要しているという考えのもとに基盤整備ということを申し上げているわけでございますので、ご理解とご協力をお願いいたします。

 以上です。その他につきましては、助役ほか所管部長から説明をいたします。

   〔平谷助役登壇〕

◎平谷 助役 用賀一丁目に関連いたしまして、第一種低層住居専用地域への総合設計制度の適用を禁止すべきではないかとご指摘をいただいております。

 議員ご案内のとおり、総合設計制度は、一定規模以上の敷地で一定以上の空地を有する建築計画につきまして、その容積率や高さ等を緩和することにより土地の有効活用を図るとともに、公共的な空地の確保による市街地環境の改善を目的とした、建築基準法に基づく許可制度でございます。

 区では、この適正な運用を目的といたしまして、世田谷区総合設計許可要綱を定め、制度の運用に当たっての基本目標やその技術的基準を示しておりますが、これは許可の取り扱い方針並びに建築計画の必要最小限の要件を示したものでございます。したがいまして、制度の適用につきましては、第一種低層住居専用地域に限りませず、具体的な計画に即し、制度の趣旨に沿った計画であるか否かを総合的な見地から判断していくことを方針としておりますので、今後とも本制度の適正な運用に努めてまいります。

◎冨永 環境総合対策室長 電力不足の現状認識と対応策外二点につきましてお答え申し上げます。

 今回の東電の原発停止による電力不足につきましては、区といたしましても、まことに憂慮しております。国では、五月に経済産業大臣を本部長とする経済産業省関東圏電力需給対策本部が設置され、この夏に向けた電力の安定供給のための対策を決定し取り組んでいますが、今後、国や東京電力の責任ある対応が求められるところであると認識しております。

 このような状況を踏まえ、区としましては、また地球温暖化防止策を推進していくためにも、率先的に節電等、省エネルギーの推進に取り組んでまいります。また、区民の方々や事業者に対しましても、積極的に節電等を呼びかけてまいりたいと考えております。

 次に、クリーンエネルギーへの代替への区の考え方でございますが、太陽光エネルギーや風力などの新エネルギー利用の推進は、地球環境への負荷の低減を図るものとして重要であると認識しております。区では駒沢小学校改築の際の太陽光発電導入を決めるなど、公共施設の新築、改築にあわせての新エネルギーの利用を進めているところでございます。

 また、砧公園に風力発電をというご提案でございますが、一般には年間平均風速が秒速五メートル以上の地域でないと経済性がないというようなことも聞いておりますので、砧公園あるいは区内での風力を確保することができるか等、さまざまな点について研究、調査することが必要かと存じます。いずれにいたしましても、コストの問題等もございますので、新エネルギーの技術改良等の動向も見守りながら、今後の課題とさせていただきたいと思います。

 三点目でございますけれども、仮称用賀一丁目マンション計画に係る環境審議会の意見の取り扱いでございます。

 仮称用賀一丁目計画につきましては、環境基本条例に基づく開発事業者等に係る環境への配慮の手続により、環境審議会で審議されてまいりました。この計画につきましては、お話のとおり、周辺の住環境との調和を図るべきであること。また、総合設計制度の適用についての区の考え方、方針をまとめるべきであることなどを内容とした、環境審議会からの意見書が五月三十日に提出されております。

 区といたしましては、この意見書の取り扱いについての方針を、六月末を目途に検討してまいりたいと考えております。

 以上でございます。


◎佐藤 都市整備部長 北烏山のマンションと総合設計の関係についてお話がございました。

 先ほど助役がご答弁申し上げましたように、総合設計制度については、一定の条件のもと、適正かつ柔軟な運用を図ってまいります。ご指摘の建築計画につきましては、従前より事業者に対し周辺環境に配慮した計画となるよう要請してきております。また、都の総合設計の許可をする所管に対しても、同様に区の考え方を申し入れております。

 今回、用途地域見直しでお示ししております絶対高さ三十メートル、四十五メートルとの関係につきましては、都市計画決定告示が平成十六年度に予定されておりますことから、法的拘束力がない現段階において、要請には限界があるものと考えております。

 また、敷地のダウンゾーニングについてもお話がございましたが、都市計画は敷地単位で考えるものではなく、一定のゾーンで考えるものと認識しておりますので、用途が変わった段階で、即座に用途を変更するということには無理があるかと考えております。

 以上でございます。


◆四十八番( 木下泰之 議員) 今のマンションと総合設計制度についてでありますが、環境審議会の意見がきちっと出ているわけですから、やはりそれを尊重すべきだと思うんですね。一つは、深沢の二丁目マンションの関係で、周辺の用途地域に合わせるべきだという、そういう意見が出ているわけですから、当然それに合わせた形で烏山のことにも対処してもらいたいですし、それから、端的に、具体的に用賀一丁目のマンション計画については一つの要請が出ているわけです。それについて具体的に私は言っているんです。ですから、具体的にどう扱うのか答えていただきたい。それから、環境審議会は尊重するのかどうなのか、そのことについてお答えください。

   〔平谷助役登壇〕

◎平谷 助役 用賀一丁目に関しましては、議員ご指摘のように、既に環境審議会より一定の意見をちょうだいしております。また、北烏山に関しましても、この間、ご案内のような動きを私どもとしてはさせていただいております。

 いずれにいたしましても、区といたしましては、環境審議会のいわゆるご意見、あるいは議会でのご意見、これらに基づきまして総合設計許可要綱を忠実、誠実に運用することによりまして、六月末、一定の結論を見出していきたい、このように考えております。ご理解を賜りたいと思います。


◆四十八番( 木下泰之 議員) 先ほど法的拘束力云々と言いましたけれども、これはあくまでも東京都に要請をするということでありますので、区が方針を持っている以上は、それでやっていただきたい。そのことについてお答えいただきたい。

 それから、道路とかにつきましては、今後議論させていただきます。

 エコクリーンエネルギー都市宣言につきましては、これは積極的にやっていただきたいということですので、もう一度、それについてお答えいただきたいと思います。

◎冨永 環境総合対策室長 まだまだ新しい課題でございますので、今後研究、検討してまいりたいと思います。

 以上でございます。

   〔平谷助役登壇〕

◎平谷 助役 環境審のご意見は承っておりますが、いわゆる一つの附属機関ということで、重要な附属機関でありますことは当然でございますが、改めて区としての判断ということは、本来的にはあってしかるべきと。いずれにしましても、先ほど申し上げておりますように、私どもは総合設計許可要綱を誠実、忠実に運用いたしまして、六月末にいわゆる結果を出していきたいということでございます。


○宍戸教男 議長 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。