平成15年第1回臨時会(自520日 至523日)

世田谷区議会会議録

2003年5月23日 「世田谷区基本計画審議会条例」及び「世田谷区立船橋小学校改築工事請負契約」についての反対討論


○宍戸教男 議長 これより意見に入ります。
 なお、意見についての発言時間は、議事の都合により十分以内といたします。
 発言通告に基づき発言を許します。

 四十八番木下泰之議員。
   〔四十八番木下泰之議員登壇〕


◆四十八番( 木下泰之 議員) 議案第五十三号「世田谷区基本計画審議会条例」及び議案第五十四号「世田谷区立船橋小学校改築工事請負契約」について、反対の立場から討論を行います。

 世田谷区基本計画審議会条例についてですが、地方自治法第二条第四項は「市町村は、その事務を処理するに当たつては、議会の議決を経てその地域における総合的かつ計画的な行政の運営を図るための基本構想を定め、これに即して行なうようにしなければならない。」と定めてあります。地方自治法上は、基本構想を議論するため、そのために条例が出てくるものとばかり私は思っておりました。しかし、そうではありませんでした。これは非常に驚きました。

 二十八年間続いた大場区政が終わり、大場後継の水間前助役を破って熊本区長が誕生いたしました。投票者の二六・二%の支持、有権者総数の一〇・六%、一割の支持といえども、現行制度では勝利者です。新しい区長が登場した以上、自治法上で規定された基本構想を改定し、これに基づいた基本計画を定め、実施計画を作成していくものと思っておりました。しかし、新区長は、基本構想は大場区政当時のものを踏襲し、この基本構想に基づいた基本計画をつくるために、議員も入れた審議会をつくるという方針をとられました。

 私は、私と熊本区長とは多分物の考え方に隔たりがあることを承知の上で申し上げますが、区長はみずからの考え方を明確に提示すべきであるというふうに考えます。区長は、みずからの考えで基本構想を提示し、議会との論争を経た上でこれを議決し、新しい基本構想のもとで基本計画、実施計画を提示すべきであります。

 前大場区長は、ご承知のように役人出身の区長でした。住民参加や新しい公共の提唱は、結局は役人優位の区政を変えようとはしませんでした。役人頼みの区政、一般的に言ってお上頼みの政治を変えること、このことをなし遂げなければ、私は日本に本当の意味での民主主義はないというふうに考えております。

 少なくとも、熊本区長は役人後継を打ち破って出てきた区長であると認識していました。その区長が独自の基本構想を示そうともしないということは、結局は大場後継でしかないのかと目を疑うばかりであります。大場区政はまさにオール与党的な体制でしたが、スタンスを単に右に移しただけの区政では、大場区政二十八年にたまった区政の腐敗は改まることはないでしょう。せっかくの政権交代です。基本構想を示し、議会や区民との論争を始めるべきではないでしょうか。

 提案された条例案は、基本構想をつくるものではなく、その下位計画である基本計画をつくるためのものでありますが、ここに議会からの参加は不要であるというふうに考えます。私は、いわば大統領制をとっている地方自治において、議会は独立して行政に対抗、監視を任務とすべきであるというふうに考えます。権力は絶対的に腐敗します。区議会といえども一つの権力ですから、区民からの十分な監視も必要ですが、区議会は制度的に権力たる区行政に対抗し、監視する義務があります。行政の提示する基本計画の審議に初めから区議会が関与してしまったなら、区政への対抗、監視の任務を果たすことはできません。

 私は、各種審議会に対する議会の関与は、制度的には監査的な役割に限定し、区の立案過程には関与すべきでないと考えております。今回、審議会への区議会からの関与が大幅に削られましたので、これはよいことだと思っておりましたが、この基本計画審議会への委員参加を求めてくるということは、本末転倒ではないでしょうか。以上の理由から、私は議案第五十三号に反対するものであります。

 さて、議案第五十四号は、世田谷区立船橋小学校改築工事請負契約についてでありますが、この契約については、談合疑惑が区の理事者側から各会派に伝えられたために、その成り行きに注目していた事案であります。読売新聞記者からの通報で談合が理事者からも疑われた、この二十億円を超す一般競争入札の契約事案、その談合疑惑は晴れたのでしょうか。この談合疑惑を受けて、行政はJVの組みかえを指示し、組みかえられたJVからの新たな入札で決まったとのことです。

 しかし、考えてみると不思議な話です。当初の入札の際の談合は、どこのJVも認めていない。そのくせ、行政の組みかえ指導には従い、業者の側からの抗議や訴訟ざたも起こらない。そもそも言われてすぐさま組みかえが可能なJVとは一体何なのか。これこそ談合体質そのものではないでしょうか。私は、今回の談合疑惑から、その後の組みかえを行い、談合で挙がった会社が落札した経過、また、委員会での審議のときでさえ、下条さんが反対した以外、問題にしない。このこと自体が入札をめぐる談合問題の根の深さを物語っていると思うからであります。

 今回、談合疑惑問題は、むしろ理事者側から告白がありました。しかし、その処理方は全くもって疑惑を解決したことにはなっていないのであります。疑惑が解消されないまま行われては、入札は無効であるというふうに私は考えます。理事者側は、みずから談合疑惑を一度は認めたわけですから、その真相を徹底究明していく義務があります。それが説明責任というものではないでしょうか。また、議会も、今回の疑惑を解明するために調査委員会を設けるなどして、疑惑解明に全力を尽くすべきなのであります。

 談合問題は、地元企業の優遇による弊害やJVのあり方、入札制度の問題、発注側の問題、品質を問わず金額のみに依拠するやり方の問題等々、検証しなければならない課題がたくさんございます。こういった具体的な問題で徹底検証すべきなのであります。結局はやぶの中ということにさせてはならないのであります。疑惑が消えない以上、この工事請負契約は認めるべきではありません。したがって、議案第五十四号に反対するものです。

 以上、議案第五十三号、第五十四号に対する反対討論といたします。


○宍戸教男 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。