平成13年第4回定例会(自1128日 至126日)

世田谷区議会会議録第20号より

2001年12月6日「国旗掲揚」請願への反対討論(反政党改革派 下条忠雄)


○新田勝己 議長 次に、十六番下条忠雄議員。
   〔十六番下条忠雄議員登壇〕


◆十六番(下条忠雄 議員) 平一三・二四号、三三号、この陳情の採択に反対する立場で意見を申し上げます。

 この陳情は、陳情者は、一つは代田の大崎優司さん、もう一つは代田の土田正人さん。両氏は、本会議場に国旗、区旗を掲揚してほしい、こういうことであります。

 初めに明確にしておきますけれども、国旗は国家の印であって、国民統合の象徴である。これはどこの国でもあるわけであります。それで、日本の国旗は日の丸である。これはこの間法制化されましたけれども、慣習法として存在をする。木下議員みたいに、前に変えた方がいいんじゃないかということも、私もそう思いますけれども、これはあるわけです。公式な式典だとかスポーツの会場等でこれを掲揚したりする、これは自然のことで、私は反対するものではありません。

 ただ、日の丸というのは統合のためにあるんだけれども、この話になると、アメリカと違って遠心力が働いちゃって、国論が二分する。ここに私は日の丸の悲劇がある、こういうふうに思います。理由は、今、木下議員がるる述べたように、やっぱりさきの戦争の、とりわけ中国、朝鮮半島、あるいは東南アジアに対する侵略、この負い目をまだしょっている。それから、この日の丸の下でたくさんの日本人の命が消えていった。こういうことで、まだまだこれは時間がかかることだと思います。

 そんなことでありますけれども、陳情の中身についてちょっと議論してみたいと思いますけれども、大崎さんの話は、議会を傍聴すると、低俗なやじや居眠り議員が目につく。国旗、区旗を見つめて、おのれの立場や区議会議員としての職責を自覚し、議会に臨んでいただきたく、掲揚を強く要望する。

 低俗なやじというのは、低俗というのはいけないけれども、やじは議会の華ということで、それだけ議会が、違う人が意見を闘わせているわけだから、それはやはり活性化のためには、ある程度私は必要だと思います。

 それから、居眠り議員のことだけれども、この間、役人の皆さんがちょっと寝ていたから私はしかりつけたんだけれども、それはあることは事実です。役人と議員とは違うけれども、役人は聞く立場だからちょっと困るんだけれども、議員の方であることは確かだ。ただ、これは議論がおもしろくない。いつも同じような話で、何かすれ違いの議論をしたり、検討します、研究しますで終わっちゃっている。突っ込みも何もない。議員もまた、役人も勉強不足というところがあると思います。

 そう言っちゃなんだけれども、私の質問には皆さん起きていていただいている。前期、一番前で何か口をあいて寝ていた人もいたけれども、それはもう例外中の例外。だけれども、これはやっぱり議会がみんな勉強するということだと思います。

 それから、議会は――もう一つ土田さんの方だけれども、「本会議場は、最も神聖な所であります。会議に参加する議員をはじめ行政関係のすべての方々は、国旗・区旗の見守るもとで、ひたすら区民、国家の繁栄のため、私心なく公正な論議を展開していただきたい」、そのためにということです。

 さて、議会というのは神聖なところかどうか。これは議会というのは、皆さんご承知のとおり、王様が勝手に重税を課したのを市民がチェックをするために生まれたんです。それが起源です。だから、いわば神聖絶対なものに対抗するために市民がやっぱり力をつけてきて闘う場だったんです、ここが。だから、私は神聖なところではないと思います。大場区長やお役人さんがやることをチェックする、お互いに議論を闘い合わす、これが議会であります。どうも神聖なという言葉を持ち出されると、大日本帝国憲法第三条「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」、どうもここら辺を想起してしようがないということです。

 それからまた次に、神聖なところで、国旗の見守るもとでとか、国旗を見つめて公正な議論をしてもらいたい、私心を捨てて。区民の中には、賛成、反対いろいろあるわけです、この件についても。議員はそれぞれの人の負託を受けて選出をされているんです。したがって、さっきも木下議員が言ったけれども、議会は立場の違いを前提にして多角的に議論をする場であって、何かに権威に見守られて、あるいは見つめて、仰いで、仰ぎ見て云々する場ではありません。戦前の国会が戦争に邁進するために、天皇の権威をかさに着て自由な論議を封じた。こういうことを私は学習する必要がある、こういうふうに思います。

 それから、私心なく公正な論議をしてもらいたい。これはもうもっともだと私は思います。よく議場では、立派な説教を垂れながら、あるいはもっともらしいことを言いながら、何か裏では野村サッチーじゃないけれども、どうも日の当たるポストばっかり求めたり、あるいは金目のポスト、こういうものを求めて、つかんだら離さない、そういう私心の塊みたいな人が昔はいた。今は知りませんよ、今は。世田谷区議会の何悪人なんていうような陰口をたたかれる人もいたんだ。

 土田さんは、まさに私心のない、誠実そのもの、寡黙で大変立派な人だと私は思う。が、どうでしょうか。今、変人、軍人、凡人なんていう話が出ているけれども、土田さんは陸軍士官学校出身の、背筋のぴんとした、まさにエリートです。昔は東大より偉かった。そこ出身の職業軍人、いわゆる軍人だ。そういう経歴から、どうも日の丸に対するノスタルジア、あるいは特別な思い入れ、こういうものがあるのではないか。軍人でも、亡くなった梶山さんは私はハト派だと思うけれども、どうも土田さんはタカ派の方じゃないかという気がしてならない。これは思想、信条の自由で、土田さんがどういう考えを持とうと、これはとやかく言うことではありません。しかし、その一人の方の思いをそんたくして、公のものに昇華をさせて普遍化する、こういうことはちょっと無理があるのではないかと思います。

 区民の中で、どうしても議場に掲げてくれという声が非常に大きくなったら、これは別だけれども、どうも先ほど申し上げた議会の機能というのを考えると、ちょっと採択するには私は無理があると思います。皆さん、どう思うか。

 以上、終わります。


○新田勝己 議長 以上で下条忠雄議員の意見は終わりました。

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