平成11年第1回定例会(自31日 至329日)

世田谷区議会会議録

1999年3月3日 一般質問


○(土田正人議長) 一般質問を続けます。
 三十七番木下泰之議員。
   〔三十七番木下泰之議員登壇〕

◆三十七番( 木下泰之議員) 小田急線の下北沢地域の問題については、前回の十一月定例会でお聞きいたしましたが、その際には、この地域の構造形式について地下化公表は公式にはいまだなされていない状況でした。ところが、十二月八日になって東京都の都市計画局長は、東北沢から梅ケ丘までの整備方針について地下化で整備することを公表いたしました。区議会の委員会での担当者の説明では、十二月四日に東京都、世田谷区、渋谷区、小田急の四者で構成する検討会の第一回目の会合があった。そこで、四線高架案、四線並列地下案、二線高架二線地下案、二線二層地下案の四つが示された。加えて、十二月八日に東京都は、まずは線増線二線は地下で、この方針を勘案して立体化で方式を決めるというふうに言っており、四案中四線高架案は消えたという趣旨の報告がありました。

 つまり、担当者の説明では、残りの構造形式は四線並列地下案と二線二層地下の地下案二方式と、二線高架二線地下の混合形式案ということになります。しかし、後の方の高架、地下の混合形式はあり得ません。線増線で高架を断念したのに在来線のみを高架とする案は、だれが考えても不合理であります。したがって、この地域の線増連続立体事業は地下方式で行われることが確実になったと言わなければなりません。十二月八日の東京都の都市計画局長の都議会答弁について、小田急線の地下化推進運動を進めてきた小田急高架と街づくりを見直す会が記者会見を行い、この地域での地下化勝利を宣言し、全線の地下化への転換を求める声明を発表したことは、読売新聞が報道したとおりであります。

 担当者は十二月四日の段階では四案が示されたことしか知らなかったと言い、十二月八日の都議会答弁で急遽、交通対策特別委員会を緊急開催し区議会に報告するという異例の事態となったわけですが、担当者の報告のとおりだとすると、高架四線断念の話が何の相談もなく真珠湾攻撃のように突然十二月八日になされたということになり、これは世田谷区のメンツ丸つぶれということになる話ですが、そういった危機感は担当者にみじんも感じられません。これは一体どういうことなのか、四者検討会と東京都都市計画局長の議会答弁の経緯、東京都と世田谷区の担当者との連絡調整実務はどのように行われてきたのか、まずはお答えいただきたいと思います。

 四年間、私はこの壇上から小田急線地下化を訴えてきたわけですが、下北沢地域に限定されてはいますが、地下方式が実現されることを行政が公表した、あるいは公表せざるを得なかったことに感無量の気持ちを抱いております。かつて、世田谷区は川上委員会をつくって小田急線の街づくり報告書をつくりました。その際、地下化は下北沢地区で高架化の一・五倍、全地区では一・六から一・七倍の経費がかかり、無理だとされてきたのであります。とんでもないペテンであります。当時の技術でも、そんなことはあり得ません。そして、この川上委員会報告書が世田谷区議会をまずはミスリードしてきたのであります。このレポートは、そもそも建設省サイドと相談の上つくられたものであり、全会派一致で地下化の決議を上げていたこの議会の意思を覆していく小道具として使われたと言わなければなりません。このレポートは、梅ケ丘−成城間の高架事業の正当化に使われたのであります。下北沢が地下で、成城が地下、その間が高架というのは全く不合理であります。しかも、地下化は高架の三分の一の費用でできる、そういう結論も専門家の間で出ております。即刻見直すべきなのであります。

 下北沢地域の地下化の都市計画案は、統一地方選終了後、年内にも公表され手続に入っていくでしょうが、その際、大場区長、あなたと行政の犯した誤りがことごとく明らかになっていくでありましょう。この誤りは、食糧費のむだ遣いや汚職といったたぐいのもの以上に深刻な誤りであります。何千億円の単位でミスリードしたその責任は万死に値するとだけ言っておきましょう。
 さて、この地域の地下化が確実になったということで、駅前の車づけのための広い広場とビルの高層化というお決まりの再開発から下北沢の町は救われる条件が整ってまいりました。全国的にも有名になっているこの町が成功してきた理由は、無粋な近代化の道を拒否してきたことにあります。正確に言いますと、一九六四年のオリンピック特需から始まった都市再開発が、小田急高架反対ということで手がつけられずにいた。その間に下北沢は独自の発展を遂げてきたということなのであります。現在の下北沢は、歩いて楽しめる町、いわばウオーキングストリートとしてにぎわっております。小田急線と井の頭線が交差し、交通の便に恵まれたこの地域は、車がなくても生活ができますし、車を人の波が拒否するこの町は、町全体が有機体として車を拒否しているかのようでもあります。

 私も車を使ってはおりますが、この町では車は小さくなって人の波に遠慮しながら通り抜けなければなりません。環境問題を考えるならば、これからの時代は脱車社会であります。その意味からも、下北沢の町の状況はむしろ好ましいと考えなければなりません。緊急車両や業務車は別として、車は遠慮して走るというこの町を守っていくことが何よりも必要であるというふうに考えます。一番街商店街振興組合は既に補助五四号線の凍結を決議していますし、先ほど開催された下北沢の街づくり懇談会の議論でも、外周道路に車をとめ置き、町中に車を入れないという考え方も大方の意見として集約されております。  
 
 ところが、この町を分断することになる補助五四号線を通し、この状況を無理やり変えようとする頭のかたい方もいらっしゃいます。どうか頭をやわらかくして、下北沢の町やこの地域の町について考えていただきたいと思います。五四号線をどうするのか、二六号線をどうするのかは、これらの道路をつくらないことも含めての議論は、町のコンセプトと同時に議論されなければならない課題であり、まちづくりを考えるには切り離せない課題であります。どのような手順でまちづくり計画を定めていくのか、手順についてお伺いしておきます。
 
 次に、騒音環境基準改定問題についてお聞きいたします。
 九月議会では、私は騒音環境基準の問題につきまして、一九九五年の国道四三号線で最高裁判例が出て、受忍限度六十デシベルであったのを、十デシベル、すなわちエネルギー量にして十倍もの基準に緩和して定めたこと、そして、幹線道路地域に特例を設け室内基準を設定することによって幹線道路での騒音は野放しになることなどを指摘し、区長に見解をただしました。そのとき、区長はわかりませんと答えました。ところが、この問題、ことしに入りまして、中央環境審議会での審議が建設省の圧力によってゆがめられてきたことが二月一日に朝日新聞によってスクープされ、数日間にわたって連日報道されました。
 
 昨年の九月議会で、二四六や甲州街道、環七、環八を抱える当区にとっては深刻な問題だと私は指摘しましたが、よくよく研究してみると、今回の改定は幹線道路の概念を拡張して、都道府県道路であればすべて、四車線以上であれば市町村道も幹線道路としてしまうような乱暴なことをやっていることもわかりました。つまり、現在、小田急線の連続立体事業や二子玉川の再開発によってグリッド状に整備が企画されている補助線について、これは都道であります。結局、これらの道路沿線の近接空間では騒音規制が野放しになるという状況が生まれてしまうわけであります。また、外でどのような環境悪化があろうと室内でしのげればよいとする環境基準の改定を認めてしまえば、エアクリーナーさえつければ大気汚染も許容されるということにもなりかねません。
 このような改悪は認めるべきではないし、大場区長は二十三区の区長会の会長として率先して、今回の改悪の四月一日施行に待ったをかけるべきなのであります。あれだけ朝日が大きく報道し、社説にも書かれている時期ですから、もうわかりませんと言うべきではありません。新騒音環境基準の凍結、撤回を世田谷区は国に求めるべきだと思いますが、区長の見解をお伺いいたします。  
 
 次に、今回の騒音環境基準緩和とも密接に関係しますが、二子玉川の再開発問題についてお聞きいたします。
 二子玉川の再開発については都条例によってアセスが義務づけられており、つい最近、都市計画案の説明会と同時に、環境影響評価書案の説明会も行われました。このアセスを読んで愕然といたしました。既に現況調査の段階で、この地域の測定点で大気汚染、とりわけ二酸化窒素の環境基準と騒音の環境基準は超えております。ところが、平成二十二年に事業が完成したときの環境予測は基準をクリアするとしているのであります。事業完成後の車は二万五千四百台もふえる、例えば二四六の観測点では交通量が一・五倍にふえるという予測であるにもかかわらずです。  
 
 なぜこんなことになるのか、このトリックを申し上げましょう。大気汚染については、東京都の計画では、都内全域における窒素酸化物の総排出量六万七千六百トンを、平成二十二年度には四万八千七百トンに減らすということになっているからであります。つまり、総量で三割近くも削減できるという見通しのもとに環境影響がないと言っているのであります。こんなペテンはありません。大体、一九七八年に二酸化窒素の環境基準を三倍に緩めた後に総量規制の計画を東京都は発表しましたが、この総量規制が実施されたでしょうか。窒素酸化物の総量が現実に減ったでしょうか。科学的な予測は実態に即したものでなければ意味がありません。不確かな東京都の計画を指標にして環境影響はないと言うのは、白を黒と言いくるめるにすぎないのであります。

 騒音については、これは確実にふえます。ところが、騒音については既に環境基準を超えているのだから、さらにうるさくなること自体問題ですが、絶対評価ではなく、三デシベル程度の増加は大したことはないと言っているにすぎないのであります。
 区長にお伺いしたい。
 道路環境が悪化している世田谷区において、そもそも、一日の自動車走行量を二万五千四百台もふやしてしまう再開発計画が妥当であるかという問題です。ぜひこれはやめていただきたい。そのことについてお伺いいたします。  
 
   〔大場区長登壇〕

◎(大場区長) 今回の改定は、基準の改悪であり、国へ是正等の要望をすべきではないかというお話がございました。
 幹線道路沿いなどの騒音や大気汚染の問題は、我が区を含め大都市では、大変残念ではありますが、その改善が難しい状況にあります。特別区長会においても、国や都に対し重点要望として対策充実をお願いしていますが、引き続き強く要望してまいりたいと考えております。

◎(佐藤道路整備部長) 私からは、下北沢のまちづくり問題と道路問題についてお答えしたいと思います。
 小田急線の梅ケ丘から東北沢間の構造形式につきましては、先ほど委員からお話がありましたように、この検討のため、東京都、世田谷区、渋谷区、小田急電鉄の四者で小田急線東北沢〜梅ケ丘間整備方針検討会を設置いたしまして、既にご案内のように、昨年の十二月に、線増部分につきましては地下方式、在来線についても立体化を考えていく方針が示されました。
 下北沢のまちづくりにつきましては、小田急線や、あるいは、お話がありました都市計画道路五四号線の構造形式に大きく左右されるわけでございます。下北沢地域では、地域の皆様方からさまざまなご意見をいただく中で、お話がありましたように、五四号線凍結のお話がありますが、地区内の道路網の未整備や、駅前広場、駅へのアクセス、駐車問題、防災上からいろいろな問題を抱えているわけでございますので、今後、小田急線の構造形式を初めとしました具体的なまちづくりの条件と整合を図りながら、地域の皆様方と広域生活拠点としてのまちづくり構想をまとめてまいりたい、このように考えてございます。

◎(佐藤都市開発室長) 二子玉川の環境アセスについてご質問がございました。
 この再開発は、これまでも申し上げておりますように、基盤が未整備な地区において、地元の地権者の方々が組合を設立されまして、その組合で安全で快適な町をつくろうというふうに行われているものでございます。この再開発事業では、規模がある一定以上であるということから、事業者となる現在の準備組合が東京都の条例に基づきまして、環境影響評価書案を作成しております。また、補助一二五号線、いわゆる多摩堤通りでございますが、これにつきましては、準備組合と区が事業者であり、共同して環境影響評価書案を作成しております。
 開発後の周辺環境につきましては、やはりこういう事業をやる場合には環境基準値を超えないようにということで指導はしておりますが、若干の影響があることはやむを得ないのかなというふうに認識しております。特に、再開発で生み出される公共空間、例えば、二子の場合は交通広場、街区公園、あるいは防災空間とか、歩車分離された道路の整備等がなされます。こうしたものが地域社会に与えるメリット等を考えまして、総合的な観点から論じていくべきだろうというふうに認識しております。
 区といたしましては、一二五号線──先ほど申し上げました多摩堤通り──これにおきましては、すべての項目において環境基準を下回っております。また、再開発におきましても、一部の地点における騒音を除いたすべての環境項目で基準値を満足しております。したがいまして、こういうことを先ほど申し上げました公共性等との関連から総合的に判断していきたいというふうに考えております。
 また、今現在でオーバーしているが、これがなぜクリアするかというお話もございましたが、環境庁、あるいは東京都においてもいろいろな施策を実施されておりますし、これからもさらに強化していきたいという状況にございますので、いわゆるバックグラウンド濃度といいますか、そういうものは徐々に下がっていくものと認識しております。  現在、東京都におきましては、環境影響評価書案に対する住民の方々からの意見を今月の十八日まで受け付けているところでございますが、今後は、これらの意見に対して事業者が見解を示し、さらに地元において説明会を開催して、さらにそれに疑義がある場合はもう一度意見をいただくというような手続になっております。最終的には、東京都の環境影響評価審議会でこの案の審議をいただくことになっておりますので、ご理解いただきたいと思います。
 以上でございます。

○(土田正人議長) 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。(「答えていないじゃないですか。時間はありますよ、まだ。議長、議長、答えていないじゃないか。答えていないじゃないですか。答えていないじゃないですか。答えてくださいよ」と呼ぶ者あり)

○(土田正人議長) ほかに答弁はありますか。
 答弁がございませんので、木下議員の質問を終わります。