平成11年第1回臨時議会(自1月12日 至1 月13日)

世田谷区議会会議録

1999年1月13日 地域振興券交付のための補正予算への反対意見


○(土田正人議長) これより意見に入ります。
 なお、意見についての発言は、議事の都合により一人十分以内といたします。
 発言通告に基づき、順次発言を許します。
 三十七番木下泰之議員。
   〔三十七番木下泰之議員登壇〕


◆三十七番( 木下泰之議員) 日程第一の補正予算に反対の立場から討論を行います。  今回議案となった補正予算は、地域振興券交付事業実施に伴うものであります。したがって、補正予算への賛否は地域振興券交付事業への賛否であります。

 この事業は、天下の愚策と称されるものであることは国民の共通認識であります。各種世論調査を見ても、反対が圧倒的です。だれもまともな景気浮揚の政策とは見ておらず、堺屋太一経済企画庁長官、さらには宮澤大蔵大臣までもが批判する公明党の奇策を、自民党の政権構想の駆け引きの中で、つまりは公明党を自民党に引き寄せる目的で採用された事業にほかならないからであります。

 さすがに、三万円を国民全員にばらまくという当初の公明党の構想は、政府・自民党が採用するに当たっては、十五歳以下の子供を持つ世帯主と六十五歳以上の老齢福祉年金等の受給者等に限定されて、支給額も二万円とされましたが、商品券を市区町村に発行させて、総額七千億円分を対象者にばらまき、地域限定で使わせるというものであります。二万円の商品券をもらえる四割の国民にとっては何やら得をしたような気分にさせられますが、薄汚い政治的駆け引きの代償に、七千億円とこれにかかる莫大な行政経費を、赤字国債として国民が新たに抱え込むことにほかなりません。

 未曾有の不況です。失業者が増大しております。経済対策が必要であることは異論のないところであります。しかし、この不況が構造的なものである以上、構造改革のビジョンを示しもしないで、場当たり的な経済政策をもてあそぶことはできません。

 現代のニューディールをどう構想するかが重要であります。私はかねてから主張しているように、現代のニューディールは、環境問題をビルトインした新しい経済秩序を構築していくことであるというふうに考えております。グローバル化した経済秩序の中で環境立国を前面に打ち出すことは、日本が新しい技術と文化の立国を目指すことでもあり、環境や平和についてのヘゲモニー国家となることであります。

 確かに一九三〇年代には、テームズ川流域に大型ダムをつくったりすることが、公共投資の対象としての時代のニーズでもありました。しかし、時代は変わり、環境破壊型の大規模公共事業や有効需要創出を自己目的化した、無意味な公共事業の転換をすることが求められています。努力を怠らなければ、環境対策を時代のニーズとし、環境対策への投資を有効需要創出の切り札とすることができるはずであります。

 私は、小田急線の高架反対、地下化推進の運動や世田谷の大規模再開発の見直し、排ガス、騒音規制や自動車社会の見直し、民有地の緑を守る政策をそのようなものとして取り組んでいることを、既にこの本会議場で述べてきたところであります。ケインズの理論が現代にそのまま通用するとは思いませんが、当時の社会情勢の中でケインズが果たした問題提起を、現代にどう生かすかを考えることの重要性は必要であると、私はここで指摘しておきたいと思います。

 きんさん、ぎんさんの通販生活の宣伝ではありませんが、むだ遣いはやはり戒められなければなりません。大事なことは、真に社会的、人類史的に必要な投資が何であるかを探り当て、戦略的に投資し、労働力を割り当てることであります。不必要な投資をやめ、資源の有効利用を図り、不必要な人員は削減し、時短とワークシェアリングを実現し、真に必要な労働や余暇を開拓するべきなのであります。今回の地域振興券は、そういった観点から考えますと、むだ遣いを奨励し、事実上の通貨操作を行うものであり、孫子に借金を残す危険なマネーゲームというほかはありません。

 先ほどの企画総務委員長の報告によりますと、企画総務委員会では全員一致でこの補正予算を可決したとのことであります。しかし、これは全くもっておかしい。それぞれの政党、会派にはそれなりの経済政策、税制政策があるはずであります。自民党や公明党はこの愚策の推進者なのですから、推進したこと自体を指弾しますが、補正予算に賛成することに政策上の矛盾はありません。しかし、共産党や社民党・民主リベラル、新風21、生活者ネットが委員会で賛成し、行革一一〇番までもがこの補正予算に賛成を表明したことは、国民や区民への裏切りではないでしょうか。共産党や社民党はそもそもこの事業に反対であったはずですし、社民党・民主リベラルと新風21の議員の中には民主党の籍の方もおられる。民主党も反対していたはずであります。

 共産党にお尋ねしたい。あなた方のスマイリングコミュニストへの変身というのはこういうことなのかということをお聞きしたい。あなた方は消費税反対に固執せず、消費税三%に戻すことを政策として掲げています。その柔軟性は評価したいと思います。しかし、あなた方が反対していた地域振興券事業になぜ賛成をするのか、私は言葉を失います。第一、この七千億円がむだに使われれば、消費税を三%に戻すことに困難が生ずるということは理の行き着くところではないでしょうか。本気で税制や財政赤字のことを考えてその是正を求めていくならば、決して追認はできないはずであります。今回の対応は支離滅裂と言わなければなりません。

 行革一一〇番の大庭議員がこの事業に賛成するとの態度表明も、驚きに値するものであります。全国津々浦々の市区町村にむだな行政実務を背負い込ませ、莫大な、全くむだな行政経費を使わせ、しかも、本日ここで行われているように、全くむだな議会を開催せざるを得ないようなこのような事業にあなたは賛成なのかと問いたい。行革の二文字はどこへ行ってしまったのでしょうか。行革がなくなり、一一〇番だけだということになれば、これはもはや単なるお巡りさんということになってしまいますが、本当にそれでよいのか、ぜひともお聞きしたい。本日の議運で、今回の補正予算案に大庭議員として賛成の態度を表明している以上、行革一一〇番がどのような理由で賛成するのかを、この議場で生の声で語るべきであったのであります。

 新風21に属する斉藤りえ子議員にも申し上げたい。あなたは前回の本会議で一般質問を行った際、今回の事業を批判し、天下の愚策ときっぱりと言い切ったのであります。私は大変な感銘を受けました。

 ところで、新風21は今回、委員会で賛成し、本日の議会運営委員会でも賛成の対応を示しました。その議会運営委員会の席にあなたも委員としており、何の意思表明も行いませんでした。ということは、天下の愚策と語ったあなたまでが、この議案に賛成ということになります。このことは極めて悲しむべきことであります。所属する会派の決定がどうであろうと、あなたは堂々とみずからの信念を貫くべきであります。堂々と反対の意見を表明するべきなのであります。あいまいな態度は許されないと申し上げておきます。

 以上を申し上げて、無党派市民の反対討論といたします。

○(土田正人議長) 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。