平成10年第3回定例会(自924日 至1022日)

世田谷区議会会議録

1998年9月25日 一般質問 鉄道騒音責任裁定、騒音環境基準緩和


○(土田正人議長) 一般質問についての発言時間は、一人十分以内といたします。

 質問通告に基づき、順次発言を許します。

 なお、質問の順番に当たる山崎議員が皆様ご承知の事情で議場におられませんので、質問の順番を順次繰り上げさせていただきます。

 三十七番木下泰之議員。

   〔三十七番木下泰之議員登壇〕

◆三十七番(木下泰之議員) 最初に、政府・公調委が裁定した違法な小田急騒音と高架見直し及び工事の中止について質問いたします。

 六月定例議会のこの壇上で、私は小田急線の騒音問題について取り上げました。この段階では三百人を超える責任裁定申請者の実に四分の三が調停和解を拒否して責任裁定を求めたというところまででした。

 政府・公害等調整委員会が全国の鉄道騒音問題に累の及ぶ責任裁定を回避しようと躍起となり、出向裁判官の審議官にまで沿線の戸別訪問をさせたりして沿線騒音被害者に和解を勧め、その仕上げに職権調停和解案を提示して、何とか責任裁定を回避しようとしていた。これに対して沿線住民は、勇気を持って拒否して裁定を求めたのでありました。私は、その際、今後政府が責任裁定を出せば問題は全国化すると指摘した上で、世田谷区の小田急線騒音問題について、世田谷区の取り組みをただしました。

 六月議会での佐藤道路整備部長の答えは次のようなものでした。騒音などにつきましては、公害等調整委員会の調停するところであります六十五デシベル以下とする目標値の実現を図るように鉄道事業者に働きかけてまいります。これが答弁でございました。

 さて、七月二十四日、政府は現在の小田急騒音について、日平均レベルで七十デシベルを超えるもの、あるいはLAmax、ピーク騒音レベルで八十五デシベルを超えるものについては受忍限度を超えた違法な騒音と認定し、賠償を命じる裁定を行いました。結局、小田急もその範囲でこれを認め、裁定を受け入れました。この数値は、被害住民にとっては到底容認できないものです。なぜならば、最高裁判所は国道四三号線の騒音について、日平均で六十デシベル以上の騒音で受忍限度を超えると判決を下しており、日平均七十デシベルというのは音のエネルギー量にして六十デシベルの十倍もある騒音であるからであります。

 当然、多くの住民は、これを不服として裁判を提訴いたしました。裁判で住民は七十デシベルさえもクリアできない高架計画を地下に転換させることを求め、甘い基準である責任裁定の七十デシベルを厳しいものにせよというふうに求めております。新たな騒音被害者住民も加わり、この騒音問題で現在裁判に訴えている住民は三百四十名を超えております。これらの経過については、この夏、大きく報道されましたのでご承知と思います。

 さて、政府の責任裁定で示した受忍限度日平均で七十デシベルという数字は大きな意味を持っております。政府が違法と認定した、この不十分な数値さえも、高架事業では騒音問題についてクリアできないということが実は小田急高架事業の都市計画を決定する際の環境アセスメントで明らかになっているからであります。

 このアセスメントの区長の意見書の騒音についての意見は次のようになっております。複々線化後は列車のスピードアップが予想される。予想値算出に当たっては、複々線化後に予想される平均速度を用いて予測されたい。なお、列車の増加数も明らかにされたい。このように区長は意見を出しております。これに対してアセスを行った東京都と小田急は、予想値の算出は電車の速度については八十キロを用いている。一日当たり上下線で現在の七百七十本から、本事業完成時の八百本に増加するとした上で、なお高架完成後の騒音は現況の騒音とほぼ同じ程度か、全体的にこれを下回っているため、周辺に及ぼす影響は少ないものと考えますと、これは東京都と小田急が答えているわけです。

 つまり、これは何を意味するでしょうか。喜多見から梅ケ丘までの複々線事業が完成した際に、現在と同程度だから問題はないと言っているのです。ところで、これはアセスとしてはインチキであります。確かに喜多見から梅ケ丘まで複々線化が完成した段階では、電車の本数は八百本で速度は八十キロかもしれません。ところが、代々木上原まで複々線化が完了すれば、電車の本数は一千百本以上となり、新宿まで完成すれば一千三百本となるはずです。

 当然、スピードアップも予想されており、本来の事業計画での複々線化完成後の騒音問題は、今と同じどころか極めて悪化するのが公式のアセスから論証されてしまうのです。今と同じでもひどい騒音です。つまり、責任裁定で受忍限度を超えるというふうに出たわけですから、今と同じでも困るわけです。ましてやそれの二倍にもなるような騒音がこれから予想されるわけであります。小田急線のこの事業は、世田谷区も事業費を分担しているわけですから、事業自体に責任がございます。

 そこで、区長にお聞きいたします。将来、小田急の高架複々線で責任裁定で違法とされた日平均七十デシベル、LAmaxで八十五デシベルをクリアできる保証はあるとお考えかどうか、そのことについてまずお聞きいたします。

 保証がないということであれば、工事をまずはストップして見直し作業に入るべきであります。被害者を抱える世田谷区として、東京都、鉄建公団、小田急に申し入れることを沿線被害者住民に成りかわりまして要求いたしますが、区長の見解をお聞きしたいと思います。

 沿線住民の運動のこの間の高揚で事業者は危機感を感じまして、工事を急がせているようにとれます。特に夜間工事がふえております。七十デシベルを超える違法騒音をばらまきながら、現在、小田急線は走っておりますが、その上、さらに夜間工事までやっていく。これはもはや犯罪と言うほかありません。即刻やめるように区長は申し入れるべきだと考えますけれども、区長の見解をお伺いいたします。

 さて、この夏は世田谷区の環境を守るに当たっても、また、道路の一体整備とセットになった小田急線連続立体事業を見直せという運動にとっても、もう一つの朗報がございました。その朗報は、ちょうど小田急騒音訴訟の第一次訴訟を提訴した八月五日にもたらされました。川崎道路公害訴訟の判決です。

 そこで、次に川崎道路公害訴訟判決と世田谷の道路新設、大規模開発の見直しについて質問いたします。

 司法の二酸化窒素などの車の排ガスの有害性を認めた重要な判決が下されたわけであります。道路行政や都市再開発行政の抜本的な見直しを迫っているものであります。これも大きく報道されました。昨年の十月に作成された「世田谷区と大気汚染」という環境部が作成したレポートがここにございます。これがそのレポートでございます。これを読んだだけでも、世田谷の大気汚染がいかに深刻かということがわかります。

 二酸化窒素、オキシダント、浮遊粒子状物質、いずれをとっても環境基準を大幅に超えております。二酸化窒素に関しましては、砧と成城の測定局はクリアしておりますが、そのほかは全部超えております。これを解決するには、自動車の総量を減らす対策をとらなければ、区民の健康を守ることはできません。

 総量を減らすということでは、交通規制の問題もありますが、何よりも道路を中心とした野放図な大規模再開発をまずはストップすることにあると思います。小田急線高架とセットになった都市計画道路の新設や道路拡幅及び周辺大規模再開発、今般用意しているアセスメントでさえ、車両交通の深刻な増大が予想される二子玉川の大規模再開発、三軒茶屋から駒沢にかけての大規模再開発などをこのまま進めることは許されません。道路新設や大規模再開発を見直すおつもりはあるのかどうか、区長の見解をお聞きいたします。

 この夏の騒音に関する公害等調整委員会の責任裁定と川崎道路訴訟判決は相まって都市のあり方の変更を求めております。みずと緑の世田谷などのキャッチフレーズをもとに、環境重視をかねてから表明してきた大場区長がどのようにお答えになるかは、区民にとっても重大な関心事であります。とりわけ来年の選挙に出馬することを表明されている以上、なおさらであります。誠実なご答弁を求めます。

   〔大塚助役登壇〕

◎(大塚助役) いろいろ専門的なご質問をいただきましたので、私からお答え申し上げます。

 ただいま騒音問題についていろいろご質問がございました。七十デシベルが保証できるのかというお話がございましたが、現在、高架化が終了しております狛江市内における騒音のレベルの値は六十デシベルを下回るものというふうになっております。さらに、私どもの方としては、こうした騒音についてはできるだけ低くするように事業者に対して申し入れをしていきたいというふうに考えております。

 また、小田急の立体化について即刻とめるようにという申し入れをしろということでございますが、一日も早く私どもの方としては、この立体化を推進していただいて、防災上、あるいはいろんな交通の渋滞をなくすようにしていただきたいというふうに考えているところから、こうした申し入れをする考えはございません。

 なお、夜間工事については、できるだけ周辺の住民の方々に迷惑をかけないように申し入れていきたいというふうに考えております。

 以上です。

◎(佐藤道路整備部長) 私の方からは、川崎の道路公害訴訟判決と世田谷の大規模開発の見直しについてお答えいたします。

 お話の川崎公害訴訟の判決は、新聞等の報道によれば、首都高速道路、国道等の幹線沿道の住民の健康被害と道路からの排ガスによる大気汚染の間に因果関係があると認められた判決だと思ってございます。

 区が整備します道路は、その規模からしまして、環境に大きな負荷を与える交通量を計画しているものではなく、歩道を新設し、積極的に緑化を図り、安全な交通や環境保全に努めることにしております。道路は消防活動や医療活動及び区民の生活を支えるライフラインの受け入れなど大切な機能を持っておるわけで、阪神・淡路大震災では延焼防止や避難、救助、救援物資輸送等の面で改めてその重要性が確認されたところでございます。

 世田谷区の骨格を形成します道路状況を見ますと、都市計画道路の整備率につきましては、補助線に限っていえば二八・五%、低い整備状況から完成区間への交通の集中や住宅地の狭い道路へも車が流入し、騒音、振動等で区民生活を脅かしておるわけで、道路整備によるネットワークが必要であると思われます。

 また、鉄道の立体化の整備とあわせまして、道路整備を行うことは駅へのアクセスや交通渋滞の解消となります。さらに、駅周辺の拠点開発を進め、安全で便利で健康で快適なまちづくりを行うための一つの手法である再開発事業を区民と一体となって推進していくことは、地域の活性化、周辺のバス網の整備とあわせて区民の要望が高く、必要なものであると考えております。区みずから行う道路整備や開発事業の支援に当たっては、区民、議会とも協議しながら総合的なまちづくりを行い、地域の生活環境改善に努めてまいりたいと思います。

 以上です。

◆三十七番(木下泰之議員) 今の答弁は全くおかしな答弁です。といいますのは、アセスメントに対して区長が意見書を出しているわけですね。その見解書の中で、今の騒音についてほぼ同じになると言っているんですよ。ほぼ同じといっても、今が違法なんですよ。七十デシベルを超える違法な状態になっているやつを継続させるということなわけです。高架にしたらよくなるなんていうことは全くないわけです。

 しかも先ほど紹介したアセスメントは、八百本のレベルでしか考えていない。実際には一千三百本になるんですよ。そうしたら、これは二倍近くの騒音になる。狛江のことを例に出しましたけれども、これは全くおかしい。狛江でもきちっとはかれば、そんなに低減はされていないはずです。しかも、今計画されているところは軒を連ねて走るんです。五十センチのところに高架橋の柱ができるんですよ。そういう工事に加担しているわけです。それについて答えてください。

   〔大塚助役登壇〕

◎(大塚助役) お答え申し上げます。

 小田急では高架になった場合につきましては、低騒音型のレールを使ったり、あるいは側壁を高くしたりして、それぞれ工夫をしながら事業をしているというふうに聞いております。そういうことの中で、できるだけ騒音を減らしていくということを聞いておりますので、ご理解ください。

○(土田正人議長) 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。