平成10年第2定例会(自68日至616日)

世田谷区議会会議録

1998年6月9日 議員提出議案 パキスタン・イスラム共和国の核実験に抗議する決議への質疑・討論


 

 

○(土田正人議長) これより

△追加日程第一を上程いたします。

   〔関次長朗読〕

 追加日程第一 議員提出議案第三号 パキスタン・イスラム共和国の核実験に抗議する決議

○(土田正人議長) お諮りいたします。

 本件は、会議規則第三十八条第二項の規定により、提案理由の説明、委員会付託を省略いたしたいと思います。これにご異議ございませんか。

   〔「異議あり」「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○(土田正人議長) ご異議がございますので、まず提案理由の説明についてお諮りいたします。採決は起立によって行います。

 本件は提案理由の説明を省略することに賛成の方の起立を求めます。

   〔賛成者起立〕

○(土田正人議長) 起立多数と認めます。よって本件は提案理由の説明を省略することに決定いたしました。

 次に、委員会付託についてお諮りいたします。採決は起立によって行います。

 本件は委員会付託を省略することに賛成の方の起立を求めます。

   〔賛成者起立〕

○(土田正人議長) 起立多数と認めます。よって本件は委員会付託を省略することに決定いたしました。

 これより採決に入ります。(「議長、質問があります」と呼ぶ者あり)

○(土田正人議長) 質問ですか。(「質問です」と呼ぶ者あり)

 木下議員は何についてのご発言ですか。

◆三十七番(木下泰之議員) 四十八名の方が議員提案という形で提出されていますので、その趣旨について質問したいと思います。

○(土田正人議長) 木下議員に申し上げます。

 発言する場合は、会議規則第五十二条第一項の規定により、事前に発言通告をすることになっております。議会運営委員会においても確認されております。木下議員から発言通告を受けておりませんので、ご了承を願います。(「議事進行、議事進行」「ただいま上程された議案じゃないですか」「議事進行」「そのままでいい」「進めてください」「議事進行」「質問権はありますよ」「お続けください」「ただいま上程されたばかりじゃないか」「議事進行」と呼ぶ者あり)

○(土田正人議長) 本件の発言の取り扱いについて議会運営委員会で協議いたしますので、ここでしばらく休憩いたします。

    午前十一時五十分休憩

 

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    午後一時三十五分開議

○(土田正人議長) 休憩前に引き続き、会議を開きます。

 これより議員提出議案第三号の提案理由に対する質疑に入ります。

 なお、質疑についての発言は、議事の都合により答弁も含めて十分以内といたします。

 発言通告に基づき、発言を許します。

 三十七番木下泰之議員。

◆三十七番(木下泰之議員) パキスタン・イスラム共和国の核実験に抗議する決議案についてご質問いたします。

 私は、インドの核実験の際に、議運の委員会の中で、決議を上げるならば、核を保有している五大国の核軍縮、核廃絶、さらには日本が米国の傘の下に入っているということについてきちっと批判をするべきである、そういうふうに申し上げました。そして今回、米国の核の傘の下に日本が入っているということについての批判は出ていませんでしたけれども、核廃絶という言葉が入りました。そういったことで、前のインドに対する決議案よりは前進だと思うんですけれども、この決議案全体に沿って、やはり米国の核の傘の下にある日本、そういった問題についてはっきりさせておかなければ、パキスタンの方々やインドの方々に対するきちっとした説得力を持たないのではないか、そういうふうに考えるわけです。

 そこで、提案された方々に、その辺についてはどういう議論がなされたのか、どういうご見解をお持ちなのかをお聞きしたいと思います。議運の中で、これをつくられた方の見解を求めましたけれども、一切そういう説明がなかったわけです。また、先ほどの本会議の中で趣旨説明を省略するというふうにされた。これだけ重要な問題について見解をこの議会で決議するわけですから、それについては十分聞きたいと思います。

 特に答弁は、各会派ごとにいろいろ見解も異なると思いますので、各会派の方々それぞれにぜひお聞きしたいというふうに思います。

○(土田正人議長) 提案者の答弁を求めます。

   〔三十三番荒木義一議員登壇〕

◎三十三番(荒木義一議員) ただいまの質疑について、企画総務委員会での文案作成の経過についてご説明を申し上げます。

 議会運営委員会の中で委員外議員の方からこういうお話がございましたという報告を伺い、それらを含めた文案を作成させていただきました。

 なお、核兵器廃絶と米国の核の傘下にある日本についてという問題につきましては、ひとつ時間をかけて論議をしていこう、なお、このように核実験が行われた後に何か着物の上から背中をかいているみたいな抗議文をつくるということにも非常に虚しさを感じるわけでありますので、今後はこういう手法も考えながら、ひとつ対応していこうではないかということを相談いたしたわけであります。

 なお、今回は区長はもう即日抗議文を出しておいででございます。他区におきましても議長名で要望をいたしたと伺っておりますが、世田谷では慣例になっておりますように、こうやって本会議で決めないと出せないということがございまして、このような形になったわけであります。

 世田谷区議会としては、核兵器の廃絶が国際平和の実現と地球環境の保全に不可欠であることを改めて確認をしたという決議文をつくったわけでございますので、何とぞご了承願いたいと思います。

 以上です。

◆三十七番(木下泰之議員) 今、荒木議員に答えていただきました。荒木議員自身もアメリカの核の傘の下にあるということについても十分議論をしていきたいというふうにおっしゃったわけですけれども、少なくともパキスタンは、例えば、インドが核実験をしたことに対抗してやったというふうに言っているわけです。テレビ報道などで見ますと、ある意味で民族主義の高揚みたいなのがあって、民衆はその核実験に対して狂喜しているわけですね。そういった人たちに対して説得をするのであれば、やはり日本の核抑止論というものについて批判をしなければいけないというふうに思うんです。

 荒木議員はその辺についてはそのとおりだ、つまり核抑止論はとるべきでない、そういうふうにお考えになっているのかどうか、その辺についてお聞きしたいと思います。

   〔三十三番荒木義一議員登壇〕

◎三十三番(荒木義一議員) ただいまの質問にお答えを申し上げますが、私は荒木個人の意見を申し上げておるのではありませんで、企画総務委員会の中での状況を報告したことでございますので、ご理解をいただきたいと思います。

◆三十七番(木下泰之議員) では、こう聞きましょう。今、企画総務委員会の議論ということで、当然各会派が集まっていらっしゃるわけですから、核政策等についてさまざまなご意見をお持ちだと思うんです。そういう議論はどのようになされたのか、そのことについてご報告いただきたい。(「抗議文とは別だ」と呼ぶ者あり)別ではないです。

   〔七番笹尾淑議員登壇〕

◎七番(笹尾淑議員) 私も提案者の一人、そして企画総務委員会のメンバーでございますので、今の木下議員からの質疑に対して私の考えを申し上げたいと思うんですが、日本政府は、木下議員がおっしゃるように、アメリカが今パキスタンなどに対して経済制裁を与えるなんていうことに対しても賛成するという、そういう立場をとっていることはニュースなんかでも事実であります。私は、核不拡散体制、つまり五大国が核を持ち続け、そしてそれを思うようにしているというところに今の大きな問題があるというふうに思うわけであります。

 私も文案をつくるに参加をいたしましたけれども、今回の決議はパキスタン・イスラム共和国の核実験に抗議する、そういう決議でありまして、あて先はそこになっております。したがって、日本政府に対するものというのは、新たにこの議会での総意によってつくるのであればつくるということにすればよろしいのではないかと思います。

 なお、この決議の中で核兵器の廃絶と核実験の即時中止ということを特に入れまして強調した次第でございまして、日本政府が今までとってきた態度に対することは、ここではそれぞれの各会派の合意に基づいてつくるわけでありますから、そこのところは日本政府に対するものではないのでここに書いておりませんので、ひとつご了解願いたいと思います。

 以上で終わります。

◆三十七番(木下泰之議員) 核問題には昔から発言をされていた社民党はどういうふうにお考えになっているか、お聞きしたいと思います。

○(土田正人議長) 答弁者がおりませんので、よろしいですか。

 答弁者の方を指名できませんので、ご了解願います。(「高橋さんにお願いします」と呼ぶ者あり)

 以上で木下泰之議員の質疑は終わりました。

 

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○(土田正人議長) これより意見に入ります。

 なお、意見についての発言は、議事の都合により十分以内といたします。

 発言通告に基づき発言を許します。

 三十七番木下泰之議員。

   〔三十七番木下泰之議員登壇〕

◆三十七番(木下泰之議員) ただいま上程されました決議案に対しまして、私の立場を申し上げます。

 賛成はいたしますが、苦言を呈しておきたいと思います。なぜならば、先ほど示されました決議案につきましては、核保有国五大国に加えて、新たにインド、パキスタンが相次いで核実験を行った現時点においては極めて不十分な決議案であるというふうに思うからであります。私は、既に議会運営委員会で私の意見を申し上げました。五大国の核は、核廃絶と米国の核の傘からの日本の脱却の道を説いていない決議案につきましては、インド、パキスタンへの核実験の批判に対して説得力を持ち得ないということを申し上げてまいりました。私の意見も一部反映したのでしょう。インドへの核実験抗議の際にはなかった核廃絶の文言も今回は入りました。しかし、それだけでは不十分なのであります。唯一の被爆国からインド、パキスタンに対して発する決議は十分説得力のあるものでなければなりません。

 報道で伝えられるように、核実験に対してパキスタンの民衆がある民族意識の高揚をもってそれを受け入れているという、そういう姿を見て愕然といたしました。日本は、今回の核実験に対して、きちっと批判をするべきであります。しかし、日本はアメリカの核の傘の下に入っているではないか、そういうふうに見られているわけです。そのことがやはり問題なわけであります。そのことを議論しなければ、冷戦が終わって、そして新しい価値観が求められている今、やはり核に対する意見にはなり得ないはずであります。今まで核実験を強行してきたことに対して、この議会は何回も何回も抗議の意思を表明してきたかもしれません。しかし、今は事態が変わっているのであります。五大国に加えて二つの国が、新興国が、発展途上国が新たに核兵器を持ってしまったのであります。特にパキスタン・イスラム共和国ですが、イスラム世界が持ったということは非常に脅威だというふうに国際社会の中でも言われております。その中で日本が果たす役割というのは非常に大きいと思います。ですから、この世田谷区議会で決議を上げるに当たっては、それなりの注意力を持って決議を上げていかなければ説得力がない。今までと同じような言い方で単に核実験に反対と言っただけでは、パキスタンやインドの人たちに核兵器を持つことをやめさせるということはできないわけであります。

 例えば、では、日本は核抑止力の論に立たないのかどうか政府に聞いてみていただきたいと思います。そうはなっておりません。残念ながらそうはなっておりません。野中広務氏は、この前、私的な講演会の中で、五大国の核廃絶について意見を言うべきである、そういうことは言いましたけれども、しかし、非核三原則についても日本に核がないなどということはだれも信じていない話なのであります。

 ですから、この議会で決議を上げるということであれば、やはりそういったことは十分各会派話し合って、新しい時代を迎えているわけですから、議論をした上でどういうふうに対処していくか、そのことを決めるべきであるというふうに考えるわけであります。今の答弁を求めても、建前はおっしゃるけれども、しかし、現実に各会派がどう思っているのか、そして、その上で何を妥協してこういう妥協点を探ってこういう決議になったのか、そういうことが全くわからないわけであります。私たち少数会派に対しては、そういう説明も何もなされませんでした。こういった形で決議案が上程され、そして通ったとしても、それはやはりインドやパキスタンの側から見れば、何を日本という経済大国が寝ぼけたことを言っているのだと言われかねないわけであります。

 私は核軍縮に賛成でありますし、もちろん日本の核廃絶に向けていろいろ努力しなければいけないというふうに思っております。だからこそ、この議会がこういった決議を上げるときには、やはり注意深くそういった状況の中で判断をしていかなければ、ある意味では、決議だけは上げても全く意味のない決議になりかねない、そういうふうに思うわけであります。

 私もこの核廃絶の趣旨には賛成ですから賛成はいたしますが、しかし、私の意見をここで言っておかなければ、皆さんと同類にされてしまう。そのことは嫌だということで、私はあえて意見をここで表明させていただきました。もしそういう議論をなさるのであれば、各政党が、各会派がここで意見表明もするべきであります。それが議会の機能であります。そういったことを欠いた議会、それが今の世田谷区議会になっているわけです。皆さんはもっと声を大にして発言をするべきだ、そのことを訴えまして、私の賛成討論といたします。

○(土田正人議長) 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。

 これより採決に入ります。採決は起立によって行います。

 お諮りいたします。

 本件を原案どおり可決することに賛成の方の起立を求めます。

   〔賛成者起立〕

○(土田正人議長) 起立全員と認めます。よって議員提出議案第三号は原案どおり可決いたしました。

 

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