平成8年第3回定例会(自930日 至1025日)

世田谷区議会会議録

1996年10月25日 決算認定へ反対討論


○(石塚一信議長) これより意見に入ります。

意見の申し出がありますので、順次発言を許します。
 なお、意見は、議事の都合により十分以内といたします。
 三十七番木下泰之議員。
   〔三十七番木下泰之議員登壇〕

◆三十七番(木下泰之議員) 今回の決算議会で、私は、一般質問、委員会審議を通じて小田急線高架問題、瀬田四丁目小坂邸緑地取得問題、弦巻二丁目岩崎邸緑地取得問題、宮坂地区の具体的な建築違反問題、政務調査補助金の実績報告書の虚偽報告とその取り扱いの問題等を取り上げてまいりました。いずれも平成七年度の決算に関連する諸問題であります。

 小田急線連続立体化問題では、世田谷区の外部委託調査について、私は情報公開訴訟を二次にわたり提訴しておりましたが、本年の八月十六日になって、その係争案件のうち、議事録を除いてほとんどが情報開示されるに至りました。このうち、今回は平成三年度、四年度、五年度に実施した梅ケ丘以東新宿までの構造調査及び該当する世田谷区内のまちづくり調査について、区長及び担当者に問題をただす機会を得ました。この調査は、高架、地下が両論併記として報告書が作成されておりますが、要は、下北沢地域の地下鉄化は可能であるということを平成三年度の段階から証明していた文書として貴重であります。

 私は、決算委員会の総括質問の中で大場区長にお聞きいたしました。最近の地下鉄の技術進歩についてどう思われますかというふうに聞きました。返ってきた答えは、梅ケ丘以西は既に高架で工事が進められているので、地下化は無理であるというようなとんちんかんな答えでありました。世田谷区内全線を地下にすべきだというのが私の主張であります。しかしながら、今回、私が聞いたのは、区長自身もまさにこれからの懸案事項としている梅ケ丘以東下北沢地域の鉄道構造について、地下化が可能であるというレポートが出ていながら、この地域については旧来の開削工法のみしか検討されていないことはなぜなのかということであり、平成三年度をベースにした報告書が本年の八月になって初めて東京都に報告したとされている以上、駅部分のシールド工法が実際に使われていることや、シールドとシールドとの間が七十センチメートルまで接近しても工事可能とする工法など、また格別に格安な工法など、次々と報告されている最近の地下鉄技術の進歩に興味はないのですかという意味で聞いたのでありました。

 昭和六十年に発表された世田谷区の川上委員会の報告書でさえ、シールド工法と開削工法の構造比較を行い、費用比較までしているにもかかわらず、平成三年度から三年間かけて行われたはずの世田谷区調査で、下北沢地域のシールド工法の可能性が選択肢にもなっておらず、ましてや、高架、地下の費用比較に一切触れていないこと自体、不可解なことであります。

 ちなみに、川上委員会では、シールドとシールドとの間はシールドの直径分、間隔を置かなければならないとの前提で、上部空間の買収費まで計上しており、そのことによって、開削工法よりもシールド工法の方が事業費が高いという常識外れの結論になっているのであります。ところが、この費用比較の問題は、都市整備領域の決算審査の間にも問いただそうとしましたが、区長のとんちんかんな答え以上に、担当者の答えはもっととんちんかんなものでした。とんちんかんというよりも、故意にはぐらかして答えなかったということでありましょう。その際、委員長に答弁への注意を促しましたが、一切対応していただけませんでした。

 いずれにせよ、小田急線の喜多見−梅ケ丘駅付近の連続立体事業の実際の工事に関する世田谷区の予算支出は平成七年度から始まっております。本来は喜多見から東北沢までを一括して事業化するはずのものを、故意に分断し、下北沢の地下化について可能であることを、世田谷区自身、平成三年の段階で調査をしておきながら、これを伏せてきたということは、犯罪的であります。下北沢以東の地下化の可能性が平成三年の段階で示されていたならば、梅ケ丘から成城の手前まで高架にするというむちゃな計画はとんざしたことは、だれの目にも明らかであります。

 また、行政は、小田急事業について、裁判の原告である市民側から、高架よりも地下化の方が事業費として三分の一で済むとの具体的な指摘をされているわけですから、七年度の決算報告を行うに当たっては、少なくともこの指摘に対する弁明を表明する義務があります。なぜならば、区議会の地下化決議にもかかわらず、区が東京都に同調して高架事業を推進することに決した背景は、高架の方が事業費が安いとの一点があったからであります。基本的な事項で市民への説明を怠っている以上、七年度決算を認めるわけにはまいりません。

 さて、本決算議案の懸案となった緑地保全問題を二つの観点からお聞きいたしました。第一には、三十八億円の瀬田や十三億円の弦巻の緑地の取得が妥当なものであるかということであります。第二には、世田谷区は緑の確保をにしきの御旗にしておりますが、それでは、世田谷区の緑を守る区の施策はまともにやられているのかということであります。

 弦巻の土地問題については、百条委員会設置を要求する「世田谷区の土地取得の調査に関する決議」の賛成討論の中で明らかにするつもりですので、ここでは本質論だけ申し上げておきます。この問題の本質は、二十五億もの不良債権の処理に、銀行などと行政が結託し、緑地保全を名目に区議会が手玉にとられたということであります。この事件は、千葉選出の井奥代議士が関与し、区長も訪問を受け、その上で、区長室長や建設部長が帝国ホテルや向島の料亭で接待を受けているという事件であります。

 瀬田四丁目の小坂邸の緑地取得問題でも、小坂徳三郎氏が平成七年七月五日に区長室を訪ねております。小坂邸の方は、国分寺崖線上の緑を守ることがその名目になっておりますが、決算委員会の区民生活領域で私の質問で明らかになったことは、この土地が岡本静嘉堂緑地のすぐわきの傾斜緑地で、樹林地であるにもかかわらず、所有者から区への土地売却の話が持ち上がるまで、緑地保全の対策を講ずるためには何ら特別な対策を区の担当者はとろうとしていなかったということであります。ところが、売却話が持ち上がるや、区は緑地指定を都市計画決定に持ち込む手続を進め、一方で、小坂邸の土地の所有法人であり、小坂徳三郎氏が親族で役員を務める日栄興産株式会社は、小坂憲次氏など政界に関係する親族は役員を十月三十一日でやめて、小坂徳三郎氏の子息である小坂正亮氏が代表取締役となり、岩波建設株式会社社長が役員に参加することで一新し、その後、行政の取得が前提となって、この土地を抵当にして岩波建設株式会社が二十五億円もの金を八千代銀行から借りることに成功したのであります。

 結局、この土地は、債務者となっていた岩波建設株式会社が日栄興産株式会社を吸収合併することによって岩波建設株式会社のものとなり、当該土地の二十五億円もの抵当権は、所有法人の吸収合併の際に株価を安くするのに役立ち、また、土地取引からは小坂一族は後景に退くことになっているのであります。世に言うマネーロンダリングの手法であります。この間、小坂徳三郎氏は亡くなっております。二十五億円もの債務がどのように使われたかはいざ知らず、相続問題の処理も含めて、行政が緑地としてのこの土地を取得するという担保があってこそ、初めて可能になる手法ではないでしょうか。

 世田谷の緑行政全般を考えても不可解なことはたくさんあります。自然的環境の保護及び回復に関する条例では、二百五十平米以上の建築・開発行為の際には計画書を提出することが義務づけられておりますが、その統計は届けられたもののみに限定され、二百五十平米以上の建築・開発行為が一体どのくらいあったのかさえ担当部署がつかんでいないありさまでありますし、建築基準法違反や風致地区条例違反についても、緑を守るという観点からはほど遠い処理姿勢であります。それでいて、有力者や銀行絡みの土地は緑を名目に積極的に取得をする。緑の保全を緑地買収のみで行うことはとても不可能なことでありますし、間違った手法だと言わなければなりません。この観点からも、七年度決算に反対であります。

 国士舘坂の土地開発公社の先行買収や、ここの道路建設に絡む便宜的都市計画道路への切りかえによる国庫補助金取得問題なども、極めて大きな問題を含んでおります。

 これまで例示した問題は、一般会計にかかわるものでありますが、こういった疑惑がある以上、世田谷区政の決算全体に不信の念を抱かざるを得ないものであります。

 私は、十月五日に社会民主党を離党し、十月七日に無党派市民という一人会派を旗上げいたしました。社会民主党に属している限りは、区長と党との政策協定もあり、限定的な批判にとどめておきましたが、今や無党派市民として自由な目で世田谷区政を見詰め、監視し、批判していく決意であります。その意味も含め、決算認定についてはすべて反対することを申し上げて、私の意見の開陳といたします。

○(石塚一信議長) 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。