平成18年第4回定例会(自1128日 至 12 7日)

世田谷区議会会議録

2006年11月30日 一般質問


○菅沼つとむ 議長 次に、四十八番木下泰之議員。
   〔四十八番木下泰之議員登壇〕

◆四十八番(木下泰之 議員) 最初に、戦後初の東京の都市計画策定と下北沢についてお聞きいたします。
 これは東京都が戦後最初に策定した一九四六年の都市計画の図絵です。この都市計画決定の際に下北沢で問題になっている補助五四号線は、渋谷から環状七号線までの計画線が引かれ、そのほか現在の幹線道路の骨格を決めています。本日この都市計画図を皆さんにお見せするのは、当時の計画には、道路計画とは別に大規模な緑地計画が存在したことを示したいからであります。都心から世田谷にかけての緑地の配置をよく見てもらいたいと思います。
 ここは明治神宮であり、代々木公園です。小田急線は新宿から出て代々木公園の中を通っている形になっておりますが、これは小田急線を六十メートルもの緑地で包み込む都市計画となっているからであります。ここは環七でありますけれども、届きませんが、羽根木公園のところあたりまで小田急線は六十メートルの緑地帯の中を行く形になっています。この羽根木公園のあたりから、今度は……(「羽根木はどこ」と呼ぶ者あり)羽根木公園がその辺です。今度は環状七号線に沿って緑地帯が南下しております。幅は百メートルから百五十メートルはあるでしょうか。松陰神社を包み込み、世田谷線を南に越えて弦巻、上馬まで来ると、今度は東に向かい環状七号線を越え、二四六を越えると、今の世田谷公園あたりには代々木公園規模の公園が配置してあり、これからまた六十メートルほどの幅を行く東横線の緑地とつながり、ここから山手線を包む緑地を経て代々木公園まで戻っていきます。
 この都市計画を策定したのは、日本の都市計画の草分け的存在であり、都市計画分野での芥川賞とも言われる石川賞の名でも知られている石川栄耀氏でした。ところが、この緑地計画は、今は見る影がありません。その後の都市計画変更で、当局者が道路計画だけは残したものの、消し去ってしまったからであります。
 敗戦の翌年のモータリゼーションが発達していないときです。当時の主な交通公害発生源となっていた高速鉄道を幅六十メートルもの緑地に包み込み、広大な公園や緑地間の緑のコリドーとして企画したこの都市計画はすばらしいものと言わなければなりません。石川栄耀氏のこの計画の考え方からすれば、住宅地のすぐそばに大量の車が走る現在の幹線道路や補助幹線をそのままつくるという発想はあり得ないということであったと考えます。その後、緑地計画が消え去り、道路のみが残ったというのが現行の都市計画であるわけです。
 率直なご感想をお聞きしたいと思います。区長はどのように評価されるのか。区長は、戦災復興計画に立ち返って、補助五四号線問題、小田急線問題について考えたことはおありかどうかお聞きいたします。
 石川氏の都市計画から考えれば、既に市街地化した下北沢にあえて交通公害を呼び込む補助五四号線は通すべきではないと考えるが、いかがか。
 区長は、昨日、他会派に緑化を積極的に行うと答弁いたしましたが、私は、小田急線の跡地は、戦災復興院の発想を生かし、今こそ鉄道が地下に潜る下北沢や今後の京王電鉄の連続立体交差事業では、鉄道を地下にして地上を緑化し、都市における生態コリドーと防火緑地を目指すべきであると考えるけれども、いかがお考えかお聞かせください。
 次に、行政のやらせは許されるのかということをお聞きしたいと思います。
 先般発覚した政府主催の教育改革タウンミーティングでのやらせ発言について、区長はどう思われたか、まずはお聞かせください。その上で、下北沢の地区計画での区職員による賛成意見誘導の文書作成とその配付について改めてお聞きいたします。
 前回の議会や委員会で区職員が賛成意見書のひな形を作成し、少なくとも九つの商店街と町会及び街づくり懇談会の役員に渡したという事実が明らかになりました。そのことをもって東郷都市計画審議会長は、行政の中立性が疑われると記者会見で表明いたしました。この会長意見をどう受けとめるかについても、区長、答えていただきたい。
 関連して、下北沢街づくり懇談会への専門家派遣の問題についてお聞きいたします。
 今回の地区計画の問題にせよ、補助五四号線や区画街路一〇号線問題にせよ、何かというと世田谷区は二十年間も活動してきた下北沢街づくり懇談会と相談して決めたのだということを繰り返し言っております。しかしながら、この下北沢街づくり懇談会は、都市整備公社が下北沢の再開発のために行政側の声がけで組織されたのがその起こりであって、決して住民の自発的組織などではありません。当初は事務局を都市整備公社が、後に世田谷区の街づくり課が受け、その後、事務補佐というふうに名前を変えながらも、世田谷区が再開発を行うためにてこ入れを続けてきた組織なのであります。
 廃棄したからといって区からは一部しか公開されませんでしたが、この懇談会の議事録を読むと、何度か会員の中から地域住民の幅広い参加を求める協議会にしたらどうかという提案が出てきます。そのたびに出席している区の役人から懇談会のままでよいとの誘導発言が出てきて、これを抑え込んでおります。地域住民に広く参加の自由を保障することを原理的に求められる街づくり協議会ではなしに、参加するに当たって、町会役員や商店街役員の推薦を必要とし、傍聴も認めない懇談会のままにしてきたのは、区のこの対応に負っております。それでいて区は、この下北沢街づくり懇談会を街づくり条例で規定している街づくり協議会と同等だと位置づけていると言い、この団体には平成十年、つまり一九九八年より現在に至るまで、街づくり条例に基づく専門家派遣を行っております。前田裕幸さんというコンサルタントがずうっと派遣されております。
 さて、この方はコンサルタント会社ユーマックの取締役であります。ところで、このコンサルタント会社ユーマックは、平成十五年には下北沢駅周辺地区地区街づくり計画素案説明図書等関係資料作成業務委託ほかを受注、平成十六年には下北沢駅周辺地区地区計画策定のための調査委託を、十七年には下北沢駅周辺地区地区計画案等作成委託を、そして現在平成十八年は下北沢駅周辺地区地区計画策定関連業務委託を区から受けて業務を行っているのであります。
 つまり、行政側から条例上の街づくり計画や法定の地区計画の策定作業の受注を受けている同じ会社のコンサルタントが懇談会に世田谷区から派遣され続けているわけであります。
 ユーマックの平成十八年度の世田谷区からの業務委託には、五月に行われた地区計画原案説明会や住民への周知作業や街づくり通信の原稿の作成まで含まれております。そして、平成十八年度の街づくり専門家派遣決定通知書には第二項に「街づくり専門家が行なうこと」という欄があります。この欄に「地区計画の実現にむけ、技術的・専門的な指導や助言を行なう」というふうに書かれております。これから策定しようとする地区計画の実現は区の方針であって、このような目的のコンサルタントを懇談会が受け入れること自体、自主性を放棄した御用組織のあかしであると言うべきであります。
 区長にお伺いします。区が提示してきた地区計画策定について、地域住民の賛否が分かれている中で、しかも日本建築学会の都市計画委員会として西村幸夫委員長が反対意見を表明するほどに、都市計画専門家からもこの地区計画策定に批判がある中で、地区計画推進を前提にこのような目的で専門家派遣を行うことは許されません。区と商店街、町会の一部幹部の癒着そのものであり、街づくり条例制定の意思にも反することです。これをまちづくりを語った行政のやらせと言わずして何と言えばいいのでしょうか。お答えください。
 もう一つ区長にお聞きしておきましょう。地区計画の都市計画法十七条縦覧の際には区のひな形の提示もあり、そのひな形を使ったり、類似した文書を大量に使って全体の意見書千五十八通のうち四百二十九通が賛成で、反対が六百二十九であったのに対して、同時に東京都による縦覧が行われた用途地域については賛成意見がゼロ、反対が三百五十余という結果でした。にもかかわらず、都の都市計画審議会はこれを通してしまいましたが、極めて不当なことです。区が加担しなければゼロということなのでしょうが、この用途地域の変更について、十七条の意見書の賛成ゼロという数字について区としての評価をお聞かせいただきたい。
 このようなやらせ体制の中で、広範な住民の意見を拾うこともせず、強引に策定する地区計画は無効であります。地区計画案を撤回するとともに、道路計画を見直すことを求めるものです。
 時間が足りませんので、残りは後に回します。(拍手)

◎金澤 都市整備部長 昭和二十一年に都市計画決定された戦災復興院の都市計画についてのお尋ねですが、戦災復興院の都市計画は戦後の都市復興計画の基礎となる土地区画整理事業を中心とした道路や緑地等計画で、戦前からの都市計画に検討を加え、策定したものでございます。その後、時代の要請によりさまざまな変遷を経て、現在の計画になっております。
 続きまして、専門家派遣についてでございますが、専門家派遣につきましては、街づくり条例に基づきまして適正に派遣したものでございます。
 以上でございます。

◎安水 生活拠点整備担当部長 私からは、戦災復興院の計画で小田急問題について考えたことがあるかについてお考えいたします。
 現在進めている補助五四号線等の都市計画でございますけれども、これは時代の要請によりまして変更してきたものでございまして、現在の下北沢の持つ課題に対応していると認識しております。
 もう一点、戦災復興院の計画の話でございまして、今後、緑道にしたらどうかというようなお話でございますけれども、平成十七年にまとめました上部利用方針では、駅前広場や駐車場、ポケットパーク、通路等の施設を位置づけております。区といたしましては、今後の地元の意向や区の財政負担などを考慮しながら、土地所有者である小田急電鉄等関係機関と協議を行い、上部利用方針の具体化を図っていきたいと考えております。
 続きまして、行政のやらせは許されるのかというようなことで、政府主催の教育改革タウンミーティング話とそれから地区計画への賛成誘導についてでございます。
 議員ご指摘の政府主催のタウンミーティングにつきましては、区としてはコメントする立場にはございません。本地区計画につきましては、これまでにもたびたびご説明しておりますけれども、賛成誘導した事実はございません。
 続きまして、行政のやらせといいましょうか、そういうことで賛成意見ゼロの評価、そういう中で最後に賛成意見、これは用途変更の関係でございますが、賛成意見ゼロの評価についてということでございました。
 用途地域の変更につきましては、東京都所管でありますことから、寄せられた意見につきましては、東京都都市計画審議会において東京都が見解を示しております。用途地域の決定につきましては、去る十一月十六日に東京都都市計画審議会により承認されたと伺っております。
 以上でございます。

○菅沼つとむ 議長 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。
 これで一般質問は終了いたしました。
 ここでしばらく休憩いたします。
    午後三時四十三分休憩