2003年3月18日予算特別委員会質疑<福祉保健委員会所管>


平成15年  3月 予算特別委員会
平成十五年予算特別委員会
予算特別委員会会議録第五号
日 時  平成十五年三月十八日(火曜日)
場 所  大会議室

○宍戸 委員長 引き続きまして、無党派市民、どうぞ。

◆ 木下 委員 基本健康診査について、昨年、下条さんと一緒にここで質問したわけですけれども、それで、ちょっとお尋ねしておきたいことがあります。ことしは契約は幾らですか。

◎阿部 世田谷保健所副参事 一点単価という形でお答えいたします。十三・七円でございます。

◆ 木下 委員 ことしは十三・七円ですか。来年度は。

◎阿部 世田谷保健所副参事 来年度は十三・四円を予定してございます。

◆ 木下 委員 その三十銭が下がった根拠というのは何ですか。

◎阿部 世田谷保健所副参事 私どもは、この契約の締結に当たりまして諸般の事情を考慮していきながら、十三・四円という形で契約を結ぶ予定でございます。

◆ 木下 委員 そうしますと、例えば十円でやるというお医者さんが出てきたら、少数でもそことは契約しますか。

◎須田 世田谷保健所副所長 十円のところと契約するかというお話でございますけれども、今、世田谷区では、お話し申し上げましたような単価でございます。これは一医療機関との契約ということではございませんで、やはり多くの区民の方々が身近なところで受けていただけるようにということで、できるだけ多くの医療機関と契約をさせていただこうということで、それを医師会を通じて契約を行っているということでございます。その中での両者の合意がその金額でございます。

◆ 木下 委員 これは独占体と契約を結ぶのは、ある種の圧力団体との交渉になるわけですよ。それで三十銭ずつ下げたということだけれども、これはほかでは十円でやっているところもあるわけだから、これをぶっかくためには、十円でやるという少数のお医者さんがいたら、そことも契約すべきだし、医師会とはやらずに、世田谷のお医者さんに十円でやってくださいと呼びかけて、それで契約を結べばいいじゃないですか。そういう方式をなぜとらないんですか。

◎須田 世田谷保健所副所長 今、申し上げましたけれども、医師会に加入している医療機関が約八十数%ございます。それ以外のところと個別にということになりますと、それでもやはり百何十カ所ということがございますので、事務的な問題、それから、やはり区民の方々の利便性の面から見て、その両方を兼ね合わせてどういうふうに判断するかということになろうかと思っております。

◆ 木下 委員 日ごろ規制緩和とかいろいろ自民党さんが言っているわけですよね。大事なことは、こういうところで規制緩和をやらなかったら、解決がつかないんじゃないですか。つまり、こういったところで独占体である医師会をぶっかいて、とにかく十円でやるところを全部募ってやる、そのくらいのことをやらなかったら医療改革なんてできないですよ。そのことを強く申し上げておきます。

 それで、バリアフリーについてお尋ねしたいと思います。

 今、バリアフリーという言葉が世田谷区では非常に盛んに使われておりますけれども、最近、ユニバーサルデザインという言葉も出てきているわけですが、バリアフリーとの絡みで、ユニバーサルデザインについてどういうお考えをお持ちですか。

◎金澤 計画・整備担当課長 バリアフリーもユニバーサルデザインも、ノーマライゼーション理念の具体化を目指すという点では同じものだというふうに理解しております。バリアフリーが既にある障壁を除去するという意味合いが強いのに対しまして、ユニバーサルデザインは、初めからすべての人が使いやすいものをつくり出すといった考え方で、より広い考え方ということが言えると思います。

◆ 木下 委員 ただ、ユニバーサルデザインが出てきた背景を見ますと、そういう今言ったような平板な話じゃないんですね。ロナルド・メイスというみずから障害者だった方が、すべての人が人生のある時点で何らかの障害を持つことを発想の起点として出した概念なんですね。

 アメリカあたりでは、最近、バリアフリーという言葉を福祉関係者の間では使わなくなっているそうなんですよ。むしろ、ユニバーサルデザインという言葉にすべて置きかえてきている。それは考え方が飛躍的に変わっているということなんですね。ユニバーサルデザインというのは、要するに、施しを付すような福祉の概念ではなくて、まさに障害者の少数者の要求を満たすということがむしろすべての人――デザイン・フォー・オールですね。そういった形でデザインをしていこうと、そういうデザインから始まった概念ですけれども、これはただ単に物だけじゃなくて、福祉の考え方を抜本的に変える、やはりそういうものとしてとらえて、ユニバーサルデザインということをこれから行政の柱に据えていかなければいけないのじゃないか、そういうふうに思いますが、いかが思いますか。

◎金澤 計画・整備担当課長 福祉の考え方で委員からお話がございましたが、今、福祉の方では、社会福祉基礎構造改革、またノーマライゼーション理念の推進ということが大きくあると思います。これはいずれも特定の人に対して行政が福祉を措置していくという考え方から、必要な人が必要なサービスを受ける、だれもが福祉的な環境の中で当たり前の地域の中で生きていく、こういったものを目指しているわけでございます。その意味では、今、委員のおっしゃったユニバーサルデザインの考え方と同様だと考えております。

◆ 木下 委員 やはりバリアフリーとユニバーサルデザインのニュアンスの違い、なぜアメリカあたりでバリアフリーに置きかわってユニバーサルデザインという言葉の方が使われ始めているのか、そのことについてはきちんと把握されないといけないと思います。  私はインターネットでいろいろ調べましたけれども、この背景には、ユニバーサルデザインという考え方はむしろ公民的な考え方から発想している。つまり、福祉という概念よりも、アメリカのまさに黒人の参政権を要求する公民権運動がありました。そういう側から発想しているという極めて重要な指摘があります。そういったことを十分認識されておやりになった方がいいと思います。

 そして、ハートビル法の関係で、つい最近、都市整備の方で議論になったんですけれども、例えば、廊下を広くとるようなバリアフリーに貢献するような建物については、容積率を緩和するというような話があったわけです。しかし、これはむしろユニバーサルデザインの考え方からすれば、そういう容積率の緩和とは別物なはずですね。デザイン・フォー・オールなんですから、まさにそれをそういう施策として、ある種のボーナスなどは与えずにきちんとやっていく、そういったことが必要だと思います。

 それから、聴覚障害者の集会がありまして、それに招かれて、何かしゃべれということでいろいろ勉強もしたんですけれども、そのときに気がついたことがあります。聴覚障害者の参政権の問題ですが、私は、参政権というよりも、非参政権も含めてきちんと保障するような選挙政策が必要だというふうに考えました。

 そういうふうに考えたところ、例えば文書質問などをきちんと議会の中でできるようなことまでしておかなければ、聴覚障害者が議員になることすらできないと思うんですね。そういうことを考えていきますと、実は聴覚障害者のためにそういうふうに考えていきますと、非常に丁寧に議会で活動するために文書質問というものが必須の条件になってくるわけです。そうやって聴覚障害者が参政権を得ることによって、すべての人たちが集まり、すべての人にとっても政治がわかりやすくなっていく。そういうことも含めて、ユニバーサルデザインというのを考えられると思うんですね。

 ですから、私は、ユニバーサルデザインという言葉が一つの大きなキーワードとして、バリアフリーを超える福祉の施策にもなり得るというふうに思いますので、ぜひその辺の認識を――ただ単に言葉の違いだというような認識ではなくて、やはり進化した福祉の概念をもっとすべての人に拡張していく、また、少数者が新たな発見をして、そのことによってそれがすべての人のためになっていく、そういう概念としてユニバーサルデザインができてきたし、そういったものとして今アメリカで普及してきている。そして、日本でもそれを取り入れなければならないのではないか、そういうふうに思いますので、ぜひその辺の認識は深めていただきたい。そのことを申し上げておきます。

○宍戸 委員長 以上で無党派市民の質疑は終わりました。

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