平成15年第1回定例会(自33日 至328日)

世田谷区議会会議録

2003年3月5日 一般質問


○新田勝己 議長 次に、五番木下泰之議員。

   〔五番木下泰之議員登壇〕

◆五番( 木下泰之 議員) 今期最後の一般質問となりました。通告に基づき質問を行います。

 今春、大場区長はおやめになるわけでありますが、区政を去るに当たって、一連の小田急問題に対する経過、とりわけ国の高架事業認可の取り消し命令を下した東京地方裁判所の判決に対する今の率直なご見解、ご感想をお聞きしておきたいと思います。

 世田谷区議会が一九七〇年と一九七三年の二度にわたり全会派で小田急線の地下化決議を上げているように、かつては世田谷の区内高速鉄道はすべて地下にという方針が区民の合意でありました。そして一九七五年に社共、社公のブリッジ共闘によるいわゆる革新区長として登場した大場区長、あなたは小田急線の地下化推進運動の側にいて、一九七八年の当時の地下化推進運動の十周年の記念集会に出席して祝辞も述べられております。

 ところが、その後あなたは変節されました。オール与党のすべての既存政党勢力が、バブルのころには事実上宗旨がえをして、高架推進に回ってしまいました。そのきっかけをつくったのが、世田谷区がつくりました小田急沿線街づくり研究会、いわゆる川上委員会の一九八六年のレポートであったことはこの本会議でも何度か取り上げました。

 高架と地下を比較すると、東北沢〜喜多見間で地下方式は高架方式の一・七倍から一・八倍、下北沢地域だけで一・五倍というのが当時のレポートの結論でありました。この結論が全くのうそであったことは、認可取り消し訴訟の判決のみならず、行政みずからが下北沢の地下化を決める際の調査結果によって証明してしまっているということも、この本会議で何度か取り上げてまいりました。

 かつて世田谷区は、東京都の方向性や国の方向性を理由に、地下化推進から高架やむなしというふうに変わってきたかのように印象づけ、免罪符をみずからに与えてきましたが、結局、川上委員会が果たしてきた役割からして、世田谷区が高架推進のまさに先兵の役割を果たしてきたというのが、小田急問題に関する私の総括であります。

 そこでお聞きしたいと思います。区長は小田急線の問題についてどのようにお考えを整理されているのか、総括されているのか。国の認可まで否定されてしまった事件です。東京地裁の判決から一年半、控訴審の結論はこれからであります。控訴審では明らかに国側が追い詰められております。区政を去るに当たって率直な意見をお聞きしておきたいと思います。

 次に、小田急線の工事騒音についてお聞きいたします。

 九月の決算議会のときから小田急線の工事騒音の問題は取り上げてまいりましたけれども、昨年十一月二十八日に至って、沿線住民が、せめて今後の夜間工事、休日工事はやめてくれとの仮処分申請を裁判所に提出いたしました。その審尋が現在続いているわけでありますが、この審尋を通じて、夜間工事、休日工事の実態が浮かび上がってまいりました。

 沿線住民が突きとめた事実は、この間の夜間・休日工事はほとんどが昼間にできる工事であって、国の裁判敗訴以降、既成事実を積み上げようと突貫工事をやっていたにすぎないということなのであります。そもそも本当に夜間にやらなければならない工事というのは極めて少ないというのが、仮処分弁護団が依頼した専門家の鑑定であります。

 小田急の工事では、施工者側が提出した資料によっても、一カ月のうちに実に二十一日間も夜間工事が行われております。しかし、専門家によれば、JRの複々線化工事でもこのようなことはあり得ないということなのであります。せんじ詰めて言えば、本当に夜間行わなければならない工事は線路の切りかえ作業ぐらいなものであって、仮線への切りかえは本来的には二カ所のみでありますから、一日あるいは二日で済むはずのものであります。そのほかは工事手順、作業手順を変えていけば、すべて昼間に行うことができるものだということであります。

 ご承知のように、小田急線の事業は都条例によりアセスが義務づけられている事業であります。夜間工事は極力行わないというのがアセスが通った際の工事実施の条件であり、住民との約束でもあったわけであります。工事のスピードを早めるため、昼にできる工事を夜間も実施していたというのであれば、これはまさに犯罪的行為と言わざるを得ません。

 そこで、区民の健康と生活を守る責務のある区の担当者にお聞きいたします。現工事区間の夜間工事のほとんどが避けられたのではないか。工事内容を検討したのかどうかを含めてお伺いしたいと思います。

 特定工事騒音の届け出は、他地域では提出されているのに、梅丘と豪徳寺地域の工事では昨年までは全く提出されておりませんでした。仮処分の提訴がされてから、一月になって昼間の特定工事騒音の届け出が出されるようになりましたが、それ以前にも特定工事に該当する工事は行われていたにもかかわらず、届け出を怠っていたのではないか。これについての見解をお伺いいたします。突貫工事は許されません。環境アセスでの約束事を遵守させ、不必要な夜間工事、休日工事を行わせないようにするために、今後、区としてどのように対処していくのかをお伺いいたします。

 下北沢の事業についても環境アセスが行われましたが、地下化のスパンが極めて短いこともあって、現計画では開削工法を採用し、騒音をばらまく工事が予想されておりますが、下北沢地区の環境アセスに関しどの程度の情報を把握していらしたのか。実際の工法、工事期間、工事騒音、とりわけ夜間騒音、休日騒音についてどのように把握しているのか、お伺いしておきます。

 下北沢の都市計画、まちづくりについては、訴訟との関係のみお聞きしておきます。

 第一に、小田急線訴訟と下北沢地区の都市計画についてお聞きいたします。

 下北沢は、鉄道の構造形式の変更と五四号線の変更及び世田谷区画街路一〇号線の新規都市計画決定を本年一月三十一日に同時に行いました。しかし、事業認可取り消し訴訟控訴審継続中の拙速な都市計画決定は誤りではないかということであります。一審では行政側は負けているわけであります。二審の裁判をどのように考えているのでしょうか。控訴審の裁判は国側が大分追い込められていると私は考えておりますが、担当者はどのような認識をお持ちなのでしょうか。

 最近、原発もんじゅの認可無効の高裁判決が出されました。従来は考えられなかったことであります。国立のマンションの高層階取り壊しの命令の判決もあります。裁判所の姿勢は確実に変わっております。二審でも行政が負けた場合、どうされるのか。だれが責任をおとりになるのか、お伺いしておきます。今後の事業認可もどうされるのか、訴訟との関係でお聞きしておきます。

 以上、壇上からの質問とさせていただきます。

   〔大場区長登壇〕

◎大場 区長 東京地裁の判決は一昨年十月のことだったと記憶しておりますが、国は判決を不服として控訴したと聞いております。一審判決は確定していないものと認識しております。一審判決の後、大分時間もたっておりますので、いずれ控訴審において的確な判断が下されるものと考えておりますので、ご承知おき願いたいと思います。

◎冨永 環境総合対策室長 小田急線の工事騒音関連に関しまして随時ご答弁申し上げます。

 まず、ご指摘の夜間工事の件につきましては、ホーム撤去工事、駅コンコース工事、東急世田谷線との交差部での鉄橋の台等の撤去などを行ったということを把握いたしております。これらの工事は、鉄道の正常運行確保や利用客等の安全に必要なため、夜間作業として行ったものと認識しているところでございます。区としましては、夜間工事について今後も必要最小限にとどめるように求め、でき得る限りの防音対策を講ずるとともに、周辺住民への周知はもとより、苦情窓口の速やか、かつ誠意ある対応を励行するよう要請してまいります。

 次に、特定工事の届け出に関するご質問がございました。

 本工事におきましては、昨年十月、事業者及び施工者を庁舎に呼び、確認したところ、それぞれの工区ごとに法令に基づく届け出は行っているとの報告を受けているところでございます。また、その後、十数回の特定工事の届け出が行われておりますが、その都度、法令遵守の注意を喚起してまいりました。いずれにいたしましても、事業者及び施工者には、今後とも関係法令に基づく届け出の遵守、徹底を指導してまいります。

 また、下北沢地区の環境アセスに関しましてご質問ございましたが、ご指摘の工事騒音等につきましては、環境影響評価書案に係る見解書に対し、昨年八月、関係区長として、騒音、振動に伴う夜間工事は必要最小限にとどめること。なお、やむを得ず夜間工事を行う際には、住民の理解が得られるように努めること等を意見として主張しました。その結果、昨年十二月の最終の環境影響評価書におきましては、鉄道の運行上やむを得ず夜間作業をする場合があるが、その場合は事前に作業内容、作業時間を周辺住民の方々に周知するとともに、必要に応じた防音シート対策などを講ずると確約いたしております。本工事は予定として平成十六年度から平成二十五年度までと長期にわたっていますので、具体的な工程が決まり次第、また各年度の当初など節目節目に説明を求め、事業者及び施工者に対しては、最新の低騒音、低振動の工法や機械の積極的使用、関係住民への周知の徹底などはもとより、長時間連続する作業や夜間の作業を極力避け、周辺環境への負荷の低減等を図るよう、強く働きかけてまいりたいと思います。

 以上でございます。

◎佐藤 都市整備部長 同じく小田急線に関しまして、訴訟控訴審継続中の中の都市計画決定は誤りではないかというお話がございました。

 平成十三年十月に東京地裁が事業認可取り消しを命じた一審判決につきましては、先ほど区長からご答弁させていただきましたとおり、国は控訴しており、判決は確定しておりません。今回一月三十一日に告示されました代々木上原駅〜梅ケ丘駅までの区間の都市計画変更につきましては、現在、控訴審で係争中の世田谷代田駅〜喜多見駅間の連続立体交差事業とは異なる区間における都市計画変更であり、誤りではないものと認識しております。

 また、事業との関係もお話しございましたが、下北沢地区で控訴審で争われている世田谷代田駅〜喜多見駅間までの区間とは、先ほど言いましたが、異なるものでございます。下北沢地区の事業認可につきましても、控訴審とは関係なく認可の手続が進められるものと認識いたしております。

 以上でございます。

◆五番( 木下泰之 議員) 下北沢について、まだ裁判が確定していないから都市計画について決めることは間違いではないのだというふうにおっしゃいましたけれども、下北沢については、全線がシールド地下になった場合と、今の現計画ですね、短い区間を地下にした場合と比べると、自由度が全然違うんですよね。つまり長いスパンを地下シールドにした場合には、地元の商店街の方々が望んでいるような三線道地下の浅いところの地下道にすることだって不可能ではない、そういうこともあります。そもそもそういった三線道地下(注;浅深度地下の誤り。浅い地下の意味。議事録の表記が誤っている。木下注記)等の可能性等について、行政側としては公的な俎上に上げてきちっと検討したのかどうか、そのことについてお聞きしておきたいと思います。

 それから、区長は確定していないからいいんだと、それから的確な判断が下るかもしれないとおっしゃったけれども、もし負けた場合にはどういうふうにお考えになりますか。つまり今行政が、こういう裁判に負けたにもかかわらずどんどん突っ張ってやろうとしている。そのこと自体が、まさに行政が非常に信用されなくなっている、そういう時代に入っていく。そういうことを含めて倫理的な問題として、区長にはもう一度お答えいただきたい。お願いします。

   〔大場区長登壇〕

◎大場 区長 そのことにつきましては、その結果によりまして考えたいと、こういうふうに思っております。

◎佐藤 都市整備部長 計画決定に当たっては、事業者のサイドでいろいろ検討したとは思いますが、ご指摘のようなことを検討したかどうかは、資料を持ち合わせておりません。

 以上でございます。

◆五番( 木下泰之 議員) 夜間騒音については、要するに、すべてが必要な工事だったのかどうか、このことを精査することはすごく大事なんですね。つまり必要だ必要だと事業者が言いながら、本当は必要でないことをやっていた。そういった事実が明るみに出てきているわけですよ。それについてきちっと調べたかどうか。今後またきちっとそういうことを調べるおつもりはあるのかどうか、そのことについてお尋ねいたします。いかがですか。

◎冨永 環境総合対策室長 夜間工事につきましては、別に届け出義務がございませんけれども、事業者及び施工者は、特に夜間工事についてその都度、周辺の住民の方々に、工事概要、作業日程、作業時間等のお知らせをしていると聞いております。また、私どもにも事前にその作業日程等の通知はいただいておりますので、議員がおっしゃるようなことはないのではないかと、そのように私たちは考えております。(「調べていないじゃないか、それは。ちゃんと調べなさいよ」と呼ぶ者あり)

○新田勝己 議長 静かにしてください。

 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。

 これで一般質問は終了いたしました。
 ここでしばらく休憩いたします。
    午後四時五十三分休憩