平成14年第3回定例会(自918日 至1018日)

世田谷区議会会議録

2002年10月18日 文学館用建物の取得についての反対討論


○新田勝己 議長 これより意見に入ります。
 なお、意見についての発言時間は、議事の都合により十分以内といたします。
 発言通告に基づき発言を許します。
 五番木下泰之議員。
   〔五番木下泰之議員登壇〕


◆五番(木下泰之 議員) 文学館用建物の取得について、反対の立場から討論を行います。

 私は文学は基本的に読むこと、書くことが基本であるというふうに考えます。したがって、世田谷区が本当に文学を大事にする、あるいは文芸を振興するというおつもりでしたら、文学館を毎年二億七千万円もの高い金を使って借りたり、今度は二十九億もの金を払って買い取ったりすることよりも、もっと大事なことがあるのではないかというふうに考えております。

 文学館の人件費を含めた運営経費は年間三億円だそうですが、一体このような莫大な金をかける必要がどこにあるというのでしょうか。私はかくも莫大な費用をかける必要はないというふうに考えます。その経費の一部を図書館に移し、世田谷にゆかりのある作家のビジュアルな展示は、図書館の一角にコーナーを設けて行うようにしてはどうかと提案したいと思います。

 したがって、文学館の運営自体を廃止すべきであるというふうに私は考えます。そのかわり、世田谷文学賞をもっと魅力のあるもの、意義あるものに変えていく努力をするべきであるというふうに思うのであります。文学賞の充実というのであれば、それほど経費のかかることではありません。むしろ賞の企画力と応募してくれる方々の人材にかかっていると言うべきであります。

 現在の文学賞においても、その選考委員は、小説の三田誠広氏を初め優秀な人材がそろっており、工夫次第で影響力のある文学賞に変身させることは可能なはずであります。文京区で最近、文の京文芸賞なるものをつくりましたけれども、これは受賞者が講談社から出版もできる、そういうようなことで非常に注目も浴びております。そういった文学賞についての工夫をするべきだというふうに考えております。

 現在の文学賞は、しかも、区内在住、在勤、在学の者に限られておりますけれども、応募は世田谷区内に限るべきではないと考えます。ノーベル賞にしたって、全世界からいろんな人材について賞を与えてあげている。世田谷の文学賞も、やはり日本全国から人材を発掘するというような、そういう企画力を持ってきちっと運営すれば、文学館の一つを構えるよりも、よっぽど世田谷区の文化を発信することもできるし、また、実際に文学を志す人の役にも立つ、そういうふうに思っております。

 いずれにせよ、文学は紙と鉛筆で成立する芸術であります。最近ではパソコンが文学の可能性をさらに広げております。作家の使ったペンであるとか、原稿とか、眼鏡を大事そうに展示することが、果たして意味のあることであろうかと、私は各地の文学館をのぞいたときにつくづく思います。それこそインターネット展示で十分なはずであります。

 また、世田谷区の文学館の展示図書は原則貸し出し禁止というふうに聞いております。貸し出し禁止の文学書など、本を本当に愛好する者にとって意味があるでしょうか、読まれてこその文学であります。文学館のすべての蔵書は図書館に移し、積極的に貸し出し対象とすべきであります。

 文学はテキストにこそ価値があり、読まれることによってこそ生きるのだということを申し上げて、文学館用建物取得についての反対の討論といたします。