平成14年第2回定例会(自612日 至620 日)

世田谷区議会会議録

2002年6月20日 反政党改革派(下条忠雄);世田谷区安全安心まちづくり条例(案)及び共産党修正案への反対討論


○新田勝己 議長 次に、十六番下条忠雄議員。
   〔十六番下条忠雄議員登壇〕


◆十六番(下条忠雄 議員) 安全安心まちづくり条例については、一般質問で、憲法だとか法律を守る立場から問題を指摘しまして、撤回を求めたわけでありますが、区は拒否をしました。まことに残念、遺憾であります。
 きょうは、共産党の方も含めて、反対の立場で、別の観点から意見を申し上げます。
 オウム真理教信者の集団居住、拠点化を阻止する上で、もはや司法判断に期待することはできない。私は、みずからの町はみずからが守るという強い決意を持って、安全安心まちづくり条例を制定するなどあらゆる手段を講じ、安心して暮らせる地域社会を取り戻すため、八十万区民、区議会とともに闘っていく。労働組合の闘争宣言というか、檄文というか、ちょっと先進的な文化都市を標榜する世田谷区長の裁判に負けたときのコメントとは思えません。それにしても、全体の奉仕者であって、住民に対するサービス機関である地方自治体の長としては、私はこのコメントはいかがなものかと思います。
 そこで、ちょっと検証したいと思いますが、第一に、司法判断に期待することはできないから、みずから守る、実力闘争に移行する。日本はやせても枯れても法治国家でありますから、あらゆるトラブルは最終的には裁判所で決着することになっているのであります。裁判に負けて、そして区民の血税から慰謝料まで払わされる羽目になって、転入届を受理させられて、法的に決着したものを、条例を制定して、補助金をまき、その他あらゆる手段を講じて居住を阻止する、これは法の支配に対する挑戦であります。同時に、三権分立、すなわち立法、行政、司法のお互いのチェックによって成り立っている民主政治を破壊するものであります。私は、自治体の長としては、こういうことを言うのは失格だと思います。
 第二に、裁判所の命令によって、法律上も世田谷区民になった者の居住を、補助金の支出などあらゆる手段を講じて阻止することが、皆さん、できると思いますか。そんなことはできっこありません。これまたさきの裁判の二の舞で、また税金のむだ遣いをすることになります。特定の宗教団体― 一応合法的に存在している。これを解散させたり排除することに補助金を支出するのは、前にも指摘しましたとおり、地方自治法二百三十二条の二に言う公益性はなく、違法な支出となります。とりわけ、このことは宗教団体に公金を支出することと裏腹の関係になり、憲法二十条、同八十九条に違反することは、まさに明々白々であります。
 第三に、世田谷区は、オウム信者が転入の手続をとった個人情報を漏えいした上、何の根拠も証拠もないにもかかわらず、オウム信者が再びサリンによる大量殺人事件を起こすかのごとく不安をあおる情報を流し続けておりますが、これに対し、東京地方裁判所は、被告区としては、原告らの居住を前提として、周辺住民の恐怖や不安を解消させるため、関係機関と協力して公共の安全を確保しつつ、教団と周辺住民との対話等による相互理解の促進をこそ図るべきであり、いたずらに教団を敵視し続けることは、問題の解決をさらに困難にするものと言うべきであると、世田谷区の感情的対応を戒めております。私も、オウム問題の解決はこの方法しかないというふうに確信をしております。
 教団が議員の皆さんに配付をした冊子を見れば、事件の完全否定と反省の上に、教団名を変更し、新しい綱領を定め、組織の改革、被害者や遺族に対する謝罪と三億円を超す賠償金の支払いなどをしているとのこと。偽装と言ってしまえばそれまででありますが、再びサリン事件を起こそうとねらっている者が賠償金を払うということは、常識的に考えられないことで、私は一定の評価は必要だと思っております。
 私は宗教を信じない自由を謳歌している立場にありますけれども、教組の言いなりになったり、群れて行動することは、私としては不可解なことでありますけれども、憲法二十条は信教の自由は何人に対しても保障しており、同法二十二条は、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」としております。そして、同法十一条によって、これらの基本的人権は侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられているのであります。したがって、何人にも与えられている基本的人権は、当然オウム信者にも与えられるのであります。が、もとより、麻原を初め大量殺人事件を起こした元幹部は、司法の場で徹底的に追及されなければなりません。
 最後に、本条例は、マスコミではオウム対策条例と言っておりますが、さきにも指摘しましたが、区と警察等との連携、区、区民、事業者への警察等の情報の提供、特定団体で組織されるまちづくり協議会の情報の共有など、いわゆる官主導で組織された区民や事業者が一般の区民を監視する危険性があるのではないかと私は思います。戦前の戦争遂行のための自警団あるいは隣組制度をほうふつさせるもので、到底容認できるものではありません。
 安全安心まちづくりと言葉は清く正しく美しいけれども、治安はよくなったけれども、基本的人権は失ったという旧ソ連、東欧の共産主義、全体主義の国のようになったら、元も子もありません。そもそも犯罪の捜査は警察の仕事であります。住民の組織をつくってそれを防ぐというのは、まさに行き過ぎであります。住民の身近な基礎的自治体は、住民にサービスを提供することを第一義とすべきであって、オウムに悪乗りして治安条例を制定するなど、もってのほかと言うべきであります。
 なお、共産党の修正案については、どうも都合のいいところだけつまみ食いをしたらしいこうかつな大衆迎合案で、論評に値しません。
 以上、終わります。


○新田勝己 議長 以上で下条忠雄議員の意見は終わりました。
 これで意見を終わります。
 これより採決に入ります。本三件を三回に分けて決したいと思います。
 まず、議案第七十七号についてお諮りいたします。採決は起立によって行います。
 本件を委員長報告どおり可決することに賛成の方の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕


○新田勝己 議長 起立多数と認めます。よって議案第七十七号は委員長報告どおり可決いたしました。
 次に、議員提出議案第三号についてお諮りいたします。採決は起立によって行います。
 本件に対する委員長報告は否決であります。したがって、本件の原案について採決いたします。議員提出議案第三号を原案どおり可決することに賛成の方の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕


○新田勝己 議長 起立少数と認めます。よって議員提出議案第三号は否決いたしました。
 次に、議員提出議案第四号についてお諮りいたします。採決は起立によって行います。
 本件に対する委員長報告は否決であります。したがって、本件の原案について採決いたします。議員提出議案第四号を原案どおり可決することに賛成の方の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕


○新田勝己 議長 起立少数と認めます。よって議員提出議案第四号は否決いたしました。