平成14年第2回定例会(自612日 至620日)

世田谷区議会会議録

2002年6月13日 一般質問


○新田勝己 議長 次に、五番木下泰之議員。
   〔五番木下泰之議員登壇〕


◆五番(木下泰之 議員) 最初に、有事立法や福田官房長官の核発言に対する区長の見解と対応について質問いたします。

 既に有事立法については他会派の代表質問などでただされてきたところですが、区長の答弁は結局は推移を注意深く見守るというものであり、内容について何らの見解も見識も示されておりません。全国自治体の首長の中には、立場を問わず、みずからの意見を明らかにしている首長がたくさんおります。平和都市宣言を区の基本理念として掲げている世田谷区の区長が、今回の有事立法や福田官房長官の核発言に対して本日に至るも主体的見解を示さないということは極めて不可解なことであります。

 今回の有事法案では、戦争への後方支援に地方自治体や民間が強制的に動員させられる仕組みができており、地方自治体の命運にかかわる事柄が、まともに自治体の意思を問うことなく決定され、自治体はそれに強制的に従うことが命ぜられる仕組みとなっております。とりわけ武力攻撃事態法案での武力攻撃事態の定義が、日本に対する武力攻撃が発生したり、そのおそれのある事態のみでなく、武力攻撃が予測されるに至った事態をも武力攻撃事態に含め法を発動するとしており、国会答弁で政府は、周辺事態法によりアジア・太平洋地域で展開される米軍の軍事行動に日本が後方支援に加わった場合、すなわち周辺事態は武力攻撃事態に含まれるとしている以上、周辺事態法などによって米軍の戦闘作戦行動に対して日本が後方支援を開始すると、時を移さず武力攻撃が予測されるに至った事態が生じたと判断されて、この法が発動され、地方自治体や民間の動員がなされるということにもなります。

 報道では、政府は今国会での成立を断念したそうですが、私は、このような法案が出されたこと自体、憲法秩序はもとより法治をないがしろにした欠陥法案であり、政府の望む継続ではなく廃案とすべき法案だというふうに考えております。区長は推移を見守ると言うけれども、内容についてどのように考えているのでしょうか、見解をお示しください。

 また、平和都市宣言に照らし、福田官房長官の、日本は核を持つこともあり得るという発言がなされたという事実に対してどのような見解を持ち、国に対してどのような態度を表明するのか、お聞きしたいと思います。

 次に、区の交通まちづくり基本計画案とTDMについてお聞きいたします。

 京都議定書に日本は先週批准いたしました。この議定書に基づき、議長国としてのイニシアチブをとった日本はこれからCO2の削減に邁進しなければならないし、そうしなければ地球の温暖化を防ぐことはできません。その際、中心課題となるのは自動車のCO2対策です。単体規制も重要ですが、避けて通れないものとして自動車の総量の規制、需要抑制があります。昨日のNHKでこの問題が特集されておりましたが、一九九〇年から一九九九年の統計でたった九年間に乗用車のCO2発生総量は三五%もアップしたと言われております。

 自動車の排ガス問題は、地球温暖化を促進すると言われるCO2だけではありません。呼吸器がん増加の原因となっているSPMやNOxも一方で大問題です。そうである以上、京都議定書批准をきっかけに自動車の需要抑制が国のみならず自治体しての重要課題であると考えますが、そういった認識を区長はお持ちかどうか、まずお聞きしたい。

 その上で、なぜ、区は今回策定作業に入っている交通まちづくり基本計画の案の中でTDMを交通政策の基本に据えないのかをお聞きしたい。

 示された基本計画案を読むと、これからの交通行政のあり方について、需要対応型の交通施策に加え、需要調整型の交通施策も展開するとあります。結局は、需要対応型の、つまりは自動車道路建設型の交通施策が基本となっており、需要調整型はつけ足しの施策にすぎません。TDM、つまりは交通需要マネジメントが基本に据えられない限り、もはや現状では道路建設は車の需要喚起にしかなり得ないのだということを肝に銘じておかなければならないでしょう。基本計画の基本はTDMとすべきであります。ご見解をお伺いいたします。

 さて、京都議定書をクリアするためには大胆な政策転換が必要です。小田急線の連続立体交差化事業をきっかけに、今まで事実上凍結していた補助幹線道路の建設が次々に進められようとしております。この計画道路を全部つくるなどということはもってのほかであります。むしろTDMの一環として歩行者と自転車の優先道路に転換することを計画できないものでしょうか。ペイブメントにすれば立派な緑のコリドーにもなります。また、歩行者・自転車優先道路と路面電車を組み合わせてみたらいかがでしょうか。

 自転車の駅前放置が問題になっておりますが、もし東西に走る計画の補助五四号線や補助五二号線を歩行者・自転車優先道路としたならば都心への自転車通勤が可能となりますし、南北の補助線、例えば補助一五四号線や補助一二八号線、二一六号線などを歩行者・自転車道路としたならば世田谷区内の南北交通が自転車で代替できるようになるでしょう。また、東西南北の計画補助線を利用して世田谷に周遊路面電車を計画することもできるはずであります。

 世田谷でTDMを基本に据える交通政策を考える場合、こういった発想の転換が必要であるし、また、世田谷からこのような発想の転換が実現できれば日本の交通政策を転換することになるとも思いますが、いかがでしょうか、区長の見解をお伺いいたします。


 次に、都市における緑の生態コリドーの必要性についてご見解をお聞きいたします。

 緑のコリドーは、小田急線の高架事業認可取り消し訴訟での住民側の代替計画案として示され、この代替案が東京地裁に評価されたことを何度か紹介いたしました。事情判決とならず、半ば工事の進んだ事業の認可が取り消されるきっかけをつくったことも紹介いたしました。本日は、控訴審となっている喜多見〜梅ケ丘間の扱いについて議論することはやめにしましょう。むしろ、都市に緑のコリドーをつくっていくという政策についての評価を区としてどういうふうに考えるのかをお聞きしたいと思います。

 昨日の他会派の代表質問に答えて、区は幾つかの中学校にビオトープをこれからつくっていくことを表明されました。ビオトープは点としての生態系の回復ですが、このビオトープをコリドーすなわち回廊で結ぶことが生態系を豊かにするために必要だと生態学の教科書には書いてあるはずであります。また、世田谷区の事業に北沢川緑道がありますが、これは暗渠化した河川の上のコリドー実現の例として紹介されてもいます。また、野川や国分寺崖線はまさに残された自然の生態コリドーでもあります。従来は点あるいは面としての緑や公園に目が行っていたけれども、これらの点在する緑をつなぐことによる生態系の回復が注目されるようになってきております。それが緑の生態コリドーにほかなりません。この生態コリドーを区としてはどのように理解されているのかについて、ぜひ区長お答えいただきたいと思います。

 さて、一口に緑の生態コリドーと言っても、都市においてこれを回復するのは容易なことではありません。チャンスは限られております。そこで、小田急線の梅ケ丘〜代々木上原間の鉄道跡地利用についてお伺いいたします。  この区間の鉄道は地下化される方針が示されておりますが、この在来線跡地を緑のコリドーとして活用する方針を世田谷区は持つつもりはないのかどうか、お伺いいたします。

 この区間を緑道で整備できれば、羽根木公園とつながるコリドーが代々木上原へと連なっていくことになります。緑の少ない北沢地域での生態系の回復は貴重なものとなるはずであります。また、梅ケ丘から代々木上原に連なる緑の遊歩道は新たな動線を形成し、沿線まちづくりに新たな可能性をもたらすと思われます。
 また、緑のコリドー形成の可能性は、地下化計画が予定されている大井町線や地下化が予測される京王線にも当てはまります。京王線では、新宿〜初台間の地下鉄の上部が既にコリドー化されております。税金や財投を多額投入する都市計画事業で新たにできる土地空間の利用については、公共セクターに第一義的に利用権があるはずであります。貴重なチャンスであります。鉄道跡地のコリドー化や道路のコリドー化を区は政策として持つべきであり、実現に向けて各方面に積極的に働きかけていくべきであるというふうに考えますが、ご見解をお示しいただきたいと思います。

 以上で壇上からの質問とします。

   〔大場区長登壇〕


◎大場 区長 お話のございました区の平和都市宣言と有事立法、福田官房長官の核発言の問題についてお答えいたします。

 世田谷区は、平和都市宣言のもと、身近な自治体として、平和、安全の実現に向け取り組みを進めてきたところでございます。もとより非核三原則の堅持は強く望んでいるものであります。ご案内のとおり、このたびの福田官房長官の発言については、後に、政府として非核三原則を堅持していく方針が示されております。いわゆる有事立法に関しまして広く区民の意見を踏まえた十分な論議がなされるものと考えております。重大な関心を持っている次第でございます。

 そのほかについては関係の担当から……。


◎佐藤 都市整備部長 交通まちづくり基本計画案につきまして、京都議定書と自動車需要の抑制についてのお話がございました。

 ご案内のように、政府はさきの六月四日の閣議におきまして、地球温暖化防止条約、京都議定書の批准を決定いたしました。各国が批准を終え議定書が発効すれば、我が国は二〇〇八年から二〇一二年までの間の温暖化ガスの平均排出量を九〇年比で六%削減するという義務を負うことになります。

 温暖化ガスの削減のため自動車需要を抑制することは、区といたしましても重要なことと認識しております。このたび案として公表させていただきました仮称交通まちづくり基本計画案におきましても、七つの施策目標の中に自動車交通量の抑制と自動車による環境負荷の軽減を挙げてございます。今後、議会や区民の皆様からご意見をいただくことになっておりますが、そうした意見をもとに、世田谷区交通まちづくり基本計画を定め、国や東京都の施策と連携しつつ、区民、事業者とともに自動車需要の抑制に努めてまいりたいと思っております。

 次に、交通まちづくり基本計画になぜTDMを基本に据えないかというお話がございました。

 この交通まちづくり基本計画におきましては、先ほど申しましたが、目標実現のため七つの施策目標を掲げております。それぞれが今後の区の交通施策の基本になるものと考えております。その七つの目標それぞれの中で程度の差はございますが、TDMとかかわるものを取り上げております。TDMの考え方は、区の交通施策における基本の一つに含まれているものと認識しております。

 次に、歩行者・自転車優先の交通実現の方策についてお話がございました。

 歩行者・自転車優先の交通の実現方策につきましては、交通まちづくり基本計画の案の中では、例えば重点的に取り組む施策、事業として自転車走行空間ネットワーク構想の推進やコミュニティゾーン形成事業の推進を位置づけております。

 また、本計画は、国や東京都等による広域計画とも整合のとれた横断的、総合的、体系的な交通まちづくりを目指すものであり、新しい公共の理念のもとで、区民、事業者と協働し、NPOや交通管理者等多くの関係者とも協力して施策を展開していくための基本計画でございます。今後の計画の策定を受け、個別施策、事業を具体的に展開していくことになりますので、その中で歩行者・自転車交通の優先実現についても取り組んでまいりたいと存じます。

 都市における緑の生態コリドーの評価についてというお話がございました。

 緑は、そこに住む人々に潤いと安らぎを与えてくれるばかりでなく、大気の浄化作用、あるいは気温の調節機能、さらには火災時における延焼防止機能を持つなど、都市生活においては非常に重要なものであると認識しております。区内の緑には、国分寺崖線のような連続した緑や世田谷公園のようなまとまった緑、あるいは住宅地区の保存樹木のような点在する緑と多様な緑がございまして、それぞれが貴重な緑として評価しております。

 今後とも、みどりの基本計画、この基本計画の中では、お話しのような緑のベルト等についても提唱してございますが、その計画に基づき地域ごとの緑の特性を生かした保存樹木、保存樹林地など民有地の緑の保全や、公園、緑地の整備、公共施設の緑化など総合的かつ計画的に進めてまいりたいと思っております。

 以上でございます。


◎谷田部 北沢総合支所長 区全体の緑につきまして今答弁がありましたので、私のところからは、下北沢周辺の跡地利用についてと、それから、その関連についてお答え申し上げます。

 下北沢周辺につきましては、小田急線の連立事業を契機としましてまちづくりを進めるべく、この四月に駅周辺まちづくりの基本計画を策定したところでございます。今年度は、これに続きまして整備計画を策定してまいりますが、この中で小田急線の線路敷といいますか、跡地利用といいますか、これの活用についても考えてまいりたいというふうに考えます。

 ただ、この件につきましては、その前提になります地下化につきまして現在都市計画の変更の手続中でございますけれども、今後、地元の意向ですとか区の財政負担などを考慮しながら、土地所有者である小田急電鉄、連立事業の事業者であります東京都と協議をすることになります。

 もう一つが、それに関連して、緑の提案につきましての、可能にするための政策についてです。

 緑のネットワークにつきましては、平成十一年三月のみどりの基本計画、十三年三月の都市整備方針につきましても、緑のネットワークそのものが課題であり、また目標になっております。これらは、地区特性を考慮してネットワークを展開、構築するという考え方でございまして、北沢地域のまちづくりテーマにおきましても、テーマの一つとしまして自然、生態環境に基づく都市構造の構築ということで、骨格プランにつきましても同様の趣旨でつくっているわけでございます。

 先ほどもお話がございましたけれども、公園、緑地、宅地内の緑、ビオトープ、そういった点、河川、道路等の線、それから、まとまった緑としての面、それぞれ地域資源であるわけでございますが、それぞれの整備育成、そして、それらをつなぐネットワークを形成していきたいというものでございます。これらにつきましては、緑の思想の定着化の問題ですとか、役割の分担の問題ですとか、財政負担の問題ですとか、さまざま課題はありますけれども、これらを乗り越えて形成を図っていくというものでございます。

 以上でございます。


◆五番(木下泰之 議員) 下北沢が地下化、そういう方針が出ているわけですけれども、当然、地下化されたら、梅ケ丘から代々木上原までそこに緑道をつくるということにすれば、動線としては最短の動線ができるわけですね。そういった意味では、もう既にそういったことについては検討されていなければいけないはずなんです。そういうことについてはきちっと検討されたんでしょうか、いかがでしょうか。


◎谷田部 北沢総合支所長 昭和三十九年に平面で都市計画されて以来、最近になって地下化の考え方が提案されたものでございますので、そういった状況がございますので、これから検討するということになります。

 以上でございます。


◆五番(木下泰之 議員) 最近決まったというのは非常に不思議な言い方ですけれども、もう既に十年前から下北沢については地下にせざるを得ないということは決まっていたはずであります。また、高架、地下について両面にらみながらやっていたということが公式には言われていますので、少なくとも地下にした場合の利用計画については、まちづくりについての重要な点ですので、それはやっていなければおかしいというふうに思います。

 それから、幾つかの質問を私はしましたけれども、どうも一般論だけで全部逃げておられる。特に核の問題にしても……。


○新田勝己 議長 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。

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