平成14年第1回定例会(自31日 至328日)

世田谷区議会会議録

2002年3月5日 本会議一般質問


○新田勝己 議長 次に、五番木下泰之議員。
   〔五番木下泰之議員登壇〕


◆五番(木下泰之 議員) 小田急問題からお聞きします。

 持ち時間がありませんので、小田急問題については一部省かせていただきます。その分は予算委員会でゆっくりやらせていただきます。

 第一に、違法判決の出た小田急高架事業へ区が継続参加する法的根拠をお聞きいたします。

 今議会では、補正予算と平成十四年度予算に小田急高架事業の経費が計上され、同事業と一体の関連側道の道路認定案件が上程されています。また、二月十二日から一審で違法とされた高架事業にこのまま接続する下北沢地域の都市計画案が縦覧に付され、区も主催者となって、十九日から二十一日までの三日間、説明会さえなされているわけであります。これらの行為への法的根拠を明確に示していただきたい。

 十一月議会での一般質問で、違法判決が出た以上世田谷区が負担金を出すのは適法性に欠けるのではないかと聞いたところ、国が控訴して裁判が継続中であるから事業は継続するのだとの答えが返ってまいりました。しかし、区はこの訴訟においては少なくとも当事者ではありません。一審判決を尊重して国や東京都に意見を表明して、この違法事業から手を引くこともできるわけであります。この裁判を訴え勝訴したのは、小田急線沿線の区民であります。世田谷区議会が二度にわたる地下化決議を挙げ、大場区長もある時期までは地下化推進派の立場に立っていたことを考えれば、沿線の区民と国や都との対話の橋渡しをすべき立場でありこそすれ、その逆ではないと考えます。

 先回りして言いますが、答弁がつまるところ行政裁量権を言うのであれば、一審判決が出た今こそ、世田谷区政は国や東京都に追随せず、区民擁護の立場に立つべきだということを申し上げた上での質問といたしましょう。

 第二に、東京地裁の判決がいわゆる事情判決をとらず、具体的に認可を取り消したのは、今からでもこの事業を違法状態でなくすことができるような代替案が原告側から提示されていたからであります。現にできてしまった高架については、当面仮線としての使用は認め、そのかわり新宿から成城学園前までを二線二層シールド地下方式で掘り進め、これが完成した際には、既存高架構造物と在来線の跡地を利用して緑のコリドーをつくろうという三方一両損の大胆な提案であります。

 都市の緑の拠点をラインでつなぐことにより都市に生態系を回復しようという提唱であり、この考え方自体、世田谷区も同意せざるを得ない未来志向の建設的提案であるというふうに考えます。違法判決が出た以上、この構想は現実性を帯びてまいりました。控訴審は本日から始まりますが、一審で指摘されている違法事由が多々あって、しかも都市計画のイロハさえ逸脱しているようなものもこの違法事由には含まれているため、控訴審でこの違法性を覆すことは大変なことだと思います。

 そうすると、何か出口を探らなくてはいけない。その際、対応する代替案として、この緑のコリドープランがあると考えられないでしょうか。違法とされた一審を受け入れるならば、国や都にも責任があるわけですから、連続立体交差事業のこれまでの一般論を超えた手法をこの事業に導入することは可能であります。ヒートアイランド現象を回避し、都市に生態系を取り戻す緑のコリドープランをとれば、新宿から成城学園前駅までの複々線化を現行計画よりも早く完成することは可能であります。

 しかも、下北沢で商店街では小田急線の地下化のみならず、補助五四号線の地下化を実現してほしいとの意見がまとまりつつあります。これを実現させるためにも、鉄道線形の変更もこのコリドープランでは可能になるわけでありますから、政府や東京都はデフレ払拭を相も変わらぬ都市の再開発で乗り切ろうとしておりますが、商業床や住宅が余っている現在、従来型の再開発ではデフレを払拭するどころか、これを促進しかねないというところに来ております。

 未来に絶対的に必要となる環境保全のための基盤づくりのため、エコロジカルニューディール政策こそ、そのデフレ払拭の起爆剤となるというふうに私は考えております。そういった意味で、この代替案は日本経済を救うということにもつながる代替案であります。緑のコリドープランに対する世田谷区のお考えをお聞かせいただきたいと思います。


 次に、基本健康診査における区と世田谷、玉川両医師会との四割増し換算の点数契約についてお聞きいたします。

 老人保健法に規定されている基本健康診査が世田谷区の場合、世田谷区医師会、玉川医師会との契約において二十三区中世田谷区が突出し、一点当たり十四円という異常な高値で契約されているのはなぜか。これについてお答えいただきたいと思います。

 世田谷区の平成十三年度の基本健康診査の予算額は十九億三千二百十九万八千円ですから、四割増しということで計算しますと、実に五億五千二百五万七千円もの区民の税金が基本健康診査に不当に支払われていることになります。

 調べていきますと、平成七年度、あるいはもっと古くから、平成十一年度までは十四・八円で取引されております。つまり、五割増しに近いわけであります。一体どのような協議を医師会と区は行ってきたのか。また、この高値を世田谷区はどのような根拠で受け入れたのかをお聞きいたします。

 老人保健法第十六条に基づく基本健康診査は、地方自治体が行うことになっており、これは、国、都道府県、区市町村がそれぞれ三分の一を負担して行うことになっております。措置対象額を決めるに当たっては、算定は保険医療の点数が使われており、医療保険での例に倣い、一点当たり十円を掛けて決められております。そうである以上、基本健康診査の単価査定は十円で行うべきであります。税金支出である以上、これは当然のことであります。十四年度からは、一点十円に改めることをここで約束していただきたい。これまでに不当に支払われていた金員については、返還を求めるべであります。見解を求めます。

 加えて、契約では健診の報告も含めての事業となっておりますが、健診報告の際、再診扱いにされ、お金を支払わされたという事例があると聞きます。広範囲に行われているとの指摘もあり、実態を明らかにしていただきたい、調査を求めるものであります。

 また、基本健康診査以外の委託契約は、総額で平成十三年度には三十一億一千三十八万円であります。これは世田谷区医師会、玉川医師会との契約の総額であります。この委託契約全体での水増し分がどのくらいになるのかも実態を明らかにすべきであります。補助金や負担金問題での腐敗ということでは、「せたがやの家」問題も大問題でありますが、この医師会との事業委託契約の問題は、まさるとも劣らず大問題であります。しっかりと答えていただきたいと思います。

 以上、壇上からの質問といたします。


◎原 都市整備部長 小田急の連続立体事業に関する判決の出たことについて、幾つかお尋ねをいただきました。

 この質問については、今まで議会でも、それから先ごろ二月の説明会でも、さんざん議員及び議員のグループがお尋ねになったことですので、内容については十分おわかりのこととは思いますけれども、改めてこの本会議場でほとんど同じことをお話しすることになると思いますが、答弁させていただきます。

 区がこの事業を継続する法的根拠ということでありますが、これは東京都も答弁したことですが、一審での判決を受けまして、被告である国土交通省及び訴訟に参加している東京都は、判決内容を不服としておりまして、控訴しました。判決は確定していないと認識しております。

 また、一審判決は工事の差しとめや原状回復、そういうものは求めておりませんで、被告である国及び東京都は、引き続き事業の早期完了に向けて事業を推進することとしております。世田谷区といたしましても、一日も早くこの事業が完了することをやはり義務と感じておりまして、東京都の事業推進の方針に基づいてこれを進めてまいりたいと思います。

 根拠ということでありますが、これは民事訴訟法百十四条というように確定判決は既判力を有するとありまして、なお、判決の確定は控訴の提起により遮断されるということで、事業の継続というのはここに根拠が求められようと思います。

 また、区がこのたび道路認定その他を今議会に提出させていただくのもこれに基づきまして、事業が中断されておらないわけですから、地方自治法の執行機関の義務という項目がありまして、「普通地方公共団体の執行機関は、当該普通地方公共団体の条例、予算その他の議会の議決に基づく事務及び法令、規則その他の規程に基づく当該普通地方公共団体の事務を、自らの判断と責任において、誠実に管理し及び執行する義務を負う。」とあります。私たちは、担当者としてこの義務を誠実に執行していきたいと考えておるところであります。

 それから三番目に、事業は継続する、違法状態から手を引くこともできたはずだということで裁量権という言葉を使われましたが、裁量という言葉は法律の中にはないようでございますが、今申し上げたように、地方自治体の執行機関の義務としてこれを執行していくということを根拠としております。

 それから次に、今からでもやめることができるのではないか、代替案についてということでありました。

 これについても、以前にもご答弁したところですが、事業がここまで進んでいる段階では、やはりこのご提案は非現実的であると言わざるを得ないと思います。私たちは、理想を掲げながら、やはり現実家でありたいと思っております。今考えられる技術、経済、財政、そうしたものに依拠しながら、今考える最大限の理想を求めたい。その理想というのは、やはりこの事業を一日も早く完成させて、通勤ラッシュの解消、踏切の解消、沿道の環境にも配慮しながら、そうしたことを行って、まちづくりを進めることであろうと思います。そうしたことに向かって進みたいと思っております。

 以上です。


◎永見 世田谷保健所長 基本健康診査についてのご質問にお答えいたします。

 まず、一点単価契約についてお答えします。

 お答えの前に、基本健診のシステムについて触れさせてください。基本健康診査は、疾病に陥るおそれのある方を早期に発見し、適切な指導を行うとともに、健康な人にも生活習慣を見直す気づきの機会となる大変有効な事業と考えております。

 健診事業は、保険診療とは異なり、自由診療に当たるものです。点数については保険診療点数を目安としていますが、健診項目や単価については委託先との合意に基づいて契約を行うものです。したがって、健診項目は、老人保健法で定める必須項目のほか、各区がそれぞれ選択項目を設けて、一点単価等についても各区それぞれの状況に応じて決定しております。

 次に、どのような協議を行ってきたかについてお答えをいたします。

 世田谷区では、行財政改善の観点から、アクション・プランに基づき基本健康診査事業の見直しを行っており、効果的、効率的な事業実施と経費の削減を図っております。これを受けて、単価については平成十二年度は一点十四・二円、十三年度は十四円と見直しをしてきました。さらに、委託先の地区医師会と協議をし、十四年度の単価は十三・七円としております。今後も引き続き見直しを行っていく予定です。

 次に、十四年度、一点十円にとのご質問ですが、そのようには考えてございません。

 返還をとのご質問ですが、考えてございません。

 次に、基本健康診査の健診報告で、再診扱いで自己負担を払ったとのご質問にお答えします。

 今のところ、基本健康診査では受診者の自己負担はありません。結果説明費用についても、基本健康診査の項目に含まれております。ただ、結果説明に引き続いて医療保険による医療を行った場合は、医療保険のルールに基づいた自己負担が生じます。そこのところは誤解を生じやすいので、区の行う健診と医療保険による医療を明確に区分するよう医療機関に説明をしております。ご質問の調査ですけれども、お尋ねのようなケースで、ご本人が日にちと医療機関を明示してお問い合わせいただければ、調査することができます。

 基本健診以外の委託の問題ですが、それぞれの契約に基づいて実施しております。

 以上です。


◆五番(木下泰之 議員) まず、原部長の小田急線についてのお答えですが、判決が出て、つまり最高裁まで引っ張っていけば、それが確定するまでは何でもできる、行政は何でもできるということと同じなわけですよ。それではいけないと思いますね。そういったことは、いろんな公害の問題でも、自治体はそういう処理をいろんなところでされてきた。そういうことを頭に置いていただきたいと思います。

 それから、一審判決では、手続自体、またはそれに必要な公金の支出に関与した公務員が何らかの意味での責任を追及される可能性まで指摘されているんですよ。このことを銘記していただきたいと思います。

 それから、健診の方ですけれども、これはとにかく二十三区を見ても一番高いんですね。大体十二円どまりですよ。それで、世田谷区は十四・八円まで取っているんです。これは四割八分高くなるということなわけです。つまり、それだけの区民の税金が十三年度だけでも五億数千万円流れているわけです。そういったことについてけじめをつけなければいけないというふうに思います。

 それから、調査はしないというふうにおっしゃいました。しかし、これは皆さんが調査しない限りは明るみに出ない話なわけです。それはぜひ調査することを再度求めます。

 それから、基本健康診査は選択項目も入れているからというふうに言いましたけれども、選択項目でも十四・八円取っていて、実質十五円なんですよ。そういったことが問題になっているわけです。つまり、世田谷区の検査項目を全部トータルでやりますと、初歩的なものの三・五倍もお金がかかることになっているわけですよ。そういった状況の中で四割八分増しが公然と行われていた、このことは大疑惑ですよ。つまり、保険証を持っていなくて、普通、健診に行って検査項目と同じ治療行為をやってもらったって、十円しか請求されませんよ。それが常識ですよ。そういったことについてどういうふうにお考えなんですか。もう一度お答えください。


◎永見 世田谷保健所長 一点目のご質問です。

 世田谷区の場合、二十年前に老人保健法が成立をして、この制度が開始した当時、有効な事業にするための協議の結果、一点十四円台で実施することになったと聞いてございます。先ほど申しましたように、近年、効果的、効率的な事業実施を図っての協議の結果、さきにお答えしましたような見直しをしたところでございます。今後も引き続き見直しを行っていく予定でございます。

 二点目の調査ですが、調査はしないというふうにお答えしたのではなくて、お尋ねのようなケースで、ご本人が日にちと医療機関を明示してお問い合わせいただければ、調査することができるというふうにお答えをいたしました。(「一つしかわからないではないか、それでは」と呼ぶ者あり)


○新田勝己 議長 お静かに。


◎永見 世田谷保健所長 以上です。


◆五番(木下泰之 議員) これは区長や助役に聞きたいんですけれども、こういったことが公然とまかり通っている、これは大疑惑ですよ。つまり、老健法の中で措置対象額となるものの査定は十円で行われているんですよ。それを前提にして行われている事業に対して、四割八分増しのお金が支払われていた。しかも、これはもう十数年ずっと続いているわけですよ。どうですか。

   〔八頭司助役登壇〕


◎八頭司 助役 まず、十円と十四円というお話がずっと続いておりますけれども、厚生労働省の見解と申しますか、指導の上でも、補助金を交付する上の計算基礎として十円という保険診療単価を準用しております。ただ、先ほど答弁申し上げましたように、基本健康診査自体は自由診療の行為でございますので、この委託単価の上積みについては自治体の判断によって実行されているものでございます。その問題として、現実に世田谷区は十四円でございますが、例えば中央区、品川区は十三円とか、お隣の目黒区は十二・五円であるとか、さまざまに区の実情によって数字が変わっております。(「十円でやっているところもあるぞ」と呼ぶ者あり)

 それから、十円でやっていたようなケースは確かに私どもも把握しておりますが、発足時から各区のそれぞれの事情があろうと思います。例えば私が知る限りでは、日にちを決めて、小中学校体育館等の特定の会場を使って、区側がセットをした上で医師会に委託をする。こういうケースでは、恐らく厚生労働省の補助単価を使って実行した区があったのではないだろうか、こう考えられます。当時、私はどういういきさつか存じませんので、これはあくまで想定でございます。

 それから、調査の件で再度お話がありましたけれども、現実問題として区が調査可能なのは主に国民健康保険に関してでございます。レセプトのチェックは、全数調査をしろとおっしゃればやれますが、大変膨大な時間と手間がかかります。

 それから、政府管掌保険等につきましては、区にデータがございませんので、それとの突合については大変な手間がかかります。そういう意味で全数調査をしろとおっしゃるのであれば、私はできないと申し上げたいと思います。ただし、一件ずつ、疑問があるという区民の方がいらっしゃれば、お申し出があれば、日にちと医療機関を明示していただければ、区に残る原票と対比をしてお答えをする、それができます。

 以上でございます。


○新田勝己 議長 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。

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