平成13年第4回定例会(自1128日 至126 日)

世田谷区議会会議録

2001年11月30日 子ども条例案への質疑


○新田勝己 議長 次に、


△日程第五を上程いたします。
   〔河上次長朗読〕
 日程第五 議案第八十九号 世田谷区子ども条例


○新田勝己 議長 本件に関し、提案理由の説明を求めます。水間助役。
   〔水間助役登壇〕


◎水間 助役 ただいま上程になりました議案第八十九号「世田谷区子ども条例」につきましてご説明申し上げます。
 本件は、子どもが健やかに成長することができるまちづくりを目的として、子どもに関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、新たに条例を制定する必要が生じましたので、ご提案申し上げた次第でございます。よろしくご審議のほどをお願い申し上げます。
 以上でございます。


○新田勝己 議長 以上で提案理由の説明は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 なお、質疑についての発言は、議事の都合により、答弁を含めて十分以内といたします。
 発言通告に基づき、発言を許します。
 五番木下泰之議員。


◆五番(木下泰之 議員) 通告した質問を行います。

 この条例案づくりは、子どもも含めた市民参加をいわば売り物にして進められてきました。五月十一日の青少年問題協議会でのまとめである盛り込むべき要点では、基本はウェルビーイングであるとして、これを条例の基本概念としており、この報告書ではウェルビーイングを括弧づけで子どもの自己実現や権利擁護が保障された状態と説明していますが、この基本概念が今回提出の条例案の趣旨であるというふうに考えてよいのかどうか、まず第一点目としてお伺いいたします。

 二点目、この基本概念から条例をつくれば、当然「子どもの権利条例」となるはずでありますが、「権利」を取り、「子ども条例」としたのはなぜでありましょうか。「子どもの権利条例」としない理由を教えていただきたい。子どもの権利条約との関係も含めて、今回の子ども条例についての関係をお答えいただきたいと思います。

 三点目、大綱と素案、条例案を比べると、素案の段階で「社会の一員として成長に応じた責任を果たしていかなければなりません」であるとか「社会における決まりごとや役割を自覚し、自ら学んでいく姿勢を持つことが何より必要です」といった子どもの義務を強調するような字句が接ぎ木されるに至り、多少の字句修正はあったものの、これが踏襲されていますが、このような異質な文言のつけ足しがどういう議論を経て挿入されるに至ったのか。どこからそういう強い意見があったのか。このような異質な概念を入れるのであれば、子どもを含めた市民との協議をやり直すべきではないか、そういうふうに思いますが、この見解についてどうお考えなのかお伺いいたします。

 四点目、素案が明らかになった後、喜多明人早稲田大学教授らの子どもの権利条例東京市民フォーラムは、十一月八日付で子ども条例に関する意見を区長及び各会派に提出しております。子ども施策の充実という点では条例の積極的面はあるにしても、これでは子どもの責任条例であり、子どもが虐待やいじめからの助けを求めていいことなど、子どものエンパワーメントを図るという子どもの権利条例の基本要素がすっぽり抜け、子ども側をあくまで受け身の立場に置かせている、あるいは子どもを萎縮させるような文言を挿入させていることにおいて、子どもの権利実現に役立たないばかりか、かえって有害だとの趣旨の意見を表明しております。区長、教育長はこの指摘をどう受けとめるのか、お答えいただきたいと思います。

 五点目、この意見書の存在も踏まえて、青少年問題協議会有志から十一月十五日付で五月にまとめられた盛り込むべき要点の中から2の(1)子どもの生存、発達の「A子どもは心身への暴力・虐待・放置その他あらゆる不適切な扱いを受けることなく、安心して生活できる」を明記してほしいとの意見書も提出されております。市民参加の条例案づくりを進めてきた中での諮問委員会の市民側委員五名と元委員一名からの意見でもあります。当然反映してしかるべきでありますが、どのように検討し、対応されたのか、見解をお伺いしたいと思います。

 以上でありますが、昨日の朝日新聞の東京版のトップに、世田谷区子ども条例提案、都内で初、区議会に権利擁護薄いの声という記事も大きく出ました。子どもの権利を明文化し、子どもの権利委員会を設け、是正措置や勧告のできる川崎市の条例との対比表も載っております。世田谷区議会が衆目を集めていることを踏まえて真摯に答えていただきたいと思います。よろしくお願いします。

   〔水間助役登壇〕


◎水間 助役 私からは、総体的なことについてご答弁申し上げます。

 今回ご提案しております世田谷区子ども条例は、前文の中に「子どもは、それぞれ一人の人間として、いかなる差別もなくその尊厳と権利が尊重されます」として、子どもの人権の尊重を第一に述べております。その上で、保護者、学校、区民、事業者、区の務めをそれぞれ明らかにし、子どもが育つことや子育てについて地域社会が一丸となって取り組むことが何より大切であるという世田谷区独自の姿勢を強調しております。条例案の策定を進めてまいります過程の中で、議会でのご議論はもとより、子ども自身を含むさまざまな区民の皆様のご意見を踏まえまして、内容の検討をしてまいったところでございます。

 したがいまして、こうしたご意見をいただきながら、その段階で最善と思われますものを議会にお示ししてまいったところでございます。こうした過程を経て、今回ご提案申し上げておりますような条例案になりましたことをご理解賜りたいと存じます。

 以上でございます。


◎稲垣 生活文化部長 私からは、個々の問題についてお答え申し上げます。

 まず、子ども・青少年問題協議会からいただきましたご意見、仮称世田谷区子ども条例に盛り込むべき要点等に示されましたウェルビーイングという基本概念につきましては、条例案前文「子どもは、それぞれ一人の人間として、いかなる差別もなくその尊厳と権利が尊重されます」という中に反映されていると、かように認識しているものでございます。

 次に、子ども条例といたしました理由についてお尋ねがございました。助役からもご答弁申し上げましたとおり、区の条例案は前文の冒頭に子どもの人権の尊重を述べ、その上で子どもが健やかに成長することができるまちづくりを主眼といたしましたことから、子ども条例という名称とさせていただいた次第でございます。

 次に、大綱と素案、条例案の文言の変化についてというお尋ねがございました。私ども、さまざまな意見をまとめながらこの策定作業を進めてまいったものでございます。策定作業を進めてまいります過程で、議会でのご議論はもとより、子ども自身を含む区民の皆様方のご意見を踏まえまして内容を検討し、今、助役からもご答弁申し上げましたとおり、その都度最善と思われますものをお示ししてまいったものでございます。

 次に、子どもの権利条例東京市民フォーラムの条例案に対するご意見についてでございますが、世田谷区の子ども条例案の第三条に条例の目標を掲げてございます。一例を申しますと、「子ども一人ひとりが持っている力を思い切り輝かせるようにする」あるいは「子どもがすこやかに育つことを手助けし、子どものすばらしさを発見し、理解して、子育ての喜びや育つ喜びを分かち合う」、第三に「子どもが育っていく中で、子どもと一緒に地域の社会をつくる」、このように目標を掲げてございます。この中でご意見の趣旨を反映しているものと私どもは認識しておるものでございます。

 最後に、今回出されました意見書について、十一月十五日付で出されましたお尋ねの意見書の内容についてでございます。それにつきましては、前文の「心も身体も健康で過ごし、個性と豊かな人間性がはぐくまれる」という部分を初め、第九条の「健康と環境づくり」の中に「子どもの健康を保持し、増進していくとともに、子どもがすこやかに育つための安全で良好な環境をつくっていく」という条文がございます。あるいは、第十二条の「虐待の禁止など」等におきましてもそのような内容が反映されていると解したものでございます。

 以上でございます。


◆五番(木下泰之 議員) 私は、全体の流れを、最初の立ち上げから条例案に至るそういう流れを見た中で、一番問題なのは、権利から始まっているのに、子どもに対する義務を加えなければいけないということで言葉が接ぎ木されてきたということだと思います。つまり結局、権利条例として始まった話が、途中から子どもの義務をどうしても入れなければならないという議論の中で、それが接ぎ木されてきたということだと思うんです。

 これは、やはり子どもの権利を守るということ、つまり権利という言葉が嫌いな方々が多いようですけれども、しかし、これは権利条約まで国際条約を結んでいるわけです。ですから、権利ということを主軸にしてやはりこの条例はつくるべきだったと思いますし、それから川崎の条例などを見ますと、具体的に子どもの権利委員会などを設けているということもあります。


○新田勝己 議長 以上で木下泰之議員の質疑は終わりました。

 これで質疑を終わります。

 本件を区民生活委員会に付託いたします。

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