平成13年第3回定例会(自919日 至1019 日)

世田谷区議会会議録

2001年9月21日 一般質問


○新田勝己 議長 次に、五番木下泰之議員。
   〔五番木下泰之議員登壇〕


◆五番(木下泰之 議員) 通告に基づき質問します。

 下条議員とともに、私も原告として闘ってまいりました「せたがやの家」訴訟の原告勝訴判決と大場区長の控訴についてお聞きいたします。

 六月二十五日に下された東京地裁の行政部の判決は、「せたがやの家」の補助金として違法に支出し、あるいは受領した一億六千二百十五万円余の区の金員を、被告である大場区長と故星谷知久平夫妻らに返還せよ、継続して支出している区の違法な補助金は差しとめよという、被告に対して極めて厳しい判決であります。これは、昨日も下条議員から既にお話がありましたように、私たちの主張を全面的に認めた判決であります。

 判決の画期的な意義は後に述べましょう。しかし、それ以前の問題として、この裁判を通じて明らかになった新たな事実を、昨日の下条議員の指摘したことに加えて、ここに披露しておきましょう。

 被告側は、「せたがやの家」の補助金の申し込みの名義人はあくまで星谷議員の妻であり、妻が補助金を受領しているのだから問題はないと言い張っておりました。同事案を免責した監査委員と本区議会主流の論理もこれでありました。

 ところで、判決によりますと、補助金の申し込みは平成五年十月でしたが、既にその年の五月上旬に星谷知久平議員は友人の建築屋を連れて、谷田部住宅整備室長のところに「せたがやの家」システムを利用したい旨あいさつに行っており、その際には、「せたがやの家」を建設しようとする土地には大蔵省を抵当権者、相続人ら十四名をそれぞれ債務者とする相続税及び利子税にかかる十四個の抵当権が設定されており、その総額は三億四千三万円にも上っていましたが、八月二十三日までには十二個が抹消され、残された抵当権は星谷知久平氏を債務者とする二個のみとなり、事前協議承認通知がされた直後である平成五年十二月十三日には、知久平氏を債務者とし、富士銀行玉川支店を抵当権者とする限度額三億円の根抵当権が設定されたのであります。

 こういった事実認定から、判決は星谷知久平議員の積極的関与を認めているのであり、また、さらには申込人の妻への変更を、実質的に被告知久平を含む共有者が交付先となっている事実が隠蔽されていたものと認められるとして、これを仮装・隠蔽行為として認定しているのであります。

 判決文を精読された区幹部の方々は、昨日の区長の答弁に冷や汗をかかれているのではないでしょうか。この判決には、補助金癒着の構造を断罪するという、時代を画する新しさがあるわけですけれども、それを支える事実認定や基礎的な論理構成が実に緻密なのであります。

 九月四日付の週刊エコノミスト誌は、宇沢弘文東大名誉教授の「官僚の傲慢さが生んだ補助金行政という悪弊」という論文を掲載しております。この論文は、まさに「せたがやの家」訴訟判決の歴史的意義について書かれたものですが、この判決が世界的に著名なこの経済学者から評価されるゆえんは、地方自治法二百三十二条の二の補助金の公益性を全面的に押し立て、日本の構造問題を断罪するに値する論理構造を持った判決であるからにほかなりません。

 判決は、九十二条の二や公序良俗による違法性の認定を超えて、補助金の公益性に照らして、区議会議員である星谷知久平氏への「せたがやの家」補助金の支出が地方自治の根幹にかかわる違法性を持つと認定しているからであります。

 特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律に基づく優良賃貸住宅システムは、「せたがやの家」を含め全国自治体で実施されており、その年間の補助金は、国、自治体の支出を合わせると、年間予算で二千億円を超える莫大なものであります。その氷山の一角が「せたがやの家」ということになるわけであります。補助金は、日本の官僚専制システムを支えるキーワードでもあります。ここにメスを入れなければ、日本経済の構造改革はあり得ないのであります。

 今回の事案は、補助金癒着、あるいは補助金を介した官僚専制の構造を白日のもとにさらし出した名判決なのであります。したがって、この判決は一世田谷区民の関心事ではありません。その意味で、全国からこの世田谷区は、また、区長の振る舞いは注目されているのであります。そういったことを念頭に置いて質問いたします。

 判決文を区長はお読みになりましたか。どう思われますか。今回の「せたがやの家」東京地裁判決への区長の見解と控訴理由を明らかにしていただきたい。まさに説明責任ということはこういうことです。

 ところで、判決後、下条議員と連名で七月二日に区長に会見を求めましたけれども、区長は長期人間ドック入りを理由に面会を拒絶されたばかりか、七月二十日に至るまでの長きにわたって所在を不明とされました。公人たる区長が公人たる区議会議員の面会要求を拒否するばかりか、十九日間にわたって所在不明とすることが許されるのかどうか、見解を伺います。

 区長は、昨日の下条議員の質問に対して、適正な事業を行ってきた、一審に不服なので控訴したとだけ答えたが、違法とされ、差しとめを求められた補助金はあくまで継続するのか。また、区長、幹部の責任の所在をお聞きしておきたいと思います。


 次に、補助金問題と不可分の関係にある区の負担金の問題について、小田急線問題に関して若干の質問をしておきます。

 地方財政法第二十七条は、都道府県の行う建設事業に対する市町村の負担について定めてあり、その三項は、「市町村が負担すべき金額について不服がある市町村は、当該金額の決定があつた日から二十一日以内に、自治大臣に対し、異議を申し出ることができる」となっております。区支出金がどう使われているかを区は十分把握していかねばならないことの証左であります。

 十月三日に建設省、今の国土交通省を被告とした事業認可取り消し訴訟の判決が出ます。「せたがやの家」訴訟の判決を書いた裁判長の判決ということもあって、注目を集めております。住民側が勝訴ということになれば、小田急高架事業の地下化への見直しの道が切り開かれるでしょう。

 ところで、この裁判は事業認可の違法を問う裁判ですけれども、事業手法の違法性が争点の一つともなっております。もし事業手法が違法だということになれば事業を改めなければならなくなりますが、あわせて地財法の絡みで問題がすぐに出てまいります。

 そういうこともあって、東京都の都市計画事業として行われている小田急線連続立体交差事業への区の支出に関する負担金と費用使途についてお伺いいたします。区が支出する連立事業の年次決算や使途明細について明らかにしていただきたい。また、そもそも区の支出がどういうふうに使われているか、そういった把握をされているのか否かをお伺いいたします。

 小田急線事業の進捗率についての発表が毎年年度末にありますが、その分母、分子、計算式の子細を明らかにしていただきたい。何回も聞いておりますが、答えてこなかった。にもかかわらず、年度末には発表があるわけです。ですから、あえてもう一度聞きます。

 連立事業は、小田急線については複々線連続立体事業として行われているわけですが、この工事は、当然のことながら鉄道事業者負担のはずの複々線部分が、つまり、南側の部分が先行して工事が行われております。既に世田谷区は五十六億円の負担金をこれまでに負担しております。鉄道事業者負担分の工事に区支出金が流用されていることにはならないのか。そうだとしたら地財法違反にならないのか、見解をお伺いいたします。

 壇上からの質問を終わります。

   〔大場区長登壇〕


◎大場 区長 お話がございました区が行った「せたがやの家」補助金交付は何ら違法性がないことなどを主張してまいりましたが、区の主張が認められず、遺憾に思っております。補助金差しとめについての判決内容に不服がありますので、控訴いたしたわけでございます。よろしくお願いいたします。


◎小畑 総務部長 自治体の首長の所在を明らかにしないことは許されるのかというご質問がございました。

 世田谷区では、公人としてスケジュール等を公務等を含め明らかにしております。しかしながら、プライバシーもございます。所在を明らかにできない部分もございます。

 以上でございます。


◎岡沢 建設・住宅部長 「せたがやの家」の補助金継続と、区長、幹部の責任の所在というお話がございました。

 「せたがやの家」の家賃補助は、入居者たる中堅所得者層及び高齢者等の居住の安定を図る目的で交付しております。判決は確定しておりませんので、法律及び条例に基づき、適正に補助金の交付を継続してまいります。

 以上でございます。


◎原 都市整備部長 小田急線連立事業の区の支出金、その使途について、そのほか幾つかお尋ねがありました。お答えします。

 まず初め、区が支出する連立事業の年次決算や使途明細について区は明らかにすべきだ、また、それを把握しているのかということであります。

 小田急線連続立体交差事業の東京都への負担金につきましては、区は地方財政法の規定に基づきまして、東京都からの請求を受けて支払っているものであり、東京都から必要かつ妥当な範囲で情報提供を受けるべきものと考えております。また、必要に応じて東京都に照会しまして、適切な説明をいただいております。

 平成十二年度の負担金は約九億円となっております。これにつきましては、十二年度に東京都で支出した経費から国庫補助金及び相当額を除いた額の十分の三の約九億円を、都の請求に基づき支払ったものでございます。今後とも世田谷区として説明を受けるのは、必要かつ妥当な範囲で東京都から情報を受けながら、負担金の支払いを含めて、東京都の連立事業を促進してまいりたいと考えております。

 二つ目、進捗率についての発表ということであります。明細を述べよと。これは何度もお答えしておりますが、総事業費に対する執行額の割合であると理解しております。

 三番目、複々線部分が先行して工事が行われているが、区支出金の流用がないかということであります。いわゆる建運協定、これは旧建設省と運輸省の鉄道事業に関する協定ですが、その建運協定に基づきましては、複々線化事業については鉄道事業者の全額負担とされておりまして、世田谷区、また国土交通省、東京都において事業費を負担することはございません。線増連続立体交差事業においては既存線の工事費分は、鉄道受益相当額を鉄道事業者が、その残額を都市側が負担するということになっております。また、複々線の工事費分については鉄道事業者が負担することとなっております。

 世田谷区の負担金は、その費用負担の割合に基づきまして算定された金額を地方財政法の定めに従って東京都に支払っているものであり、何ら問題ないと考えております。

 以上です。


◆五番(木下泰之 議員) まず区長にお聞きしたいんですけれども、判決をきちっと読んだんですかね。さっきお聞きしたんですけれども、それに答えていなかった。それで、つまり、それは控訴されたのは、それは控訴はできますからいいですよ。ただ、一審の判決についてどういう感想を持たれているのか、そのことを聞いているわけです。つまり区民は、報道もされておりますし、このことにすごく関心を持っていますよ。ですから、どういう感想を持たれているのか、そのことについてきちっと答えていただきたい。

 それから、不在になっていた期間が十九日にわたっていたわけですよ。私が聞いても一切答えない。ほかの人が聞いたら答えるんですか、どうですか。十九日間、区長の所在が不明になっていたんですよ、そんなことが許されますか。そのことについて、もう一度お答えください。

 それから、地財法の問題でありますが、地財法の第二十七条は、まさに自治大臣に対して異議を申し立てることができることになっているわけですね。ですから、区は今、流用問題については、これは極めて大きな疑惑になっております。十月三日に判決が出るでしょうけれども、その中でも触れられるかもしれません。

 いずれにしても、いろんな疑惑があって、一体どうなっているのか。用地費と、それから工事費の比率がどうなっているのか。年間どこが工事されたのか。そういうことを聞いても、今まで一切答えてこなかった。そういうことについて把握するのが区の役人の義務であると思いますけれども、その点について、もう一度お聞きいたします。

   〔大場区長登壇〕


◎大場 区長 判決文は読みました。しかし、そこの中で、区長としては当然控訴しなきゃいけないということを感じたわけでございますので、よろしくお願いいたします。


◎小畑 総務部長 公人といえども一〇〇%プライバシーがないということではございません。したがって、どなたからお尋ねがございましても、プライバシーにわたる部分については明らかにすることはできません。
 以上でございます。


◎原 都市整備部長 今お答えしましたように、地財法に基づきまして、世田谷の負担金は、その費用分担の割合に基づきまして東京都に支払っているものであります。
 以上です。


○新田勝己 議長 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。
 ここでしばらく休憩いたします。
    午前十一時四十七分休憩

   ──────────────────