平成13年第2回定例会(自66日 至614 日)

世田谷区議会会議録

2001年6月14日 監査委員選任への質疑・反対討論、監査委員挨拶


○新田勝己 議長 次に、


△日程第十三を上程いたします。
   〔河上次長朗読〕
 日程第十三 同意第二号 世田谷区監査委員選任の同意


○新田勝己 議長 本件に関し、提案理由の説明を求めます。大場区長。
   〔大場区長登壇〕


◎大場 区長 ただいま上程になりました同意第二号「世田谷区監査委員選任の同意」についてご説明申し上げます。

 本件は、世田谷区監査委員四名のうち、識見を有する者のうちから選任された峯元啓光委員の任期が平成十三年六月二十八日をもって満了となりますので、その後任として宮崎幸男君を選任いたしたく、地方自治法第百九十六条第一項の規定に基づきご提案申し上げた次第でございます。

 宮崎君は、昭和三十四年より世田谷区に勤務し、総務部主幹、区民部長、税務経理部長、区議会事務局長、総務部長を歴任し、区政のさまざまな分野にわたって活躍してまいりました。このように多年に及ぶ豊富な行政知識と経験、力量に加えて、すぐれた識見と誠実な人柄は監査委員として最適任と考え、選任の同意を求める次第でございます。

 何とぞ原案どおりご同意賜りますようお願い申し上げます。


○新田勝己 議長 以上で提案理由の説明は終わりました。
 これより提案理由に対する質疑に入ります。
 なお、質疑についての発言は、議事の都合により答弁も含めて十分以内といたします。
 発言通告に基づき、発言を許します。
 五番木下泰之議員。


◆五番(木下泰之 議員) 区長にお尋ねいたします。
 今、監査制度はいろんな意味で注目されております。行財政改革の時代ですので、非常に大事なセクターになっておるわけですけれども、平成九年の自治法改正の目玉は、外部監査制度を導入し、同時に当該行政OBの監査委員就任を制限したことでありますが、そういった流れを区長はどう評価するのかをまずお聞かせいただきたいと思います。

 二番目、外部監査制度については、文京区、豊島区などで既に導入しておりますが、当区として導入する決意はあるのか否かをお伺いしたいと思います。

 三番目、区OBで、しかも、最近まで総務部長を務めていた宮崎氏が監査委員になることは、監査委員の独立性を推し進める法改正の趨勢、世論に逆行することにはならないかと思うのですが、ご見解をお聞きいたします。

 四番目、三権分立やチェック・アンド・バランスについて、区長はどのような認識を持っておられるのか、お伺いしたいと思います。

 五番目、区長は、区OBの独立機関や附属機関への天下り、転出について、公正さとの兼ね合いの中でどのような認識を持っておられるのかをお聞きしたいと思います。

 六番目、宮崎氏は総務部長で定年退職となり、附属機関のトラスト協会の現職の事務局長であり、就任二カ月目であります。その宮崎氏を今度は監査委員にするわけでありますが、補助金団体のトラスト協会の事務局長を監査委員に任命することについての法的な問題はないのかどうか、また、道義的に問題はないのかどうかをお伺いしたいと思います。
 以上です。

   〔大場区長登壇〕


◎大場 区長 ご指摘のように、平成九年の自治法の改正によって、地方自治体に対する監査機能を充実するため、外部監査制度の導入などの法的整備が図られております。区といたしましては、こうした法改正の趣旨を踏まえ、監査機能を強化するために積極的に取り組んできたところでございます。

 また、お話がございましたように、区長は区のOBの独立機関や付属機関への天下り転出というものに対してどう考えているかです。今回の選任に当たりましては、地方自治法の趣旨を踏まえ人選を進めてきたところで、公正な人選と考えております。

 また、お話がございましたように、トラスト協会の事務局長を任命することにつきまして、法的に問題となる点はないかというお話がございましたが、また道義的問題ということでございますが、宮崎氏が独立機関である監査委員として適任であり、何ら道義的に問題はないと確認いたしております。
 では、あとは助役の方から。
   〔水間助役登壇〕


◎水間 助役 第一点に、外部監査制度の導入についてということでのご質問がございました。

 当区では、さきの議会でもご答弁を申し上げましたが、監査委員につきましては弁護士を登用したり、あるいはまた財政援助団体等の監査に公認会計士を活用するなど、改めてそういった改善も図ってまいりました。また、平成五年度からは行政監査を実施し、監査の充実に積極的に取り組んできたところでございます。外部監査制度の導入につきましては、他自治体の実施状況の検証や監査委員のご意見等をお聞きしながら、今後も検討してまいりたい、このように思っております。

 それから、区OBで、しかも、最近まで総務部長を務めていた宮崎氏が監査委員になることについてというご質問がございました。

 区のOB職員を監査委員に選任することにつきましては、区の職員としてこれまでの知識、経験から、事務事業に精通している等々の長所がございます。一方、身内に甘くなるのではないか、こういったようなご意見もございます。こういったようなことから、地方自治法では職員であった者を監査委員に選任する場合の人数を一人にしているものと、このように思っております。いずれにいたしましても、独立機関である監査委員がそれぞれの専門知識を生かされて、公正かつ厳正な監査に当たることは大切ではないか、このように思っております。

 三番目には、三権分立やチェック・アンド・バランスというようなことでのお話がございました。

 監査委員は独立した立場で行政施策や財務会計等のチェック機能を果たしていただいております。こうした独立した機能を発揮していただくことで区民本位の円滑な行政運営が行えるものと、このように認識をいたしております。
 以上でございます。


◆五番(木下泰之 議員) 平成九年の自治法改正は、それまで区のOB二名でもよかったものを一名に絞ったというよりも、一名しかなれなくしたわけであります。どこにも区のOBを登用しろとは書いてないわけですね。慣例でずうっとそういうふうにしてきたから、結果的に一名に絞られる形になったわけですけれども、しかし、本来でしたら、やっぱり独立機関でありますから、これは区とは関係ない方をやはり据えるべきだというふうに思います。

 しかも、法曹界から一名入れたからいいじゃないかというお話もありましたけれども、これは平成九年の改正を見越して、そういった対応にしたということであって、流れに追いつくのがやっとでありまして、もっと積極的に豊島区や文京区のように外部監査も入れ、そして独立させるために区のOBは排除する、そういうことをとっていただきたいと思いますが、それについて、もう一度意見をお聞かせいただきたいと思います。

 それから、地方自治法の百九十六条は「人格が高潔で」ということがうたわれております。個人の資質云々は言いたくはないんですけれども、問題はその資質というよりも、実際に今、トラスト協会の事務局長であり、事務局長に就任してからまだ二カ月間たっていない。その方をあえて監査委員に再度任用するということは、ある意味でトラスト協会を裏切るような形になると思うんですね。そういうことを強いるということは、人格の高潔さという点からいっても、非常に酷な話だと思うんですね。その点についてはどう思われるのか、そのことについてお伺いしたいと思います。二点。

   〔大場区長登壇〕


◎大場 区長 ただいまお話のありましたような話につきましては、私どもは一切に関係がなく、公正にやっていけるものと、こういうふうに思っております。    〔水間助役登壇〕


◎水間 助役 OBの件で、特に法改正の趨勢に逆行するんじゃないかというお話がございました。確かに法改正では、できるだけ広く一般の知識、学識経験を有する者ということを求めておりますが、ただ、一方では、法はOBの選出も予定しておりまして、逆行するものではないというふうに思っております。
 以上であります。


◆五番(木下泰之 議員) 私は百九十六条の「人格が高潔で」ということに対して、たった二カ月、トラスト協会の事務局長にお座りになった方を無理にやめさせて監査委員につけるということ自身が、ある意味でその人の定年後の人生設計もあったでしょうけれども、少なくともトラスト協会については、これは民間から事務局長を入れるべきだという意見もあるわけですよ。そういう中で、あえて天下りと非難されながらもそのポストに座った。二カ月もたたないうちに転出することを迫る。このことは人格の高潔さという観点からいって、それを裏切ることを強いることになりませんか。そのことについてはいかがですか。
   〔水間助役登壇〕


◎水間 助役 選任につきましては、区長の方でいろいろ知識、経験を有する者という中から選任をされたものと思いまして、そういった観点で選任されたものと思っております。


◆五番(木下泰之 議員) 私はこれで三度目聞きますけれども、人格の高潔ということについてどのように思われておりますか。区長、答えてください。
   〔大場区長登壇〕


◎大場 区長 ただいまのお話の人格の公正ということでございます。(「高潔です」と呼ぶ者あり)高潔でありますが、私どもはそのつもりで監査委員として選んでいるわけでございます。


◆五番(木下泰之 議員) 水かけ問答になるようですけれども、行為として人格の高潔さを奪うことにはなりませんかと聞いているんです。いかがですか。


○新田勝己 議長 以上で木下泰之議員の質疑は終わりました。
 これで質疑を終わります。
 ここで委員会付託の省略についてお諮りいたします。
 本件は、会議規則第三十八条第二項の規定により、委員会付託を省略いたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者あり〕


○新田勝己 議長 ご異議がございますので、採決は起立によって行います。
 本件は、会議規則第三十八条第二項の規定により、委員会付託を省略することに賛成の方の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕


○新田勝己 議長 起立多数と認めます。よって本件は委員会付託を省略することに決定いたしました。

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○新田勝己 議長 これより意見に入ります。
 なお、意見についての発言は、議事の都合により十分以内といたします。
 発言通告に基づき、発言を許します。
 五番木下泰之議員。
   〔五番木下泰之議員登壇〕


◆五番(木下泰之 議員) 監査委員選任の同意について、会派無党派市民は反対の立場から討論を行います。

 本日、区長は宮崎氏を監査委員に任命するに当たっての同意を求めました。しかしながら、私はこの選任に反対であります。宮崎氏個人の資質を云々するものではありませんが、宮崎氏は四月まで世田谷区の総務部長を務めておられた、世田谷区の幹部であった方です。その方が監査委員をおやりになる。しかも、総務部長の前は世田谷区議会の事務局長です。区に就職されて出世をされ、幹部となり、世田谷区議会事務局長に横滑りし、区の総務部長に戻り定年となり、外郭団体を経て監査委員、よくあるコースであります。

 しかし、このコースは地方自治制度にとって大いに問題のあるコースであるというふうに思います。三権分立からいっても、区議会事務局長が総務部長になること自体に大いに問題があるのであります。自治法上、監査委員は独立機関となっております。チェック・アンド・バランスという意味では重要な位置にあります。したがって、行政権とは関係ない方がその任につくのがふさわしいと思います。そういうふうに区長はお考えにならないのでしょうか。先ほどのお答えでは、どうもそうお考えになっていないようであります。

 確かに自治法上、区のOBを監査委員とすることは、今でも上限一人に限り違法ではありません。しかし、このことは地方自治法制度改革の不徹底さのあらわれなのであって、時代の要請はもっと先を進んでおります。世田谷区は四名の監査委員のうち二名を専門委員、二名を区議会議員としてきましたが、平成八年十二月まで二名の専門委員を区のOBあるいは都のOBで独占してまいりました。平成八年十二月に一名を法曹界から迎えましたが、これは平成九年の自治法改正をにらんでのことであり、決して自主的に区OB以外から専門委員を入れたわけではありません。

 自治法第百九十六条は「監査委員は、普通地方公共団体の長が、議会の同意を得て、人格が高潔で、普通地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者及び議員のうちから、これを選任する。この場合において、議員のうちから選任する監査委員の数は、監査委員の定数が四人のときは二人又は一人、三人以内のときは一人とするものとする。」となっております。
 また、その二は、「識見を有する者のうちから選任される監査委員の数が、三人である普通地方公共団体にあつては少なくともその二人以上は、二人である普通地方公共団体にあつては少なくともその一人以上は、当該普通地方公共団体の職員で政令で定めるものでなかつた者でなければならない。」というふうにされております。

 現行法でも、区のOBを監査委員にする必要性は全くありません。また、世田谷区は区議会議員を二名監査委員にしておりますが、監査委員を四名のまま、一名のみ区議会議員とすることもできるし、監査委員を三名に減らして、そのうちの一名を区議会議員とすることもできるのであります。五月の臨時議会で申し上げましたが、区議会議員については任期四年を全うすることが法で義務づけられているにもかかわらず、議会で首のすげかえが行われている現状からは、法定の義務である議員の監査委員定数を現行の二名から一名に減らすのが真っ当な対応ではないでしょうか。

 平成九年の自治法改正では外部監査制度も導入され、監査の独立性、客観性が求められております。既に文京区、豊島区、八王子市などでも外部監査制度が導入されております。もはや世田谷区は先進自治体とさえ言えなくなっている現状を認識していただきたいと思います。制度導入には多少時間がかかるでしょう。しかし、人事は今すぐにでもできるのであります。監査の独立性と客観性を担保するために、区OBを排除することを今すぐに行うべきなのであります。

 別の観点から見ても、今回の人事はさらに問題があります。総務部長を定年でおやめになって、世田谷トラスト協会の職を得たにもかかわらず、二カ月もたたないうちに、今度は監査委員とすることを区長は提案してきたわけであります。私は財団法人トラスト協会の評議員として、事務局長も区のOBではなく民間人が引き受けるべきだと以前から主張してまいりました。しかし、そうはなっておりません。  トラスト協会の会費収入は、個人会員が年間千円、総合計でも四百数十万円しか会費収入はありません。しかし、それ以上の人件費をこの組織は食ってしまっている。人件費経費さえ寄附金で集まらない体質になってしまっている。そのくせ、億単位の補助金が区から入ってきております。このこと自体問題です。問題だと指摘しているにもかかわらず、今年度も区幹部が、宮崎総務部長が退任後、事務局長に就任したわけであります。まさにそういった批判をしてきたにもかかわらず就任された。

 そうである以上、区OBであっても、まさに区民のために、緑を守るためにそこで働く、一生懸命働いてその姿を見せる、それが務めではないでしょうか。それが二カ月で、今度は監査委員に転出してしまう。一体何なのだというふうに言いたいと思います。これでは単なる腰かけポストということではないですか。トラスト協会の会員と区民に対して失礼だと申し上げたい。

 宮崎氏は、一度トラスト協会の事務局長を引き受けた以上、職務を全うすべきであり、道義的にいって、今回の監査委員については辞退すべきなのであります。百九十六条には「人格が高潔で」ということが書かれております。これはご本人に対しても非常に不幸なことであると思います。区長はそういった人格の高潔さを失うことを強要する、そういうことをしているのであります。

 また、補助金団体であるトラスト協会の現職の事務局長が監査委員に転出することについては、法的に問題はないといっても、今申し上げましたように、道義的に大いに問題があるわけであります。自治法の趣旨からいって、現職の外郭団体役員が監査委員になること自体、法の不備、抜け穴にすぎません。区長は道義的にいっても、宮崎氏を選任すべきではないのであります。

 監査委員、とりわけ代表監査委員には絶大な権限があります。世田谷区の監査委員は、平成九年の自治法改正により、法曹界からせっかく監査委員に入っていただいたにもかかわらず、区OBを代表監査としております。区議会議員二名の監査委員がこれを是としているために体制が続いているわけですが、これは全くおかしいことであります。本日、トラスト協会の事務局や監査事務局に聞いても、宮崎氏が代表監査委員になることを前提に話が進められております。今までの常識ではそうでしょう。しかし、これでよいのかと、あえて問いたいと思います。

 自治法の第二百条の五は、「事務局長、書記その他の職員は、代表監査委員がこれを任免する。」というふうになっております。つまり、人事権をも掌握できる強大な権限を有しているのであります。そういった権限を持った監査委員が区政にメスを入れることは可能であります。逆を言うと、だからこそ、行政は代表監査委員を区のOBとしたい。これを打破することが行財政改革の第一歩であるはずであります。

 小泉革命とか言われております。この区議会でも、代表質問、一般質問で聖域なき改革を称賛する声がこの議場にこだましております。むなしくこだまするのか、先へ進むのか、この議場におられる皆さん次第であります。もしその気があるのならば、やれるところからやろうじゃありませんか。この監査委員人事に賛成する方々は、まさに旧体制であります。ゾンビだと言われても仕方がありません。聖域なき構造改革の声が本物なら、まずはこの監査制度を変える。癒着というふうに区民から批判されている制度を打ち破っていくことを始めようじゃありませんか。区長は提案を撤回すべきだし、議会は提案に賛成すべきではありません。前総務部長宮崎氏の監査委員選任については、本人は辞退すべきでありますし、私はこの監査委員選任について反対いたします。

 以上であります。


○新田勝己 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。
 これで意見を終わります。
 これより採決に入ります。採決は起立によって行います。
 お諮りいたします。
 本件を同意と決定することに賛成の方の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕


○新田勝己 議長 起立多数と認めます。よって同意第二号は同意と決定いたしました。
 ただいまの同意に伴い、新旧監査委員からあいさつがあります。


◎峯元啓光 旧監査委員 一言ごあいさつを申し上げます。

 私こと、今月二十八日をもちまして任期満了により監査委員を退任することになりました。この四年間、常に公正不偏の態度に心がけますとともに、時には煙たがられる存在として、いろいろな監査を通じまして意見、提案あるいは指摘をさせていただきまして、区行財政改善の一端を担えたものと思っております。
 思い返しますと、世田谷区に参りまして二十四年間、ヒューマン都市世田谷、区民の暖かい心を受けながら、やりがいのある仕事ができたと思っております。よかったなと思っております。

 最後になりますけれども、皆様方のますますのご活躍、世田谷区政の限りないご発展を心からご祈念申し上げまして、ごあいさつとさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)


◎宮崎幸男 新監査委員 ただいまは選任にご同意をいただきましてありがとうございました。
 私は監査委員といたしまして、区民と区政の信頼関係をより高めるため、こういうことを視点に、今後努力をしてまいりたいというふうに思います。大変重責でございますけれども、私の全力を傾けまして責任を全うしてまいりたい、このように思います。どうぞご指導、ご鞭撻のほどをお願い申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)


○新田勝己 議長 以上であいさつは終わりました。

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