2001年3月16日予算特別委員会質疑<保健福祉委員会所管>オウム対策について


平成13年  3月 予算特別委員会
平成十三年予算特別委員会
予算特別委員会会議録第五号
日 時  平成十三年三月十六日(木曜日)
場 所  大会議室




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○新田 委員長 引き続きまして、無党派市民、どうぞ。

◆木下 委員 オウム真理教の問題についてちょっとお尋ねしたいと思うんですけれども、緊急対策の副本部長でいらっしゃる助役さんにお聞きしたいんですけれども、オウムの問題に関して保健福祉分野のセクションはどういうふうに関与されていますでしょうか。


◎八頭司 助役 保健福祉分野として、特に当面の対策の部分で余りかかわる分野というのはございません。


◆木下 委員 昨年の二月一日に、各都道府県、政令市、特別区衛生主管部長あてに厚生省からオウム真理教信者などに対する社会復帰対策の推進についてということで文書が来ているわけです。それから、昨年の十二月二十二日、またやはり同じように文書が来ておりまして、これはカルト離脱者に対する相談マニュアルというものが来ているわけなんですが、この文書について、今の対策本部で活用したというようなことはございますか。

◎八頭司 助役 当面ありませんと申し上げましたのは、当区について集団移住のようなケースは今回が初めてでございましたので、まだカルト離脱とか、できたら離脱していただきたいと思っておりますけれども、そういう状況ではございませんので、そもそもオウム側との話し合いの糸口すら事実上ないという状況でございますので、そういう段階に達すれば、その文書に沿った対応もこちらとしては考えていきたいと考えております。

◆木下 委員 突然移住してきたというふうにとらえられていますけれども、実は、世田谷というのはオウムにとっては非常に大きな位置を占めていたところなわけですよ、本部があったところですから。つまり、オウムが今のように大きくなる前、三百五十人ぐらい、かなり大きくなっていますけれども、そのころに本部を世田谷に移してきたわけですね。それからずっと問題はあったわけです。
 ですから、そういった意味では、カルト集団に対する一つの対策というのは、本来はもっと前から区はとっていかなければいけなかったと思うんです。つまり、極めて特異な集団であるわけで、これは心理学とか精神分析とか、そういう人たちの手をかりなければいけないし、それから離脱しなければいけない人、つまり出てきた人、あるいは家族の相談、そういったことについては、やはり前々から取り組む必要があったと思うんですけれども、その辺は世田谷区としては全然してこなかったということですか。


◎向山 健康推進課長 今ご指摘の、それから冒頭にお話がございましたような国のガイドラインは、本当に精神保健の分野の中でも、国の中でも研究がおくれているという分野でございます。そういった点では、特別区等が実施をしていきます研修等に職員が参加をしていったり、あるいはこういったマニュアルを職場の中で周知をしていく。それから、相談の体制ということで、これは東京都の方ともお話はしてございますが、とりたてて特別対策ということで特別な窓口を設置するのではなく、既存の精神保健相談の中でそういった事例が発生した場合に、どの職員でも、だれでもきちっと丁寧に対応がしていけるような、そういう体制を整備していくというような考えでございます。


◆木下 委員 オウム真理教については、団体規制法等ができて、一応公安委員会等の監視体制のもとに置かれているわけです。そういった中で、この法律ができた後は、つまり居住については、これは裁判所の方でも移転届に世田谷区が異を唱えても、それを認められない可能性が非常に強いわけで、長期化するおそれも非常にあるわけです。

 そういった中で、やはりオウムというのはどういうものかということについて十分知らなければいけない。その中で、そういったことを考えるときに、通達についてきた文書というのは非常に役に立ちますよ。例えば、分析担当官、これは法務省矯正局の鑑別企画官の石毛博さんという方が書いているんですけれども、どうやるとサリンがまけるかという、そういったところがございまして、この項では、教祖の破壊願望からの指示があったとしても、初心においては反社会的行為へ動機づけられていなかった信徒が、なぜ無差別大量殺人を行ったのかを検討する。オウム真理教の出家はみずからを現実世界から離して、教祖のつくった反世界に住むことを意味する。そういうふうに言った上で、オウム真理教が正義の国家であり、それが悪である別の国家によって攻撃されるとなれば、殺人は正当な戦争として大義名分を持つ。その際、ポアされた者は、悪いカルマを捨て去って救済され、ポアした側は功徳を積むとの思想から、信徒は葛藤から逃れ、むしろ善行として人を傷つけ、殺すことになる。人類史上、このように絶対者に服従する正義の行動は、神権政治や絶対君主制、ファシズムのもとにおいて何度もあらわれ、残忍な大量殺人も宗教や正義の名のもとに繰り返された。人の真理として強い強権者が存在し、段階的に残忍な行動をエスカレートしていくと、個人の良心や責任感の働きを妨げ、権威者の命令に服従して、非道徳的な行為にも手を染めてしまうという性質がミルグラムの服従実験として公に認められている。

 こういった知見は、いろんな角度から集積されたものが配られているわけです。そういう緊急対策本部等をつくったら、まずは精神衛生の関係を担当しているセクションはやはり入れるべきだと思うんです。そして、こういう文書もできているわけですから、そういったものも活用しながら、一体オウム真理教とは何だったのか、あるいはオウム真理教だけではありません、カルト集団というのは最近非常に注目されています。古くは統一教会から、ライフスペース、法の華、海江田塾も含めて、さきのミイラ事件みたいなのもありますね。そういったことがまさに今、世界的に言っても大きな問題になってきて、現代社会のある種の病理になっているわけです。そういった問題としてきちっととらえて、世田谷区が区民の相談に乗れるような形でいち早く対応しておかないと、僕はこの問題は長引くと思うんです。だから、そういうことをきちっとやって万全の対策をとっておくことは必要だと思うんです。

 今、石毛さんの報告にもあったように、日本はかつて、戦前は国家自体がカルト国家だったわけです。そういった形で、戦争でかなり残忍な殺人まで犯したという経験も持っているわけです。オウム問題を市民とかけ離れた、かなたの問題としてとらえるのではなくて、あしたは自分の息子がなってしまうかもしれない、そういう問題としてきちっととらえて、世田谷区としては万全の措置をとれるように、まずは保健福祉の分野の方も入っていただきたい、そういうふうに思うんですが、いかがですか。


◎八頭司 助役 そういう意味で、対策本部のメンバーはすべての部長が入っておりますので、おっしゃる部分で該当するものがあれば、必要に応じその部長が参加をいたします。


◆木下 委員 オウム真理教を初めとするカルトの事件が歴史的な事件であって、そういうものとして突きつけられているという認識に立たない限りは、この問題について対抗できないというふうに私は思いますので、その立場から頑張っていただきたいというふうに思います。


○新田 委員長 以上で無党派市民の質疑は終わりました。
 ここでしばらく休憩いたします。
    午後零時六分休憩