平成13年第1回定例会(自31日 至329 日)

世田谷区議会会議録

2001年3月9日 補正予算及び組織条例の一部改正及び情報公開条例改正案への反対討論


○山内彰 議長 これより意見に入ります。
 なお、意見についての発言時間は、議事の都合により十分以内といたします。
 発言通告に基づき発言を許します。
 五番木下泰之議員。
   〔五番木下泰之議員登壇〕


◆五番(木下泰之 議員) ただいま上程された議案のうち、議案第六号の一般会計補正予算及び議案第十号の「世田谷区組織条例の一部を改正する条例」及び議案第十四号「世田谷区情報公開条例」について、反対の立場から討論を行います。

 今回の補正予算で、小田急線の事業を急ピッチで進めたために、世田谷区の負担分が二億円も余計に組まれております。もとより小田急線の線増連続立体化事業は、下北沢地域が完成しなければ複々線が完成しないわけですから、下北沢地域の計画のおくれこそ問題であって、梅ケ丘から喜多見までの経堂工区についてはそれほど焦っても意味がない。ところが、この一年間はしゃかりきになって工事を進めているというのが現状であります。なぜか。これは、さきの下北沢の四線地下化の公表を前に、梅ケ丘以西の高架工事の既成事実化という政治的な意味合いを持って、東京都が工事を急いでいたからとしか言いようがありません。

 経堂工区の高架事業、事業認可の取り消し裁判で違法性が指摘されております。裁判所が異例にも文書で求釈明を求めたことでもありますが、線増線部分が建設大臣の事業認可なしに工事が進められているという事実は隠しようがありません。昨年の秋、そういった違法性を踏まえて裁判所が、高架事業の見直しのため原告と話し合うつもりはないかという事実上の和解勧告を国に行ったにもかかわらず、被告の国はこれをけり、裁判は本年六月にも結審され、秋には判決ということになりました。裁判所が事業認可の違法性を認定する判決を下す可能性は極めて高いのであります。

 下北沢で四線が地下化であれば、そのまま成城までシールドで地下を掘る方が、ジェットコースターのように短い区間の間で高架と地下を上がったり下がったりするような工法よりも安く、早く、安全であることはもはや常識であります。私は下北沢の地下化公表を機に、梅ケ丘以西成城までの地下化への全面見直しを求めるものであります。したがって、小田急高架工事への補正予算による追加支出を認めるわけにはいきません。

 また、財務担当者の説明では、財調の再調整で神風のように約七十六億円の余裕財源が生じたそうでありますが、この余裕財源を都市整備基金に二十億円も与えるということに反対であります。都市整備基金への大幅な充当は、主に小田急各駅周辺再開発に備えたものだということが助役から説明されておりますが、時代はもはや土木公共事業優先は許されない時代であります。降ってわいた余剰財源は、むしろ減債基金に全部組み入れ、財政の健全化に資するべきであるというふうに考えるものです。

 次に、議案第十号の世田谷区組織条例の一部を改正する条例についてでありますが、私は昨年も組織条例の改正に反対いたしました。それは、環境部をなくすという乱暴な組織改正であったからであります。さすがに批判に耐えかねたのか、環境・災害対策室といった中途半端な室から災害が独立し、危機管理とあわせた室とし、環境総合対策室を環境セクションとして独立させるのが今回の改正であります。

 しかし、環境の世紀に突入した、まさに二十一世紀の初頭、部中部としてしか存在しない世田谷区の環境セクションというのは一体何なんでしょうか。環境セクションは、より総合性を持たせ、部として独立して存在させ、優秀な人材を集めなければならないのであります。このような改変でよしとするわけにはまいりません。

 さらに問題なのは、今回の改変で第二条表生活文化部の項第六号中「環境の向上及び公害対策」が「環境施策の総合的な計画及び調整並びに環境の向上」という文言に変えられ、「公害」の二文字が忽然と消えたということであります。このことは極めて問題であります。世田谷区が環境行政をどう考えているかの証左であります。このような組織改正に反対いたします。

 次に、議案第十四号「世田谷区情報公開条例」についてでありますが、今回の改正は現在の条例に比して悪くなっていると言うべきであります。現行条例は一条で情報の公開を請求する区民の権利をうたい、二条で情報と情報の公開を定義し、情報について「当該実施機関が管理しているものをいう」と、情報が広く定義され、この情報の公開の区民の権利がうたわれていたものでした。

 ところが、今回の改正案を見ると、一条で「行政情報の開示を請求する区民の権利」という言葉に書き改められており、二条で実施機関と行政情報の定義に変わっております。そして、「『行政情報』とは」として、電磁的記録が従来のビデオテープ、録音テープを拡張する形で追加はされておりますが、「当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているものをいう」と、公開の対象の範囲を初めから狭めているものであります。

 現行の情報公開制度がすぐれている点は、職務上作成、取得した情報で、管理しているものを対象にしていたことであります。ところが、今度の改正案では、組織的に用いるものとして保有しているものと、情報の対象を狭めているわけであります。これは重要なところであります。情報開示の言い逃れとして組織的に用いるものではないと、情報開示の対象から逃れられるからであります。

 また、現行の情報公開条例でも、情報公開の制限事項を一括して列挙しておりますが、区政執行情報については、公開することにより公正で適切な意思決定を著しく妨げるおそれのあるもの、あるいは国などとの協力関係または信頼関係を著しく損なうおそれのあるもの、争訴または交渉の方針などに関する情報についても、公開することにより当該事務事業の目的が達成できなくなり、または適切な執行を著しく妨げるおそれのあるものというふうになっており、著しく妨げる、著しく損なうという文言が行政側の情報非開示の選択の幅を狭め、広く情報公開をさせるための歯どめの役を果たしてまいりました。

 ところが、今回は制限事項の表現の仕方が変わりました。つまり、著しく妨げられるおそれと言うべきところを、不当に何々するおそれという言葉で置きかえ、行政側の情報非開示の範囲を拡大解釈できるようにしているものであります。七条の五項は次のようになっております。「実施機関並びに国及び他の地方公共団体の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に区民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え、若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの」については非開示でよいということになっております。

 さらには、行政執行情報について、当該事務または事業の性質上、当該事務または事業の適切な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものは無限定に除いてよいことになっているのであります。しかも、調査研究にかかわる事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれについては、具体的に例示した上でそうなっているのであります。

 まだまだ問題はあります。今回の条例では、区以外の第三者に関する記録が開示情報になされている場合、開示決定に先立ち、開示請求にかかわる行政情報を第三者に通知して、意見書の提出を求めることができるとしております。これでは、上級機関や──国や都ですね。あるいは当該企業、例えば小田急などからの干渉を招いたり、訴訟資料などの場合、市民の情報収集が、市民が裁判などで情報収集をした場合に、そういった情報収集が不当に事前に漏れる結果になることは必須であります。

 さらに、第九条の当該情報の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができるとしたことにも大いに問題があります。この条項は、行政が都合の悪い情報を秘匿するための裁量を拡大されるために使われるでありましょう。

 今回の情報公開条例の原案提出と条例案審議過程も問題です。現行制度ができるときには市民参加も広範に行われ、条例化されました。ところが、今回は区議会議員の我々にさえ骨子が示されたのが二月の中ごろでした。骨子が示される以前は、今回の改正は電子情報を開示の対象に入れる改正だと説明されておりましたが、もし電子情報を入れるためだけならば、現行制度に追加すれば済むものでありました。しかし、出てきたものは全面改正でした。そして、一度の委員会審議で本日の採決です。区民の基本的な権利にかかわるこの改正条例案は、少なくとも公聴会を開催して、慎重審議を行うべき性質の条例であったはずであります。今回の改正案は、少なくとも今までは他の自治体に比して先進性のあった情報公開条例を改悪した恥ずべき条例案であるというふうに私は申し上げておきたいと思います。

 以上、三つの議事に対する反対討論を終わります。


○山内彰 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。
 これで意見を終わります。