平成13年第1回定例会(自31日 至329 日)

世田谷区議会会議録

2001年3月2日 一般質問


    午後五時開議


○山内彰 議長 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 ただいま区長が出席しておられません。体調の関係で、なおしばらく様子を見たいとのことですので、ご承知おき願います。
 一般質問を続けます。
 五番木下泰之議員。
   〔五番木下泰之議員登壇〕


◆五番(木下泰之 議員) 小田急線を下北沢地域で在来線を含め四線とも地下化する方針について、去る二月二十七日の都議会で東京都がようやく発表いたしました。既に私はこの壇上から、下北沢地域の小田急線を四線とも地下化する東京都の方針は、梅ケ丘以西を高架化する都市計画素案の説明会が行われた一九九一年の段階から決まっていたということを申し上げてまいりました。複々線の地下化を先行させて公表し、時期を見て在来線の地下化を打ち出す。この戦略は既に一九九三年十一月十六日に業界誌の週刊「首都圏プロジェクト」にすっぱ抜かれており、まさに事態はそのように進んでまいりました。

 下北沢が四線地下で、成城が地下。それなのに梅ケ丘から成城までが高架。これはジェットコースターです。世田谷代田も四線とも地下なのだから、そのまま成城まで通せばよいのではないかというのが道理であります。今回の下北沢四線地下化の公表は、梅ケ丘以西の高架計画が全くの誤りであったことを行政が認めてしまったことと同じであります。地下化は費用の点で無理だ、環七の下を潜ることは不可能で、駅が移動せざるを得ない。地下駅は町を衰退させるなどと言い続け、高架化を推進してきた勢力が今になって、我が党は地下を含めて検討を主張してきたとか、早期実現を求めてきた、地下化を要望する、地上は緑になどというふうに言っております。

 政策転換をするのはよろしい。そうであるならば、悔い改めて、間違った高架事業は見直すべきだと言っていただきたい。文字どおりこの空白の十年間、私たちは間違っていましたと悔い改めるべきなのであります。

 東北沢から世田谷代田までが四線地下ならば、シールドで成城学園までつなげるのが最良であることは言うまでもありません。そうすれば、地上に緑を生かしたまちづくりができることは言うまでもないことです。今からでも遅くはないのであります。

 そして、この際、ここであえて申し上げておきたいと思います。今回の東京都の下北沢地域の四線地下化方針公表は、三十七年にもわたり小田急高架に反対し、地下鉄化を求めてきた世田谷の市民の都市計画代替運動の一つの勝利であり、都市計画を市民の手に取り戻すための大きな勝利の一歩だということをここで申し上げておきたいと思います。


 質問通告に従い、質問を行います。

 まず、北沢四丁目の建築違反と虚偽による建築申請についてお伺いいたします。

 北沢四丁目に現在赤紙が張られた違反建築があります。問題の建物は借地権つき家屋を競落したX氏が営業目的の建物新築を試みたが、近隣のセットバックの同意が得られずにいたのを、Y建設のZが一九九九年二月十二日に当該土地及び共通通路についての架空の売買契約書を区の建築指導主事に示して同年三月二十九日に建築確認をおろさせた後に、同年四月十四日にX氏が地主と当該土地底地の売買契約を結び、Y建設とは別の建設会社に建築を依頼して建設中の物件であると聞きます。

 X氏が実際に地主から買えたのは底地と共通通路四分の一であって、地主からも売買の際に新築できないと言われていたにもかかわらず、これを承知で買い、建築確認申請をも逸脱して二階建てのアパートつき家屋を建てようとしていたとのことです。この物件は最近、世田谷区長名で建築施工の停止の処分を受けているものであります。何度か現地は見ておりますが、二月二十三日の夕方、現場を見に行き、驚きました。昨日まであったはずの建築停止処分の鑑札の標識が外されており、近くで門柱のれんがを加工している建築作業員が作業を続けていたのであります。作業員に聞くと、午前中に区の職員が鑑札は外していきました。奥にはまだ一つ残っていますよと言い、作業については区の職員からとがめ立てはなかったというのであります。

 そこでお聞きいたします。工事停止処分に至った違反の内容と指導経過について示していただきたい。工事停止処分にもかかわらず、目立つところからの鑑札の撤去を行い、工事の施工を認めているのはどういうことかご説明していただきたい。

 Y建設のZは、確認申請時に売買契約書を提出していますが、実際にはその事実はなく、建築要件を満たさぬ形でX氏が購入後、別の建設会社が施工している現在も建築主X氏の交渉人として立ち回っていると聞きますが、この確認申請の実態を明らかにしていただきたい。このようなことが許されれば、虚偽売買契約書による違法建築がまかり通ることになるが、区はどのように対処したのか、経過を示していただきたいと思います。

 実際の売買実態が建築申請の基準を満たしていないことが発覚したとすれば、建築確認自体を取り消すべきであるというふうに考えますが、ご所見をお伺いしたいと思います。また、このZは九月議会で問題にした松原四丁目の小規模宅地指導要綱違反を行った業者であるというふうに聞きますが、事実であるかどうかお答えください。

 事業認可を与えた当時の建築主事はだれかも明らかにしていただきたいと思います。


 次に、経堂一丁目の建築違反の是正内容と近隣説明についてお聞きいたします。

 十一月議会で経堂一丁目の建築違反は適法に是正されたとの答弁がありました。ところで、九月議会質問の準備取材の際、担当の工藤建築主事は、六十センチ以上の高さ制限違反があるとしていたが、その後、建築基準法違反は斜線制限違反ということのみになり、当初の高さ制限違反は不問に付されたままになっております。

 そこでお聞きいたします。高さ制限違反が不問に付された理由と建築違反是正措置の具体的内容を明らかにしていただきたいと思います。

 建築申請時の平均地盤面と是正指導時の平均地盤面は同一であるのかどうかをお聞きいたします。また、同建物に関する平均地盤面について、解釈の変更があったのかどうかお聞きいたします。解釈の変更があったとするならば、どのような根拠によるのか明らかにしていただきたいと思います。

 設計変更内容や建築違反の是正指導内容の説明は、具体的な日照被害をこうむる近隣に具体的になされなければならないと思いますが、いまだなされていません。少なくともこの事案は建築違反の事案であって、近隣の日照被害とも関係するものでありますが、丁寧に近隣に説明されてしかるべきものであります。近隣への説明責任の所在をお伺いいたします。

 以上、壇上からの質問といたします。


◎濱詰 北沢総合支所長 北沢四丁目の建築確認に関しまして何点かご質問をいただきましたので、お答えを申し上げます。

 まず、建築違反の内容と指導経過でございますけれども、この北沢四丁目の建築物は平成十一年三月二十九日付で専用住宅として確認をいたしましたが、建物がほぼ完成間際に二階の一部を変更し、間貸しできるようにしようとした用途違反及び申請時の敷地の計画内容と現状が異なる点の二点が建築違反の内容でございます。

 指導経過でございますが、本件は、平成十二年九月上旬の工事着工後、共同住宅になるらしいとの陳情があったため、監視を強化しておりましたところ、平成十二年九月下旬、違反建築として指導をしたものでございます。同十二年十一月、是正誓約書の提出があった後も監視指導を継続したところ、平成十三年一月下旬、突如変更工事が行われかけたため、平成十三年二月二日付で建築基準法第九条第十項に基づく工事の停止命令の行政処分を行ったものでございます。現在も是正につきまして指導中の事案でございます。

 次に、虚偽による確認申請につきましてご答弁を申し上げます。

 本件建築確認は、建築確認申請の提出があった時点で、現場の実査によりまして申請地の確認を行いまして、敷地の形状、高低、土地の境界線等の調査を踏まえまして、申請図面等に基づき、法令上の審査を行い、確認処分を行ったものでございます。適正に審査し、処分したものでございます。地裁の判決にもございますように、建築主事は、建築確認申請の審査に当たって、提出された書類により建築関係規定に適合するかどうかを審査するものでございまして、申請建築物の敷地の所有権、使用権の有無等を調査する義務はなく、敷地等の所有関係の確認を要する審査まで求められているものではございません。

 しかしながら、本件の場合、工事着工後、違反の監視強化をしている過程で、平成十二年九月下旬、工事内容が申請時の計画と異なっていたため、違反建築として是正指導を行っているものでございます。

 次に、この業者は松原四丁目と同一の業者であると聞くが、本当かということでございますが、松原四丁目の建築申請人と北沢四丁目の建築申請人は、それぞれ個人名で申請が出されておりまして、同一人物ではございません。ただし、それぞれの申請人は特定の事業者の代表者と役員の関係になっておりまして、事業者として同一であるというふうに考えております。

 しかしながら、本件北沢四丁目の申請は平成十一年二月になされたものでございまして、また松原四丁目の申請は平成十二年七月から八月になされたものでございます。このように、この建築申請が一年半の時間差をもってなされたこと、さらに別々の個人名で申請がなされたため、申請時においては同一事業者と認識はできないものというふうに考えております。

 それから、当時の建築主事はだれかということでございますが、本件の建築確認処分は平成十一年三月二十九日付で行われておりまして、当時の都市整備部建築第一課長による処分でございます。

 次に、虚偽による確認申請でございますけれども、先ほどもお答えを申し上げましたとおり、建築確認申請の審査に当たりましては、地裁判決が示すとおり、申請にかかわる計画が建築関係規定に適合するかどうかを審査するに当たり、申請建築物の敷地を現地調査したり、また土地に対する所有権、使用権の有無を調査する義務はないとするもので、敷地等の所有関係の確認を要するものではございません。したがいまして、その真偽について審査を求められているものではないというふうに考えております。

 それから次に、工事停止命令の公告看板を外した理由は何かということでございますが、本件現場の標識を一部取り外した理由は、立入調査によりまして違反事項の主要な部分の是正が確認できたため、複数設置の標識のうち、一枚を取り外したものでございます。
 以上でございます。


◎小畑 世田谷総合支所長 経堂一丁目の建築物につきまして三点ご質問がございましたので、順次お答え申し上げます。

 まず、高さ制限に係る違反の内容と是正措置の内容についてでございますが、高さの制限につきましては、第一種低層住居専用地域におきましては、建築基準法第五十五条に基づき、建築物を十メートル以下にする制限と、北側や道路からの配置の距離からの斜線による高さの制限がございます。ご質問の建築物につきましては、最高の高さはもともと十メートル以下であり、適合しておりました。前回の定例会でお答えしましたとおり、配置が当初の計画と異なった位置になったことにより、北側の斜線による高さにおいて不適合が生じたものでございます。口頭にて指導を行った結果、不適合となっておりました鉄筋コンクリートの柱、はり、壁、屋根の部分につきましては、既に除却されており、現場において適法であることを確認しております。

 次に、平均地盤面についてのお尋ねがございました。建築基準法によれば、平均地盤面は建築物が周囲の地盤と接する平均の高さにおける水平面を言うことになっております。ご質問のありました建物につきましては、斜面地にあるため、またただいま申し上げましたとおり、申請時における建物の計画の位置と現状における建物の位置が変わったため、平均の地盤面が変わったものでございます。平均地盤面からの建物の高さは是正されております。平均地盤面に対する解釈の変更があったものではございません。建築基準法第七条第四項によれば、当該工事に係る建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合しているかどうかを検査しなければならないということが定められております。こうした法律的根拠に基づき、現状が適法なものであることを判断しております。

 次に、近隣説明についての質問にお答えします。

 中高層建築物等の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例では、建築の変更についての説明責任までは事業者に求めておりません。近隣への影響が出る建築物の変更につきましては、区は従来から事業者に対し、再度近隣へ説明するように指導しております。今回の建物の工事につきましても、同様に工事内容や建築物について再度近隣に説明するよう再三施工者に求めているところでございます。今後とも、さらに施工者に対し、近隣説明を行うよう求めてまいります。

 以上でございます。


◆五番(木下泰之 議員) 北沢四丁目の事案なんですけれども、これは先ほど東京地裁の判例か何かをおっしゃたわけですけれども、つまり検査義務が、つまり調べる義務がないというふうに言ったところで、実際問題として後で調べてみたら不適合であったということがわかったわけです。としますと、実際に不適合なわけですから、それについて差し戻してそれを取り消すということは不可能じゃないと思うんです。その辺についてのご見解を再度求めたいと思います。

 それから、経堂一丁目の事案につきましては、説明を再度求めるというふうにおっしゃっていましたけれども、実際問題としてまだ近隣に説明がなされていないわけです。これはやはり非常に問題であるというふうに思います。ですから、そういうことがなぜ世田谷の条例に明文化されていないのか、そのことについてもお聞きしたいと思います。


◎梅田 烏山総合支所長 事実と違う確認については取り消すべきではないかというご指摘がありました。法律に強い議員には既にご案内だと思いますけれども、建築確認行為と許可行為の違いについてご理解いただきたいと思います。確認はあくまでも、先ほど申し上げたように図上において、その事柄が法に抵触するか、しないかのチェックということで、確認申請が交付されたからといって、新たな権限を生じるものではないということで運用しております。
 以上です。


◎小畑 世田谷総合支所長 世田谷区中高層建築物等の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例、これはその名のとおり、この条例の趣旨といいますのは、工事によって生じます日照の阻害、工事中の騒音等に起因する紛争に対しまして、予防と調整を図ることを目的としております。そのため、工事に着手する前に、その計画を近隣住民に周知徹底することを規定しております。着手後の変更については対象としておりません。

 しかし、建物の高さが高くなるとか、配置が大きく変わるなど、周辺への影響が多い変更につきましては、再度周知するよう指導しているものでございます。お話の件につきましては、今後さらに強く施工者に対して近隣説明を求めてまいります。
 以上でございます。


◆五番(木下泰之 議員) 特に北沢四丁目の事案なんですけれども、もし今の梅田支所長の言った解釈が正しいとすれば、結局、建築違反に対して何らの規制力がない。つまり、届け出で虚偽申請を幾らしても、チェックする権限も何もないということになってしまうと思うんです。これはある意味で、もしそれが法解釈上そうだということであれば、それを放置しておいていいものかどうかという問題があると思うんです。つまり、虚偽申請を幾ら出しても、それをチェックする手だてがない。しかし、実際には虚偽であった。そういったことがわかったとしても、何らの是正措置ができない。そういったことについて、建築の第一線の現場にいる方々はどういうふうに対処しようとされているのか、そのことについてお聞きしたいと思います。

 それから、中高層紛争の条例についても、やはりこれも申請時にそれらしいものを出して、あと義務がないとすれば、非常に問題があると思うんです。これについても、やはり改正等も含めて検討すべきだというふうに思うんですが、この辺についてもご回答いただきたい。


◎梅田 烏山総合支所長 先ほどご答弁いたしましたのは、既に確認処分をしている建築確認に対して、事実が違うからそれを取り下げるべきではないかというご指摘がありました。建築確認そのものは、図面、書類等が合っていれば、法律に抵触していないということの証明にすぎない。ですから、取り下げたところで何も意味がないという趣旨で申し上げて、虚偽申請に対して云々という話では言及いたしておりません。
 以上です。


◎小畑 世田谷総合支所長 先ほどご答弁申し上げましたとおり、この中高層建築物等の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例、この趣旨はあくまでも予防と調整を図ることを目的として制定された条例でございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、工事に着手する前の近隣住民への周知徹底、これは強く求めておりますが、着手後の変更については対象としておりません。ただ、議員から先ほどお話がありますように、周辺への影響が多い変更につきましては、区としても強く指導しておるものでございます。
 以上でございます。


○山内彰 議長 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。

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