2000年10月12日決算特別委員会質疑<文教委員会所管>


○五十畑 委員長 引き続きまして、無党派市民、どうぞ。

◆木下 委員 野沢三丁目にあります本多忠次邸というのがございまして、この周辺が緑地指定されていまして、これは沿道法に基づく緑地指定だったということもありまして、本会議の一般質問でも取り上げたんですけれども、文化財保護の意味から、本多忠次邸というのは非常に貴重な文化財でもあるということでありまして、この取り組みについてどういう経緯があったか、まず担当の方、教えてください。

◎藤井 生涯学習課長 ただいま委員からもお話しありましたけれども、本多邸につきましては文化財的価値の高い建物でございます。私どもは、こういった近代建築物等の保存を活動にしている団体の会員の方から、一月末に相続の発生でこの建物が解体されるというお話をお聞きして、二月の中旬に教育委員会の職員初め政策企画の職員とともに現地を視察しております。
 そういった中で、やはり所有者の方から相続税を六月までに支払わなければいけないということで、やはりその建物を売りに出して相続税の支払いをする、そういった点から、限られた時間でございましたけれども、文化財的価値があるということで、教育委員会といたしましても現地保存の方向でいろいろと、所管課に問い合わせながら、建物の活用を考えながら検討してきた経緯でございます。

◆木下 委員 そういったいろんなことを考慮する際に、沿道法の存在というのに気がついていましたか。

◎藤井 生涯学習課長 当該物件が環七に直接面してなく、そういった点から沿道法に基づく緑化推進保全区域としては気づかずに、建物の現地保存のみで検討してきました。

◆木下 委員 この保存運動に公益法人、NPOでありますせたがや街並保存再生の会というのが絡んでいるんですけれども、この会は、町並みの保存ということから、文化財とともに屋敷林も含めた、そういった町並みの保存を目指した会で、定款にも世田谷区民に対して町並み、建築物並びに構築物、自然物などを保存、再生、活用し、住みよい環境づくりを支援する事業を行い、広く社会一般の利益に寄与することを目的としていますというふうに書かれているわけですね。一九九九年十月にNPO法人格を取得しております。これは当区の区長室長である谷田部さんが深くかかわった団体と私は認識しているんですけれども、その辺はいかがですか。

◎藤井 生涯学習課長 この会に谷田部区長室長が会員で入っているということは認識しております。

◆木下 委員 今回の保存に関して谷田部さんから相談があったんじゃないですか。

◎藤井 生涯学習課長 直接は相談はございませんでした。

◆木下 委員 しかし、保存の会から相談を受けたわけですよね。この前、何か打ち合わせのときには相談を受けたというふうに聞いていましたけれども、今相談を受けていないということをおっしゃっていますが、これはどうなんですか。要するに、谷田部さんにも保存の会は相談に行って、教育委員会にも相談に来た、そういうことなんですか。

◎藤井 生涯学習課長 この保存再生の会の一会員の方から最初ご相談を受けまして、その後で谷田部室長の方にもそのお話が伝わったのではないかと考えております。

◆木下 委員 平成九年一月十六日、一九九七年一月十六日の朝日新聞ですが、「まちの記憶」という記事がございまして、谷田部さんが教育委員会の調査をもとにずっと近代建築の保存運動に当たっていて、この記事の中でも、第一歩として役所の職員、住宅の持ち主、学識者、ボランティア団体などに趣旨を説き、ネットワークづくりを呼びかけていると書いてあるんですね。ですから、せたがや街並保存再生の会自体が、彼のある種の夢を体現する形でできた団体だとは思うわけです。谷田部さんはずっと建築畑を歩いてきた方ですので、当然この沿道法の存在、わざわざ区が緑地保全に指定したわけですから、そういうこともよくご存じだったと思うんですよ。ただ、このせたがや街並保存再生の会の運動を見ていますと、それでオープンハウスまで開いているんですが、これによりますと、教育委員会から委託を受けて調査もしたんですか。そういうお金も出しているんですか。

◎藤井 生涯学習課長 教育委員会から委託を受けて調査しているというような事実はございません。

◆木下 委員 オープンハウスの趣意書の中に、世田谷区文化財審議会委員の稲葉先生、片桐先生のご理解もあり、世田谷区からの調査依頼をいただくことができました。これを機に、本多邸に興味を持つ方々を中心にして本多緊急建物調査団を結成し、三月末に実測調査を行いましたというふうに書いてあるんですね。つまり、この真相については食い違いがあるようですけれども、これはオープンハウスを開いたけれども、結局、世田谷区に残すということではなくて、解体して岡崎市が文化財としてそれを引き受けてくれるということに結局はなっているわけですけれども、現地に保存しようという意思がほとんどないんですよね。むしろ、これは建築主から依頼を受け、あるいは今度のマンション建設業者も絡むような形でオープンハウスが開かれている。ある意味では、これを開いたことによって、保存運動ではなくて、解体する方向に固定づけてしまった運動になっているんです。ある種のマッチポンプともとられかねないような、そういう保存運動なんですよ。こういうことが、谷田部さんも含めた──正式なこれの会員ですから、そういうことで行われているということは非常に問題があると思うんですね。

 それから、教育委員会の立場としても、もっと都市計画法とかそういうものについて認識して保存するのは当然のことですよ。そういうことを怠って、しかも谷田部さんもかみながら、そういったことについては全然考慮しないで、結局解体されてしまう。それで、森林は伐採されてしまう。これは違法で、二十万円以下の罰金までついているわけですけれども、それも履行されていない。しかも、建物を建てるときには、それについての建て方については区長がいろんな意見を勧告することができるんですね。そういうこともやっていない。そういう形での保存問題が浮上してきているわけです。ですから、教育委員会としても総合行政としてきちっとやるべきだし、それから、NPOのあり方としても、社会的な公益法人としてこういうことでいいのかという、そういう問題が残りますので、ぜひその辺について改めていただきたい、そのように思います。何かありませんか。

○五十畑 委員長 以上で無党派市民の質疑は終わりました。

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