平成12年第1 回定例会(自31日 至3 29日)

世田谷区議会会議録

2000年3月29日 名誉区民選定の同意への反対討論


○山内彰 議長 これより意見に入ります。
 なお、意見についての発言は、議事の都合により十分以内といたします。
 発言通告に基づき、発言を許します。
 五番木下泰之議員。
   〔五番木下泰之議員登壇〕


◆五番(木下泰之 議員) 憎まれ役をあえて買って出ました。名誉区民選定の同意への反対討論を行います。

 今回、私は名誉区民を選ぶと聞いて耳を疑いました。それは、坪内嘉雄名誉区民が世田谷区体育協会の公金を使い込むという事件がいまだ生々しいうちに、なぜという素朴な疑問からであります。

 思い起こしてください。ちょうど昨年三月の予算議会のさなかです。体育協会の仕事をスポーツ振興財団へ移行させる条例が通った直後に、体育協会での坪内氏の使い込み事件が表ざたになりました。区長選も控え、坪内氏が区長候補の一人であった清水潤三氏の後援会長候補者だったということもありまして、さまざまな波紋を広げました。

 当然、議会でもこの問題は大問題になりました。結局、真相究明は予算議会ではうやむやにされ、区は刑事告訴も告発もせずに、また、関係者の処分もないままに、坪内氏が名誉区民の称号を返上するという形で片をつけてしまいました。名誉区民の称号を与え、これが汚された以上、区がこの事件について徹底究明し、刑事告訴、告発をして、称号授与は坪内氏から剥奪する、このくらいのことをしなければ、地に落ちた名誉区民の称号は守ることはできません。

 ところが、後から明らかになったことですが、体協ぐるみの粉飾決算がなされていたことについては、区も監督責任があるわけであります。区の担当者も知らないわけではなかった。つまり、この事件には区も責任があったということであります。大体、今まで称号を与えた方々に対しても全く失礼な話であります。

 ところが、あのような事件があった翌年に、反省した様子もみじんもなく、性懲りもなく名誉区民の称号を使おうとするその神経が私にはわかりません。少なくともことしは謹慎して、名誉区民称号の授与のあり方、是非について、検討委員会でも開いてじっくり検討すべき筋合いのものではないでしょうか。

 名誉という言葉をかみしめていただきたいと思います。本当の意味での名誉とは一体何なのか。名誉をぼろぞうきんのように扱うそのやり口を区民は見せつけられているのであります。こういうことをなさると、私は前々から疑いの目を持ってきたけれども、名誉区民は区長の名士懐柔の道具と断定せざるを得ないのであります。

 しかも、区長は、区長の後援会に、区長候補としての決起集会に、名誉区民の森繁久彌氏を出席させ、重要な役割をしてもらったこともあった。政治的中立性を著しく欠いております。名誉区民の称号を与えた以上は政治的には利用しない、それが差し上げた側の礼儀でもあるはずです。それを今まで著しく逸脱させてきたことに問題があるわけであります。

 名誉区民の称号そのものは、区民のだれもが納得できる人に差し上げるのであれば、さして悪いことではないと考えています。何かたたえてあげたい、区民のだれもがそう思うことはごくまれにあることです。例えば区民がオリンピックで胸のすくような大活躍をしたとか、自分の身の危険を冒してまで災害時に人を救ったとか、区民以外の人でも、だれが見ても明らかに世田谷のために貢献してくれたとか、そういうことがあれば、それは差し上げてもよいと思います。これは区民の共通認識になるような、そういった事件だからであります。

 しかし、そういったことはめったにあることではありません。しかし、最近では、この名誉区民ということが何か世田谷版の叙勲のようになってはいないか、そういうふうに思うのが私の率直な見方であります。しかも、政治的な均衡まで考慮して、例えば何々系の人に上げたら、次は何々系の人に上げる、そういったことまで考えて選ぶようになってしまえば、もはや何をかいわんやということであります。

 世田谷は、名士というレベルでは名士は非常に多い。今回、二名の方に上げるような形で行っていたら切りがありませんし、この制度を区長や行政が政治利用するのは見え見えであります。今回のお二人の業績や見識やお人柄に私は文句をつけているわけではありません。私はむしろ、今回称号を与える方についても、ことしそういった称号を与えるのは失礼であろう、そういうふうに申し上げているのであります。

 坪内事件は名誉区民制度を見直す格好の機会であったはずなのに、区長や行政サイドには、そういった自制の念すらかいま見えません。このような対応を続けるのであれば、名誉区民制度自体をやめてしまった方がよいと私は考えるのであります。したがって、議会は、今回の世田谷区名誉区民選定の同意を否決するべきであるというふうに私は考えます。

 以上の理由を述べまして反対討論といたします。

○山内彰 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。
 これで意見を終わります。
 これより採決に入ります。本二件を二回に分けて決したいと思います。
 まず、同意第三号についてお諮りいたします。採決は起立によって行います。
 本件を原案どおり同意と決定することに賛成の方の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕


○山内彰 議長 起立多数と認めます。よって同意第三号は原案どおり同意と決定いたしました。
 次に、同意第四号についてお諮りいたします。採決は起立によって行います。
 本件を原案どおり同意と決定することに賛成の方の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕


○山内彰 議長 起立多数と認めます。よって同意第四号は原案どおり同意と決定いたしました。

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