平成12年第1 回定例会(自31日 至3 29日)

世田谷区議会会議録

2000年3月29日 平成12年度予算への反対討論質問


○山内彰 議長 これより意見に入ります。
 意見の申し出がありますので、順次発言を許します。
 なお、意見についての発言は、議事の都合により一人十分以内といたします。
 五番木下泰之議員。
   〔五番木下泰之議員登壇〕


◆五番(木下泰之 議員) 平成十二年度一般会計予算外四案に反対の立場から討論を行います。

 一般質問の際申し上げたように、時代は大きく変わろうとしています。市民が政党を超えて行動し出しました。吉野川可動堰プランへの住民投票しかり、勝利を得た愛知の万博跡地の開発計画への反対運動もそうです。そして、神戸地裁での排ガス公害訴訟での差しとめをかち取った住民の勝利。こういった流れの中で石原知事は、このうねりに乗る形で行動を起こしました。外形標準課税を打ち出し、支持を得たと見るや、尼崎公害訴訟での排ガス差しとめ判決を支持して、役人の責任を弾劾した上でディーゼル排ガス対策やロードプライシングを打ち出したわけです。また、都議会での小田急問題での答弁を詳しく読んで確信を持ちましたが、石原知事は連続立体事業での鉄道の高架化と地下化を比較した場合、地下に優位性があると考えているし、しかも、安上がりだと考えているわけです。

 既に申し上げましたように、石原知事と私はイデオロギー的には隔たっているように思っていたけれども、案外近い。青島知事についてはイデオロギー的には近いように思っていたけれども、案外遠かった。いろいろ考えてみましたけれども、結局は、官僚、お役人との距離だということに思いを新たにいたしました。青島知事は四年間でとうとうお役人言葉を使うようになってしまったわけですけれども、石原知事は今のところ違います。むしろ都民の圧倒的支持を背景に勝負を打つ姿勢は美濃部都知事に近い、そのように思うようになりました。お役人のお化けみたいな世田谷のあり方に直面して、私は世田谷の将来について本当に心配しております。

 世田谷は新たな政治手法を打ち出さなければ、これからにっちもさっちもいかなくなるというふうに思います。新しい公共という概念を今回全面に打ち出しました。NPOであり、出張所をまちづくりの拠点にするということを盛り込んでおります。しかし、この手法のどこが新しいのでしょうか。実はこの手法は、バブルの際に生み出していった手法の延長線上にすぎません。一体、真の意味でのNPOがどこに存在するのでしょうか。まちづくりとは言うけれども、区の行うまちづくりで区民側のインセンティブがあるというのでしょうか。

 金余りの時代は事業として、いわばいろんな人が群がってきました。業者が中心に区にも群がった。区民参加は、結局は業者の群がりのにぎわいに一般区民も動員されたにすぎなかった。まちづくりとは言うけれども、区の役人やコンサルタントが仕掛け人となり、旧来型の町会や商店街を集めては区の思うとおりに同意を取りつけていっただけなのだということをようく反省してみなければならないし、区に金の余裕もなく、住民にも金の余裕のないこの時代には、もはや旧来型の手法は成り立たないということをわきまえていなければならないでしょう。実際問題として、まちづくりの拠点としての区の役人の人員配置を行う出張所という考え方は捨ててもらわなければなりません。唯一しなければならないことは、余計なおせっかいになるまちづくりのための人員の削減と、そのかわりに政策評価システムの区民への開放も含む政策形成過程の徹底した情報公開と出張所会議室の徹底開放です。けやきネットができて以来、出張所はけやきネットを使って借りることもできず、どういうわけか、区に協力する町会や商店街には貸し出すにもかかわらず、区に批判的な団体を事実上締め出すようにさえなっております。

 さて、昨日、東京鉄道立体整備株式会社の株主総会が開催されました。第三セクターである同社は解散されました。この解散は、一つの時代が終わったことを意味します。第三セクターは高架下の利用などというかわいいことを後で言うようにはなったけれども、当初の設立目的は大規模再開発の資金調達の機関であったわけです。これが名実ともにとんざした、その過ちを認めて解散せざるを得なかったわけです。したがって、大規模再開発に引っ張られて強引に進めた高架事業は、その存在意義が薄れてきたことも事実なのです。何も高架にする必要はなかったというのが関係者の偽らざる実感ではないでしょうか。石原知事の都議会答弁を待つことなく、下北沢が地下化されることは既に十年前から決まっていたことであり、しかも、新宿までの地下化方針も東京都は公表済みです。成城は掘り割りという名の地下構造です。したがって、梅ケ丘から成城学園前までのたった五キロのみが高架ということになり、世田谷の枢要な住宅地のみ高架というラクダのこぶのような極めて不自然な構造になってしまうからであります。

 二月から始まった京王線調布駅付近の複々線連続立体事業は、二線二層の地下シールド方式を採用しており、これは小田急線で住民側が代替案として示した地下鉄方式そのものなのです。ちなみに、京王線の調布駅が地下で、新宿から幡ケ谷までが地下ですから、将来は京王線も地下に潜らざるを得ない、そういうところまで来ているのであります。二線二層地下シールド方式では、在来線の直下に、買収を一切伴わず鉄道を敷設できるために、複々線部分や環境側道の買収を必要とする高架複々線に比してトータルコストでは安く済み、小田急線の梅ケ丘−成城学園前間では地下方式の方が高架方式の三分の一でできると試算もされています。現在敷設している高架橋を取り除いて地下に埋設しても、なおおつりが来る計算になります。

 さて、バブル期の過ちを改めることからしか世田谷の再生はないと私は確信するものです。世田谷の区政を見るとき、権力の基盤は地主に依拠しており、玉川グリーンベルト構想の解除以来、不動産開発行政の歴史そのものと言うほかありません。バブル期にその過ちは頂点に達しました。小田急線連続立体事業計画は地域幹線道路整備計画と相まって、世田谷の不動産開発のいわば発電機、ダイナモとなったわけです。第三セクターも解散いたしました。経堂再開発の大幅な縮小と象徴である高架橋の地下への埋設、このことは不可能ではありません。外郭環状の地下化方針に乗り、またエイトライナーの地下整備を訴える世田谷区が小田急線のたった五キロのみを高架にして周辺に騒音をばらまくことを合理化できるでしょうか。しかも、地下化しても何にも不都合はないのであります。また、SPMやNOxも含め大気汚染がひどい状況である以上、道路のこれ以上の拡幅、新設の抑制は避けて通れません。もう野放図に補助幹線道路を全部つくる時代ではないのです。

 区長、今が方針転換をする最大のチャンスです。区長が主導権をとれば世田谷区政は確実に変わるでしょう。石原都知事が外形標準課税で示したように、小田急線の地下への転換は、公共事業転換の象徴として世田谷区政の質を一挙に転換することになるはずであります。残念ながら今回の予算委員会での審議を通じ、区長はそのようにはお答えにはなりませんでした。もう既に地下化しかあり得ない下北沢の地下化推進すら口に出そうとはしていません。惰性をむさぼっているというふうにしか思えません。そればかりではありません。環境を大事にすべき区政にとって非常に大事な環境部がとうとう本年度でなくなってしまいました。これから環境の時代が幕あけしていこうというのにであります。真っ向からこういった流れに逆行しております。したがって、そのような姿勢しか持ち得ない世田谷区政の予算案にはすべて反対であります。
 以上をもちまして予算への反対討論とさせていただきます。


○山内彰 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。

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