平成12年第1 回定例会(自31日 至3 29日)

世田谷区議会会議録

2000年3月9日 「世田谷区組織条例の一部を改正する条例」への反対討論


○山内彰 議長 これより意見に入ります。
 なお、意見についての発言は、議事の都合により十分以内といたします。
 発言通告に基づき発言を許します。
 五番木下泰之議員。
   〔五番木下泰之議員登壇〕


◆五番(木下泰之 議員) 議案第八号「世田谷区組織条例の一部を改正する条例」に対して反対の立場から討論を行います。

 本改正案で見落としてはならないことがございます。それは、今回、環境部が消えてしまうということです。一九六九年に建築部にできた公害指導課が一九七二年に環境部に格上げされたのが現在の環境部です。昨年、環境部からみずとみどりの課を都市整備部に移しました。そして、今回の条例改正案では、清掃・リサイクル部を新たにつくることにより、残余の仕事は生活文化部の環境・災害対策室に移されることになります。これで環境部は解体、消滅することになります。国政で考えてみれば、環境庁をなくしてしまうということと同じであります。

 国政においてなぜ環境庁ができたのか。これは経済至上主義への反省からでした。発足当時の環境庁は、建設省、運輸省、通産省などと対抗する機関として国民の信望を集めたものでした。それが一九七〇年代の半ばからおかしくなり、財界の要望を取り入れて二酸化窒素の環境基準の三倍もの緩和を皮切りに、大きく変質しているのも事実です。しかし、だからといって、国は環境庁をなくそうとはしていない。世論が許さないからであります。

 しかし、本日ここで、国でいえば環境庁をなくすというようなことが、地方分権の流れの中で役割の大きくなった地方政府であるところの世田谷区で平然と行われようとしているのであります。にもかかわらず、どの会派も反対しようとしない。これは異常な事態であります。

 環境部がなくなるということは、このひな壇から環境問題を専門に考えるべき部長の定席が消えるということでもあります。役人の世界は役職で発言力が決まるということは当然であります。環境問題を専門的に考え、発言をすべき部長がいなくなるということは、環境セクションを専門的に扱う職員を格下げにしたということにもなるわけで、システムからいって、世田谷区は環境問題をないがしろにしたと言うほかないのであります。

 世田谷区についての環境問題を考えてみましょう。世田谷区の緑被率は二〇%を切ろうとしています。世田谷区の道路公害はすさまじく、SPMは全観測点で環境基準値を超えております。二酸化窒素や騒音基準もほとんどクリアされていません。

 小田急線高架連続立体事業は、道路、超高層再開発と一体の事業であり、開発の先行見込みから成城や経堂周辺の住宅地の環境を悪化させています。小田急沿線のみならず、超高層再開発の二子玉川、三軒茶屋、超高層ビル群の建設が軒並み予定されております。また、グリッド状の補助幹線道路網ができてしまえば、交通量は一気にふえることになります。

 また、大いに気になることがございます。多摩川の両岸をスーパー堤防で東京湾から四十キロメートルにわたって固めようというプランです。そうなれば、もはや多摩川は自然河川ではありません。河川両側に道路や超高層ビルが建設可能となり、二子玉川の超高層ビル再開発は、この壮大なスーパー堤防大作戦の前進基地ということになるでしょう。

 こういった状況の中で、世田谷区は環境部をなくそうとしているのです。
 先日の一般質問でも触れておきましたが、ことし二〇〇〇年が明けてから、建設省の吉野川可動堰プランに対する住民投票での建設反対の圧倒的勝利、愛知の万博にかこつけた宅地開発計画に対して、博覧会国際事務局が二十世紀的開発至上主義にノーのサインを出しました。尼崎道路公害訴訟での排ガス差しとめを求める住民側の勝利判決、すべて一月の出来事です。

 こういったエポックに対して反応も極めて早くなっております。石原都知事の尼崎公害訴訟を評価し、ディーゼル車への排ガス防止装置の義務化、ロードプライシングの導入、三重の北川知事の原子力発電所建設ストップ、これは吉野川堰等々の影響です。そして、本日のニュースでは、愛知万博については跡地の宅地造成計画を撤回することを決定したとのことです。つまり、環境問題は日本の政治を動かす大きな要因になっているのです。

 そういった中での今回の改正案は、時代に逆行すること甚だしいと言わなければなりません。石原知事の尼崎道路公害差しとめ判決に際して出したコメントは、実に立派なものであると私は思います。石原知事が環境庁時代に結構間違ったことをやりました。それに対する反省というふうにもとらえております。

 自動車公害についての行政の責任を都知事がきっぱりと認めた、このことは初めてであります。これまでの都の態度はどうであったか。自動車公害はないという立場でした。それが石原知事発言で急転回して、自動車公害は厳然としてあることになりました。だから、自動車公害一つをとっても、これからは大変な仕事を世田谷区もしなければならない。SPMをどうするのか。ロードプライシングに世田谷区はどう対応するのか。騒音問題もある。環境部をなくしていいわけがありません。

 今回、環境部をなくして、そのかわりに清掃・リサイクル部をつくろうとのことですが、清掃・リサイクルだけが環境問題でないことは言うまでもありません。逆に、環境問題の全体を見渡さなければ、資源循環という意味でのリサイクルなど、できようはずもありません。

 また、冒頭述べたことの繰り返しになりますが、環境セクションをつけ足しのように扱うことは、世田谷で環境行政が行われなくなることを意味します。環境部長がちゃんといて、専門の立場から都市整備部長に物を申す、建設・住宅部長に物を申すというようにならなければ、開発と環境の緊張関係は崩れ去り、開発が環境を抑え込んでしまうことは必至と言わなければなりません。

 確かに、現在環境部があっても、都市整備部や建設・住宅部に対してにらみなどをきかせておりません。例えば補助線の道路網について、補助線それぞれの道路交通予測を聞いてみました。しかし、それさえわかりません。世田谷の道路づくりは、世田谷の環境を一変させることは当然のことです。開発セクションは調べるわけがございません。当然です。それはこんなデータは開発の邪魔になるからであります。本来は、環境部が環境を守る観点からシミュレーションすべき性質のデータです。そういった基礎的な作業です。しかし、環境部はそういうこともやっていない。こんな状況であるから環境部は必要もないと言ってしまったら、元も子もありません。

 少なくとも私は、環境部長を叱咤激励し、場合によっては実現させることができるかもしれない。しかし、今回の本案が通りますと、これからは格落ちの環境・災害対策室長を叱咤激励することになるわけであります。事は深刻であります。システムの改編を侮ってはいけません。議場の皆様に、国政でいえば環境庁をなくしてしまうようなこの機構改革に反対すべきだということを強く訴えまして、議案への反対討論といたします。


○山内彰 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。
 これで意見を終わります。