平成12年第1 回定例会(自31日 至3 29日)

世田谷区議会会議録

2000年3月3日 一般質問


○山内彰 議長 一般質問を続けます。
 五番木下泰之議員。
   〔五番木下泰之議員登壇〕


◆五番(木下泰之 議員) 質問通告に基づき、一般質問を行います。

 午前中の一般質問で、大場区長に対して二十三区区長会への欠席をめぐって厳しい追及がありました。ほとんどを代理出席している。これは許されません。非難されて当然であります。公務をサボって私的会合に出ていたとしたら、これはまさに警察官僚の新潟での雪見酒と同じであります。これは議会として徹底調査すべきであります。議長は重く受けとめていただきたい。このことを冒頭申し上げておきます。

 さて、今、石原知事が脚光を浴びております。石原都知事は、外形標準課税導入が都民や国民から快哉をもって迎えられたと見るや、ディーゼルエンジン車への排ガス防止装置の義務化や、都心部に入る車から料金を徴収するロードプライシング制度導入提唱を畳みかけるように打ち出しました。私は、石原都知事の時代の流れに敏感なこの政治家としての能力は、イデオロギーを超えて──ちなみに、私は日の丸、君が代の押しつけには反対であります。イデオロギーを超えて高く評価されなければならない、そのように考えております。

 建設省の吉野川可動堰プランへの住民投票での反対住民の圧倒的勝利、愛知万博にかこつけた不動産開発計画への博覧会国際事務局、BIEのノーサイン、そして尼崎公害訴訟での車排ガス差しとめ訴訟の勝利、二〇〇〇年を迎えた一月中にこれだけのことがございました。そして、この環境の世紀への第一歩と言うべき急流に乗って、二月に石原知事は行動を起こしたわけであります。

 外形標準課税問題もさることながら、私は、知事が、尼崎道路公害訴訟でのSPM差しとめ訴訟の判決に際し、この判決は重いと思うと見解を述べた上で、従来の都政はこうした問題に鈍感、怠慢だった、不作為の責任はあると、大気汚染問題について行政の責任を率直に認めた上で、ディーゼル車規制やロードプライシングといった具体的な施策提起を行ったことをとりわけ評価するものであります。

 運輸大臣や環境庁長官の経験者であるだけに、影響力は非常に大きい。排ガスの差しとめを認めた尼崎公害判決への積極評価は、一方で、みずからが進めようとしている外郭環状線の建設さえストップすることにならざるを得ないというような重みを持っていると私は考えます。それほど東京の自動車公害は深刻です。何よりも、この石原知事の大気汚染対策に対する姿勢と政策提起は、多くの幹線道路を有し、都内で一番の世帯、人口を有する世田谷区の今後の行政施策におのずと多大な影響を与えるものです。

 そこで、区長にお聞きしたい。
 尼崎公害判決を受けて石原知事は、行政に不作為の責任はあると言い切ったわけでありますが、区長は、尼崎公害判決とこれまでの国や都、そして世田谷区が大気汚染を放置してきた行政責任はあると考えるかどうか。政治家区長としてのご見解をお聞きしたいと思います。

 世田谷の観測点のすべてで浮遊粒子状物質、SPMは基準値を超えておりますが、世田谷区としてはこれを抑制するためにどのような行政施策を考えているのか、お答えいただきたい。

 とりわけロードプライシングの実施となれば、コードン線の引き方、つまり、どこからロードプライシングを実施するのかが重要となってくるわけであります。環七か、環八か、はたまた環六なのか、世田谷としてはどうあるべきなのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

 SPMやNOxは発がん物質であり、がん増加の大きな要因ともなっており、また、SPMは環境ホルモン物質としても注目されております。大気汚染と健康被害の因果関係を認める立場からは、大気汚染とがんの関係や遺伝子への影響を把握する疫学調査を行うべきであると考えます。世田谷区はがん検診に年間三億円の補助金をかけておりますが、むしろ疫学調査等公衆衛生上の立場から、対がん行政施策を行うようにシフトするべきである、そのように考えておりますが、いかがでしょうか。

 また、大気汚染観測の測定局ももっときめ細かく設け、現状把握を行うべきであるというふうに考えます。そもそも環境セクションに年間一億円ほどの予算しかないことが私には信じられません。お答えいただきたいと思います。

 大気汚染対策を行うには単体規制だけでは限界があり、車の総量を規制する必要があります。十分過ぎるほどの幹線道路を抱える住宅地世田谷としては、これ以上の補助線を整備することは、かえって車流量の増加を招くことになります。補助線というと何かにつけてつけ足しのように聞こえますが、世田谷通りは補助五一号線なのであります。したがって、格子状に何本も計画されている補助線の建設は大幅に抑制するべきであるというふうに考えます。また、車依存社会を助長する超高層を含む大規模再開発や大規模店舗誘致は見直されるべきであるというふうに考えます。道路建設、大規模再開発抑制についてのご所見をお伺いいたします。

 本日の朝日新聞に、昨日の都議会本会議で石原都知事が、立体化といえば高架になるが、地下化できないか、都独自の立体交差化のあり方を考えてはどうかと答弁したと報道されています。とうとう都知事が小田急線の地下化について言及いたしました。しかも、都独自の立体交差のあり方を考えると答えております。私は、この政治家としての主体的な言葉を待ち望んでいたものであります。

 さて、区長、あなたは世田谷区の区民に責任を持つ立場から、今後の小田急線の連続立体交差化事業についてどのようにビジョンをお持ちか。石原都知事の都議会発言報道の感想を含めて、ご所見をお伺いしておきたいと思います。

 時間もありませんので、小田急線連続立体化事業につきまして通告いたしました細かい点に関しましては、予算委員会の場での質問とさせていただきたいと思います。

 区長、石原都知事に続いて三重の北川知事が原子力発電所の計画中止を宣言したこともあって、知事の時代などと今言われております。しかし、正確には、民意をくみ上げて行動すれば国政さえ揺るがすことのできる首長の時代なのであります。そういった時代を踏まえてしっかり真摯にお答えいただくことをお願いして、壇上からの質問といたします。

   〔大場区長登壇〕


◎大場 区長 都内の大気汚染状況につきましてお話がございました。
 私も知事と同じような感情がございます。今まで日本じゅうで大気汚染の問題なんかについては非常に揺るがしがたい問題があったと思いますが、しかし、これからどうやっていくか、都知事あたりの様子を見ながら考えていきたい、このように思っております。


◎伊藤 環境部長 世田谷区の大気汚染に関する対策についてのご質問にお答えします。

 都内での浮遊粒子状物質の経年変化につきましては、昭和五十四年までは急減してまいりましたが、それ以降は年平均が〇・〇五ミリグラム・立方メートル程度で推移しまして、改善が進んでおりません。発生源は、ディーゼル車などの自動車が五割、道路などの土壌及び硫黄酸化物による二次生成の粉じんがそれぞれ二割とされ、ディーゼル車の割合が高いことが指摘されております。このための対策としましては、都市部においては、ディーゼル車等の自動車公害の改善が重要であります。  区といたしましては、このたびの都の規制強化、国の排ガス規制強化の動きやロードプライシングによる都心流入規制について、今後の動向などに注意してまいります。

 区内の測定局による浮遊粒子状物質の実情についても、引き続き注意深く監視してまいりたいと思います。

 それから、ロードプライシングにおける規制区域を囲む境界線、コードン、この辺はどの辺に引いたらいいかというお尋ねでございました。

 今、三つの案があるようでございます。最も狭いものはほぼ千代田区を囲む環状二号線の案、最も広いものは荒川、多摩川などと環状八号線を規制する案、それから、JR山の手線の内側を規制区域とするもの等があるようでございます。山の手線の内側を規制区域とするものが一番効果的で実現性があるのではないか、このような評価をしておりまして、私どももこれが適当ではないかというふうに評価をしております。
 以上でございます。


◎工村 世田谷保健所長 大気汚染とがん対策についてお答えいたします。
 尼崎公害訴訟の神戸地裁判決は、係争道路の沿線住民の気管支ぜんそくについて、自動車排ガスと健康被害の因果関係を認めたものと認識しております。

 一方、大気汚染とがんの因果関係につきましては、これまでの都の調査においても明確になっていないのが現状でございます。これは、がんが、喫煙等の生活習慣や加齢などのさまざまな影響を受ける、ご指摘の環境因子の中でとりわけ大気汚染物質のように暴露が微量で長期間にわたるものとの因果関係の証明は非常に難しいと考えております。

 しかしながら、区では、環境汚染から区民の健康を守り、早期治療を促進することは大切であると考えておりますので、今後、予防の充実に努めてまいりたいと思います。具体的には、国や東京都、研究機関等の調査研究について積極的に情報を収集し、区民への情報提供等の取り組みを進めてまいりたいと考えております。
 以上です。


◎岡沢 建設・住宅部長 尼崎道路公害の判決と世田谷区の道路行政についてお答えいたします。

 本年一月三十一日の尼崎公害訴訟における神戸地裁の判決は、道路管理を預かる者として重大な関心を持っております。車社会の見直しにつきましては、地球温暖化、省資源、省エネルギー、大気汚染などグローバルな問題とあわせて、確かに現代社会全体に課せられている課題であると認識しております。

 とりわけ、大型ディーゼル車などの大量の通過交通や渋滞による排ガスの発生量を抑制するためには、排ガス規制の強化や乗り入れ制限など、道路が健全な都市基盤として機能していくためにもぜひ検討されるべきものだというふうに考えております。そして、バランスのとれた円滑な交通ネットワークの形成、これも不可欠であると同時に考えております。

 しかしながら、区内の道路整備につきましては、都市計画道路などの計画はいまだ半分も完成しておらず、大変おくれている状況にあります。したがって、区としては、安全で便利な区民生活を確保するために、新たな方針に基づきまして道路整備を推進するとともに、国や都による広域物流の効率化を図る施策に期待したいと考えております。大規模開発はこの考えに沿って進められるべきで、道路基盤の整備をこの開発手法で生み出すことも、適切なアセスメントのもとに進められること、これによりまして都市計画として一つの手法であると認められているというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、区は区民の安全と健康を守る視点から道路行政を総合的に進めてまいります。
 以上でございます。


◎原 都市整備部長 小田急の関連の課題につきまして、昨日の都議会の一般質問を引かれながらご質問がありましたので、お答えをさせていただきます。

 けさほどの新聞を私どもも読みまして、都議会でこのようなやりとりがあったということでありましたので、新聞を取り寄せると同時に、東京都の担当にもどのような内容であったのかというのを、朝、議会が始まる前にできる限り手に入れました。その中では、幾つか新聞でニュアンスは違っておりますが、東京都の見解、説明はこのようでありました。都知事の答弁は連続立体交差事業の一般的な対応について述べたものである、それから、連続立体事業の中でも長い間都市計画決定されていながら事業化されていないために踏切がボトルネックになっているような場合、道路の地下化というようなことも対応していいのではないか、そのような趣旨の発言であったというようなことでありました。これについては、いずれしっかり答弁を手に入れながら検討していきたいと思います。

 それから、将来の小田急のことをどう考えるかというお尋ねでありました。

 小田急の連続立体事業というのは、今さら言うまでもなく、連続立体することで踏切の解消、それから、輸送力を増強して一日百万人近い人々を運んでいるその混雑率の低下ということ、あわせて周辺のまちづくりにも寄与するという、そういうことの機会でもありますので、やはり世田谷区としてもつぶさに細かい課題も検討しながら、まちづくりとの連携の中で考えていきたいと思っております。
 以上です。


◆五番(木下泰之 議員) 今説明をお聞きしましたけれども、区長に小田急線の問題についてはきちっと答えてもらいたいと思っているんです。石原都知事については私は評価をいたしましたけれども、なぜ評価できるかといったら、自分の頭で考えているということなんです。少なくとも、美濃部時代から含めて道路問題についてこれだけ明確なビジョンを出したのは初めてです。しかも、もちろん単体対策だけでは不十分だということは重々承知の上で言っているんですけれども、今回の問題提起というのはやはり全国的に大きな意味を持っているわけです。そういった決断を都知事がしたわけです。具体的に世田谷も、ロードプライシングの中で、そういう施策の中ではいろいろ考えなければいけないことがある。だから、世田谷区としての主体的な道路行政について、もっと皆さんがきちっと日ごろ考えていなければいけないわけです。

 ところが、今お聞きした限りでは、どうも何も考えていらっしゃらない。東京都の施策待ちである、そういうことしか感じ取れないんです。とりわけ、二子玉川の再開発があります。あれをつくるだけで二万五千台もの車がふえるわけです。そうしますと、当然、SPMはもう世田谷全域で超えているわけですから、もっとひどくなるわけです。そういうことに対して、つまり、世田谷での再開発が抑制されるという現実があるわけです。今度の政策がきちっと実施されれば抑制されざるを得ない、そういう現状について非常に疎いと思います。しかも、小田急線の問題だって、小田急線の連続立体事業というのは道路事業でもあるわけです。しかも、超高層ビルも含めた再開発事業でもあるわけです。こういったことについての見直しをせざるを得ない、そういう時代に入ってきているんだという認識をまず持っていただきたい。そのことがないと、これからの世田谷の区政をどう引っ張っていくのか。世田谷区政はいろいろありますけれども、東京の中で有数の世帯人口を持っているわけです。ですから、住民の安全を守る、暮らしを守る、健康を守るという点ではきちっとした施策を持っていただきたい、そう思っているわけですけれども、区長、小田急線の問題を含めて、また道路対策について、もう一度きちっとお答えいただきたいと思います。

   〔大場区長登壇〕


◎大場 区長 お答えいたします。
 小田急問題、それから道路問題につきましても、これは世田谷区自身ではどうすることもできない問題でございますので、その考え方が大分違うようでございますが、私どもも間違いなく世田谷区の道路、あるいは小田急線の問題として考えていきたいというふうに思っております。


◆五番(木下泰之 議員) 世田谷区ではどうにもできないという考え方自体がやっぱり間違っているんですよ。私は先ほど首長の時代になったというふうに申し上げた。つまり、民意をきちっととらえて区長が何がしかの行動をすればきちっとこたえていく、そういう時代になってきているわけです。だからこそ、都知事の今回の問題提起が通った。外形標準課税だってそうですよ。あれだって、都では何もできないということを超えてやったからそうなったわけです。区長の今の、世田谷区としては何もできないという答えは、もう区長は要らないということですよ。そうは思いませんか。

 もう一度お聞きします。区長として、この世田谷の住民の健康を守るために何がしかをやろうという決意はございますか。

   〔大場区長登壇〕


◎大場 区長 お答えいたします。
 私どもは、世田谷区の区長として、区民の立場に立って物を判断していきたい、こういうふうに思っております。


○山内彰 議長 以上で木下泰之議員の質問は終わりました。

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