映画「パラサイト」

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憲法と映画(38)

『パラサイト   半地下の家族』 平凡な人々の惨劇
   

美賀多台      つだわたる
   

   カンヌ映画祭は『私はダニエル・グレイブ』『万引き家族』に続いて、貧困を描く映画をグランプリとしました。韓国映画界初の受賞です。
   経済格差が大きい現代韓国の悲惨な現状をコメディタッチで描きました。
   キム一家は家族4人父と母、大学浪人中の息子と娘、全員が失業者です。心身ともに健康で働く意欲もありますが、仕事がなく、母の内職だけが頼りで、その日の食事も事欠く有様です。
   彼らはスラム街の半地下住宅に住んでいます。床が道路の下水管よりも低いので、トイレは天井すれすれ、部屋の一番高いところにあります。日当たりも悪く部屋は湿気ています。窓は路面と同じ高さで、足ばかり見え、時折、酔っ払いが立小便をします
   この家族が、高台にある高級住宅街の豪邸に住むパク一家に取り入り「寄生」していきます。まず長男が英語の家庭教師、長女が美術の家庭教師になり、巧妙に前任の運転手と家政婦を追い出して、父と母が入り込みました。
   全員、他人のふりをしています。

格差を自覚した時
   ある日パク家全員が泊りがけのキャンプに出ていくことになり、キム一家は豪華な居間でのびのびと宴会を始めました。そこへ追い出した家政婦がやってきます。
   この豪邸に秘密の地下室があり、彼女の亭主が住んでいることが発覚しました。キム一家の秘密も知られてしまいます。
   そして大雨が降り続くために、パク一家が急に帰ってきました。大慌てで、すべてを隠す必死のドタバタ悲喜劇が展開します。
   翌朝、記録的な大雨でスラム街は水没しました。しかし高台の家ではそんなこととは無関係に息子の誕生パーティーが開かれます。経済格差が如実に現れる、そこで惨劇が生じました。
   明るく清潔な豪邸に対比する不潔な半地下の家、日のささない地下室は、分断された社会を暗喩し、平凡な人々が殺しあう辛辣なブラックコメディを生みました。
   大事件の後、豪邸の持ち主は変わり地下室の住人も変わります。でも世間は何も知らず変わらないままでした。

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