遠い日の過ち

 

それは、カメ吉が我が家に来る、ずっと昔の話。

私は、ミドリガメの琴子を飼っていた。

当時は、カメのエサなんていうものが市販されているとは知らず、琴子にはシラスや煮干し、ごはんつぶなどをあげていたように思う。

小さいながらも食欲は旺盛で、なんでもよく食べた。

しかし。

秋から冬になり、気温が低くなってくると、琴子はエサを食べなくなった。

たぶん、突然ではなく、だんだん動きが鈍くなっていったはずなのだが、なにぶん20年以上も前のことなので、そこまでは憶えていない。

とにかく、水の中に入ったきり、ぴくりとも動かなくなってしまったのだ。

ケースを揺すってみても、お水と一緒にゆらゆら揺れるだけ。

そんな状態が何日続いたのだろうか。

幼かった私は、「ああ、寒いからカメ死んじゃったんだ」とすっかり思い込み・・・

琴子を埋めてしまったのだった。

(しかも、お墓の場所がすぐに分かるように、名前を書いた石まで置いた)。

今思うと、かわいそうなことをしたものである。

冬眠という言葉を知らなかった幼い子どもの、かわいい過ちである。

もしかしたらあれは冬眠している状態だったのかなー、と思いついたのは、それから何年も後のことであった・・・。

この体験のおかげで(?)、カメ吉を埋めずに済んでいます(汗)