◆ 妊婦日記



<そして出産>

予定日より10日以上も前で、ヨガも普通に受講し、定期検診でも子宮口は全く開いていないと言われたのだけど、なんとなく入院準備の最終チェックをしてみたり、冷蔵庫の中を片づけたり、生協の共同購入を止めてみたりし始める。今思うと虫の知らせだったのか。

金曜日、それまで全くなんともなかったのに、夕飯を食べながらテレビを見ていたら、突然、視界がぶれはじめた。ぼんやりとして、まばたきをしても軽く頭を振ってみても治らない。頭痛もある。出産の兆候?・・・で視界がぶれるって聞いたことないなあ、まずい兆候でなければいいけど・・・と思っていると、しばらくして視界のぶれはおさまった。が、頭痛に加え、腰の左側がぴりぴりと痛くなる。

土曜日、引き続き若干の頭痛と、腰全体が重い感じ。朝、思ったよりもたくさんの出血があり、内診の出血はそろそろ止まる頃だと思っていたので、びっくりする。これってもしかしておしるしだったりとか・・・? でもまだ予定日より10日も前だしなあ・・・うーん・・・。お腹の張りも少し強く、時々下腹が痛む。周期的ではなく不規則な感じ。
この日は本当は、まだしろくまを食べたことのないだんなさんと一緒に天文館のむじゃきに行く予定だったんだけど、なんとなく不安だったので、一日家で過ごすことにする。代わりに、夕方、スーパーに買い物に行って、夜は炭火焼きでのんびりとご飯を食べることに。
夕飯を食べ終えるころから、痛みが少し強くなってくる。微妙に周期的になってきたような気が。
気にはなるけど、とりあえず寝ようと、11時半ごろお風呂に入る。すると突然、お風呂の中で痛みが急激に増し始めた。← あとから思うと、リラックスしたので陣痛がすすんでしまったらしい(^ ^;)
ええっ、なんかちょっと痛いよ? まさかこれ陣痛? おろおろしながら、でも半信半疑で、でも万が一入院になっちゃうと困ると思い、即行で髪を洗う。だって女の子だもん(笑) 痛みをこらえつつ服を着て、それでもまだ半信半疑で痛みの間隔を計ってみることにした。そうしたら、痛み自体は1〜2分でおさまるものの、間隔はなんと6〜8分おき。午後くらいから「もしかして週末に産まれちゃうかも」とか言ってたんだけど、まさか本当に陣痛がくるとは...。
1時間ほど計ってみたところで、病院に電話してみる。すると、初産だし検診で子宮口も開いていなかったからか、「たぶん前駆陣痛だと思いますので、家で待機していてください」と言われる。眠れそうですか?と聞かれ、気を遣うタイプの私はこんな時でも気を遣ってしまい(笑)、「がんばればなんとか...」などと答えてしまう。えー、けっこう長い時間ずっと痛いけど、これでも前駆陣痛なのかなあ、と思ったけど、でも助産師さんがそう言うならそうなのかも、と素直に考え直し、とりあえず我慢してみることにする。
一応、布団に横になるものの、痛みはずっと7〜8分間隔。けっこう痛いので、そのたびに起きてしまう。時計とにらめっこしながら、正座してみたり横になってみたり。でも、陣痛と陣痛の合間は眠れる、と雑誌とかで読んだことがあって、その時はそんなバカな、と思ったんだけど・・・意外と眠れるもんですね(笑)
時々だんなさんが目を覚ましては、うめいている私を見て「大丈夫?」と聞いてくれたんだけど、月曜日から仕事がすごく忙しくなる、と前々から言っていたので、なるべく遅くまで寝かせてあげなければ、とここでも変な気を遣ってしまい、6時まで我慢しよう、と思う。

で、もうろうとしていて何時だったのかは分からないんだけど、真夜中にお腹の中でパスッという音がしたような気がした。もうろうとしながら、破水の時って音がするって聞いた気がするけど、破水? でもお水が出てきた感じとかないから違うのかなあ、うーんうーん・・・と思いながらうとうと。今考えると、たぶん子宮口が開いた音だったんじゃないかと思う。

そして朝6時。おさまってませんでした。むしろ徐々に痛みは強くなる。だんなさんを起こして病院に電話するも、それでもまだ「一度帰ってもらうこともあるかもしれませんが、一応、入院準備をしてきてください」などと言われる。いや、もう絶対前駆陣痛じゃないって! 本番だって!
痛みはどんどん強くなり、なんとか着替えをしている間にだんなさんにだけ簡単に朝食を食べてもらう。病院には普段なら歩いていける距離なのだけど、もうあまりに痛くて歩けそうになかったので、急いで車を取りに行ってもらい、その間に入院のためのボストンバッグなどを準備。ようよう車に乗り込み、病院に到着したのが7時。

時間外受付で倒れるように診察券と保険証を提出する。すぐにLDRに案内されるが、ベッドにあがるのがまた一苦労...。助産師さんが内診すると、すでに5cm開いているらしい。まずNSTを30分とります、といわれ、冷静にお腹に機械をつけられる。痛いので横になっていいですか、と聞いたら、右がいいですか、左がいいですか、と尋ねられたので、左が下の方が楽です、と言ったら「赤ちゃんが右を下にしてますから、右を下にした方が産まれやすいですよ」と言われた。じゃあ最初から右を下にしてください、って言ってよ〜(T_T)

「北極さん、麻酔を希望されてますね。どうしますか?」と聞かれたので、「ええっと・・・あのー、どれくらいで産まれるでしょうか」と一応聞いてみる。
助産師さん「そうですねえ、お昼頃かな・・・夕方までには産まれると思いますよ」
ペン子「お昼・・・(ちょっとくらくらする)・・・あと5時間くらいありますよねえ・・・。痛みはどうなんでしょうか。あの、もっと痛くなるんですよね?」
助産師さん「痛みは、うーん、これくらいかな。でも痛みの間隔はだんだん短くなりますよね」
ペン子「そうですか、えーっと・・・じゃあ、とりあえず、ちょっと考えてみます」
そうこうしているうちに、駐車場に車を置きに行っていただんなさんが部屋に案内される。助産師さんは、また後で様子を見に来ますから、と退室。そのとき「朝食まだですよね。作ってもらいましょうか?」と言うので、「いえ、いいです、食べられないと思います」と答えたら、なお「何か食べた方がいいですけどね。おにぎりだけでも作ってもらいましょうか?」。しかし、全く食べられそうにないので「いえ、いいです。無理だと思います」と弱々しい笑顔で断る。

しかし、この30分がえらい大変だった。最初はそれでも、なんとかなりそうな痛みだったので、「麻酔どうしよう。痛みはこれくらいだけど間隔が短くなるって言われた。このままなら産めるかなあ」とか、「でも早くてもあと5時間もかかるなら、やっぱりかけてもらおうかなあ」とか、陣痛と陣痛の合間にしゃべったりする余裕があったのだけど、痛みがどんどんどんどん強くなってきたのだ。あまりに痛くて身をよじっているので、お腹の機械がずれてしまう。1〜2回、助産師さんが顔を出して、機械を直しては出ていく。しかし、痛みの間隔もどんどん短くなり、しかもそのうち、お腹の中でなにかがぎりぎりと下の方に押し出されていく感覚が。何か流れていく感じもする。ちょ、ちょっと、待って、なになに? 誰もついててくれないけど、まだいきんじゃいけないの??っていうか、5cmで麻酔ってかけてくれるんだよね? まだダメなの?「痛いよー、痛い痛い、ほんとに痛いよー。ものすごく痛いよー。やっぱダメかも、麻酔かけてもらうー」と呻きながら、しかし心の中ではもう分かっていた。

うわあんっ、間に合わないー!!

出産の麻酔は硬膜外麻酔。最初に局部注射をして、背中にチューブをつけて、チューブの中に薬を入れて、そしてようやく麻酔が効いてくる、らしいのだ。たぶんけっこう時間がかかる。なんかたぶんもう間に合わない、たぶん産むしかない。だんなさんも「痛いね。いいよ、麻酔かけてもらいな。そんなにがんばらなくていいからね」と答えつつ「たぶん間に合わないだろうなあ・・・」と思っていたらしい。。。

そうしているうちにやっと30分が過ぎたようで、助産師さんがやってきた。そして「何か流れた感覚がします」と伝えたら、だんなさんが部屋から出され、内診すると「あ、もう全開ですね。このまま分娩しましょう!」。あーやっぱりそうなのね、さっきのはペンちゃんが下りてくる感覚だったのね〜(T_T)  このとき7時50分。

立ち会いを希望していなかったのでだんなさんは部屋を出たまま、ベッドはぱたぱたとたたまれて分娩台に早変わり。NSTが終わったら病院着に着替えます、と言われていたけど、そんなものに着替える暇もなく、足カバーをかぶせられ、さあこれを持って下さい、とベッドについていたロープを渡され、もういきんでいいですよ、と、両側と真ん中に助産師さんがスタンバイ。あごが上がってしまいがちですがおへそを見るような感じでいきんでくださいね。こくこく。大きく息を吸って、止めていきんで、苦しくなったら息を吸って。こくこく。北極さん、目を閉じないで、目を開けて、私が見えますか? こくこく。もう頭が見えてますからね、あと数回で出てきますからがんばって。こくこく。言われるままに頷く私。痛くないときは力を抜いて下さい、はい、手を開いて、力を抜いて、息を吸って。こくこく。NSTの機械を見ていた助産師さんが、急いで酸素マスクを取り出し、「赤ちゃんも一番苦しいところですからね、がんばって息をたくさん吸って下さい!」こくこく。「もうあと一回でたぶん出てきますよ! がんばってくださいね」こくこく。いつのまにか現れた男の先生が「切開します」。こくこく。

そしてロープを握りしめ、息を止めて思いっきりいきむと「出てきましたよ、あとは力を抜いて。ゆっくり、ゆっくり」 いきみ始めて4〜5回目のことでした。

え、やっと出てきたの? でもまだ痛いよ。どうやら頭が出てきても、肩でつっかかるようで、助産師さんがそーっと引っ張り出しているらしい。助産師さんの手の間に、黒い頭が見える。そして、ずるっと何かがでてきた。「8時10分。男の子です」 ああ、そうか、やっぱり男の子だったんだ・・・。

ペン太は元気な泣き声だった。廊下で待っていただんなさんのところにも泣き声が思いっきり聞こえていたらしい。すぐにだんなさんが呼ばれ、まだ羊水や血がついたままでぬるぬるとしたペン太を抱っこして3人で記念撮影・・・と思うんだけど、あまりに早い展開で、この辺りの記憶がとても曖昧なのだった・・・。

この日の満潮は8時半ごろ。満潮の時に産まれやすいとよく言われるので、だんなさんは「8時半前くらいに産まれるかもしれないなー」と思いながら待っていたらしいのだが、あまりに早かったのでこの泣き声がまさかうちの子だとは思わなかったらしい(笑)

こうして予定より9日も早く、2370gでペン太は産まれたのだった。蝉の声が降りしきる、よく晴れた夏の暑い日のことでした。検診で助産師さんに言われたとおり、入院から出産まで1時間10分という、初産とは思えないほど超安産、超スピード出産でした。

2人目が順調にできれば、今度こそ無痛分娩をしたいけど・・・たぶんきっと間に合わないんだろうなあ。でも2人目も一応申請はするぞ(笑)




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