エルサレムからのHOT NEWS
−イスラエル・パレスチナの紛争の解決を願って−


東エルサレムのアラブ人は語る、壁が生活を文字通り分断


アーノン・レギュラー記     
(ハーレツ紙 2003年9月15日付)

 エルサレムの分離壁を造る耳をろうするばかりのブルドーザーの音は、Abu Mera近くの町外れに住むQassem A-Surhi教主の言葉も、東エルサレムのアブディスで起こるあらゆることをおおい、かき消してしまう。

エルサレム市当局のもとで、地域のmukhtarとして働くこの78歳の教主は、自分の居間に前市長テディ コレック、ヤセル アラファトやその他沢山の名士の写真を飾っている。

彼はこの壁の正確なルートを知らない。しかしブルドーザーは彼の家の土台のすぐ向こうを、8メートル高さの壁、塀、パトロールの道、見張り小屋を造るために掘っている。

分離防護壁ができると、丘を下ったところに家を建てたA-Surhiの四人の子どもたちは壁の西側にエルサレム居住者として留まり、彼と残り四人は西岸地区の壁の東側に住むことになる。今まで子どもたちの家へ徒歩二分のところが、道路封鎖や検問所を通り抜け、マーレー アドミームへ、それからフレンチヒルへ、そしてアブディスへと回り戻って(この最後の部分はエルサレム内)、車で最低一時間半かかることになってしまう。

エルサレム以外からアクセスの無いアブメラハも同じように、西岸地区から行くのは骨の折れることになる。西岸地区、主にベツレヘムとラマラでSulhas(伝統的和解の儀式)を専門とするA-Surhi教主が、このような場所に行くのは難しくなる。

長さ約17kmに及ぶ東エルサレムの分離壁は、アラブ人をアラブ人から分断する。A-Surhi教主の例は、ここ数週間にこの地域の人々が経験することになる大混乱の一例に過ぎない。教主のようにエルサレムの居住者と認定されている数千人がAbuMrera、Al-Azariya、Sawahara東部と西部に、Sa'adとアブディスの教主は、壁の“外”に取り残される。壁の“中”の学校の生徒である彼らの子どもたちは、西岸地区に他の学校を探さなければならない。反対に、数万人の西岸地区居住者は、公的にエルサレムの居住者と認められていないが、壁の“中”に住むことになる。

壁の外に置かれるこれらの地区の居住者たちは、彼らの生活様式をまったく変えなければならない。エルサレムの代わりに他の西岸地区の町々に、毎日の礼拝場所を捜し求めなければならない。例えば、Sa'ad主教の地区へ行く道は壁に遮断されたので、新しい道路をその地区の外に建設しなければならない。

Sawahara Sharqiyaの居住者は、壁の中にあるJabal Mukkaber近くの古い葡萄畑を手放さなければならない。約30の市立学校に通う子どもたちは、西岸地区で代わりの学校を探さなければならない。以前は必要なとき、東エルサレムのMakassed病院に行くことのできた数万人の居住者は、行く病院がなくなってしまう。言うまでもなく商業的、社会的、交通上のサービスもなくなる。彼らは、Salah A-DinやSultan Suleiman通りにある職場へは行けないし、神殿の丘へ祈りにも行けない。

壁が完成したら、壁の中の東エルサレム居住者と認められる23万人に、西岸地区の6〜7万の居住者が加算されることになる。

東エルサレム居住者に開発サービスを行っているIr Shalem協会会長Dan Seideman弁護士は、壁が「市の市民として、居住者の要求を考慮していない」と述べている。

インティファダの初めの頃、軍隊は溝を掘り、都市周辺の部署への入り口に窪みを造り、西岸地区の居住者がエルサレムに入れなくした。このことはつまり、エルサレム居住者の証明書を持つ家族の子どもたちは三年間、障害物をよじ登り、時には生命の危険を冒して通学していたことになる。

次第に一時的な封鎖は永久的なものとなり、数週間前、国防省とイスラエル国防軍は、市の南部 Kafr Um Tubaから東部のアブディスまで壁を造るプランを居住者に通告し始めたのである。

居住者は一度も壁のルートについての詳しい説明を受けていない。パレスチナ人に反対や合法的異論を唱えさせ難くするためである。

二週間前、東エルサレムで分離壁を造るブルドーザーがアブディスのアルクッズ 大学の近くで掘り始めた。その壁はエルサレムから大学のサッカーボール場を横切ることが明らかになった。何が起ころうとしているか理解した学長は、建設工事を止めさせようと抗議行動を始めた。次年度の登録をサッカー場近くの小屋に移し、エルサレムのサッカートーナメント試合をそこで始めた。幾つかの授業もサッカー場に移され、24時間の監視が続けられた。大学の理事たちは、この状態がサッカー場をブルドーザーによる破壊から守ることを願っている。

アルクッズ大学学長サリ・ヌセイベ教授は最近殆どの時間を、壁の建設からサッカー場を守ることに費やしている。「政治家として私は壁に反対です。何故ならそれは双方の国にとって災いだからです。そして私は今、大学を救えるのなら何でもしようと思っています」と、彼は述べている。



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