エルサレムからのHOT NEWS
−イスラエル・パレスチナの紛争の解決を願って−


報復と殺人の微妙な境界線


2003年8月
イツハク・フランケンタール

 パレスチナ人とイスラエル人は、殺人と報復の悪循環に陥っています。この両者の間には、基本的な違いがあります。報復は犯された殺人に対して考量して与えられる罰です。しかし、恐ろしい襲撃や殺人に応えて全住民を罰することは報復ではなく、殺人と考えられます。不幸にも私達は、IDFが、絶望、報復、殺人と憎しみを理由に殆ど毎日のように全住民を罰し、報復するのを−イスラエル市民としての私の名において−見ています。従って絶望の中でパレスチナ人はイスラエル住民に対し復讐し、無実の人々を殺すのです。

 1967年以来、他国をコントロールし続けることをイスラエル政府に許して来て、果たして私たちイスラエル人に罪が全く無いのか、自分に問わねばなりません。イスラエル国防軍や、最近Shin Betと判明したユダヤ人テロリストによる女性、子ども、老人を含む3000人以上のパレスチナ人の殺人が、パレスチナ住民の絶望感の主な原因であり、彼らのテロ行為の主な動機なのです。

 この地域の人々は根本的な問いに取り組まねばなりません。イスラエル軍による殺人のように、実際占領はひどいものです。しかしパレスチナ人の応答は報復になっているのでしょうか。あるいはそれは単なる殺人でしょうか。もし正真正銘の報復であれば、パレスチナ人は自分たちの兄弟を殺した人を探し、狙うでしょう。しかし実際行われているのは、無実の市民が殺されているのです。同じ問いをイスラエルの国に向けねばなりません。イスラエルは時限爆弾やイスラエル人を殺そうとする人々のみを狙っていますか。または、そばの無実の人々も傷つけ、殺していますか。もしそうなら、パレスチナとイスラエルの殺人者は全て同じカテゴリーに入ります。

 私達は、イスラエル側の治安の要求と、パレスチナ人の独立の要求とを区別しなければなりません。イスラエルの動きはやたら混乱を起こし、パレスチナ人を傷つけるよう煽るだけです。イスラエルによるこのような行動は市民に何の安全も約束しません。むしろ反対に自爆者の可能性を強力に誘発します。パレスチナ人に関しては、自爆者たちのやり方は、彼らを国家として認められる状態に近づけることはないでしょう。多くの国、第一にアメリカは、パレスチナはテロの上に建てられた国であり、従って独立するに値しないと信じています。シャロンとアラファトはこれが分からないのでしょうか。彼らは私が理解しているより更にはっきりとこのことを理解していると確信します。私は政治家ではありませんが、彼らの欲求を理解できます。実際シャロンは、ヨルダンはパレスチナの国で、ヨルダン川と地中海の間の領土はイスラエルに属しているという信念に駆り立てられています。私が思うにはシャロンは又、パレスチナ人の多くがその地域を去るほどの深い絶望を引き起こすことが最良の方法だと信じているようです。シャロンは口実を設けてでも遂行する必要があり、それ故両サイドに毎年数百人もの死者が出ても、ごく僅かな犠牲に過ぎないと感じています。かれは、パレスチナの国がもし建国されたら、数百人どころか数万人ものイスラエル人が死ぬことになるだろうと信じています。彼の論理によると、後で数万人が犠牲になるより今、数百人が犠牲になるほうがましなわけです。これが、シャロンがHudna(停戦)の期間中に暗殺を遂行し、2000年9月、神殿の丘≠訪問した際のように、その地域で騒ぎを勃発させた理由です。アラファトは、クリントン大統領が設定した計画に従い、イスラエルがパレスチナの国を快く建国させることはないだろうと考えています。また、神殿の丘≠フ統治権をイスラエルに与えるにはまだ機が熟していないと信じています。それゆえ彼はイスラエルに対し、積極的に率先して襲撃したり、消極的にこのような工作に関わった人々に気づかない振りをしたりして推し測っているのです。

 シャロンとアラファトには多くの共通点があります。右派の指導者としてシャロンには難しい占領地からの痛ましい撤退を指揮し、左派の支持により平和を獲得する力があります。まだ答えが得られない問いがいくつかあります。シャロンはその疑わしい倫理の故に、首相職を解かれるのでしょうか。シャロンはもし合意の形式が世界の大多数に受け入れられれば、パレスチナ建国を支持する用意があるのでしょうか。

 アラファトとの個人的な面識を基に、私はアラファトが広く支持された指導者として、クリントン大統領が主張した"パレスチナ人が神殿の丘≠フ統治権を得る"と規定されたビジョンと、ラビンの道に従って、パレスチナを歴史的和解へと導くことを望み、又そう出来ることを知っています。しかし、パレスチナの国が適当な場所に無いかぎり、アルタレナ事件でベン グリオンが取ったように行動するよう求められるとき、イスラエルがアラファトにそれを要請したとしても、アラファトは内戦を引き起こすことに消極的です。

 シャロンもアラファトも間違っています。二人ともそれぞれの国民を自らとともに衰弱させています。異なる点は、シャロンには資産があり、アラファトには失うものが何も無いことです。

 パレスチナの、国家としての地位は必要不可欠で、シャロンのやり方は歴史的誤りとして名を下げるでしょう。しかしイスラエルの国民は直にシャロンの誤りを忘れるでしょう。他の多くのものを忘れるように。アラファトは平和を作ろうとして失敗した指導者として記憶されるでしょう。私の心は両サイドの死者のために傷ついています。

イツハク・フランケンタール――平和が無いため、誘拐され殺されたアリクの父親。ユダヤ人。

参考:朝日新聞フォーラム「和平へ 憎しみを超えて」イツハク・フランケンタール氏が参加されています。(朝日新聞社ウェブサイトより



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