読み物TOPへ  ホームへ
ワールドカップ2014ブラジル大会 TV観戦記
前提  
 2014年7月現在、当サイト管理人HARUNAが応援するチームは、(決勝トーナメント1回戦終了後に修正)
 1にオランダ
 
2にポルトガル
 3にベルギー&コロンビア&フランス&イングランド

 ちょこっと日本
 である。従って観戦記も、これらのチームへの偏愛に充ち満ちて書かれる予定である。
決勝トーナメント 観戦記  
7/14(月)   <決勝> ドイツ - アルゼンチン
7/13(日)   <3位決> ブラジル - オランダ
7/10(木)   <準決> オランダ - アルゼンチン
7/9(水)   <準決> ブラジル - ドイツ
7/6(日)   <準々決> アルゼンチン - ベルギー オランダ - コスタリカ
7/5(土)   <準々決> フランス - ドイツ ブラジル - コロンビア
7/2(水)   <一回戦> アルゼンチン - スイス ベルギー - アメリカ
7/1(火)   <一回戦> フランス - ナイジェリア ドイツ - アルジェリア
6/30(月)   <一回戦> オランダ - メキシコ コスタリカ - ギリシャ
6/29(日)   <一回戦> ブラジル - チリ コロンビア - ウルグアイ
 
決勝トーナメント 勝敗表
 

 
 
決勝トーナメント 順位予想

 2014年7月現在、予想というか願望で、ずばり、以下の順位を挙げます!(決勝トーナメント1回戦終了後に、修正しました)
 
  
優勝  : オランダ
  準優勝:
コロンビア
  3位  :
ベルギー
  4位  :
フランス
 
 
グループリーグ 最終結果 ※カッコ内の数字は、事前の僕の予想順位
A組
1.ブラジル (1)
2.メキシコ (3)
3.クロアチア (2)
4.カメルーン
(4)
B組
1.オランダ (2)
2.チリ (1)
3.スペイン (3)
4.オーストラリア
(4)
C組
1.コロンビア (2)
2.ギリシャ (1)
3.コートジボワール (4)
4.日本 (3)
D組
1.コスタリカ (4)
2.ウルグアイ (3)
3.イタリア (2)
4.イングランド
(1)
E組
1.フランス (1)
2.スイス (2)
3.エクアドル (3)
4.ホンジュラス
(4)
F組
1.アルゼンチン (1)
2.ナイジェリア (3)
3.ボスニア・ヘルツェゴビナ (2)
4.イラン
(4)
G組
1.ドイツ (1)
2.アメリカ (3)
3.ポルトガル (2)
4.ガーナ
(4)
H組
1.ベルギー (1)
2.アルジェリア (4)
3.ロシア (2)
4.韓国 (3)
 
グループリーグ 事前予想
A組
1.ブラジル
2.クロアチア
3.メキシコ
4.カメルーン

 開催国ブラジル、クロアチア、メキシコ、カメルーンという、強豪揃いの顔ぶれ。ブラジルさえ、まったく油断できない。クロアチアとメキシコは、非常に勝負強いというか、最後まで勝負を諦めないしぶとさがある。クロアチアは1998年W杯と2008年欧州選手権でドイツを破るなど数々の輝かしい経歴があるし、メキシコは1998年大会、予選リーグ3戦で共に先制点を奪われてから同点または逆転で決勝に進んでいる。この時は我が応援するオランダをさんざん苦しめたので、記憶に強く残っている。今回、調子のよいG・ドス・サントスが活躍すれば勝ち抜けの可能性は十分にある。
 そして今回の主役であろうブラジル、僕には歴代でかなり弱い部類に入るチームの気がしてならない。エースのはずのネイマール、確かにゴールもパスもできる万能選手だが、いまひとつ調子が上がらない。他のメンバーも、過去のスター選手達と比べると大きく見劣りしてしまう。とはいえ、最近のワールドカップにおいて、ブラジルがグループリーグで1位以外になるのを見たことがないので、まあ決勝トーナメントに進めないようなことはないはず。それにしてもちょっと優勝はないだろうなあ。
 残るカメルーン、エトー以外はほぼ知らない選手ばかりなので評価が難しいが、この組で勝ち抜けるのは難しいと思う。
B組
1.チリ
2.オランダ
3.スペイン
4.オーストラリア

 何ということをしてくれるのかとまず言いたい。我が応援するオランダとスペイン、前回大会の決勝の組み合わせだった両者が同じ組に入り、あろうことかB組の初戦で相まみえるのだ。いきなり僕にとっての大きなヤマ場が訪れ、僕はオレンジのポロシャツを身にまとい、深夜にオランダの応援に声を枯らすことになる。
 オーストラリアは番外としても、同組には他にチリという難敵が控えている。普通はスペインとオランダのどちらかを首位に推しそうなものだが、こういう場合は往々にして2戦目でチリが首位に立ち、強いはずのどちらかがグループリーグ落ちすることがある。2002年の日韓大会では、前回優勝のフランスがただの1点も取れずにグループ最下位で敗れ去り、2010年大会ではやはり前回優勝のイタリアがまた最下位の憂き目にあっている。波乱はどんな大会でも起こるものだが、この組にその匂いがプンプンする。
C組
1.ギリシャ
2.コロンビア
3.日本
4.コートジボワール

 近年の日本は過去最高レベルに強い。つい最近までそう思っていたのに、いまやその面影もいずこやら。本田の調子が落ちたことに端を発するのだろうし、長谷部、遠藤といった主力も軒並みピークを過ぎた。今回の日本はどう見ても厳しい。
 この組ではコロンビアの勢いがなんと言っても光っており、大エースのファルカオ抜きでもかなりの攻撃力を擁する。しかし、ここには堅守ギリシャがいる。守って守ってカウンターという、僕の大嫌いなサッカーで勝ってしまう、相変わらず空気の読めないチーム。2004年欧州選手権優勝の嫌な記憶が甦る。
 コートジボワールはちょっと情報不足で不明な点が多いが、多くを望めない点は日本と同じ。だから僕の予想はこうなる。
D組
1.イングランド
2.イタリア
3.ウルグアイ
4.コスタリカ

 日本へ来てはみたものの……。
 とっても冴えないプレーでセレッソ大阪ファンの顰蹙をかっているフォルラン。前回大会のウルグアイは彼のスーパーな働きがあってこその成績だったので、今回はちょっと高望みできないかも。スアレス、カバーニという強力フォワードを擁していても、お膳立てをしてくれる存在は必要だ。チームとしての勢いも感じられない。レコバ、フォルランという才能を抱えながらも敗れ去った2002年大会を思い出す。
 意外にいけそうなのがイングランドだ。もちろん僕のひいき目も多分にあるのだけれど、グループリーグはなんだか順調にいけそうな気がする。前線に若い才能が台頭してきたし、ルーニーとジェラードの存在感は健在だ。キーパーのハートも安定感を増し、近年のイングランドGKの中でも屈指の選手となった。
 D組にはさらにイタリアが控える。ただ、モントリーボの欠場が決まり、支える屋台骨がピルロ一人になってしまった。これは危ういのではないか。2012年の欧州選手権でかなりの攻撃的チームに生まれ変わり、好成績を収めたが、次の世代に移っていかないようではただ衰退を待つばかりだ。なにせ、前王者として臨んだ前回大会では、グループリーグ敗退という失態を犯しているのだ。今回もその二の舞になる可能性十分である。
E組
1.フランス
2.スイス
3.エクアドル
4.ホンジュラス

 E組では、スイスの評判がいいらしい。映像をほとんど見ないのでわからないが、堅守を武器にする、ギリシャタイプの戦術をとるらしい。そして悲しいかなこれは有効な戦術なのだ。1994年大会、ズッターやスフォルツァのいた魅力的なチームなら応援する気にもなるのだけれど。
 まあこの組は、フランスの1位通過はほぼ固いと思われるがどうだろうか。ホンジュラスは番外として、エクアドルもフランスを差し置いて上位に食い込む力がありそうには思えない。
F組
1.アルゼンチン
2.ボスニア・ヘルツェゴビナ
3.ナイジェリア
4.イラン

 まあF組はアルゼンチンということで終わり。旧ユーゴ勢のボスニア・ヘルツェゴビナがそれに続き、ナイジェリアとイランが3位か4位。この組で、それ以外の波乱が起こる可能性があるのだろうか。
G組
1.ドイツ
2.ポルトガル(相当の願望入り)
3.アメリカ
4.ガーナ

 またここでもやってくれた。なぜに我が応援するポルトガルと同組にドイツが。しかも残る2枠も、ガーナ、アメリカと揃って侮れない。現に、2002年日韓大会でポルトガルはアメリカとグループリーグで当たり、痛い敗戦を喫している。ガーナはおそらく今大会のアフリカ勢では最強だろう。
 ポルトガルがクリスティアーノ・ロナウド頼みなのは間違いない。怪我の状態がどこまで回復しているのかが気になるところではあるが、正直、彼が本調子であっても優勝を望めるチームではなさそうだ。ロナウドはウィンガー兼フォワードでしかなく、過去のルイ・コスタ、フィーゴ、デコといった中盤のスーパープレイヤーのいた頃ならまだしも、ジョアン・モウティーニョやラウール・メイレレスにその役は荷が重い。かといってロナウドが中盤でパス回しに徹すれば、誰がじゃあ点を取るのかという話になる。ディフェンダーが結構安定してはいるので、守備に重点を置けばある程度までは進んでいけるかもしれない。
 いっぽう、ドイツはやはり優勝候補の本命である。ロイスの欠場は痛いが、タレントは他にいくらでもいる。フォワード登録がクローゼ一人とは言え、「ゼロトップ」体勢で得点を決められる選手が揃っている。11人全てに隙が感じられず、僕は好きじゃないけどまあ決勝まで行くんじゃないかなあ。
H組
1.ベルギー
2.ロシア
3.韓国
4.アルジェリア

 今大会最大の目玉、ベルギーの登場だ。このチームがどういうパフォーマンスを見せてくれるか、本当に楽しみである。中盤から前線には、よくぞここまで揃ったというタレントが顔を並べる。クルトワ、コンパニを中心とする守備も安定感ばっちりだ。若く才能溢れるプレイヤー達に、どうぞかき回してもらいたい。
 あとは、アルシャヴィンなき後のロシア、前回大会で無得点に終わったアルジェリア、直前の試合では絶不調の韓国と、ベルギーを脅かす影は見当たらない。
 
グループリーグ 観戦記   グループリーグ勝敗表(Yahooスポーツナビ) 
6/27(金)   アメリカ - ドイツ ポルトガル - ガーナ
  韓国 - ベルギー アルジェリア - ロシア
6/26(木)   ナイジェリア - アルゼンチン ボスニア・ヘルツェゴビナ - イラン
  ホンジュラス - スイス エクアドル - フランス
6/25(水)   イタリア - ウルグアイ コスタリカ - イングランド
  日本 - コロンビア ギリシャ - コートジボワール
6/24(火)   オーストラリア - スペイン オランダ - チリ
  ブラジル - カメルーン クロアチア - メキシコ
6/23(月)   ベルギー - ロシア 韓国 - アルジェリア アメリカ - ポルトガル
6/22(日)   アルゼンチン - イラン ドイツ - ガーナ ナイジェリア - ボスニア・ヘルツェゴビナ
6/21(土)   イタリア - コスタリカ スイス - フランス ホンジュラス - エクアドル
6/20(金)   コロンビア - コートジボワール ウルグアイ - イングランド 日本 - ギリシャ
6/19(木)   オーストラリア - オランダ スペイン - チリ カメルーン - クロアチア
6/18(水)   ベルギー - アルジェリア ブラジル - メキシコ ロシア - 韓国
6/17(火)   ドイツ - ポルトガル イラン - ナイジェリア ガーナ - アメリカ
6/16(月)   スイス - エクアドル フランス - ホンジュラス アルゼンチン - ボスニア・ヘルツェゴビナ
6/15(日)   コロンビア - ギリシャ ウルグアイ - コスタリカ イングランド - イタリア コートジボワール - 日本
6/14(土)   メキシコ - カメルーン スペイン - オランダ チリ - オーストラリア 
6/13(金)   ブラジル - クロアチア 

グループリーグ 観戦記

 
ブラジル 3−1 クロアチア ●
 前半は、クロアチアのゲームプランが徹底していた。自分たちの良さを消してまでも守備に徹する。攻撃の中心選手、モドリッチでさえも守りの姿勢を貫いた。そんな中、オウンゴールというタナボタの1点が転がり込み、これが逆にクロアチアのペースを狂わせた気がする。クロアチアとしてはおそらく、前半では0−0で耐え、後半は期を見て一気に責め立てるという感じで考えていた気がする。
 ネイマールの1点目は見事だった。あの局面であのゴールを決められるのはスターの証。そしてPKも、プレッシャーのなか、よく蹴った。ただ、試合全体を通じてどうだったかといえば、彼はいつもそんな印象があるが、なんだかプレーが粗いのだ。いい時はいいが、凡ミスも多い。この試合で評価を上げたのはオスカルのほうだろう。3点目は意表をつく不思議なキックで、それ以外にも好機を数多く作った。
 クロアチアは、負けはしたものの、インパクトは残した。モドリッチの才能は疑いようもなく、レアル・マドリッドでの経験を経て、さらに一皮むけた気がする。攻守に脅威の存在だったオリッチも(体は重たそうだが、)よかった。今日はブラジル相手で最初から変則の試合運びだったのだ。次からが本領発揮だ。

 さて、この試合は開幕戦で開催国ブラジルの逆転勝ち、というとても”美味しい”結果になると共に、残念な話題も振りまいた。主審、西村氏へのバッシングである。ブラジル2点目となるPKの判定がどうだったのか。クロアチアの監督や一部メディアなどからはかなり大げさに叩かれているが、まあこれはよくある話。個人的には、あれぐらいでPKはないだろうと思うが、これは審判システム全体に絡む問題だ。要は、審判を神格化し、一人の人間が目で見た情報だけを頼りに大事な判断をおこない、しかもそれを覆してはならないというところに問題があるのだ。だから、あのPKはおかしいと僕も思うけれど、西村氏を糾弾する気にはならない。今後、似たようなPK問題が多発しないことだけを祈る。なにせ今大会は、ようやくゴール判定システムが導入され、以前のように、完全に入っているゴールが認められないような悔しい思いをすることがなくなったのだから。
 ブラジルはこの勝利をもって、グループリーグ1位はまあ確定だろう。ただ、これは僕の好みであるが、今日の試合を見てブラジルを好きにはなれないし、優勝に値するチームとも思えない。
 
メキシコ 1−0 カメルーン ●
 雨の試合だった。メキシコの試合運びの巧みさが際だつ。いつもどおり、大人のチームである。僕の好きなジオバニ・ドス・サントスが予想通りに活躍し、2回のゴールを決めるも、オフサイドで取り消された。(そのうち1回は明らかにオフサイドではなかった。)それでも終始カメルーンを圧倒し、面白いサッカーを見せ、やはりジオバニのシュートからのこぼれ球をペラルタが押し込んで先制し、そのまま逃げ切った。チームのレベルからして、順当な結果だろう。
 
スペイン 1−5 オランダ
 むふ。
 こんな結果、オランダのサポーターだって誰も予測しなかったはず。前回王者で、しかも決勝で辛酸を舐めさせられたスペインを相手に、そして決勝ではただの1点も取らせてくれなかった相手に、5対1の大勝とは!
 むふむふ。
 つくづくサッカーは難しいと思った。オランダはかなり守備的な布陣を敷き、序盤はやはりスペインのパス回しをオランダが耐える展開が続いた。スペインは選手達のコンディションが良さそうで、対するオランダは守るだけで精一杯。攻撃の態勢がまったく作れず、体も重たそうに見えた。前回大会の決勝もこんな感じで、攻めるスペインにただ守るだけのオランダ、という構図が甦る。あの時のオランダはダーティーなファウルも多く、本当に酷かった。
 スペインも決してチャンスは多くないものの、おなじみのパス回しからゴール前に切れ込み、PKを勝ち取る。スローで見ればPKになるほどのプレーとは思われないが、やはりブラジル戦の影響があったのだろうか。セーブしてくれ、とテレビの前で祈るも、シャビ・アロンソがあっさり決める。これでまたスペインにやられるのかと暗い気持ちになる。
 ところが、テレビ中継ではオランダの守備について丁寧な解説をしてくれて、実はオランダも悪くはないらしい。5バックで自陣近くに入るボールはしっかりカットしているため、攻め込まれているようで、大きなピンチを何度も防いでいる。キーパーも、最初はなんだか足元が不安で今イチだなあという気がしたが、試合が進むにつれ結構いいかもと思えてきた。
 そこへ来て、前半終了間際のファン・ペルシー。ロングパス一本にダイビングヘッドを合わせ、キーパーの頭を抜く絶妙なゴールを決める。ゴールハンターとはこういうものだと言わんばかりの名ゴールだ。これでオランダに活力が生まれ、パスもだんだんと通り始める。まあこれで最後までしのげば引き分け、それで十分だと思っていた。そしたらなんと、ロッベンの逆転ゴールが決まる。あとはスペインが崩れていくのを待つだけだった。スペインのGKカシージャスは、不運な判定はあったものの、明らかな判断ミス(衰えによるものかはわからないが)を犯していた。
 こんなことがあるのだろうか。スペインは攻撃的なチームだと思われているが、実は守備にも長けていて、前回大会の全失点はなんと2点である。それがこの1試合だけで5失点。僕が予想で書いた通りになっていくのだろうか。
 とにかくこれでオランダのグループリーグ突破は大丈夫だろう。むふふのふ。それでも気を抜かず、1位通過を決めたい。2位になると、決勝トーナメント初戦でブラジルと当たることになるのだ。
 
チリ 3−1 オーストラリア ●
 地力では勝るチリが、序盤にぽんぽんと2点を挙げた。大黒柱のアレクシス・サンチェスは、ストライカーとしての資質に加え、チームプレイもできるユーティリティープレイヤーでもある。おまけに顔がマフィア顔のため、必要以上に存在感があり、敵にしたくないタイプ。これは楽勝かと思われた頃、オーストラリアも持ち前の高さを生かし、きれいなクロスからのヘディングで、絵に描いたようなゴールを決めた。これで勝負は互角の様相を呈してきたが、最後はやはりこれが力の差なのか、追いつこうとするオーストラリアにとどめの一発をぶち込んだ。この試合もまた、順当な結果だと思う。
 
コロンビア 3−0 ギリシャ 
 今大会の注目株、コロンビアの登場である。攻めるコロンビアに守るギリシャ。概略は予想の通りに進んだ試合だけれど、コロンビアの攻撃も期待したほどの迫力はなく、守備はかなり手薄というかギリシャにぽんぽんシュートを打たれていて危うい。それでも序盤でコロンビアがコロコロッとしたゴールを決め、優位に立つ。ギリシャもチャンスは作るが、最後のところでバーに嫌われたりなど、得点には結びつかない。さほど圧倒的な戦力差を感じないのに、終わってみればコロンビアの圧勝となった。このまま尻上がりに調子を上げていけば、コロンビアは期待通りの成績を収めるかも。逆にギリシャは堅守という持ち味も微力で、先が望めなさそう。(僕は予想1位に上げたのだが……)
 
ウルグアイ 1−3 コスタリカ 
 ワールドカップだからといって全試合が面白い訳ではなく、こうした退屈な試合もそりゃ出てくる。ウルグアイはスアレスが間に合わず、フォルランの輝きは失せ、カバーニはPKを確実に決めた以外、目立った活躍はなかった。コスタリカが特別いい出来だったとは思わないが、結構な点差の結果が出た。それにしても今大会はよく点が入るので、見ている分には面白い。
 
イングランド 1−2 イタリア 
 プランデッリ監督になって新しいチームに生まれ変わったイタリア。2006年大会で優勝したメンバーはまだ残っているが、あの頃やそれ以前のカテナチオとは方法論が全く異なっている。4バックの両サイドは常に高い位置を保ち、そこを含めてパスが回されるので、恐ろしく攻撃的だ。ピルロの能力もまだ色あせない。いっぽう、僕の応援するイングランドは、ルーニーやジェラードがほとんど消えているような状態で、ストゥーリッジ、スターリング、ウェルベックなど、身体能力の高い若い選手が個人技を元にチャンスを作っていた。こちらはあまりいいサッカーとは思えないが、決定期はイタリアよりも多かった。
 前半のなかばを過ぎたあたりで試合が動いた。イタリアがセットプレーから強烈なシュートを叩き込む。効果的な攻撃を繰り返していた成果が実り、これはイタリア、調子づくかも、と思っていたらようやくイングランドも目覚めた。そこまで存在感の消えていたルーニーが一発前に抜き出ると、ゴール前に完璧なクロスを入れた。あとは押し込むだけなので、あの1点はルーニーのものだ。ここまででも十分に面白い試合だったが、さらにヒートアップしてきた。
 後半に入ってもイタリアの攻撃の手は緩まない。そして遂に怪童バロテッリが本領を発揮した。重心のそれた体勢から、嘘のように強烈なヘディングシュートが決まる。これで1−2となってからは、暑さによる疲労のためか、だんだんと両者の動きが少なくなっていく。イタリアはピルロの運動量が落ち、決定的なチャンスが生まれない。イングランドはジェラード、ルーニー共に不調で、若いストゥーリッジやスターリングは元気だが一人で勝負しようとして、ことごとく潰されていく。終盤、イタリアもチェックが甘くなり、イングランドのパス回しが通るようになる。それでも、最後の砦をこじ開けることは叶わなかった。
 イングランドは、この試合では負けてしまったが、なんとなく立ち直ってくれる気がする。(願望込みの話で、だが。) 若い選手とベテラン、スター選手達が自分のやるべき仕事、連携プレーのあり方をもう一度しっかり見つめ直せば、やり方が生まれると思う。いっぽうのイタリア、この戦い方は確かに有効だが、この暑いブラジルの地で、何試合もこれを続けていけるのかというと不安も大きい。
 
コートジボワール 2−1 日本 
 恐るべきはドログバ。途中出場で出てきた途端、一瞬で試合の流れを変えた。煙り立つようなオーラを身にまとい、神懸かり的なボールタッチを披露する。彼自身のゴールはなかったものの、2点ともに確実に彼が生み出したと言える得点だった。
 日本は、僕の予想以上に動きが悪かった。本田は相変わらず体が動かず、それに合わせるように香川も長谷部もいいところがまるでない。もちろん瞬間的な動きの冴えで奪った1点には唸らされたが、試合中、唯一ともいうべき日本の輝きだった。暑さと、繰り返し降ったりやんだりを繰り返す雨に苦しんだのかもしれないが、それは相手も同じこと。コートジボワールも日本と大差はなく、ドログバがいなければどうなっていたかわからない。ただ、個人能力はそこそこ発揮できていたので、この結果はまあ妥当というところか。
 
スイス 2−1 エクアドル 
 どちらも攻撃的なスタイルで、意外にも好カードとなった。スイスの監督は、あのヒッツフェルトさん(ドイツのバイエルン・ミュンヘンなどで手腕を発揮した)だったのか。エクアドルの時間帯、スイスの時間帯と、それぞれが攻勢になったり守勢に回ったり、めまぐるしい攻防が続く。先制点はエクアドル。コーナー近くのFKから、マンチェスター・ユナイテッドで活躍するバレンシアがきれいなヘディングを決める。スイスも後半早々、同じような位置のコーナーキックから、交代したばかりのメフメディがやはりヘディングで決め、同点に追いつく。このあたりから、シャキリを中心にスイスが徐々に試合の主導権を握るようになる。今大会初めての同点かというムードが漂いはじめたロスタイム、やはり交代で入ったスイスのセフェロヴィッチが、ゴール前にこぼれてきたボールを渾身の力で蹴り込み、劇的な逆転弾を決めた。これはいい試合だ。
 
フランス 3−0 ホンジュラス 
 やったぜ、ベンちゃん!
 前回大会でメンバーから漏れ、悔しい思いをしただろうベンゼマ。ようやく出場叶ったワールドカップで、さっそく大きな仕事をやってのけた。最初のPKもかなりのプレッシャーだったろうが思い切り決め、さらに2点目も彼が決めたようなものだった。そして3点目こそ圧巻のゴール。狭い隙間を抜いてゴールに突き刺さる、本当に素晴らしいゴールだった。ホンジュラスも、守備体系はかなりしっかりしていてフランスを苦しめたが、やはりそれだけで勝利するというのは難しい。
 ただ、これでフランスはこの先も安泰かというと、そうも言っていられない。おそらくグループリーグは抜けるだろうが、競合国を次々と破っていく力があるのかどうか。ベンゼマは、この試合でこそ活躍したものの、パスワークでもどかしい場面がいくつも見られた。リベリの欠場が、この勝利においてさえ痛手に思えてくる。
 
アルゼンチン 2−1 ボスニア・ヘルツェゴビナ 
 アルゼンチンは、試合開始早々ラッキーなゴールを決めたものの、そのせいでアグレッシブさも見られず、前半は面白みの薄い内容だった。ボスニアのほうもそこそこチャンスは作りながら攻めきれない。後半に入り、元レアル・マドリッドのガゴが入ってからはボールが繋がるようになり、アルゼンチンのチャンスが増えていく。そこへ来て待望のゴール。ディフェンダーをひょいひょいと交わしてゴールの隅にたたき込む、メッシらしいゴールだった。この後、ボスニアも1点を返すも力及ばず、試合終了。
 メッシは今回ゴールを決めはしたが、相変わらず代表チームではぱっとしない。今や二人目のスーパースター、ディ・マリアが円熟期を迎え、彼との連携でうまくいくかと思いきやそんな気配もない。ディ・マリアも、レアル・マドリッドで見せるような、サイドをえぐって精度の高いクロスをあげるプレイがまったく見られない。フランス同様、グループリーグ勝ち抜けは問題ないだろうが、その先を勝ち進めるかには大いに疑問が残る。
 
ドイツ 4−0 ポルトガル 
 さてさて、我が二番応援のポルトガルの登場、しかも相手はドイツだ。ドイツの勝ちは濃厚だが、なんとか凌いで引き分けに持ち込めれば十分、と思っていた。それなのに。ああ、それなのに。
 退場となったペペ一人に責任を負わせるのはかわいそうだ。敗因はいくらでもある。ロナウド中心のチームにおいて、彼がトップコンディションにない影響は大きい。テクニックというより彼の凄みは瞬間のダッシュ力、突破力、シュート力にある。体が万全でなければ、魅力は色褪せてしまう。コエントランの負傷交代ももちろん大きい。攻撃の大きなコマが一つ減ってしまい、さらに、レアル・マドリッドという大クラブでプレイしているという神通力というか経験値みたいなものも、奪われてしまった。
 ドイツは思った以上に盤石だった。どんな体勢からでも攻撃が組み立てられるし、守備の組織も頑丈でつけいる隙がない。GKのノイアーも抜群の動きで、ここまで見た中では確実に最高のキーパーだろう。ただ、僕がドイツ人選手で二人目に好きになったエジル(一人目はザマー)やゲッツェなど、テクニシャンタイプの選手は、悪い動きではなかったものの、それほど輝く場面はなかった。まあ現代サッカーにおいて、一人の活躍で試合が決まるようなことはめっきり少なくなっているのだが。
 とはいえ、僕はこの試合のポルトガル、悪くなかったと思っている。これは応援する者の強がりではなく、これまでの大きな大会でできなかったパスワーク、セカンドボールの奪取など、基本的な組織プレーが意外にしっかり出来ていたのだ。特に、ジョアン・モウティーニョに覚醒の兆しがあり、彼が活躍して前線にパスを配球できるようになったら、ポルトガルはまだまだよくなる。まだ終わっちゃいない。
 
イラン 0−0 ナイジェリア 
 これもまた息抜きというか、流して見る試合。両チーム共に、かつてはスター選手もいたが、いまや凋落傾向なのは否めない。ナイジェリアが躍動感溢れるプレーをし、爽やかな緑のユニフォームも綺麗で、見ていて気持ちがいい。
 
ガーナ 1−2 アメリカ 
 どちらかと言えばガーナが攻め込んでいる印象があったが、最後にはアメリカが決勝点を決めた。サッカーとは理不尽なものだ。アメリカの実力はおそらくこれ以上ではなかろうが、ガーナはまだ爆発力を秘めている。ドイツ、ポルトガルとの対戦でその真価が問われる。
 
ベルギー 2−1 アルジェリア 
 今大会、最大の目玉と言っていい、ベルギーの登場。僕の三番応援のチームでもあるので、注目していた。ところが序盤、なんだか動きが固く、うまく攻撃の組み立てができない。対するアルジェリアのほうが、常に動いて相手のボールを奪いパスを回すという、攻守にバランスの取れた戦い方をしている。ベルギーのいい所がまったく出ない。何度かのアルジェリアの攻撃が功を奏し、遂にPKによる先制点を奪う。
 ところで今大会の特徴でもある、途中出場の選手がドンピシャで活躍をし、逆転勝ちを収めるという図式。それがこの試合でも見られることになる。アザールが徐々にテクニックを見せ、ドリブル、パスで次々とチャンスを作り始める。交代で入ったフェライニが、マンチェスター・ユナイテッドでの不振を感じさせないプレーで貢献し、得点を挙げた。さらに、入るべくして入ったメルテンスの強烈な逆転弾。ベルギーが勝ち点3をもぎ取った。
 ベルギーがなかなか得点できない時間帯では、ふと1994年大会のコロンビアを思い出した。あの時も、かなりの前評判ながら初戦でルーマニアに負けてしまい、結局グループリーグ突破を果たせずに消えた。今回のベルギーはとにかく最高と言ってもいい組に入った(他が弱いという意味で)ので、決勝トーナメント進出は固いだろうが、その先はどうだろう。どうしても昨日のドイツを考えてしまうが、あのドイツにベルギーが勝てるとは思えない。そこまでの衝撃はなかったというのが正直な感想だ。この先、どんどん調子を上げて勢いをつけていってほしい。
 
ブラジル 0−0 メキシコ 
 ブラジルが、難敵メキシコを迎えた。どちらも初戦を勝利しての2戦目で、ここで勝てばほぼグループリーグ突破が決まる。ブラジルは圧倒的な応援のもと、いくつものチャンスを作るものの、なかなか得点を決め切れない。見たところ五分五分といった印象で、両者無得点のまま前半が終わる。
 後半に入ると、両者さらにアグレッシブになりチャンスも増えるが、決定打が奪えない。メキシコがしぶといのか、ブラジルがふがいないのか。メキシコのGKが”当たって”いたせいもあるが、僕はやはり後者とみている。けっきょく0−0のまま終了。ブラジルはこれでいいのか?
 
ロシア 1−1 韓国 
 ロシア、韓国ともにさほど魅力的なサッカーとは言えず、残念ながら退屈な試合と言わざるを得ない。ロシアはアルシャヴィンがいた頃が懐かしい。とはいえ、徐々に攻撃的な姿勢が見え始め、後半に入って1点ずつを取り合った。これまたどちらも交代選手による得点だ。ここまで続くと不思議な気持ちになる。
 
オーストラリア 2−3 オランダ 
 なんたる試合! そしてオランダ、よく勝った!
 現時点での大会ベストゲームはこれで決まりだろう。オランダがゲームを通じて出来が良かったわけでは全くないが、それはスペイン戦も同じこと。むしろ、完全に支配していなくとも勝ってしまうところに強さを感じる。ドイツのような強さではなく、とにかく勝負強いのだ。これはこの先、どんどん良くなっていく予感がある。優勝するチームはたいてい、最初は不調なところから徐々に調子を上げていくものだ。

 初戦を最高の形で終えたオランダ、ここで一気に決勝トーナメント進出を決めたいところだった。ところが、試合の滑り出しはオーストラリアのペース。果敢なアタックでオランダのパスコースを消し、奪ったボールを効果的に前へ持っていく。オランダはうまくパスが回らず、いい所が出ない。それでも先制したのはオランダだった。ロッベンがセンターライン付近でボールを受けると、タイミングを外して駆け上がり、そのままゴールを決めた。
 これでオランダのペースか、と思った矢先、オーストラリアのケーヒルがもの凄いゴールを決める。後方から来た長いパスを、トラップせずにそのままボレーで叩き込む。今大会ベストというべきスーパーゴール。これでオーストラリアがふたたび息を吹き返す。逆にオランダは楽にいけるかと思ったところだったので、ショックは大きい。
 オランダに追い打ちをかけたのが、後半に入ってからのPKだった。しかしもういい加減なんとかしないかアレ、と思うのは、単に手に当たっただけでハンドを取られるというやつ。巧いフォワードなら、わざと相手ディフェンダーの手に当てることは簡単だ。ハンドというルールにははっきりと”故意に”手を使ったら反則、ということが書いてあるはず。なのに最近はこうしたハンドでPKになるシーンが後を絶たない。
 とにかくこのPKを決められ、オランダは逆転を許した。それでもオランダは優勝を目指すチームだ。この先何度も、こうした逆境を跳ね返していかねばならない。こなしていけ、これくらい。忍耐の時間が続いた。すると、前半のお返しとばかり、失点直後にオランダがゴールを決める。いまや絶対的エースとなった、ファン・ペルシーだ。破壊的に強烈なシュートを、ゴールの上部へ叩き込んだ。これで勢いづいたオランダは、動きがどんどん良くなっていく。最初のうちはなんだか勢いのなかったパスが、するすると通り出す。もちろん、無理をしてでもボールを追っていたオーストラリアの息切れもあった。スペースがどんどん出来て、そこをオランダがついて攻める。交代で入ったデパイがよく動いてチャンスを作っていたが、今度は彼自身が遠目からシュートを打ち、得点を決める。これで再逆転だ。歓喜に沸くオランダサポーター、そして僕。
 オランダはここからが一番の頑張りどころ。選手達の思いは一つ。このリードを保ち、勝ち切らねばならない。実はオランダはオーストラリアに勝ったことがないそうだ。そうした苦手意識も頭をかすめたかもしれない。でも、みんなよく耐え抜いた。とくにデ・ヨングが驚異的なスタミナで、相手のチャンスをことごとく潰していく様は、感動的でさえあった。そして試合終了の笛。オランダのミッション、完了である。

 面白かったのは、オランダのディフェンダー、マルティンスが負傷した時のこと。通常なら別のディフェンダーに替えるところ、ファン・ハール監督は、フォワードのデパイを投入した。大丈夫か、とも思ったが、この作戦が完璧にはまった。リードしながら早い時点でディフェンス固めの交代をして自滅した、2004年欧州選手権のアドフォカート監督とは、雲泥の差だ。
 さあ、これで決勝トーナメント進出は決まった。ただ、ブラジルと当たらないためにも、次のチリ戦も勝っていきたい。しかし一番の不安はディフェンダー陣である。守備力というか、足元のボールさばきに難があり、いつもひやひやさせられる。あとはスナイデルの出来がまだ悪い。彼が爆発すれば、もっと楽に試合を進めるはずだ。
 
スペイン 0−2 チリ 
 なんたる結果。あのスペインが連敗で決勝トーナメントに進めないとは! 確かに事前予想では僕も3位に書いたけれども、もしかしたらこんなことも、という程度の話。あれだけ強かったスペインが、相手の好守に阻まれて、という感じでもなく、こてんぱんに叩きのめされて、手も足も出ずに敗退という結果になるとは思わなかった。
 ただ、2008年に欧州選手権に優勝して以来、同じ気持ちでここまで来てしまったツケが一気に回ってきたのだと思う。チームの中心選手はいまだにシャビ、イニエスタを中心に代わり映えがしない。彼らの衰えを早めに察知し、次の世代の育成を急ぐべきだった。そのあたりがドイツとの差である。
 いっぽう、チリにおいても簡単な試合ではなかったはずなのに、終わってみればこの大差。やはり曲者だ、ここは。
 
カメルーン 0−4 クロアチア 
 思ったとおり、クロアチアは強かった。初戦のレポートにも書いたとおり、ブラジルに負けはしたが、決して悪いサッカーではなかった。ここにきてようやく、本領発揮である。エースのマンジュキッチが戻ったのも大きく、実際に得点を決めてみせたのは頼れる大エースの証拠だ。モドリッチはまだ100%ではないが、ラキティッチ、そしてチーム随一の頑張り屋オリッチなど、タレントはいくらでもいる。カメルーンは、チャンスをつかみかけてはいたものの、ソングの退場で全ては台無しとなった。
 
コロンビア 2−1 コートジボワール 
 前半を見ていると何故か、アマチュア同士の試合のように思えてしまった。明確な戦術が感じられず、ただ闇雲にボールを蹴り合っているだけのような。それでも、ドログバが入って試合が動き出す。日本戦と違ったのは、得点したのが相手のコロンビアのほうだったこと。しかもたて続けに2本のゴールを決めた。コロンビアはこの試合でも、圧倒的な攻撃力というよりは、要所要所での老獪さのような感じで勝ちをものにした。面白い試合かというと首をひねらざるをえないけれど。
 
ウルグアイ 2−1 イングランド 
 どちらかといえばイングランドの優勢で試合が運ぶものの、ウルグアイは、超人スアレスの2点でイングランドの希望を打ち砕いた。2点とも、並のゴールではない。彼が今、世界最高のストライカーだということを世界に見せつける一戦だった。
 イングランドは、頼みのルーニー、ジェラードが初戦同様ぱっとせず、スターリングのドリブルや個人技も空振りに終わる。若手起用が奏功せず、このチームの完成にはまだ時間がかかりそうだ。
 
日本 0−0 ギリシャ 
 日本は、弾けそうでうまく弾けない。場面場面ではいい動きもあるのだが、恒常的な組織として成り立っていない気がする。何があったか知らないが、本田の動きの重さは致命的なレベル。香川がフィットしないのは、本田中心のチームだからかもしれない。一度、本田抜きで戦ってみてはどうなのか。4年前は不可欠の存在だった彼も、今大会では単なる重荷に思えてしまう。
 対するギリシャも、いいチーム状態とは言えないだろう。淋しい話だが、結果どおりの試合だったように思う。
 
イタリア 0−1 コスタリカ 
 イタリアはイングランド戦よりも出来が悪かった。ミスが多く、ピルロもときおりいいプレーは見せるもののさほどスーパーな動きではない。バロテッリは組み立てにも守備にもほとんど参加せず、最後のボールだけを待っている状態だ。しっかり動いて守備までこなすスアレスとはそこが違う。彼はスーパーサブ的に使ったほうがいいような気もするが、そうなると今度はへそを曲げてしまうので、こうした選手は能力があっても活躍できないことが多い。
 コスタリカはコンパクトかつシンプルなサッカーで、なかなか狡猾な戦い方を見せた。プレーの幅が広いわけではないが、同じ攻撃を徹底することで、自分たちのできる最大限のプレーを披露し、見事に得点に結びつけた。面白みはないが、強くはある。
 死の組と呼ばれるこの組で、最初にグループリーグ突破を決めたのがコスタリカだと誰が予想できただろう。同時に、イングランドの敗退が決まった。残念だが、チーム状態からすれば妥当な結果かもしれない。
 
スイス 2−5 フランス 
 フランスは前試合よりもさらに調子を上げてきた。全員の動きが統一されており、迫力ある攻撃を見せた。先発で入ったジルーがきっちりゴールを決め、さらにその直後、相手のミスから2点目を決めた。その後、ベンゼマのPK失敗があったものの、相手コーナーキックからパス3本ほどで決めたゴールは圧巻だった。
 その後もフランスの怒濤の攻めが続く。試合をしている間にも、フランスチームは成長している。最後に2点を取られたのは余分だったが、フランスの完勝と言ってもいいだろう。
 いやあ、フランス強い強い。そういえば思い出した。2004年から2010年の前回ワールドカップまでは、ドメネクという無能な馬鹿監督がなぜか長期間君臨していて、僕は彼が大嫌いだった。結果が出ないのに何故か解任されず、あれはフランスサッカーの暗黒時代だと思う。
 
ホンジュラス 1−2 エクアドル 
 僕にとっては、直接的にも間接的にも興味の薄い試合。全試合を観ているのだから、たまにはこうした息抜きも必要だ。先制したのは意外にもホンジュラスだったが、きっちり逆転するエクアドルはすごい。
 
アルゼンチン 1−0 イラン 
 アルゼンチンは、前試合に比べ、格段に動きがよくなった。とくに、ディ・マリアの切れが戻ってきており、彼がボールを持つと絶対に取られない。左サイドはサイドバックのロホもよくオーバーラップをしてチャンスを作り、それを見てディ・マリアが逆サイドに回ったりなど、攻撃は多彩だ。なのに、得点がなかなか奪えない。
 イランは前試合も無失点だったように、守備固めをしっかりできるチームのようだ。アルゼンチン相手にもそれが徹底できていることは評価に値する。よほど監督がしっかりと指導しているのだろう。ただ、面白みはない。
 そして最後はやはりこの人、メッシが決めた。試合を通じて出来が良かったわけではないが、こうした場面で決定的な仕事ができるのが、スーパースターの証拠である。いっぽう、他のフォワード陣はかなり出来が悪かった。
 
ドイツ 2−2 ガーナ 
 両者最後まで攻撃的で、素晴らしい一戦であった。ドイツが相変わらずの盤石の布陣で、序盤はペースを握る。ところがガーナはそれをきっちり守り切り、カウンターで効果的な攻めを見せる。前半を終わってみれば、決定的なチャンスはガーナのほうが多く作っていた。
 ドイツは攻めても攻めても得点できず、心身のダメージが重なっていたろうが、後半に入ってようやくゲッツェがゴールをこじ開ける。これでドイツが落ち着くかと思いきや、ガーナは全く諦めることなく前半同様の攻撃を続け、直後に同点弾、さらにその10分後には逆転まで決めてしまった。
 これで終わることはないだろうと思っていたら、ドイツは終盤に来てクローゼとシュバンシュタイガーを入れてきた。ここでクローゼかなあ、と僕は首をひねったが、レーヴ監督の判断は正しかった。交代してすぐに、クローゼがこぼれ球を渋く押し込み、同点とする。泥臭い、彼らしいゴールだった。これでワールドカップ通算ゴール数でロナウドに並ぶトップタイとなった。
 その後も、両者勝ちに行く積極的な攻めが続き、最後まで目の離せない一戦となった。ガーナはドイツ相手にこの試合と結果を残せるとは大健闘である。両チームに拍手を送りたい。
 
ナイジェリア 1−0 ボスニア・ヘルツェゴビナ 
 個人能力を生かす攻撃のナイジェリアと、旧ユーゴ勢の特徴である華麗なパスワークを見せるボスニア・ヘルツェゴビナという、わかりやすい構図の試合。ナイジェリアが先制し、試合終盤はボスニアがなんとか得点しようと猛攻を見せるものの、結局そのまま終了。これでボスニアは敗退が決定。いっぽうのナイジェリアは、1998年大会以来の勝利だったというのは意外。
 
ベルギー 1−0 ロシア 
 ベルギーが開始早々、何か吹っ切れたように伸び伸びとしたプレーを見せた。各選手がよく動き、きれいなパスワークを見せながら攻撃の手を進めていく。ただ、今大会では、ボール保持率が高くても勝てないという傾向がある。2連敗で敗退を決めたスペインの印象が強烈だったせいかもしれない。ベルギーが圧倒的に攻めながら得点を奪えず、逆に決定的なシュートはロシアのほうが多いという展開となり、ベルギーもだんだんと手詰まりになっていく。
 ルカクは体調が万全ではないようで、まったく良いところのないまま交代となる。さらに、前試合で強烈なゴールを決めたメルテンスも、試合開始から積極的に動くものの、ややプレーが荒く自滅しがちだった。フェライニもかつての切れは戻らず、重い体を持てあましている。ただ、交代で入った19歳のオリジが元気に動き回り、ベルギーに活気が出始める。両者無得点のまま残り5分を切ったころ、ベルギーがここぞとばかりにギアを変え、果敢に攻め始めた。そして最後はやはりこの人、アザールが左サイドを切り裂き、中央に短いパスを送る。これをオリジが確実に決め、ようやく均衡が崩れた。ベルギーはこの1点をしっかり守りきり、結果として2連勝でグループリーグ突破を決めた。これでベルギーも調子の波に乗り始めた気がする。さらにいい状態で決勝トーナメントに臨んでほしい。
 
韓国 2−4 アルジェリア 
 アルジェリアは、さすがジダンを生んだ国だけあって、初戦に続いて素晴らしい攻撃を見せ、勝利を手にした。各選手が常に動いてパスを回し、攻撃を組み立てていく。それはちょうど2002年の日韓大会において、ヒディンク監督に率いられた韓国チームが実践したやり方だった。あの時の韓国は、実績となったベスト4に値するかはともかく、今のチームより格段に強かったことは確かだ。この試合では、ソン・フンミンの能力は際だっていたものの、他に特筆すべき内容が見当たらない。
 
アメリカ 2−2 ポルトガル 
 アメリカはいつもポルトガルを苦しめる。2002年日韓大会をまた思い出してしまうが、この時もポルトガルはグループリーグ初戦でアメリカと当たり、2−3で敗れている。今日の試合、ポルトガルは序盤でナニの豪快なゴールが決まり、出だしは上々だった。しかし、やはり頼みのクリスティアーノ・ロナウドに切れは戻っておらず、まともに走ることさえ出来ない状態だ。さらに、初戦に続くアクシデント。フォワードのポスティガが前半16分に、また、サイドバックのアンドレ・アルメイダが後半開始時に、それぞれ怪我で交代を強いられる。アンドレは、左サイドをよく駆け上がってチャンスを作っていて、(そのぶん自サイドにスペースを開けてピンチも招いていたが、)貴重な攻撃のコマだった。この試合だけのことならよいが、と願わずにいられない。
 アメリカは今日も動きがよかった。上記のアルジェリアと同様に、とにかく元気に動き回り、相手のパスをカットして攻撃につなげる。だが、この戦い方は体力を求められる。さんざん攻めても点が取れないアメリカは、後半に入って明らかに運動量が落ちた。
 このまま終わればポルトガルの勝ち、その僕の思いは届かず、遂にアメリカのゴールが決まる。コーナーキックからの流れで、ジョーンズが外側から回り込む豪快なシュートを突き刺した。キーパーは全く動けなかった。
 さらにポルトガルには悪夢の展開。残り10分を切った頃、テンプシーの人を食ったようなお腹でのゴールで、逆転を許してしまった。このまま終わればポルトガルは敗退が決まる。なのに、ロナウドは再三のチャンスに、全くらしくないミスキック、ミスパスを繰り返すばかり。これで万事休す。誰もがそう思った終了間際、スーパースターは一瞬だけ輝きを解き放つ。右サイドを駆け上がったロナウドが、センターへのクロスを上げる。これがドンピシャでヴァレラの頭に合い、奇跡の同点ゴールが生まれた。
 これでポルトガルは、首の皮一枚つながった。それでも、決勝トーナメント進出の道は厳しい。とにかく、次の試合ではガーナに大差で勝利し、ドイツがアメリカに大差で勝利しなければならない。
 
オーストラリア 0−3 スペイン 
 スペインは重圧から解放され、ようやく本来のパスサッカーを見せることができた。だったら最初からそうしていればとも思うが、そこがうまくいかないのが人生というものか。逆にオーストラリアは敗退決定でモチベーションを無くしたようで、前2試合のような果敢なプレーが影を潜めた。しかしこの先、スペインはどう変わっていくのだろうか。
 
オランダ 2−0 チリ 
 両者ともに決勝トーナメント進出を決めているが、2位だとブラジルに当たる可能性が高いため、単なる消化試合ではない。とくにチリは引き分けでは2位なので積極的に攻めてきた。いっぽうのオランダ、前半はほとんどいい所がなく、今大会で最悪に出来が悪い。まったくボールが保持できず、パスも繋がらない。ロッベンのドリブルなど、個人技で攻め込むシーンも見られるが、決定機にはならない。チリもまた、ボール保持はできるものの、最後のところでオランダの固い守備に阻まれている。
 前半があまりにも不甲斐なかったため、僕もそれまで普通の服で見ていたのを、オレンジのポロシャツに着替えた。その甲斐あってか、それともチリの守り疲れか、はたまたオランダの最初からの戦略だったのか定かではないが、オランダの攻撃の形が出来てきた。最終的にチリに得点を与えず、2点を決めてみせたのは、オランダの力がまさった証拠だろう。今日も交代で入ったデパイの動きが素晴らしく、得点も決めた。また、チリの攻撃を完封に押さえた守備陣、とくにフラールの働きが大きかった。初戦の頃に感じた守備の不安がだいぶ解消されてきたようだ。
 オランダはこれで3連勝、文句なしの1位抜けである。どの試合も圧倒的に強いという訳ではないものの、勝利をもぎとるところには、こうした大きな大会を勝ち抜く勝負強さを感じる。決勝トーナメントも、この調子で最後まで勝ち進んでほしい。
 
ブラジル 4−1 カメルーン 
 力の差、そしてモチベーションの差があまりにはっきりしすぎて、面白いという試合ではなかった。それでも僕にとっては、ブラジルが2位になったりすると決勝トーナメント一回戦でオランダと当たることになるため、是が非でもきっちり勝ってほしかった。そんな中で難なく勝ち切るブラジルにはさすがに地元開催の勢いを感じる。ネイマールも、今大会のスター選手として申し分のない輝き方だ。これで優勝までいったら、それこそ世界的な大騒ぎになって次のバロンドールも視野に入ってくる。
 
クロアチア 1−3 メキシコ 
 クロアチアは勝たなければ決勝トーナメント進出はない。そのせいで固くなったのか、それとも疲労がたまってきているのか、前2試合に比べて格段に動きが悪かった。モドリッチ、オリッチ、ラキティッチなど、いずれもまったく目立った動きを見せない。逆にメキシコの動きが素晴らしく、全盛期のスペインのように華麗なパスさばきを見せてくれた。それにしても、ラファエル・マルケスはとっくに引退したものと勝手に思っていたら、今大会もしっかりキャプテンとして出場していた。そしてこの試合で、大事な大事な先制点を決めたのだ。均衡が破れると、クロアチアは後がないので攻めに転じるしかない。すると守備が手薄になり、そこをついてメキシコが追加点を入れたのはもう必然の流れだったろう。クロアチアはいいチームが出来ていたのに、実力を出し切れずに去る。もったいない。
 
イタリア 0−1 ウルグアイ 
 死のD組は、まさかのコスタリカがグループリーグ突破を一番に決めた。そしてこちらは、勝てば勝ち抜けが決まるという、一発勝負の真剣試合。そのせいかどちらも固さが見られ、前半は無得点に終わる。後半に入り、イタリアにアクシデント発生。マルキジオがレッドカードで一発退場となった。それでも引き分けなら勝ち抜けるイタリア、守備を固めてピンチを凌ぐ。だが、残り10分を切ったところで、遂に牙城が崩れる。ウルグアイのゴディンがヘディングシュートを決め、ウルグアイ先制。この1点を守りきったウルグアイが、3位からの逆転進出を決めた。イタリアは、まさかの2大会連続グループリーグ敗退となる。
 スペインと共にイタリアは、盛りの過ぎた選手を中心に据えたシステムを変えなかったところに敗因があるように思う。つまり、ピルロ、そしてシャビのことだ。栄光の過ぎ去るのは速い。常に次世代へとバトンタッチしていかねば、どんなに強いチームでも勝ち続けることはできない。
 
コスタリカ 0−0 イングランド 
 あああ、イングランドは、最後までいいとこなしで終わってしまった。近年は、大きな大会ではそうした失望を何度か味わってきたが、今回はひと味違うのでは、という僅かな期待は大きく外れた。ジェラードはおそらく最後のワールドカップになるだろうが、既にルーニーでさえ時代遅れになっているのだろうか。
 
日本 1−4 コロンビア 
 前半終了間際、岡崎が同点弾をぶちこんだ時には、これはもしかするかも、と誰もが思ったろう。しかし同時に、最初からこれだけ飛ばせば、後半はばてて動けなくなるのも自明のことだったように思う。それでも今日の日本は素晴らしかった。常にアグレッシブな姿勢を崩さず、全員で攻め、全員で守った。あまり根性論は好きではないが、魂のこもったプレーだったと思う。健闘に、心から拍手を送りたい。また、コロンビアはこれで決勝トーナメントを勝ち進んでいってほしい。やはり地力のあるチームだ。
 日本は、本田依存のチームから生まれ変わる時ではないか。シャビ頼みのスペイン、ピルロ頼みのイタリアと共に敗れ去った今、次のステップを考えるべき時だと思う。
 
ギリシャ 2−1 コートジボワール 
 最高にヒートアップした日本−コロンビア戦に比べ、こちらの試合にはあまり熱が感じられない。ギリシャが先制し、逃げ切れば勝ち抜けるところで、コートジボワールが同点とし、今度はコートジボワールが有利な状況となった。このままタイムアップかと思われた瞬間、ギリシャが奇跡のPKを得る。これを冷静に沈めたギリシャが勝ち、日本が負けたため、ギリシャが4位からの大逆転進出となった。
 
ナイジェリア 2−3 アルゼンチン 
 思いがけず、撃ち合いの試合となった。しかも、アルゼンチンが得点すると直後にナイジェリアが返して同点にする。これが2回繰り返された。それでも最後はアルゼンチンが意地の3点目を決め、勝負が決まる。グループリーグ突破を決めていたアルゼンチンにとっては、流しながらもきっちり勝てたところに収穫がある。メッシとディ・マリアもだんだんと良くなってきた。それでも絶好調というほどでもないので、優勝するにはさらにギアを変えて臨まねばならない。
 
ボスニア・ヘルツェゴビナ 3−1 イラン 
 ボスニア・ヘルツェゴビナはもちろん初出場なのだけれども、旧ユーゴスラビア勢ということでいえば、決して弱小国ではない。1998年大会で、同じく初出場でベスト4まで進んだクロアチアほどではないにせよ、世界的レベルのフォワード、ジェコを筆頭にした選手層で、もう少し活躍できたはず。対するイランは、ずっと守備固めで勝ち進んできたのに、ここにきて大量失点を喫してしまった。アルゼンチン戦のような戦い方ができていればと思うが仕方がない。これでアジア勢は韓国を残すのみとなった。
 
ホンジュラス 0−3 スイス 
 エース、シャキリの大活躍により、逆転でのグループリーグ突破を決めた。乗った時のスイスはなかなか手強い。決勝トーナメントではアルゼンチンと当たることになるが、なかなかの好ゲームになる予感大である。
 
エクアドル 0−0 フランス 
 フランスはほぼグループリーグ突破を確定しているようなものなので、それほど本気で攻めにはいかない。それでも、肩の力が抜けているせいでかえって優雅にパスを回したりしている。まあこの先はまだ長いので、このあたりで休みモードでも仕方がないだろう。とにかく負けなければ1位通過なのだから。対するエクアドルは必死で追いすがるものの、レッドカードで退場者を出し、厳しい戦いとなった。それでもGKドミンゲスが好セーブを連発してフランスの得点を許さない。フランスが攻め込み、エクアドルがそれに耐えてカウンター、という状態が続く。結局そのままスコアレスドローとなった。
 
アメリカ 0−1 ドイツ 
 ドイツは余裕の戦いぶりで1位通過。それにしてもミュラーは代表の大舞台だとゴールを決める。点取り屋というイメージはまったくないのに。アメリカも、ポルトガル対ガーナ戦の途中経過を逐一確認しながらだったと思うので、1点差での負けならよしとしたのだろう。消化試合だった。
 
ポルトガル 2−1 ガーナ 
 ポルトガル、最後までよく戦った。不可能と言われながらも、僅かな希望に最後まですがりついた。それにしても、けが人が多すぎた。フォワードにディフェンダーにと、次々と離脱していき、この試合では再びゴールキーパーが負傷し、第3キーパーまで出てくる有様だった。そんな中でも勝利できたのは、闘将と言ってもいいクリスティアーノ・ロナウドの執念の1点が決まったからである。正直、チームの戦力としてはガーナのほうが上だったように思うが、ポルトガルは特に前半は相手を圧倒する勢いだった。ロナウドのシュートが何度も相手キーパーの攻守に阻まれてしまった。あの時間帯で2点ほど取っておけばとも思うが、タラレバは通用しない。
 
韓国 0−1 ベルギー 
 ベルギーもドイツと同様、ほぼ1位通過を決めた中での韓国戦。余裕の戦いぶりだった。スコアもドイツ対アメリカと同じ、1−0である。省エネで選手を温存しながらもきっちり勝利はもぎとっていく。ドイツ並みの貫禄が出てきた。この先どここまでいけるか、楽しみ。
 
アルジェリア 1−1 ロシア 
 早い時間帯でロシアが先制しながら、アルジェリアが後半に追いつき、引き分けに持ち込むことでグループリーグ突破を決めた。アルジェリアはこれで初の決勝トーナメント進出だ。やはりジダンの国、ロシアを差し置いての健闘は大したものである。

決勝トーナメント 観戦記

 
ブラジル 1−1 チリ 
    PK戦 3−2
 ブラジル、辛くも、辛くも勝つ!
 一回戦8試合のうち、グループリーグ1位のチームが敗れるとすれば、コスタリカ対ギリシャか、この試合だと思っていた。ブラジルは想像以上に苦戦を強いられた。チリはとにかくよく動き、パスコースを消してブラジルに形を作らせない。そして機を見て速攻のカウンターでチャンスを作り、点を入れないまでもブラジルを押し込んでいく。試合のポイントは幾つかあったが、まずはチリの得点シーン。ブラジルはようやく先制点を取って落ち着いていけるかと思っていたところに、ミスから失点を喫してしまう。あの1点がなければ、後半はもっとブラジルペースに出来たはず。そしてチリが無理をして攻め込んだ隙をついて追加点、という展開に出来たかもしれない。それが、あの失点で台無しになってしまった。うまくいかなければどんどん悪いイメージばかりが広がっていき、消耗もしていく。後半終了が近づくにつれ、ブラジルの選手の動きは目に見えて落ち、チリの選手のほうはまだスタミナ満タンといった感じだった。けっきょく延長に入ってもその印象は変わらず、PK戦に突入する。
 こんなドラマティックなPK戦もなかなか見られないだろう。最初にチリの2本のシュートをブラジルのキーパー、セザールが止めた時点で、ほぼブラジルの勝利が決まったかと思われた。ところがブラジルも2人が失敗し、4人目終了で同スコアになってしまった。こうなれば追っているほうのメンタリティが強い。そしてこの試合最大のポイント、ネイマールが5番目のキッカーとして登場する。ブラジル国土をそのまま背負わんばかりのプレッシャーだったろう。傍目には涼しい表情にも見えたが、終わったあとの泣き崩れ方からして、精神状態はぎりぎりだったと予想される。そしてネイマールはしっかりと決め、チリは最後のキッカー、ハラのシュートがゴールの枠に飛ばなかった。
 ブラジルはこの一戦をものにしたわけだが、PK戦まで持ち込まれたことで、疲労は相当なものだろう。次戦はさらに厳しいものとなるはずだ。
 
コロンビア 2−0 ウルグアイ 
 スター誕生。途中から、ずっと彼だけを見ていた気がする。その名はハメス。
 チーム状態も、尻上がりに良くなっている。今日はほとんど一方的とも言える展開だった。もちろん、スアレスの愚行による欠場で、ウルグアイの状態が最悪だったことはある。それでも、点差以上に圧倒的な力の差を見せつけて勝った。守備固めに入る時間帯が早すぎて少々ひやりともしたが、結果的に問題はなく、攻撃の選手陣を休ませることもできた。
 ハメスを見ていると、常に動き回っている訳ではなく、走っては休み走っては休みを繰り返しており、意外に省エネモードなのに気づく。それでも、やや停滞ムードが漂いはじめた時間帯、後ろから来た浮き球のパスを胸でトラップし、振り向きざまにボールの下をこすりあげるようなドライブシュートを放つ。これが見事ゴールに突き刺さり、素晴らしい個人技での先制点が生まれた。2点目は、同じく絶好調のクアドラードからの折り返しを押し込む、チームプレイでの追加点。個と組織との融合は、今大会のテーマかもしれないが、これが見事にはまったコロンビアの強さは底知れない。次戦は開催国ブラジルとの一戦だ。
 
オランダ 2−1 メキシコ 
 勝った! 勝ったよ〜!
 内容を問われると反論できない。それでも勝ったほうが先に進めるのだ。

 今日のオランダは、これまでで最も出来が悪かった。グループリーグであまり奏功しなかった5バックをまたまた採用し、そしてやはりうまくいかなかった。途中から4−3−3のシステムに変え、そこからようやく攻撃が機能しはじめた。それにしても、今回はもう負けたかと思った。前半はただの一本もまともなシュートが打てず、後半早々、失点を喫してからも、有効な攻撃は少なかった。いっぽうのメキシコのほうが個々のテクニックもあり、組織的な守備と攻撃もそつなくこなしていた。ブラジル戦のように無失点で終えることは十分に想像できた。
 そこへ来て、ようやくのスナイデルである。この試合も含め、かつての輝きは失われており、いいところのないまま終えるかと思っていた。後半43分、オランダサポーターも諦めかけた時、コーナーキックから目の前にこぼれてきた球を渾身の力で打ち抜く。ゴールは左隅に弾丸のように突き刺さり、ここまで好守に次ぐ好守で大会ナンバーワンの声も挙がるキーパー、オチョワの守るゴールを遂にこじ開けた。
 しかし、まだ同点に追いついたところである。このままでは延長30分、それでも勝負がつかなければPK戦まで戦わねばならない。選手の疲労を考えれば、延長は避けたい。ただ、そこまでうまくはいかんだろうなあと思っていたところ、なんとPKを得たのだ。既にファン・ペルシーは交代しており、キッカーは、今大会初めて出てきたフンテラールだった。まだボールもそれほど触っていない状況で、大丈夫かという不安はあった。もしかしてメンタルの強い選手なのかもしれないが、とにかくこれは相当の重圧だ。見ていても緊張感がビンビンに伝わってくる。とにかく思い切り蹴ってくれ、それで失敗なら仕方がない。そう思い、半眼のようになりながら見守った。フンテラールは願い通りに小細工をせず、思い切り左隅に蹴りこんだ。サイドネットに突き刺さる素晴らしいゴール。これで逆転完了。あとの数分を守りきり、オランダに勝利が舞い込んだ。

 思えば、今日の暑さを考えての、ファン・ハール監督の思惑があったのかもしれない。攻撃がうまくいかなくても愚直に5バックに固執し、選手達の運動量を最小限に抑える。デヨンクの怪我は想定外だったかもしれないが、最後は4−3−3に変えて、なんとか勝ちを拾いに行く。リスクは高いが、長い戦いを勝ち抜くには、一戦だけのことより先を考えての戦略をとる必要が出てくる。とにかくこの試合までは、そうやってオランダは勝ち進んできた。面白みは薄いが、優勝するにはこうした我慢の試合も必要だ。
 選手でいえば、今日のマンオブザマッチは、間違いなくカイトだった。試合途中で左に右に前に後ろにと縦横無尽にポジションを変え、それぞれで価値ある仕事をこなした。最後まで勝ちにいく姿勢を崩さず、同点ゴールを生むコーナーキックを得た。涙ぐましいほどの頑張りようだった。得点したスナイデルは、やはり好調とはいえないものの、”持っている”ことを証明した。あのゴールはただごとではなかった。ロッベンはいつもどおりに走っていたが、やや決定力に欠けた。ファン・ペルシーは一試合を休んだにも関わらず、まったくいいところなく交代した。さらに、負傷交代となったデヨンクが、次の試合に出られるか。これは非常に重要だ。
 
コスタリカ 1−1 ギリシャ 
     PK戦 5−3
 オランダ-メキシコ戦に続き、この試合も90分の終了間際にドラマが生まれた。後半開始早々、コロコロッという感じでコスタリカが先制点を決める。その後、コスタリカは退場者を出して10人になるものの、ギリシャの攻めを凌ぎ続けた。互いに疲れが見られ、次第に足も止まってくる。これで試合終了かと思われた90分過ぎ、ゴール前の混戦からギリシャが同点弾を決めた。この1点でギリシャが一気に加速する。延長に入ってもギリシャが攻め、コスタリカが凌ぐという展開が続く。ただ、ここで決め切れなかったところにギリシャの敗因があった。PK戦になってみれば、コスタリカのPK技術は卓越していた。ほとんどの選手がゴールの上部に決めてきたが、これは技術的、精神的にかなり難しいことだ。上を狙うと確かに決まりやすいが、少しでも外すとゴールの枠を超えてしまう。ここをコンスタントに決められる技術、そして必ずうまくいくと信じられる精神力が兼ね備わっていた。
 
フランス 2−0 ナイジェリア 
 立ち上がりから両者が小気味よくボールを回し、同じくらいにチャンスを作っていく。しかし今日のフランスは、ベンゼマがちょっと合っていないようで、調子が悪くはないのだけれど回りとの連係がうまくいかない。そこで焦りが生まれたのか、ナイジェリアが徐々に押し込んでいく展開となる。後半はもうフランスは形を作れなくなり、守り一辺倒となる。それでもナイジェリアの猛攻を凌いだあとに、フランスにチャンスが生まれた。コーナーキックをキーパーが弾き、ちょうどいい位置にいたポグワがぽーんと山なりのヘディングを決め、念願の先制点が生まれた。ここからフランスは息を吹き返し、相手ゴールにさらに攻め込んでいく。最後、ナイジェリアは力尽きたのか、攻め込まれたボールに対し、オウンゴールを献上してしまい、ゲームセット。
 好調と言われているフランスだが、今日はあまりいい所が少なかった。それでも終わってみれば2−0での勝利。これはドイツ並みにしぶとい。
 
ドイツ 2−1 アルジェリア 
 ドイツは序盤からペースを作れない。逆にアルジェリアはカウンターのロングパスが面白いようによく通り、ビッグチャンスを次々と作っていく。こうなるとドイツも思い切って攻めあがれず、パスミスも多くなる。そこをついて、好調フェグリがテクニックを駆使し、ドイツゴールに襲いかかる。これぞカウンターサッカーのお手本ともいうべきアルジェリアの見事な戦法だ。ドイツGKノイアーが何度もペナルティエリアから飛び出してピンチを凌いでいた。ドイツは攻撃の要、エジルがまったく機能せず、単発の攻撃に終始するばかり。それでも前半終了間際、足の止まってきたアルジェリアに対し、ドイツが猛攻を仕掛ける。これをアルジェリアがなんとか守りきり、0−0のまま前半を終了。後半は、ずっと激しく動き続けたアルジェリアの選手達の運動量がさすがに落ち、ドイツのパス回しの時間が長くなる。それでも、GKの堅守もあって凌ぎ切り、なんと0−0のまま90分が終了し、延長戦へとなだれ込む。
 ここで集中が切れたのか、延長開始早々、ドイツに得点が生まれた。ミュラーの仕掛けからゴール前にパスが送られ、そこにシュールレがヒールで合わせ、ドイツ待望の先制点が入る。これでかなり楽になったドイツは最後までボールを回し続け、終了間際にエジルが2点目のゴールを豪快にたたき込む。後は笛を待つだけかと思いきや、なんとアルジェリアが最後の力を振り絞り、1点をもぎ取った。この後も果敢に攻め続けたが、無情にもタイムアップとなり、試合終了。
 しかし、ここまでアルジェリアがやるとは思っていなかった。最後には地力の差が出たものの、もしかしたらドイツvsガーナ戦のように引き分けとなり、PK戦にもつれ込んでいた可能性もあった。アルジェリアのカウンターの威力、組織立てた選手達の動きには感心させられた。攻めまくるドイツと、その隙をついた切れ味鋭いカウンターという図式は、最後まで試合を面白くさせ、アルジェリアの闘う姿勢には感動すら覚えた。選手たちに、拍手を送りたい。
 
アルゼンチン 1−0 スイス 
 アルゼンチン、辛勝。
 アルゼンチンは、試合全般にわたり、あまりいいところがなかった。メッシは運動量が低く、ここぞというシーンにしか出てこないため、ゲームメイクはできない。メッシにくわえ、ディ・マリアも徹底的にマークされており、有効なクロスを上げさせてもらえない。フォワード陣は、ラベッシ、イグアイン、パラシオ共に存在感はまるでなかった。中盤のマスケラーノだけが元気で、スイスの攻撃をうまくかわしていた。
 後半に入り、右サイドのロホがオーバーラップを仕掛けるようになってから、アルゼンチンにリズムが生まれる。それでも詰めは甘く、90分終了まで両者無得点、延長となる。そして最後はキーマンの二人、メッシとディ・マリアのコンビから得点が生まれた。スイスは最後までしぶとく粘ったものの、得点には至らなかった。これもまた、最後に地力の差が出た感じだった。
 
ベルギー 2−1 アメリカ 
 決勝トーナメント1回戦では、ドイツvsアルジェリア戦に次いで熱い試合だった。ベルギーは、今大会でのベストバウトだったと思う。とにかく攻めに攻めまくり、アメリカは守りに守りまくった。そしてドイツ戦でのアルジェリア同様にアメリカも、カウンターのチャンスが訪れるや、チーム一丸となって攻撃を仕掛ける。この攻防はかなり見応えがあった。グループリーグでは調子の良かった若いオリジが先発で、かなり積極的に動いていたがやや粗さが目立った。延長に入り、オリジに替わってルカクが投入される。グループリーグでの出来は良くなかったので、正直、この交代は不安だった。ところが、今日のルカクはこれまでと全く違い、よく動き、チームプレーをし、最後には得点にまでつなげた。今日の勝利において、彼の存在は大きい。
 ベルギーはだんだんと調子を上げてきた。今日のような攻撃的な姿勢こそ、僕の望むものだ。この調子で次のアルゼンチンも撃破してほしい。
 
フランス 0−1 ドイツ 
 ドイツの頑健さが、フランスの猛攻を凌いだ。今日のフランスは、これまで通りにいい出来だったと思う。各選手の状態、選手間の距離が良く、パスが小気味よく通っていた。ベンゼマもエースとしての存在感を十分に示した。それでもドイツの牙城を崩せなかった。交代で入った選手がうまくフィットしなかったのも敗因の一つかもしれない。それにしてもドイツは強いが、つまらないサッカーだ。エジル中心になればもう少し面白いサッカーになると思うが、この大会ではまったく目立たず、今日も途中交代させられてしまった。
 
ブラジル 2−1 コロンビア 
 やはり開催国強し、といったところか。ブラジルはこれまで今ひとつ波に乗りきれない感じがあり、戦前の予想では勢いのあるコロンビアを推す声が多かった。それがこの試合、最初からブラジルがコロンビアを圧倒し、途中息切れをしながらも押し切ってしまった。2得点はいずれにもブラジルの勢いが溢れていた。右サイドバックを、これまでのダニエル・アウベスからマイコンに替えたのも功を奏したかもしれない。アウベスはもちろん名選手だが、やや攻撃に偏り過ぎてバランスを欠くきらいがある。そこをベテランのマイコンはうまく調整していたように思う。
 いっぽう、コロンビアは頼みのスター、ハメス・ロドリゲスが徹底的にマークされてしまい、ここまでとは打って変わって劣勢に回ってしまった。ドリブラーのクアドラードもかなり研究されているようで、これまでのように縦横無尽に走り回ることはできずに終わった。
 コロンビアは今大会で最も輝いたチームといっていいだろう。これで大会を去るのは惜しい。これを勝てばもう2試合は約束されていた(3位決定戦があるため、準決勝で敗れてももう1試合がある)のだ。ハメスについて言えば、今日はかなりマークされながらも、随所で光るプレーをいくつも見せ、さすがと思わせられた。彼のプレーをもっともっと見たかったし、得点王に輝く姿も見たかった。4年後、さらに大きくなった姿を見せて欲しいし、ファルカオと並び立つ強力な布陣を見せてほしい。
 最後に、ベスト4あたりになってくると、やはり新興国は難しいのかも、と思った。いくら強いと言われていても、この先はそう簡単ではない。最後には常連国のどこかが優勝することになる。ワールドカップ80年の歴史の中で、優勝を経験したことがあるのはわずか8カ国にすぎないことがそれを物語っている。
 
アルゼンチン 1−0 ベルギー 
 勢いのあるベルギーに対し、ここまで勝ち進んだもののぱっとしない出来のアルゼンチン。戦前はベルギー優位だと、ひいき目を抜きにしても思っていたし、下馬評もそんな感じだったと思う。ところが、ワールドカップの準決勝という”ブランド”には、魔物が潜んでいた。ここまで冴えなかったアルゼンチンのイグアインが突如覚醒し、この試合ではとても重要な役割を果たした。メッシ、ディ・マリアの二枚看板にイグアインを加えたアタッカー陣は、ようやく本領発揮とばかりに鋭い攻撃を仕掛け始めたのだ。効果はすぐに現れた。好調イグアインが、自分の前にこぼれてきたボールを、迷わずダイレクトにシュート。これが決まり、早々にアルゼンチンが先制をし、優位に試合を進めた。いっぽうのベルギーは、これまでの伸び伸びとした戦いぶりは影を潜め、特に若いオリジなどは雰囲気に呑まれたのか、本来のいい動きがまったく出来ない。アザール、フェライニもぱっとせず、デブライネ、ミララスのスピードも生きない。そんな中で、コンパニだけが堅実で正確なプレーを披露し、今大会屈指のディフェンダーであることを印象づけた。
 メッシの出来は、まあまあといったところか。あいかわらず運動量は少ないが、要所要所で非凡なプレーを見せ、それだけでベルギーの調和を乱すに十分だった。最後は珍しく闘志を見せて、守備に走り回ったりしていたのも、勝利に貢献したはずだ。
 これぞワールドカップ。新興国には分厚い壁が立ちはだかっていた。
 
オランダ 0−0 コスタリカ 
    PK戦 4−3
 よくぞここまで!
 よくぞ闘い抜いた。この大会、最高の出来だった。素晴らしいぞ、オランダ!

 まあとにかくよく攻めた。今日は特に、スナイデルの復調を喜びたい。これまでの不調が嘘のように生き生きと動き、ボールをさばいた。そして信じられないほどの運動量で鉄人ぶりを見せつけた頑張り屋、カイト。今日も涙ぐましいほどに働いていた。ロッベンの突破力も相変わらずで、何度も何度もチャンスを作った。惜しむらくは、ファン・ペルシーの出来の悪さだ。どこかに負傷をかかえているかのように、動きが重く、アイデアに乏しい。それでも何度か決定期を作ってみせたのはさすがだし、相手GK、ナバスの好セーブがなければ入っていたシュートもあった。
 それにしても、ずいぶんと思いきった戦法だった。丁寧に丁寧にパスをつなぐため、最終ラインで横パスを繰り返す。ポゼッションサッカーとも言えるが、スペインのような華麗さはまったくない。むしろ無様で格好悪いやり方だ。それをオランダの選手達は、愚直に続けた。完全に引いて守るコスタリカ、そして相手の前線でボールを奪われないためにも、これが最善の策だとファン・ハール監督は踏んだのだろう。そして、相手の隙が出来るまで気長に待ち、一気に速攻を仕掛ける。頼みはロッベンの快足とカイトの頑張りくらいで、バリエーションは少ないものの、確実に何度かチャンスを作っていく。ただ、コスタリカGK、ナバスの壁がとてつもなく高く、彼じゃなければ2点くらいは優に入っている展開だった。何度かこれを続けていれば得点は入る。そう信じていたが、遂に延長を含めた120分を過ぎても、両者無得点のままだった。
 PK戦突入。オランダが負けるはずはない。ここまで守り一辺倒でシュートが僅か数本のコスタリカに負けるはずはない。そう信じて見守る。実はオランダ、PK戦はかなり苦手としているのだ。過去に、ワールドカップや欧州選手権で、PK戦の末敗退したことが何度もある。オランダは決してメンタルが強いチームではない。それでも今日は違った。しょっぱなのファン・ペルシーからロッベン、スナイデル、カイトまで、まったく迷いなく蹴り込み、負ける気がしなかった。そしてファン・ハール監督の奇策、キーパーの交代がどんぴしゃではまり、コスタリカのキックを2本止めたところで勝負がついた。

 これでオランダの優勝まで、あと2戦に迫った。僕の応援するチームは、オランダ以外は準々決勝で全て敗れ去った。でもいい。ただオランダの優勝を願うのみだ。
 
ブラジル 1−7 ドイツ 
 どうしてこんなことになったのか。ブラジルに勝つ意欲がなかったはずはない。能力的にここまでの差があったとはもちろん思わない。ドイツがそれほどいいチームだったはずもない。魔物としか説明しようがないだろう。ワールドカップ史に残るほどの大敗を喫したブラジル。開催国として、これほどの屈辱はない。どうやってこの黒歴史を払拭していくのだろう。
 
オランダ 0−0 アルゼンチン 
    PK戦 2−4
 よく闘ったよ、オランダ。正直、優勝できるほどのチームでないことは重々承知していたが、ファン・ハール監督の好采配もあり、ベスト4まで進むことができた。客観的に見れば、上出来だったと思う。今日も、この大会で愚直に続けてきた戦い方を貫き通した。なるべくボールを取られないよう、攻撃的な縦パスより無難で消極的な横パス、バックパスをつなぐ。のらりくらりと相手の攻撃を防ぎ、少ないチャンスを少ない労力でものにする。こんな戦法でうまくいったのが、今となっては不思議なくらいだ。2試合つづけて120分走り回り、挙げ句のPK戦。これでまた勝てというのが酷な話。GKシレッセンには自信のかけらも見られず、唯一の賭けだった先鋒フラールが失敗に終わったとき、オランダの夏も終わりを告げた。4年後には、ふたたび強烈な攻撃サッカーを取り戻し、派手に暴れるチームになって帰ってきてほしい。
 今日のアルゼンチンはかなり良かった。僕が応援していた頃の、小気味よいサッカーをしていた。素直に負けを認めたいと思う。そして願わくば、にっくきドイツを倒して優勝してほしい。
 
ブラジル 0−3 オランダ 
 オランダは2戦つづけて無得点だったが、ここに来てようやく点の取り方を思い出したようだ。勝ち進まなければならないという緊張感から解き放たれ、久しぶりにいい形のサッカーを見せてくれた。とはいっても、最終ラインでの横パス、バックパスを繰り返しながら機を見て攻め込むという今大会のスタイルに変わりはない。今日は攻め込む時の思い切りがいいというか、多少無理をしてでも攻撃的なパスを入れてみる、という積極性が功を奏していた。ロッベンが今大会最高とも言えるパフォーマンスを見せ、自ら点は決めずとも起点を何度も演出した。ファン・ペルシーの動きの悪さは変わらずだったが、先制となるPKをきっちり決めてみせた。ワイナルドゥムがこんなにテクニシャンだったのかというプレーを披露してくれたし、カイトの頑張りぶりも堪能した。この試合で終われたことで、オランダは次へ向けての明確な方向性が見えたのではないかと思う。フラールの安定感は抜群で、このままいけばヤープ・スタムの域に達するかもしれない。若手選手達が中心になってくれば、ボール回しももっとスムーズにでき、自分達のやり方を掴んでくれるかもしれない。そうすればオランダは攻撃的なサッカーを取り戻すかもしれない。そういう将来が見えるような今日の試合だった。
 いっぽうのブラジルにとって、この試合は厳しかった。ドイツ戦での鬱憤を晴らすどころか、傷口に塩をすりこむような形となってしまった。ただ、ドイツは2000年頃に同じようなどん底を味わい、それを機に育成に力を入れるようになって現在の地位を確立したという経緯がある。かつて、ロナウド、リバウド、ロナウジーニョとスター選手を次々と輩出した時代がまた訪れることを願いたい。
 
ドイツ 1−0 アルゼンチン 
 ドイツ優勝! まあ考えてみれば今大会で突出して強いチームはなく、あえて挙げればドイツくらいしか思い浮かばなかったから、結局は妥当な線に落ち着いたとも言える。アルゼンチンは今日もよく守ったが、攻めのインパクトは薄かった。ただ今日は珍しくラベッシが強気のドリブルを見せてチャンスを作っていた。いっぽう、メッシはというとあいかわらずピッチをだらだらと歩いている時間が多く、決定期にも決められずじまい。彼が大会MVPとはまったく納得できない。イグアインもロホも冴えず、やはりディ・マリアの抜けた穴は大きかった。
 アルゼンチンの選手、そしてオランダの選手にも言えることだが、もっと自信を持ってプレーすればいいのにといつも思う。弱腰になって緩い横パスやバックパスを繰り返すからリズムが生まれず、守るだけでもちろん点は入らない。ドイツは、テクニック云々よりも、とにかく自信を持ってプレーするから生き生きとしたボールが通り、チャンスが作れる。1990年のチーム同様、面白みには欠けるが強かった。エジルがもうすこし活躍していればもっと面白くなると思うが、このチームにあっては、一人が傑出してしまうとバランスが崩れるのだろう。エジルは賢いプレイヤーだから敢えて自分の持ち味を消してまでチームプレーに徹したのかもしれない。

読み物TOPへ  ホームへ