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EURO2008(2008年サッカー欧州選手権) TV観戦記
  見事、スペインが優勝しました! おめでとう!!!
前提  
 当サイト管理人HARUNAが応援するチームは、
  1にオランダ、2にポルトガル、3にスペイン、ちょこっとスイス
 である。従って観戦記も、これらのチームへの偏愛に充ち満ちて書かれる予定である。
 
決勝トーナメント 観戦記   決勝トーナメント組合せ(Yahooスポーツナビ) 
6/19(木)   準々決勝(1) ポルトガル - ドイツ
6/20(金)   準々決勝(2) クロアチア - トルコ
6/21(土)   準々決勝(3) オランダ - ロシア
6/22(日)   準々決勝(4) スペイン - イタリア
6/25(水)   準決勝(1) ドイツ − トルコ
6/26(木)   準決勝(2) ロシア − スペイン
6/29(日)   決勝 ドイツ − スペイン
 
グループリーグ 観戦記   グループリーグ勝敗表(Yahooスポーツナビ) 
6/7(土)   スイス - チェコ ポルトガル - トルコ
6/8(日)   オーストリア - クロアチア ドイツ - ポーランド
6/9(月)   ルーマニア - フランス オランダ - イタリア
6/10(火)   スペイン - ロシア ギリシャ - スウェーデン
6/11(水)   チェコ - ポルトガル スイス - トルコ
6/12(木)   クロアチア - ドイツ オーストリア - ポーランド
6/13(金)   イタリア - ルーマニア オランダ - フランス
6/14(土)   スウェーデン - スペイン ギリシャ - ロシア
6/15(日)   スイス - ポルトガル トルコ - チェコ
6/16(月)   ポーランド - クロアチア オーストリア - ドイツ
6/17(火)   オランダ - ルーマニア フランス - イタリア
6/18(水)   ギリシャ - スペイン ロシア - スウェーデン

決勝トーナメント 観戦記

 
ポルトガル 2−3 ドイツ ○
 くそーっ!! 負けたかポルトガル!
 今大会、注目のチームであり、最注目選手クリスティアーノ・ロナウドを擁し、僕の2番目に応援してきたポルトガルが、にっくきドイツの魔手にからめとられた。

 ドイツは、立ち上がりから積極的に攻めてきた。ポルトガルも悪くはないが、徐々にペースを上げていく感じである。両者がっぷり四つに組んだ見どころたっぷりの展開が続くも、先制点をドイツが挙げた。グループリーグ2戦目で反則を犯して即退場となり、クロアチアに敗戦を喫する大きな要因となったシュヴァインシュタイガー。彼がグラウンダーのクロスに見事に合わせてポルトガルゴールを破った。これはまあ、ドイツの攻撃をほめるべきであろう。ただ、その僅か4分後に追加点を許してしまい、ポルトガルの意気が沈んだ。シュヴァインシュタイガーのフリーキックに、今大会絶不調でいまだ無得点だったクローゼが頭で合わせた。ドイツ相手に2点ビハインドは苦しい展開だ。

 それでも前半のうちに1点を返したのが、今のポルトガルの実力だ。クリスティアーノ・ロナウドがゴール前に切れ込み、折り返したボールをキャプテンのヌーノ・ゴメスが無理な体勢から体をひねりながらシュート。ドイツディフェンダーの足に当たりながらも、ボールはドイツゴールに吸い込まれた。これでポルトガルに勢いが戻った。後半に入ってからも、ポルトガルは小気味いいパスをつなぎ、ドイツゴールを脅かしていく。ところが、このいい時間帯に点を取ることができず、逆にドイツにゴールを許してしまう。この3点目が決定的だった。2点目とほぼ同じような位置から、同じくシュヴァインシュタイガーの蹴ったボールを、バラックがヘディングで決めた。2点目の反省がまるでなされていなかった。これでは駄目だ。

 しかし、なんとかポルトガルも攻撃を続け、後半42分、交代で入ったナニが左サイドを走り抜け、折り返したボールを、やはり途中出場のポスティガが頭で合わせた。ポスティガは、前回大会でも貴重なゴールを挙げたが、ここぞという勝負機にはめっぽう強い選手である。
 それでも、ポルトガルの猛攻もここまでだった。ドイツは最後まで1点差を守りきり、この死闘に幕を下ろした。

 考えてみるに、グループリーグでポルトガルは2連勝で1位抜けを決め、次の試合で手を抜いて負けてしまった。この時に、リズムを崩してしまったのではないかと思う。確かに主力選手を休ませることは大切だが、もっと大切なものを失ってしまった。
 
クロアチア 1−1 (PK戦 1−3) トルコ ○
 まあなんという試合だ! トルコというチームにはまったく恐れ入った。今大会、どちらもここまで徐々に調子をあげて勝ち進んできたチームであり、この試合も、お互いのいいところを出し合う好ゲームとなった。クロアチアは、ここまでの快進撃を支えたエース、モドリッチこそおさえられていたものの、華麗なパスをつなぎ、要所では迫力のある攻撃でトルコゴールを脅かす。トルコもまたしっかりした基礎技術をもとに、攻撃を組み立てていく。まったく互角の勝負は互いに得点を許さず、今大会初の延長戦に突入した。
 延長に入っても、互角の勝負は崩れない。通常の前後半90分、延長の前後半30分、合計120分がまもなく過ぎようとした頃、ドラマが訪れる。クロアチアは、二度の腎臓移植手術を経て奇跡的にカムバックしたクラスニッチが、渾身の一点を叩き出す。歓喜に沸くクロアチアサポーター、そしてもちろん選手達。試合終了は目前だ。これでクロアチアが勝った。誰もがそう思った。ところがトルコの魂はまだついえていなかった。これがラストプレーだという攻撃で、なんとトルコが同点に追いついたのだ。ゴールが決まった直後、試合終了の笛が鳴った。
 これまでのサッカー観戦を通じて、これほどまでに劇的な幕切れは見たことがない。まさに奇跡と呼ぶしかない。
 その後のPK戦では、クロアチアの選手の顔に生気が見られなかった。一番手でボールを蹴ったモドリッチは、それまでの活躍からは想像できないほど弱々しく見えた。案の定、彼の蹴ったボールはゴール枠を外れた。トルコの選手が一人一人、確実に決めていく一方で、クロアチアの選手は、四人中たった一人しかゴールを決めることができなかった。試合後、監督は、「選手達は、PK戦に臨める精神状態ではなかった」と話した。
 トルコの試合ぶりは、神がかっている。グループリーグでは、2試合連続逆転勝ちをおさめ、さらにはこの試合である。末恐ろしいチームだが、次のドイツ戦には暗雲がたちこめている。累積警告による出場停止に加え、負傷者が多く、登録23人中9人が試合に出られないという非常事態だ。それでもなんとか戦ってほしい。次なる奇跡を起こすために。
 
オランダ 1−3 ロシア ○
 終わった。僕が最も応援し、今大会絶好調で優勝候補筆頭にあげられていたオランダが散った。
 これまで抜群の采配をふるっていたファン・バステン監督は試合後、なぜこんなに悪い状態だったのかわからない、と話した。僕も試合を見ながら、これまでとのあまりの違いに首をかしげた。果敢に相手選手にアタックしてボールを奪い、一気に攻め立てる攻撃が、まったくできないのだ。たしかにロシアに勢いはあった。けれど、それを粉砕できるだけの力はオランダにあったはずだ。
 いろんな分析ができる。ピークがあまりにも早い段階で訪れたからだとか、優勝が見えてきたことでプレッシャーがかかったせいだとか。だって、ロシアに比べ休養する時間はたっぷりあったはずなのに、オランダの選手のほうが明らかに体が重かったのだ。あまりにも試合間が開きすぎたために試合勘をなくしたのだ、とも言われた。たしかにそれもあるかもしれない。グループリーグ2試合目で1位通過を決め、そこでいったん緊張が途切れた。そこからまた優勝へ向けて気持ちを立て直すところがうまくいかなかったのかもしれない。現に、2試合目で決勝進出を決めたポルトガル、クロアチアもまた、揃って決勝トーナメントで敗れ去っている。

 ただ、落ち着いて考えてみるに、ディフェンスに大きな穴があったことは確かだと思う。これまで、あまりにも攻撃力がすさまじかったため、それに圧倒されてよく見えなかったのだ。エンヘラールとデ・ヨンクのボランチは素晴らしいのだが、その後ろの最終ラインは、レベルが低かった。この試合では、ペナルティライン付近での攻防ではかなりの確率で競り負けていた。直前にお子さんを亡くされたディフェンダーのブラルスは、酷だけれどやはり動きが悪かった。
 エンヘラールに替えてアフェライ、という選手交代も、功を奏さなかった。エンヘラールは中盤の守備の要だったのに、彼に替えてまで入ったアフェライは、これまでの試合と同様、たいした見せ場は作れなかった。ロッベンを入れたほうが流れを変えられたのにとも思うが、その時の選手のコンディションもあるだろうから、なんともいえない。

 それにしても、ロシアは強い。強くなった。この試合でも、アルシャヴィンは光り輝いていた。ボールを奪ってからの攻撃の迫力たるや、完全にオランダを圧倒していた。延長に入っての2得点は偶然ではなく、彼らの実力だ。しっかりオランダゴールを守り続け、一人奮闘していたキーパーのファン・デル・サールも、さすがに力尽きたという感じだった。
 
スペイン 0−0 (PK戦 4−2) イタリア ●
 オッケー! スペイン粘り勝ち!
 ここまで僕の応援するチームは、ポルトガル、オランダと、共に準々決勝で敗れ去り、残るは3番応援のスペインだけだった。対戦するイタリアは、主力のピルロとガットゥーゾを累積警告で欠き、チーム状況は決してよくない。
 とにかく、重たい試合だった。どちらのチームの選手も、重い足かせをはめられてプレーしているようだった。ピルロのいないイタリアはゲームを作る選手がおらず、積極的にプレスをかけにいく組織力も見られない。いっぽうのスペインはまだいくらかマシだったものの、グループリーグで見せた華麗なサッカーはなりを潜めた。どちらのチームも見せ場をほとんど作れないまま90分が過ぎ、延長の30分も過ぎた。
 PK戦、最初に蹴ったのはスペインのビジャだった。迷うことなく蹴ったボールは、しっかりとゴールの隅に決まった。この一発で勝利が決まったように思う。それは、クロアチア−トルコ戦で、最初にモドリッチがはずしたシーンを見た時に、クロアチアが敗れると予感したのとまったく同じだった。

 なにはともあれ、この勝負を勝ちきったスペインはよくやったと思う。ここで勢いをつけて突っ走ってくれ。
 
ドイツ 3−2 トルコ ●
 トルコはよく戦った。登録23人中9人が欠場するというのは非常事態である。11人が先発で出場すれば、残りは3人しかいない。そんな状況でのドイツ戦。それでもほぼ互角の戦いを見せた。その姿は多くの人に感動を与えたことと思う。
 序盤から積極的に仕掛けるトルコに対し、力をセーブしているのか、ドイツは守備偏重の戦いぶりだった。勢いの違いが、トルコに先制点をもたらす。前半22分、トルコが1−0とリードを奪う。
 ところがここへ来てドイツのしぶとさ、勝負強さが表れる。トルコの先制点のわずか4分後、前試合で大爆発をしたシュヴァインシュタイガーが、この試合でも得点を決め、試合を振り出しに戻す。
 試合は後半に入り、互角ながらややトルコが押す展開が続く。両者重苦しい動きだったが、試合終了まで10分を迎えたところで試合が動いた。今大会不調で得点を挙げられなかったドイツフォワードのクローゼが、ようやくのゴールを決めたのだ。これでドイツ2−1のリードとなる。さあ、これで苦しくなったトルコだが、今大会のこれまでの試合のようにまた奇跡を見せてくれるか、と期待していたら、後半41分、本当に得点を奪ってしまった。これでまた2−2の同点である。いやはやトルコ恐るべしだ。ただ、さすがにここでトルコにも限界が訪れたのだろう。少ない人数で懸命に戦い、最後の力を振り絞った1点だったのだろう。その後、試合終了直前にドイツの1点が決まり、トルコの命運は尽きた。
 それでも、今大会のトルコは素晴らしかった。これは歴史にも、人々の心の中にも残るだろう。胸を張って帰国すればいい。対するドイツ、さすがに驚異のねばり強さで勝利はしたものの、内容には乏しい。このチームが優勝するようなら大会全体が盛り下がってしまう。
 
ロシア 0−3 スペイン ○
 スペイン、快勝!! ロシアは、今大会最注目選手となったアルシャヴィンが完全に封じ込められ、これまでの快進撃を支えた素晴らしいカウンター攻撃はほとんど見られなかった。解説の方も、どうしたんだろうロシアは、と何度もつぶやいておられたが、僕も同じように思っていた。さすがにここまでの疲れが出たのかもしれない。優勝が現実味を帯びてきたせいで、固くなったのかもしれない。ただ、注目すべきはスペインの守備の素晴らしさである。プジョルとマルチェナのセンターバックは完璧だった。そしてこの日、セルヒオ・ラモスの出来がものすごく良かったのだ。的確に右サイドの守備をこなし、チャンスと見れば積極的に攻撃にも絡んでいく。試合終了まで、彼はずっと走り続けていた。
 スペインは、選手交代も見事にうまくいった。前半はスペインの出来もそれほど良くはなかった。それが35分、足を痛めたビジャに代わって入ったセスクが次第に機能しはじめ、後半開始早々、シャビのゴールが決まる。美しいパス交換からの、強烈なシュートだった。その後、疲れの見え始めたシャビとフェルナンド・トーレスを同時に下げ、シャビ・アロンソとグイサを投入するという、思い切った選手交代にスタンドが沸いた。スペインはこれで交代枠3人を使い切ることになり、この先、延長になった場合や怪我人が出た場合でも、選手交代は不可能になる。ずいぶん危険な賭けだった。実況席でも、解説者は首をひねっていた。
 ところがこの交代が実を結び、グイサが技ありのゴールを決める。シャビ・アロンソも的確にボールを回し、深い位置からのロングパスで攻撃に彩りを添えた。試合が決まったのは、後半37分。この日、やはり絶好調だったシルバが駄目押しの3点目を決めたのだ。
 トルコに引き続き、今大会で旋風を巻き起こしたロシアが消えた。それでも、ベスト4まで進出したのはたいしたものである。グループリーグ初戦でスペインに1−4で敗れた時には誰もここまで勝ち進むとは思っていなかっただろう。とくにアルシャヴィンは、この先大きな注目を浴びる選手となりそうである。
 スペインは、勝利したのもさることながら、内容の良さが光っていた。堅実な守備、中盤の動きの良さ、得点力、どれをとっても充実している。決勝では点取り屋のビジャが負傷欠場となるようだが、大きな影響はないだろう。フェルナンド・トーレスは、まだ1得点ながら動きは悪くないし、交代で入れば必ず結果を出すグイサもいる。今のスペインのようなチームが優勝してこそ、サッカーの素晴らしさが再確認されるのだ。どうか決勝では、にっくきドイツを下してくれ!
 
ドイツ 0−1 スペイン ○
 やった〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!
 遂にやりました! 毎回、有力だ優勝候補だ最高のチームだと騒がれながら、W杯でもEUROでも一向に結果を出せなかったスペイン。それが何度目の正直か、ようやく栄光のヨーロッパチャンピオンの称号を手にすることができた。しかも終わってみれば全勝での完全優勝である。大会通算で12得点3失点という成績も見事だ。攻撃と守備がいずれも欧州最高レベルだったことの証明である。
 今大会でスペインのようなチームが優勝できたのは、スペインをそれほど応援していなかった人にとっても喜ばしいものだったと思う。前回大会でギリシャが優勝した時、これからのサッカー界はこんな守備偏重の面白みに欠けるやり方が主流になってしまうのか、と嘆くコラムも見受けられた。僕もそう思った。確かにギリシャのあの戦い方は有効ではあったろう。でも、見る側からすれば退屈極まりなく、各国がギリシャにならった戦術を目指していくのならサッカー全体の衰退にもつながりかねないと思った。
 今大会は、そんな危惧を払拭する大会だった。序盤から、オランダ、ポルトガル、スペインといった攻撃重視のチームが好成績を収め、それにクロアチア、トルコ、ロシアという曲者チームが彩りを添えていた。準々決勝で、オランダ、ポルトガル、クロアチアが揃って敗れた時、不安はよぎった。結局はドイツのようなチームが残っていくのか。守りに守り抜いて、ごり押しの最小得点で勝つ。たとえ内容が悪くても勝てばよい。そうしたチームが優勝するのなら、サッカーの面白さっていったいなんなのだろう。そう思いながら、スペインだけが最後の頼みの綱だった。

 決勝戦は、硬いはじまりだった。スペインが緊張している。これまでのような華麗なパスワークが見られず、安全重視の横パスばかりが目立つ。いっぽうのドイツはしたたかだ。こういう勝負の戦い方は熟知してるよと言わんばかりに、がちがちのスペインに対し、着実にチャンスを作っていく。これはドイツペースだ、なんとかせねば。序盤はスペインが耐える展開となり、僕もフラストレーションを抱えながらの観戦となった。
 そこへシャビからの一本のパスがドイツゴール前に抜けた。あの一本のパスが、試合の流れを変えた。それはシャビの個人技というよりも、今大会のスペインの力を如実に表したものだったと思う。これまで、実力はありながらもそれを最終的に保ったまま勝ち続けることがどうしてもできなかったスペイン。その難題を、この大会では見事に克服したのだ。緊張していつもの調子が出ない時に、それを打破する力を持っていた。身体能力と共に、そうした精神力も備えたチームだったのだ。

 いったん自分たちのペースを取り戻せば、あとは、これまでやってきたことを繰り返すのみだった。ワンタッチでの美しいパス交換、サイドバックからの攻撃参加。そして念願の得点シーンは、フェルナンド・トーレスの卓抜したセンスにより生まれた。今大会では、動きは悪くないもののわずか1得点しかできず、本人にもわだかまりがあったことだろう。その思いを、一瞬の飛び出しと足先のワンタッチコントロールにこめた。存在感を見せつける、決勝戦にふさわしいゴールだった。
 対するドイツは、頼みの綱だったバラックが、序盤こそさすがの動きを見せていたものの、徐々に試合から消えていった。絶好調シュバインシュタイガーも、今日はキックが決まらない。ポドルスキも見せ場を作れず、クローゼに至っては大会を通じての不調から結局抜け出せずじまいだった。交代で入ったクラニー、ゴメスも全く駄目で、やはりドイツはこのあたりが限界だったろう。なまじラッキーゴールなどが決まってドイツが勝つようなことがあったら、この大会全部が盛り下がってしまうところだった。

 スペインには、突出したスーパースターはいなかった。MVPはシャビに贈られたが、プジョルにもカシージャスにもラモスにもセナにもトーレスにもビジャにもセスクにも、その資格はあったろう。それだけ個々人の能力が平均的に高く、かつそれらが見事に融和したチームだった。

 さあスペイン。
 次はワールドカップが待っている。

グループリーグ 観戦記

 
スイス 0−1 チェコ ○
 前回大会の決勝。僕の応援していたポルトガルが伏兵ギリシャに敗れ、悔しい思いをしてから早4年。EURO2008が開幕した。
 今回はスイスとオーストリアの共催ということで、開幕試合にはスイスが登場した。「前提」で「ちょこっと」応援していると書いたのは、フォワードのアレクサンダー・フライ選手のことだ。彼は現在ドイツリーグで活躍中だが、以前はフランスリーグのレンヌにいた。ここで得点王を獲得し、ドイツへと“栄転”していった。レンヌはかつて僕もほんの少しだけ滞在し、好きになった街である。だからなんとなくこの選手のことも応援していた。

 対するチェコは、前回大会では強豪国だったが、当時の主力選手が抜け、残った中でも一番のスター選手だったロシツキーが怪我で欠場という状況である。今日は、最近はあまりぱっとしなかったフォワードのバロシュがいい働きをしていた。
 スイスは途中まで互角の戦いをしていたのに、主力のフライが足を怪我し、交代を余儀なくされる。かなりの重傷らしく、ピッチを去るときには涙ぐんでいた。このあとの試合にはもう出られないことを察したのだろう。
 この後スイスは勢いを失い、チェコに先制点を許してしまう。スイスのサポーターはそれでもあまり盛り上がることはなく、淡々とした応援を続けていた。結果、スイスは点を取ることができなかった。次戦以降、なんとか立て直して頑張ってほしい。
 
ポルトガル 2−0 トルコ ●
 僕が2番目に応援する国、ポルトガルの登場である。今大会、最注目選手といっていいクリスティアーノ・ロナウドだが、僕の中ではまだそれほど、彼の評価は高くない。ドリブラーとして確かに魅力的ではあるけれど、底知れない才能や魅力を感じるには至らない。そして今大会、世間の期待値が大きいぶん、並の活躍程度では誰も納得しないだろう。
 初戦の出来はまずまずと言ったところか。すごくいい試合内容という訳ではなかったものの、きっちり決めるところは決め、相手に得点を許さなかった。何よりまずは勝つことに終始したことは評価に値する。最終ラインから上がってきたペペが、見事なワンツーから決めたゴールは素晴らしかった。ロナウドもデコも、これからだんだんとエンジンがかかっていってくれればと願う。
 
オーストリア 0−1 クロアチア ○
 共同開催国のオーストリア、そしてクロアチア共に、いいサッカーをしていたと思う。最弱との評価もあるオーストリアだが、引けを取らずに闘っていた。唯一の失点はPKである。
 
ドイツ 2−0 ポーランド ●
 様々な因縁のある両国、2点を決めたのが、ポーランド生まれのドイツ人、ポボルスキだったのは皮肉である。普通、点を決めたあとは派手に喜びを表す選手が多いが、彼は手も挙げず、うつむき加減でゆっくり歩き続けていたのが印象的だった。
 
ルーマニア 0−0 フランス ▲
 これはルーマニアのテンポにフランスがしてやられた格好だろう。今ひとつ攻撃のリズムがつかめないフランスに対し、守備的な陣形から正確で速いパスをきれいにつなぎ、カウンターをねらうルーマニア。面白みは薄いが、うまいなあとは思わせるやり方だった。フランスは期待の若手、ベンゼマやゴミス、ナスリなどがまだまだ生きてきていない。ベンゼマはかつて僕の訪れたリヨンのクラブに所属する選手なので、少しだけ応援している。
 
オランダ 3−0 イタリア ●
 素晴らしい!こんなにいい状態のオランダは久しく見たことがない。守備の要、カンナバーロを欠いたとはいえ、2年前のワールドカップ優勝国イタリアを相手に3−0とは恐れ入った。エンヘラールとデ・ヨンクのボランチがとくに素晴らしく、相手の攻撃の芽をことごとくつみ、さらには攻撃的なボールも出していく。これまで代表では活躍のなかったファン・デル・ファールトも調子がいい。スナイデルも輝いている。ワールドカップではあまりいい印象のなかったディフェンダーのブラルスも、特に問題はなさそうだ。
 1点目のファン・ニステルローイのゴールは、オフサイドではないかと物議を醸したが、ゴールラインを超えた位置にイタリアの選手がいたので、あれはオフサイドではないらしい。なんにしろ、ニステルローイの反応は凄かった。頼れるエース健在である。
 後半には、ピルロのフリーキックを、オランダのキーパー、ファン・デル・サールがスーパーセーブ。この勢いのままに攻め上がったオランダは3点目を決め、試合をものにした。
 一方のイタリア、僕ははっきり言って監督のドナドーニをまったく買っていない。どう見ても、ちゃんと戦術を考えるタイプには見えないのだ。前線から積極的に相手にプレッシャーをかけてボールを奪うやり方は、完全にオランダのほうにしてやられていた。ディフェンダーの高年齢化も問題かもしれない。

 僕のもっとも応援するチーム、オランダが、最高の形でスタートを切った。これは僕も黙ってはいられない、と、このページを急遽立ち上げたのであった。
 
スペイン 4−1 ロシア ●
 スペイン圧勝。僕が3番目に応援するチーム、スペインがやってくれた。フォワードのビジャがいきなりエンジン全開で、ハットトリックを達成した。持ち味のポゼッションサッカーで、中盤では美しいパス回しを披露した。大会直前に食中毒でダウンしたイニエスタも、才能を遺憾なく発揮していた。シャビもなんだか成長したなあという気がする。ただ、シャビ・アロンソは先発で来るかと思っていたら控えだったのが意外だった。
 
ギリシャ 0−2 スウェーデン ○
 前回、僕の応援していたポルトガルを2度も破り優勝した、にっくきギリシャ。今回も持ち前の守備的サッカーで敵を苦しめるかと思いきや、そう甘くはなかった。復活したスウェーデンのスター選手ラーション、それから僕のあまり好きでないイブラヒモビッチらに完全に苦しめられていた。やっぱりギリシャの戦いは見ていて面白いものではない。前回ギリシャが優勝したことで、ヨーロッパのサッカーが守備偏重になると危惧したネット記事などがあったが、そうなっていないことを安堵したい。
 
チェコ 1−3 ポルトガル ○
 いやったぜポルトガル、決勝トーナメント進出一番乗り! 2試合を終えた時点で、A組一位を決めてしまった。
 チーム状態がすこぶるいいのがよくわかる。チェコは、1996年大会、決勝トーナメントで敗れた因縁の相手である。前回はチェコの総合力にやられたが、今回はポルトガルの圧勝だった。デコを中心にしたパスワークが冴え渡っていたし、得意のドリブルではあまり見せ場を作れなかったクリスティアーノ・ロナウドが、シュートで非凡さを見せつけてくれた。彼はヘディングも強く、そうした各面において均一にレベルが高いところが、今シーズン、リーグで得点王を獲れた要因なのだろう。
 チェコは、1−2とリードされ、フォワードにコレルを入れた時点でもう終わったと思った。それまで、バロシュを中心に速いパス回しでチャンスを作っていたのに、コレルを入れれば彼の高さに合わせて長いボールをゴール前に放り込む、という単調な攻めになってしまう。思ったとおり、チェコは追加点を取れず、逆にポルトガルがさらに1点を入れて試合を決めた。
 
スイス 1−2 トルコ ○
 ものすごい豪雨の中の試合となった。とくに前半がひどく、水がピッチにたまってボールが止まるため、パスもドリブルもままならない。そんな中、スイスが執念で一点を取った。パスサッカーを信条とするトルコは、思ったように試合が作れないままだった。それが後半になって雨はやみ、パスが通るようになった。これでトルコは息を吹き返し、同点とする。スイスは、前半から積極的に走り回り、ゲームを作っていたハカン・ヤキンに疲れが見え始め、どんどん追い込まれていく。そして、後半ロスタイム3分、トルコのゴールが決まる。試合終了直前の悪夢。これで開催国のひとつ、スイスが、1試合を残してグループリーグ敗退となった。
 
クロアチア 2−1 ドイツ ●
 波乱の結果。今大会、優勝候補筆頭の呼び声高いドイツがクロアチアに負けた。クロアチアは、前評判の高かったモドリッチが、初戦以上にいい動きを見せていた。昔のゲームメイカーのような感じである。ボールを持ったら取られないし、一瞬のすきをつくパスも見事である。久々にこういう選手を見た気がする。いっぽう、ドイツはどこが良くなかったのかよくわからない。コンディションは決して悪くなかったし、現に0−2とリードされた後、初戦のヒーロー、ポドルスキが今大会3点目となるゴールを決め、いいムードになっていた。やはりドイツ相手だと、リードしていてもまったく落ち着くことができない、と思ったものだ。その雰囲気を破壊したのが、交代で入ったシュバインシュタイガーだ。後半ロスタイムで悪質なファウルを犯し、一発レッドカード、退場となった。この時点で試合は決まったのだ。

 なんとクロアチア、B組首位で決勝トーナメント進出である。いっぽうのドイツは次節、引き分け以上で2位確定だが、相手は開催国の面子がかかるオーストリアである。ちょっと面白い試合になりそうな気がする。
 
オーストリア 1−1 ポーランド ▲
 共同開催国のオーストリア、首の皮一枚でつながった。見所のすくない試合ではあったが、0−1でリードされたオーストリアが必死で追いすがる光景は、どうしてもオーストリアを応援する気持ちにさせられた。後半交代で入ったのが、人気者ヴァスティッチである。彼は名古屋グランパスにも所属したことのある選手で、38歳のベテランである。球さばきが巧みで、初戦も彼が入ってからいい攻撃ができるようになっていた。そして試合終了直前、後半ロスタイムでPKを得た。ゴール前で両チームの選手が競り合った際、ポーランド側の選手が押したということでファウルを取られたのだ。疑惑の判定だと各所で騒がれているが、確かに、あれがファウルなら、ゴール前の攻防は全部ファウルになってもおかしくない。
 ともあれ、蹴ったのはヴァスティッチ。恐ろしいほどにプレッシャーのかかる場面で、彼はよく蹴ったと思う。見事にゴールを決め、オーストリアは土壇場でグループリーグ敗退を免れた。
 
イタリア 1−1 ルーマニア ▲
 やはりイタリアは、ドナドーニ監督じゃだめだと思う。一戦目でオランダに大敗した結果、この試合ではデル・ピエロを先発に出すという、なんだか子供のような考え方で試合に臨んだ。初戦でフランスを苦しめたルーマニアは、同じように守備的かつ正確なボールポゼッションでチャンスを狙う、という戦術が見事に徹底しており、エースのムトゥが先制点を奪う。しかし、イタリアもそのわずか1分後、ベテランのパヌッチが点を奪い返し、試合を振り出しに戻した。ところがその先が続かない。交代で入ったカッサーノが、シュート以外にも活躍していたものの、なんとなく全体的に冴えなかった。ルーマニアは初戦を引き分けているので、この試合で引き分ければ有利なのはルーマニアである。イタリアはようやく勝ち点1をもらった状態で、最終節でフランスに最低でも勝たない限り、決勝トーナメントには進めない。
 
オランダ 4−1 フランス ●
 すごい! こんなにすごいオランダを見たことがない。初戦のイタリアに引き続き、このフランス戦でも同じく3点差をつけての勝利。2年前のワールドカップ優勝国、準優勝国を続けて大差で破ったことになる。
 前半9分、カイトのヘディングがいともあっさりと決まり、1−0とする。その後も、中盤で積極的にアタックを仕掛けてボールを取り、的確なパス回しをおこなう盤石の戦いぶりをみせる。
 今大会、オランダのファン・バステン監督の采配ぶりにも注目が集まっている。この試合でも、彼の選手起用のすごみが出た。1−0でリードしている後半、ロッベン、ファン・ペルシーと、攻撃的な選手を交代で入れ、さらに点を取りに行く姿勢を見せた。そして、交代からわずか4分後、ロッベンからのパスを受けたファン・ペルシーが見事がゴールを決めた。その後、フランスも、エースのアンリが絶妙なゴールを決めて1点差に詰め寄る。これでフランスが勢いづくかと思われた1分後、左サイドを駆け上がったロッベンが、角度のないところから思い切りシュートを放ち、ボールはゴール左隅に吸い込まれた。ここでおそらくフランスの心は折れてしまったのだろう。試合終了直前、スナイデルが個人技で決めた4点目はもうおまけのようなものだった。

 これでオランダもC組首位を決めた。このままの勢いで、最後まで突っ走れ。
 
スウェーデン 1−2 スペイン ○
 やったぜスペイン! ポルトガル、オランダにつづき、僕の3番目に応援しているスペインまでもが、1位通過を決めてしまった。
 スウェーデンはさすがに手強い相手だった。前半早々、フェルナンド・トーレスがゴールを決める。一戦目はハットトリックで大活躍のビジャの陰に隠れて目立たなかったが、ようやく今大会初ゴールを決めた。ただ、クリスティアーノ・ロナウドと同様、今ひとつ評価が先走っている気がする。まだまだそれほどの選手ではないと思うのだ。
 しつこく追いすがるスウェーデンは、エースのイブラヒモビッチがゴールを決め、1−1に持ち込んだ。そのまま試合はすすみ、もうこれは引き分けだろうなと多くの人が思った瞬間、ビジャがまたしてもゴールを決めた。貴重な1点だ。この1点があるのとないのとでは雲泥の差である。
 
ギリシャ 0−1 ロシア ○
 まあどちらも特に応援しているチームではなかったが、4年前からあまり進歩の見られないギリシャよりは、名将ヒディンク監督率いるロシアに勝ってもらったほうが、サッカー界には良かったと思う。これで前回王者ギリシャの敗退が決まった。
 
スイス 2−0 ポルトガル ●
 ポルトガルはこの試合で負けても1位、スイスは勝っても最下位が決まっているため、はっきり言って消化試合だった。ポルトガルは主力選手を温存し、出場した選手も明らかに力をセーブしていた。いっぽうスイスは、開催国の一つとして、今大会初勝利を狙って全力を尽くしてきた。その姿勢の違いが如実に表れる結果となった。
 “力を抜いた”ポルトガルを非難する向きもあるかもしれないが、僕はこれでよいと思う。ただでさえとてつもないプレッシャー、ストレスを感じながら選手達は戦っているのだ。そんな中で、負けても結果に何ら影響を与えないとなったら、絶対に勝たねばならない真剣勝負と同じ力を出せというほうが酷である。ましてや、これから先、その真剣勝負が何試合も残っているのだ。ただ、勝つリズムだけは忘れてほしくない。それだけだ。
 
トルコ 3−2 チェコ ●
 A組最終試合。スイス−ポルトガルとはうってかわって、こちらは2位争奪をめぐるすさまじい試合になった。チェコは一戦目と同様、長身のコレルをセンターフォワードに据える布陣で来た。真ん中にボールを放り込み、コレルに合わせる作戦である。僕はあまり好かないやり方だが、今回はこれが功を奏し、前半なかばでコレルのゴールが決まった。さらに後半に入りチェコが追加点を決め、2−0とリードする。試合はチェコペースで進むかに見えた。ところが、試合残り時間15分のところで、トルコが1点を返す。ここからトルコの波状攻撃が始まる。分厚い攻めで何度もチェコゴールを脅かしていく。そして残り時間3分、信じられない光景が訪れる。世界有数との評価を受けるチェコの名キーパー、チェフが、トルコのセンタリングしたボールをつかめず、前に落としたのだ。そこへ走り込んでいたトルコのエースストライカー、ニハトが軽く合わせ、土壇場で2−2の振り出しに戻ってしまった。チェフはかなりショックだったらしく、呆然としている。そこへさらなるドラマが連なっていく。完全に押せ押せムードとなったトルコは、さらにその2分後、ロスタイムまで残り1分というところで、ニハトが豪快なシュートをふたたびチェコのゴールに叩き込んだのだ。トルコ、2点差をひっくり返しての大逆転劇である。
 試合はまだ終わらない。反撃に出たチェコは、コレルがトルコゴールまで駆け上がり、飛んできたボールをキーパーと競り合った。ここでコレルがラフプレーをおこなったことに憤慨したトルコのキーパー、デミレルが報復行為でコレルを突き飛ばし、レッドカードを受けて退場となった。トルコはもう3人の交代枠を使い果たしているため、代わりのキーパーを入れることができない。仕方なく、出場中の他の選手がキーパーの代役を務める。チェコはここでなんとしてもゴール前にボールを持っていきたかった。枠へ飛ぶシュートを打てば、かなり確率でゴールが決まるだろうからだ。だが、時間がなかった。チェコはこの後、ゴール前に攻め入ることができないまま、試合終了の笛を聞いた。頭を抱えるチェコ選手。A組2位の座は、2試合連続で逆転勝ちをおさめたトルコの手に渡った。
 
ポーランド 0−1 クロアチア ○
 首位通過を決めているクロアチアは、予想どおり主要メンバーを外してきた。注目のモドリッチも出ないため、僕にはあまり興味の沸かない試合となった。Bチームとも言えるクロアチアはそれでも前2試合と変わらず、いいサッカーをしていたと思う。ポーランドはやはり力不足だった。
 これでクロアチアは堂々の3連勝だ。1998年ワールドカップで3位となり、一つの頂点を迎えたクロアチアは、以降はその残滓のような存在だった。国際大会に出てはくるものの、魅力的なチームではなかった。それが今大会では、ようやく新しいチームが見えてきた。スーケル、ボバン、プロシネツキらスター選手をそろえた1998年組に引けを取らない強さを身につけてきたようで、この先の戦いが楽しみである。
 
オーストリア 0−1 ドイツ ○
 前節で首の皮一枚つながった、開催国オーストリア。決勝トーナメントに進むためには、この試合で最低でもドイツに勝たなければならない。いっぽうのドイツは、引き分け以上でOKなのだから、ドイツが圧倒的に優位なのは間違いない。
 試合を通じていい攻撃を組み立てていたのは、オーストリアだった。いくつも決定的なチャンスを作り、試合を面白くしていた。ドイツは、バラックのスーパーゴールで1点は取ったものの、それ以外ではあまり見せ場は多くなく、絶対に入れなければならないシュートを外したりもして、ふがいない試合だった。
 これでドイツの2位が確定した。決勝トーナメントで当たるのは、ポルトガルである。ポルトガルよ、こんなふがいないドイツなど、一蹴してくれ。
 
オランダ 2−0 ルーマニア ●
 負けても1位通過のオランダは、当然のごとくメンバーを落としてきた。序盤はルーマニアに押される場面もあったが、だんだんとオランダもペースを上げていく。控えメンバーと言えども、各国リーグでの中心選手クラスが揃っているオランダである。選手間の歯車がかみ合ってきた後半にはきっちりと2点を取り、無失点でしのいだ。これで3連勝。3試合で9得点、1失点という、素晴らしい出来だ。本当に強いチームができあがったと思う。この調子で、優勝までの道を駆け上るのだ。
 
フランス 0−2 イタリア ○
 この試合で勝ったほうが、決勝トーナメントに勝ち上がれる可能性が強い。そんな緊迫した状況にもかかわらず、開始早々からなんだかのんびりしたというか、どちらのチームにも緊張感の感じられない試合だった。そして、フランスには不運が連発する。まずは中心になって攻撃を組み立てていたリベリの負傷退場。その後、アビダルがペナルティエリア内でのファウルを取られ、レッドカードによる一発退場を食らう。スローで見ても、全然悪質だとは思えないファウルだった。しかもこれでイタリアにPKが与えられ、職人ピルロがきっちりとゴールを決める。その後、後半にイタリアが追加点をあげ、3点を取らなければ勝ち上がれない状況になったフランスはもう、早々に勝負を投げていた。
 オランダ−ルーマニア戦でルーマニアが敗れたため、イタリアの決勝トーナメント進出が決まった。準々決勝ではスペインと当たることになる。ただし、中心選手のピルロ、それからガットゥーゾが累積警告のため出られない。我が応援するスペインは、こんなイタリアなど、へなちょこっと倒してくれることであろう。
 
ギリシャ 1−2 スペイン ○
 グループリーグ1位を決めているスペインも、やはりメンバーを大幅に入れ替えてきた。ほぼ全員が控え選手による構成である。対するギリシャは最下位が決まっており、なんとも和やかなムードの試合となった。それでも両チームは手を抜くことなく、きっちりと戦っていた。オランダと同様スペインも、控えに有力選手がごろごろいる。なにしろ、この試合でマン・オブ・ザ・マッチに選ばれたシャビ・アロンソなど、どうして先発じゃないのか不思議なくらいだ。ギリシャに先制点を許したものの、その後きっちり2点を取って逆転し、3連勝でグループリーグを終えた。準々決勝のイタリア戦では、ふたたび最高の選手が集まり、最高のパフォーマンスを見せてくれるものと期待する。
 
ロシア 2−0 スウェーデン ●
 ロシア、大覚醒である。一戦目、スペインに1−4で敗れた時には、ああこのチームは駄目だろうなと思った。いかな監督が名将ヒディンクであっても、うまくいかないこともあるのだなと思っていた。しかし、ロシアには秘密兵器が隠れていたのだ。その名はアルシャヴィン。僕はまったく知らない選手だったが、彼こそがロシアのマラドーナとも評され、攻撃の中心となる選手だった。それが、予選の最終戦でレッドカードを受け、本戦で2試合出場停止処分となっていて、スペイン戦、ギリシャ戦に出られなかったのだ。
 この試合では、そのアルシャヴィンを中心に、実に見事な攻撃を組み立て、スウェーデンを最初から最後まで圧倒した。素晴らしい試合内容だった。これまでの中でベストゲームと言っていい出来だったと思う。やはりヒディンクマジックは健在だった。よくここまでのチームに仕上げてきたものだ。

 そして準々決勝の相手は、なんとオランダである。これには数々の因縁がある。まず、ロシアのヒディンク監督はオランダ人であり、1998年W杯ではオランダ代表を率いてベスト4にまで進出させた人である。さらに、今から20年前、1988年のこの大会においてオランダが初優勝をしたのだが、この時に決勝で当たったのがロシア(当時はソ連)だった。そして、この決勝戦で2点目となる超スーパーゴールを決めたフォワードのファン・バステンこそ、今大会のオランダ代表を率いる監督なのだ。
 すごい試合になると思う。それでも、試合を終えた後に歓喜の栄光に浸っているのは、オランダイレブンのはずだ。

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