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EURO2004(2004年サッカー欧州選手権) TV観戦記
前提  
 当サイト管理人HARUNAが応援するチームは、
  
1にオランダ、2にポルトガル、それからスペイン、イングランド
 である。従って観戦記も、これらのチームへの偏愛に充ち満ちて書かれる予定である。
 
決勝トーナメント 観戦記   決勝トーナメント勝敗表(Yahooスポーツナビ) 
6/24(木)   準々決勝第1戦 ポルトガル - イングランド 
6/25(金)   準々決勝第2戦 フランス - ギリシャ 
6/26(土)   準々決勝第3戦 スウェーデン - オランダ 
6/27(日)   準々決勝第4戦 チェコ - デンマーク 
6/30(水)   準決勝第1戦 ポルトガル - オランダ 
7/ 1(木)   準決勝第2戦 ギリシャ - チェコ 
7/ 4(日)   決勝戦 ポルトガル - ギリシャ 
 
グループリーグ 観戦記   グループリーグ勝敗表(Yahooスポーツナビ) 
6/12(土)   ポルトガル - ギリシャ スペイン - ロシア
6/13(日)   スイス - クロアチア フランス - イングランド
6/14(月)   デンマーク - イタリア スウェーデン - ブルガリア
6/15(火)   チェコ - ラトビア ドイツ - オランダ
6/16(水)   ギリシャ - スペイン ロシア - ポルトガル
6/17(木)   イングランド - スイス クロアチア - フランス
6/18(金)   ブルガリア - デンマーク イタリア - スウェーデン
6/19(土)   ラトビア - ドイツ オランダ - チェコ
6/20(日)   スペイン - ポルトガル ロシア - ギリシャ
6/21(月)   クロアチア - イングランド スイス - フランス
6/22(火)   イタリア - ブルガリア デンマーク - スウェーデン
6/23(水)   オランダ - ラトビア ドイツ - チェコ

決勝トーナメント観戦記

 
ポルトガル 2−2 イングランド △ (PK戦により、6-5でポルトガルが準決勝進出)
 すごいよすごいよ〜〜! 最後にリカルドのシュートが決まったときは泣いちゃったよ〜〜〜! うわ〜〜〜〜ん!

 決勝トーナメント第1戦から、ものすごい試合を見た。奇しくも、僕が2番目に応援するチームと4番目に応援するチームとの戦いである。
 試合開始早々、イングランドに得点を決められてしまった。オーウェン、今大会初のゴールはなかなかアクロバティックなものだった。調子が悪くてもここぞという時に決めるというのはさすがだ。イングランドにとって不運だったのは、今大会絶好調で旋風を巻き起こしたルーニーが前半途中でケガをし、交代してしまったことだ。(のちに骨折していたことが判明)彼はシュートのみならず攻撃全般においていい働きをしていたため、その後のイングランドの攻撃はきびしくなってしまった。ポルトガルが圧倒的にボールを支配し、美しいパスをつないで攻めまくる。それでもイングランドもすくないチャンスで反撃を試みる。攻撃と守備がめまぐるしく変化し、中立的な立場で見るならこれほど面白い試合はない。
 しかし、僕はいらだっていた。両チームとも応援してきたものの、どちらかといえばやはりポルトガルに勝ってほしい。なのに、いい攻撃を見せているのに最後のシュートが決まらない。とにかくシュートが枠に飛ばず、ふかして高く蹴り上げてしまう。後半も残り少なくなるが、どうしてもゴールを奪えない。
 ここで、スコラーリ監督の手腕が冴えわたる。元気者のシモンを投入して攻撃の活性化をはかり、さらにフィーゴに変えてフォワードのエウデル・ポスティガを投入し、ディフェンダーのミゲルさえ下げてルイ・コスタを入れた。完全に本気の超攻撃モードである。同時にこれは失点の可能性も増やしてしまうが、ポルトガルは勝負に出た。
 采配は当たった。試合終了7分前、交代したエウデル・ポスティガのシュートが決まり、ついに念願の1点が入る。これが壮大なドラマの幕開けとなった。同点となり、試合は延長戦へ入る。

 延長に関して今回は、シルバーゴールという方式がとられた。前大会まではゴールデンゴール方式、いわゆるVゴールが採用されており、どちらかのチームに点が入った時点で試合終了だった。それが今回は、点が入ったあともとりあえず15分の前半終了まで試合を行い、勝負がつけばそこで終わる。そこで勝負がつかない場合延長後半に入り、点が入ったあともやはり後半終了まで試合が続く。これで勝負がつかない場合はPK戦となる。つまり、1点を取られてもまだ挽回できるチャンスが残されているのだ。これが今回、さらなるドラマを生んだ。

 延長前半は、比較的穏やかだった。さすがに疲れも見え始めたのか、とりあえず落ち着こうと考えたのか、双方さぐりあうような格好で前半が終わる。PK戦の嫌なムードが漂い始めたとき、それを打ち破ったのは、頼れるベテラン、ルイ・コスタだった。交代で入ってから何本かシュートを放っていたものの、どれも上にふかしてしまっていた。延長後半5分、彼の放ったミドルシュートは、イングランドゴールの天井に突き刺さった。逆転である。会場全体が揺れるほどに沸き上がり、僕も歓喜の悲鳴をあげた。WOWOWアナウンサーの、「ゴールデンエイジ最後の意地!」というコメントを聞いたとき、僕は胸が熱くなった。
 待ちに待った瞬間。これを、この1点を守りきれば勝てる。このホームスタジアムで、サポーターの応援するなかでなら、1点を死守できる。誰もがそう思った。しかし、歓喜の声はその5分後に打ち砕かれる。イングランドのランパードが意地の同点弾をたたき込んだのだ。
 なんという試合。僕は頭を抱えた。すこし元気の失せたポルトガルイレブンは、最後の5分を戦い切るので精一杯だったように思う。

 さて、PK戦である。ポルトガルは後攻で分が悪い。しかし、いきなりイングランドがつまずいた。ベッカムが、またまたキックを外したのだ。今大会初戦のフランス戦をはじめ、大事なところでの彼のPK失敗は数多くある。ボールを置いた場所の地面コンディションが悪かったようだが、理由はそれだけではないように思う。
 ポルトガルはデコ、シモンと順調にゴール隅に蹴りこみ、ポルトガル優勢でPK戦はつづく。このまま5人全員が成功すれば勝てる。そんな思いはこの試合にはまったく通じなかった。ポルトガル3人目、貴重な逆転ゴールをあげたルイ・コスタが、ベッカムと同様、大きく枠を外してしまったのだ。4人目は双方ともにゴールを決め、同点で最後の5人目をむかえる。

 PK戦は、こうなった時に後攻不利が露呈する。先攻が決めれば後攻は必ず決めなければならず、先攻が外してもこれを決めなければ、とプレッシャーは同じようにかかってくる。先攻ならば、たとえ外しても後攻のチームが残っているから、まだ気持ちは楽だ。
 イングランド5人目、ハーグリーブズが難なくゴールを決める。ポルトガルのキッカーは、ミドルシュートの得意なマニシェだ。もう選手の精神力にかけるしかない。もともとPKなんてプロが蹴ればほぼ100%入るものだ。それが、勝負を決する緊張で足元が狂うのである。
 しかしマニシェは落ち着いてゴールを決めた。これでサドンデスに突入だ。1人ずつ蹴って、どちらか一方のみがゴールを決めれば試合終了である。

 イングランド6人目、アシュリー・コールが決め、ポルトガルは今日同点弾を決めた若きストライカー、エウデル・ポスティガが出てきた。
 ここが試合の分岐点だったと思う。若さで緊張にひしがれていないかと心配するなか、なんと彼はキーパーをあざ笑うようなゆるいボールを蹴ったのだ。通常は思い切り蹴りこんでくるボールをキーパーは予想しているが、こうしたシュートには体が反応せず、決められてしまう。しかし、一歩間違えれば楽に取りやすいボールとなる危険性があるのだ。この大舞台で、この状況でこうしたキックを蹴ることができるとは、恐ろしい心臓の持ち主だ。なんとなくイングランド優勢で進んでいた形勢が、ここで明らかに変わった。
 ポルトガルのゴールキーパー、リカルドは、PK戦が始まってからいっこうに冴えなかった。ボールに触れることもできず、ど真ん中に蹴りこまれるシュートを二本続けて決められたりもしていた。かの英雄エウゼビオ氏がPK戦前に彼に寄り添い、何事かを話していたが、あるいはそれがプレッシャーになっていたのかもしれない。今日はまったく止められそうな予感がなかった。
 エウデル・ポスティガのシュートが決まり、エウゼビオ氏が怒鳴るシーンが映し出された。ここでリカルドは手袋を脱ぎ捨てた。彼の中で、何かが弾けた。
 イングランド7人目のキッカー、ヴァッセルの蹴ったボールに、これまで一度もうまく飛べなかったリカルドが、はじめて確信を持って飛んだ。ボールはその手に当たり、ゴールの脇をすり抜けていく。
 リカルドは吼えた。そして信じられないことに、彼はそのままキッカーの立つ場所に向かった。自分自身が蹴るというのだ。
 この勢いに、イングランドのキーパーが負けた。PKは不得手であるはずのゴールキーパーの蹴ったボールを、ただ見送るしかなかった。勝負あり。死闘を制し、準決勝に駒を進めたのはポルトガルだった。

 まったく、とんでもない試合だった。僕が応援するチームが、こんなドラマチックな試合で勝利を収めるのを見たのは初めてだ。PK戦では、一球一球に全身全霊をこめて応援していたので、試合が終わったあとは腑抜けになってしまった。
 まずは、イングランドに惜しみない拍手を送りたい。4番目に応援するチーム、ということを除いても、今日のイングランドは素晴らしかった。最後まで試合を捨てず、とくに同点ゴールを生み出したことは賞賛に値するだろう。最後はもう、どちらが勝っても文句は言うまいという気持ちにさせられた。グッド・ルーザーという言葉は、彼らのためにある。

 そして、ポルトガル。僕の中では、オランダと同じくらい応援したい気持ちになっている。オランダと違い、このEUROでは優勝はおろか、決勝戦に出たことすらないのだ。開催国である今回、なんとか彼らを決勝の舞台に立たせてあげたいという思いが募っている。
 
フランス 0−1 ギリシャ ○ 
 準々決勝1戦目が上に書いたとおりあまりに素晴らしいものだったから、この試合がかすんでしまった。フランスはどうにも調子が出ないながら、イングランド戦で見せたような運の良さでまた決勝まで行けるかも、と思っていた。
 しかしギリシャ、不調とはいえジダンやピレス、アンリらのいるフランスに堂々と勝利を収めるとはあっぱれだ。誰も予想しない結果だったろう。確かに堅守で素早いカウンターというスタイルは有効だったものの、当初目標だったグループリーグ突破だけではなく、ベスト4進出までやってのけた。
 
スウェーデン 0−0 オランダ △ (PK戦により、5-4でオランダが準決勝進出)
 やったよやったよ〜〜〜! オランダ勝ったよ〜〜〜! 絶対勝てないと思ってたPK戦で勝っちゃったよ〜〜〜〜!!!

 準々決勝において、ポルトガルとオランダ、僕の応援する2チームがともにPK戦のすえ勝利を収めた。それにしてもPK戦は応援する方もくたびれる。一球一球に力が入るから、体力を消耗してしまう。それでも勝利が決まった瞬間は、そんなことも忘れて歓喜の雄叫びをあげたのだった。だって、あのPK戦へたくそなオランダである。関係者が口をそろえて「PK戦にはなりたくない」と公言していたオランダである。勝てるみこみなど、ほとんどなかった。
 調べてみると、なんとオランダは公式戦のPK戦で勝ったことがないそうだ。もっともPK戦を行うのは大舞台くらいしか考えられないけれど、ヨーロッパ選手権では1992年、1996年、2000年と、なんと3大会連続してPK戦負けを喫している。その間に1998年のワールドカップにおいてもやはりブラジルにPK負けを食らったのだ。2000年のヨーロッパ選手権では、おなじくPK戦に弱いイタリアと、さながらPK戦最弱決定戦のような展開となった。イタリアも、1990年、1994年、1998年とワールドカップで3大会連続のPK戦負けを経験している。そのイタリアと戦い、オランダは4人が蹴って1人しかゴールを決めることができなかった。しかも、試合途中にも2回のPKのチャンスをもらい、2回とも外している。つまりこの試合でオランダは、6回のPKチャンスのうち1回しか決められなかったのだ。PK苦手もここまで極まるものか、という感じだ。
 そんなオランダだったから、僕もなんとか延長で決着がつくことを祈っていた。今日のオランダは、けっして全盛期のようではないにせよ、そこそこの出来だったと思う。あいかわらずロッベンは絶好調で、右に左に動いてチャンスを作り出す。相手にとってこんな危険な選手はいないだろう。セードルフもなかなかいい動きをしてボールを回していて、ミドルシュートも珍しく精度が高かった。ただ彼は時々緩慢なプレーをしてしまう。トラップが大きくなったり、パスミスをしたり、ドリブルをしすぎたり。これはオランダ全体に言えることで、なんでもないバックパスを相手にとられそうになって冷や冷やするシーンが今大会何度も見られる。あのスタムでさえ今日は二度ほどポカがあった。
 それでも、とくに前半45分は集中力をもってプレーしていたと思う。ただ、フランク・デ・ブールの怪我での交代は痛かった。あれでゲームプランの変更を余儀なくされてしまった感がある。

 スウェーデンはグループリーグで見せたようなガンガン攻めるサッカーは見せず、カウンターに徹していたように思う。確かにオランダのファン・ニステルローイをはじめ前線はしっかり防いでいたが、そのぶん攻撃にはあまり魅力がなかった。今日はラーションも目立たず、イブラヒモビッチも不発だった(僕は、世間の評判ほどにはイブラヒモビッチのことを評価していないのだが)。延長後半に惜しいシュートが何本かあったが、運がなかったのか全てゴールバーやポストに跳ね返されていた。あれが一本でも入っていたら、と思うとぞっとしてしまう。

 PK戦に突入し、ファン・ニステルローイが最初のゴールを決めた時、かなり安心した。まったくの平常心で蹴ることができていたからだ。それでも、対するスウェーデンも、シェルストレーム、ラーションといともたやすく決めてくる。ただ、イブラヒモビッチがやってしまった。蹴る前から顔に不安があふれていたが、彼の蹴ったボールはキーパーに弾かれることもなく、枠のはるか上を越えていった。これでまずオランダがリードする。
 このまま5人目までいければ勝てる。そう思ったのだがそれほどにはPK戦の神は甘くない。オランダの4人目、キャプテンのコクが、ゴールポストにボールを当てて外してしまう。彼は試合中に足を負傷したらしく、本来なら蹴るのは避けたかったことだろう。しかしオランダには過去にPKを失敗した傷を負った選手がいる。セードルフ、それからスタムだ。彼らはなるべくなら、いや、絶対に今日は蹴りたくはないだろう。その心情を察し、さらにキャプテンとしての気概も見せるためにコクは出てきた。そして、失敗した。
 これで振り出しに戻った。しかし、もう5人目である。スウェーデンはきっちり決めた。オランダ5人目、ロイ・マカーイ。彼が外せばゲームセット。オランダは敗退である。
 過去のオランダなら、こういうところを外したものだった。しかし今の選手は違う。とくに一人目のファン・ニステルローイとこのロイは、PKに対する恐怖をまったく感じさせなかった。ロイは落ち着いてゆるいボールをキーパーの跳んだ逆サイドに決め、5人目の大役を果たした。今日の分岐点はここだっただろう。つづくスウェーデンのメルベリのキックをキーパーのファン・デル・サールが気合い一発で止め、再びオランダがリードをとる。蹴るのは絶好調男、ロッベンだ。見た目はおじさんだが、彼はなんと二十歳なのだ。こんな若い選手がこんな重責を背負わされてかわいそうだ、と思ったが、彼もニステルローイやマカーイと同じく、落ち着いて蹴った。ボールはゴール右隅にしっかり収まったのだった。

 これでオランダは、ベスト4に駒を進めた。準決勝で当たるのは、なんとなんと僕が二番目に応援するポルトガルではないか。まあここまで来れば応援しているチーム同士が当たるのはしかたがない。どちらかが必ず決勝に行けるのだという考え方もできる。ポルトガルもおとついの試合を見て感動したから、いまや両チームを応援する気持ちは同じくらいになっている。とにかくいい試合をして、納得のできるほうのチームが決勝に上がってくれればいいな、と思う。ちょっと複雑な感じだけど。
 
チェコ 3−0 デンマーク ● 
 前半はデンマークに押され、ほとんどいいところがなかったチェコ。後半早々、セットプレーからコレルのヘディングシュートが決まり、これでようやく息を吹き返す。今大会絶好調のフォワード、バロシュがたてつづけに2点を決めて突き放し、試合を決めた。デンマークはワールドカップと同様、グループリーグではそこそこ強いのに、決勝トーナメントになるととたんにもろくなる。悪いチームではないと思うが、このあたりをどう突破していくかが今後の浮上の鍵となるだろう。
 終わってみればチェコ、前評判どおりの圧勝だ。おそらく次のギリシャ戦も突破し、決勝に駒を進めてくることだろう。そこで対戦するのは、オランダなのかポルトガルなのか。
 
ポルトガル 2−1 オランダ ● 
 ついに開催国ポルトガル、決勝に進出! おめでとう!!
 それにしても、ちょっとだけ複雑な思い。一番応援していたのはオランダだったのだが、今大会の試合を見てポルトガルのほうがチームの出来はいいと思い、途中からはオランダとほぼ互角に応援するようになった。今日の試合でも、どちらを応援するか試合がはじまってからもずっと迷ったのだけれど、1点目が入った時点で、ポルトガルを応援することに決めた。

 立ち上がりから両チームとも前線からのチェックが激しく、攻守がめまぐるしく切り替わる、予想どおりの面白い展開となった。ただ、これまでオランダの牽引役ともいえる働きをしていた左ウイングのロッベンが、今日は完璧に封じ込まれていた。逆サイドでスタメンに入ったオフェルマルスのほうが動きはよく、鋭く切れ込んでゴール前にチャンスボールを出していた。
 そんな中、ポルトガルが先制点をあげる。クリスチアーノ・ロナウドの決めたヘディングは、教科書どおりの見事なゴールだった。彼は今日もスタメンで、ばりばり攻撃に参加し、さらに意外に守備にも貢献する活躍ぶりを見せた。
 0−1とされたオランダは、後半になってオフェルマルスを下げ、フォワードのマカーイを入れてきた。オフェルマルスは今日好調だったのに何故、と思ったものの、おそらくイエローカードを一枚受け、さらに興奮しやすい性分でもう一枚もらって退場になる危険を考えてのことだろう。そうやって自滅してしまった試合はいくらでもある。
 交代したマカーイは、2トップではなく、右サイドのオフェルマルスと同じ位置に付く。しかし、オランダはこれだけフォワードが揃っているのに1トップというシステムのために生かしきれていない。案の定、マカーイは慣れないポジションでのプレーに苦労していた。もっとオランダに合ったフォーメーションがあるような気がしてならない。

 1点差でリードされている時のオランダは、なかなか強い。今大会のドイツ戦でも、1998年のワールドカップ準決勝でも、1点リードされてから後半の遅い時間帯で追いついた。このままの展開でいくと後半35分から40分あたりのところでオランダが追いつくような予感があった。
 ポルトガルは追加点がほしい。そう思っていたところにマニシェのとんでもなく素晴らしいゴールが決まった。ゴール左、ペナルティエリアの外から強烈に放ったロングシュートが、キーパーの目の前を通り抜けて逆側のサイドネットに突き刺さった。まさに”突き刺さった”のである。これで勝負あったかに思えた。今のオランダに、2点を返す力はない。
 それでも、ポルトガルの2点目が入った5分後にオランダは、相手ディフェンダーのオウンゴールというラッキーな形で1点を返す。これで再び1点差となり、僕の危惧はまた蘇る。

 しかし、今大会のポルトガルは、苦しい勝負をいくつもものにしてきた。グループリーグ最終戦、スペインに対して1点差を守りきった経験は大きかったと思う。今日もとにかく、必死で守った。しかも、単に引いて守るのではなく、中盤で相手のチャンスをつぶし、機会があれば攻撃をしかけるというやり方だった。オランダは最後、ハイボールをゴール前に上げて勝負をかけてくる。フリーキックの得意なファン・ホーイドンクが交代で入り、さらにポルトガルは緊張を増す。そして、終了近くなって与えたゴール前でのフリーキックをしのいだ時、勝利が見えたことだろう。ポルトガルは、オランダの最後の猛攻をしのぎきった。試合が終わった瞬間ピッチに崩れ落ちたのは、負けたオランダではなく、集中力とスタミナを使い果たしたポルトガルの選手たちだった。僕はその姿に感動した。

 ポルトガルはだんだん攻守のバランスが取れてきたと思う。2戦目からがらりと変わった4バックは安定感がある。とくにリカルド・カルバーリョが一戦ごとに力をつけてきている。今大会での大きな発見と言えるだろう。すでにビッグチームからの引き合いが来ているようだ。それに、今日ロッベンを見事おさえきったミゲル。彼は後半、機を見て攻撃にも有効に参加していた。
 デコの調子も上向きだ。ルイ・コスタからついにスタメンの座を奪ったのは、まさに実力だろう。安定したボールさばきを見せ、今日の勝利に貢献した。それから、フィーゴも今大会を通じて調子の良さを維持している。今日はマン・オブ・ザ・マッチにも選ばれたようだ。
 あとは、フォワードがもうすこし爆発してくれれば、というのは欲張りだろうか。今日スタメンのパウレタは、またもや結果を残せなかった。ヌーノ・ゴメスもまだまだ本調子ではない。

 さて、負けたオランダだが、今大会はよくやったほうだと思う。これまでの大会に比べ、チームのまとまりがあまり感じられず、戦術も練られていないように思えた。左サイドのロッベンの登場は大きかったが、パスワーク、個人プレイともに今日対戦したポルトガルに劣っていた。なにより、今大会で勝利したのはラトビア戦一試合だけだったというのが、その出来を物語っているといえるだろう。そんな状態でベスト4という成績のほうが驚きだった。とにかくまずは監督を解任し、新しいスタートをきってもらいたい。
 
ギリシャ 1−0 チェコ ● 
 なんということか! 今大会、次々と有力チームを破り快進撃を続けるギリシャが、優勝候補のチェコまでも下してしまった。
 今大会のチェコは、前半は抑え気味に試合を進めて相手の様子をうかがい、後半で一気に加速して得点を重ねるという戦法を貫いてきた。だから前半の出来が今ひとつだったのはこの試合に限ったことではない。
 やはりネドヴェドの負傷交代が痛かったろう。あれでゲームプランは崩れ、ついにチェコは立て直すことができなかった。それほど彼オンリーのチームでもないように思えたが、ロシツキの調子の悪さもあってか、うまく攻撃の形が作れない。なにより、ツートップのバロシュとコレルをマンマークで完璧に封じ込めたギリシャの守備にしてやられた。

 ただ、ギリシャはもちろん守り主体のチームではあるが、今日の試合で意外に個人技も優れていることがわかった。状況を見ながら、ドリブルを効果的に入れたりする。そして驚異的なセットプレー、ヘディングシュート。これが、ネドヴェドを欠いてなおタレントの揃うチェコの望みを打ち砕いた。

 これでなんと決勝は、ポルトガル対ギリシャという、共に決勝戦さえ初めてのチーム同士の対戦となった。しかもこれは開幕戦とまったく同じカードでもある。準決勝において残っていたのはグループリーグA組とD組のチームのみであり、最後に残ったのがA組の2チームだった。
 我が応援するポルトガルは、今度こそギリシャに勝てるだろうか。いや、勝ってくれるはずだ。もはやチームは第一戦の時のものではない。あれから大きく成長を遂げたチームは、地元の大声援と僕の応援を受け、必ずや優勝を手にしてくれるはずだ。
 
ポルトガル 0−1 ギリシャ ○ 
 勝てなかった。
 ああ、ポルトガル。
 初戦で敗れ、苦難の末に勝ち上がった決勝でその相手にリベンジし、開催国優勝。そんな見事なストーリーができあがる寸前だったのに。勝負は非情だ。

 深夜の放送なのでずっとビデオ観戦を続けてきたが、今日ばかりは生で観戦した。夜9時に布団に入り、放送前に起き出して万全の態勢で決勝戦を迎えた。
 立ち上がり、ポルトガルの調子は良さそうに思えた。ギリシャの中盤での守備はゆるく、ポルトガルの美しいパスは結構通っていた。これはいけそうだ、と踏んだ。
 思ったとおり、ポルトガルがボールを支配し、攻め入る展開が続く。シュートは枠に飛び、得点の可能性を伺わせる。対するギリシャは、ほとんど形にならない。ポルトガルのディフェンスは集中しており、中盤から後ろにボールを入れさせない。

 と、そんな時にアクシデントが起きた。右サイドでいつも以上に積極的に攻撃参加していたサイドバックのミゲルが、おなかをかかえてうずくまった。VTRが流れても、どこで負傷したのかよくわからない。かなり痛そうにしており、なんとか立ち上がった後もしきりにおなかのあたりを気にしている。このまま徐々に快復していってくれれば、と思ったが、やはり無理だったようだ。前半終了まぎわ、無念の交代となり、パウロ・フェレイラが代わりに入る。

 後半になっても点数はなかなか入らなかった。ポルトガルはだんだん焦りの色を見せ始めた。前半で見られた集中力はそがれ、つまらないミスが頻発する。かわりにギリシャの攻撃がすこしずつ増えていき、この試合初めてのコーナーキックを得た。ギリシャの得点はこういう形が圧倒的に多いから気をつけないと、と思った瞬間、見事なヘディングシュートが炸裂する。キーパーのリカルドの位置は明らかにおかしく、無人のゴールにいともたやすくボールは吸い込まれた。
 ギリシャ先制。ポルトガルが喉から手が出るほど欲しかった先制点を、先に奪われてしまった。ここでまたポルトガルに、開催国のプレッシャーがずっしりとのしかかる。選手たちの動きは重くなった。強引なシュートが目立ち、どれも大きくゴールをはずれていく。前半は調子のよかったクリスティアーノ・ロナウドも、ボールを持ちすぎて相手に取られてしまう。デコの蹴るプレスキックは精度をいちじるしく欠いた。歯車はどんどん狂っていった。
 交代枠は、残り2つしかない。最初の一枚は、コスティーニャをルイ・コスタに替えるのに使った。これが最後の大舞台であろうルイ・コスタは、やはり驚異的なキープ力と正確なパスで、試合に変化を与えた。さらにもう一枚で、パウレタをヌーノ・ゴメスに交代させる。これで交代枠は使い切った。

 僕は後半途中からずっと立ち上がったまま、最後まで応援を続けた。ポルトガルの選手たちはたびかさなる重圧に疲弊しきっていたのか、最後の力を振り絞るというより焦りが表面化して、なにもかもうまくいかなかった。後半40分を過ぎ、闖入した客のふざけた行為で試合が中断されたのも、息抜きにはならなかったようだ。5分ももらったロスタイムでこれといったチャンスも作れないまま、試合終了の笛の音を聞いた。僕はソファーにへたりこみ、テレビの画面から目をそらした。

 もうあと一歩、優勝がすぐそこに見えていたのに。悔しくて、むなしかった。ギリシャのようなチームが優勝してしまうとは、いったい今大会はどうなっているんだろう。サッカーの面白さっていったいどこにあるんだろう、なんてことを考えたりした。
 ともあれ、これでEURO2004は終わった。熱く応援を続けた大会だった。僕の応援するチームが珍しく順調に勝ち進み、決勝まで進出した。主要大会でこんなことは久しくなかった。次こそは優勝の歓喜に酔いしれたい、と願いつつ、思いはワールドカップ予選へと移っていく。

グループリーグ観戦記

 
ポルトガル 1−2 ギリシャ ○
 さて、いよいよ開幕のEURO2004。オープニングゲームは、開催国であり僕の2番目に応援するチーム、ポルトガルの登場だ。期待を募らせ、テレビの前に陣取る。
 なのに、なんということだ。開始7分で早々にギリシャに点を許してしまった。序盤から動きの固いポルトガルはうまくパスもつながらず、見ていて歯がゆい。いっぽうギリシャは定評のある固い守りに加え、的確な攻撃も見せる。ポルトガルのフィーゴ、ルイ・コスタらに仕事をさせてくれないのだ。前半残り3分の1くらいはなんとかスムーズな攻撃を見せ始めるも、ポルトガル無得点のまま、前半終了。

 後半、ポルトガルは2人のメンバーチェンジでのぞんだ。ルイ・コスタを下げ、デコを入れたのだが、これは僕としては不満。不調のポルトガル攻撃陣のなかでも、ルイ・コスタだけがパスを回していた。彼がいなくなれば、攻撃の基点がほとんどなくなってしまう。フィーゴか、全く期待はずれのパウレタを変えて欲しかった。
 デコは、今季チャンピオンズリーグで優勝したポルトの主要メンバーである。すこしは期待したのに、それほど攻撃に絡んでいない。いっぽうもう一人後半から入ったクリスチアーノ・ロナウドは、僕は見るのは初めてだったが、なんと入って早々ペナルティ・エリアでファウルを犯し、PKを与えてしまった。ぼうぜんとする僕と観衆の前でPKは鮮やかに決まり、この時点で0−2となる。

 残りの時間、ポルトガルはよく攻めた。それでも、前回大会で見せたような美しくパスのつながるサッカーはほとんど見られないままだった。けっきょく、試合終了間際でようやくロナウドのゴールが決まるものの、時すでに遅し。ポルトガルは大事な開幕戦を落とした。これで決勝進出は、かなり危うくなってしまった。
 
スペイン 1−0 ロシア ●
 開幕第2戦は、これまた僕の応援する、スペイン。開始早々から華麗なサッカーを見せ、調子は万全の仕上がりである。とくにビセンテの出来がすばらしく、左サイドを果敢に攻め上がる。ただ、フォワードのラウールとモリエンテスが今ひとつで、シュートまで持ち込めない展開がつづく。しだいにロシアもペースを握りはじめ、前半を終わってみればロシアのほうがシュート数が多いという意外な結果となる。

 ところが後半、急に試合が動いた。交代で入ったバレロンが、代わって間もない時間帯でゴールを決めたのだ。バレロン同様、交代で入ったシャビ・アロンソが右へ大きく展開し、プジョルが上げたクロスを受けたバレロンが落ち着いてディフェンダーをかわし、ゴール中央に押し込んだ。
 僕はバレロンが大好きだ。ワールドカップの時にも彼の活躍はすごかった。そして今日も、入って1分もしない間のゴールである。スペイン代表で最高のプレイヤーとも言える彼がなぜスタメンに入らないのか、不思議でしかたがない。たとえばモリエンテスなんて、僕には二流プレイヤーとしか思えない。ラウールとのコンビもうまくいってないのなら最初からラウールのワントップにして、バレロンを入れておけばいいのではないかと思う。
 ただし、あまりにマイペースにボールを持ちすぎる、という批判はたしかにうなずける。ゴール後は、それが原因でチームのペースを乱している状況も見受けられた。それでもやはり、彼のプレーは魅力にあふれている。
 カシージャスも、いいキーパーになったなあと感じた。昔はなんとなく危なっかしくて、カニサレスのほうが好きだった。それでも今や彼がスペインの正キーパーで間違いない。安定感と貫禄はワールドクラスである。あとは、プジョル。あいかわらず闘志むきだしのプレーで、見るものを感動させる。しかし、ただ荒いだけではなく、確かな読みとテクニックに裏打ちされたプレーなのだ。もはや彼無しでスペイン代表は語れない。
 
スイス 0−0 クロアチア △
 どちらかというと、スイスにちょっと肩入れしていた。理由はただひとつ、フォワードのフライである。彼はフランスリーグのレンヌに所属する選手で、レンヌといえば僕が2年前に訪れ、好きになった街なのだ。というわけで、それほど強い思い入れではないもののスイスに、とくにフライ選手に注目して試合を見た。
 前半は大きな動きはなく、どちらかというとクロアチアが攻め入っていた。それがだんだん、スイスにも流れが向き始める。互角の勝負は、スイスに退場者が出て10人になったあとも続く。注目していたフライは、それほどの見せ場は作れなかったものの、なかなかいい動きを見せてはいた。
 
フランス 2−1 イングランド ●
 へろへろ。ありなのか、こんな試合。イングランドを応援していた身には大変こたえるゲームとなった。
 まあ、イングランドらしいといえばらしいかもしれない。前回大会の初戦でも、ポルトガル相手に2−0とリードしながら3点を決められ、大逆転負けを喫している。だから、1点をリードしていてもこのまま終わるとは思っていなかった。ロスタイムに入ってもぜんぜん油断はできないと思っていた。とはいえ、ああまで見事に逆転されるとは。'99年のチャンピオンズリーグ決勝を思い出した人は多かっただろう。

 イングランドの1点目は、美しかった。やはりベッカムのキックはすごい。あんなすばらしいボールを入れられたら、フランスのディフェンス陣も動けないだろう。ゲーム序盤でイングランドは攻撃の形が作れず、防戦一方だった。フランスは余裕のボール回しで、いつでもエンジン全開にできる状態で様子見をしていた。そこに右サイドの絶好の位置でフリーキックをもらったイングランドが、先制点を叩き出した。ゲームはがぜん面白くなった。
 フランスは、あの2002年ワールドカップが頭によぎったのか、動きがおかしくなってしまった。左にジダン、右にピレスという夢のような配置がまったく生きてこない。ボランチのビエラとマケレレは、守備で手一杯だ。
 ところで、レアルに残留していればとよく言われるマケレレだが、僕はそれほど評価はしていない。ボールを持ちすぎるきらいがあって、レアルにいた頃もそれでチームのリズムを悪くする場面が多かった。たしかに守備面の良さは認めるけれど。
 オーウェンも、僕はあまり買っていない。1998年のワールドカップデビューがすごかったから、あの印象ばかりで語られている気がする。近年の彼は、ごく普通の選手だ。同様に、若いというだけで優遇されるルーニーにもあまりいい感情は持てなかったのだが、今大会で初めて見たら、評価は上がった。点取り屋としてだけではなく、パスやトラップのセンスにも非凡さを感じる。そして、PKを誘ったあのドリブル。しかしイングランドにとって、あれが分岐点になってしまった。
 後半も半分を過ぎた時間帯である。このPKを決めれば、勝利は見えていた。キッカーはベッカムである。彼はしかし、なぜかキックを急いだ。なにも焦る必要などなかったのに。そして、左隅に向かって飛んだボールは、同じ方向に飛んだキーパー、バルテズの手で完璧に跳ね返されてしまった。

 それでも後半40分を越えると、さすがに僕も、イングランド勝ったかな、フランス相手に勝ち点3を取れればあとの試合が楽になるかな、なんて無意識に考えてしまっていた。そこへ、ゴール正面のフリーキックを与えてしまう。
 これをしのげば勝てる。イングランドサポーターの思いをよそに、ジダンの蹴った見事なボールがゴール左隅に突き刺さる。
 あー、やっぱりな、だから言わんこっちゃない。そう思った。これで引き分けか、と。
 しかしまだドラマの続きはあった。イングランドのチームに投げやりなムードが流れたのか、名手ジェラードが不用意なバックパスを出し、それを追ったアンリをキーパーのジェームズが倒してしまった。
 PK。ベッカムとは違い、当たり前のようにジダンが決める。このプレーが終わるとほぼ同時に、試合終了の笛が鳴る。

 考えてみれば、イングランドはいつもこうだ。前述した2000年大会でのポルトガル戦もそうだし、同大会3試合目のルーマニア戦もそうだった。引き分けで勝ち抜けが決まっていた試合で、終了寸前にPKを与えてしまい、無念のグループリーグ敗退となる。どこかスタミナがもたないというか集中力が持たないというか、芯の弱さを感じてしまう。いっぽうのフランスには、ワールドカップでは見られなかった底力を感じた。やはりジダンはどこまでもすごい男だ。今日は彼一人の力で勝ってしまったようなものだ。
 
デンマーク 0−0 イタリア △
 開始してからしばらく、意外にもデンマークの攻勢がつづく。理由は簡単、イタリアがいつものプレスを全くかけていないからだ。このため、中盤でデンマークが好きなようにボールを回していく。何で今日のイタリアはこうなんだろうと思いながら見ていて、途中で「あ!」と気がついた。暑さだ。そういえばディフェンダーのパヌッチが、ポルトガルの暑さを訴えていた。この暑さの中で闘うには、力をセーブしていかなくてはいけないと判断し、前半は抑えめにしたのだろう。解説の野口さんがおっしゃっていた通り、攻められながらも得点を与えないというイタリアの思った通りに前半を終えた。
 後半に入り、イタリアは動きを見せた。”つぶし屋”のガットゥーゾを入れ、フォワードのカッサーノ、中盤のフィオーレと立て続けに選手を投入する。しかし、序盤にスペースをもらったデンマークは勢いに乗ってしまった。次々とチャンスを作り出し、そのたびにキーパーのブッフォンのスーパーセーブでなんとか逃れるイタリア。さらにイタリアは前線の頼みだったビエリがまったく機能せず、得点の気配がしない。
 試合終了が近づくと、どちらも引き分けを意識してしまい、さらに試合は動かなくなった。そのまま終了。あまり面白い試合ではなかった。ただ、キーパーだけは両チームとも珠玉の出来だった。
 
スウェーデン 5−0 ブルガリア ●
 どちらもとくに応援しているチームではなく、それほど攻撃力があるチームでもない、と用事をしながら片手間で見ていたら、あれよあれよという間に点が入っていった。なによりスウェーデンは、ラーションの代表復帰が大きいだろう。2002年ワールドカップの後に代表引退を表明していたが、このたびチームに復帰した。そして今日の大活躍。得点だけでなくアシストも決め、もはや彼無しのスウェーデンは考えられないほど。そこそこいい動きを見せていたイブラヒモビッチやユングベリが霞んでしまった。
 
チェコ 2−1 ラトビア ●
 両国ともに直接応援するチームではないものの、我が応援するオランダと同じD組の試合。とくにチェコは予選でも同じ組に入り、2位に甘んじさせられた憎っくきライバルだ。そのチェコが立ち上がりからネドヴェドやバロシュ、ポボルスキーにロシツキといったスター選手たちが動き回り、次々に攻撃をしかける。対するラトビアは国際舞台初登場ということで情報はすくなく、もちろん僕も一人のプレイヤーも見たことがないし知らない。パスもドリブルもまさに荒削りだが、左右のサイド攻撃でなんどかゴールに攻め入る。ゴールキーパーはなかなか安定感があって、チェコの猛攻をしのいでいく。そしてなんと前半終了直前、ラトビアがカウンターから左サイドをえぐってセンタリングをあげ、ちょこんと合わせたシュートが決まる。強豪チェコを相手に、なんとなんとラトビアが先制点をあげたのだ。

 後半に入ってもなかなか点を奪えないチェコに、焦りが見え始める。ラトビアゴール前でチャンスは作るものの、最後の詰めが甘く、得点できない状況が続く。しかし、チェコの猛攻をしのぎ続けるラトビアにも疲れが目立ってくる。ツートップの一人、プロホレンコフスが交代した直後、チェコのポボルスキーのスーパードリブルからバロシュへとつなぎ、シュート。これまで堅守を続けていたゴールキーパー、コリンコの脇をくぐってボールはゴールへと吸い込まれる。
 同点としたあともチェコは猛攻をやめず、どんどんラトビアゴールに襲いかかる。そして、ラトビアツートップの残り、得点を決めたヴェルパコフスキスが交代した直後、ついにチェコは逆転ゴールを決めた。

 前半からエンジン全開で動き回ったラトビア、最後は力尽きて倒れた。それでも健闘したと思うし、なによりこの組で唯一の弱小国と見られていたイメージを払拭した。オランダにとっても曲者となるだろう。気をつけねば。
 
ドイツ 1−1 オランダ △
 もう、ずっと冷や冷やものだった。今日のオランダ、ほとんどいいとこなし、と言い切ってしまう。ドイツもたいしていいプレーを見せていたわけではないから、どちらのファンでもない人にとってはさぞやつまらない試合だったろう。僕は、後半オランダの得点が入るまではイライラのしっぱなしだった。前半開始早々は落ち着いたボール回しもできていたのに、途中からは簡単なパスさえつなぐことができず、ゴール前にハイボールを投入する繰り返しだった。ダービッツ一人が走り回ってボールを取っていたが、さすがにそれだけではチャンスは作れない。選手交代も、ロイ・マカーイではなくファン・ホーイドンクが入った時には終わったかとも思ったが、意外に彼ががんばってくれて、ゴール前の攻防に芽が出始めた。そして右サイドからの切り返しに、オランダの星ファン・ニステルローイが倒れ込みながらのゴール。歓喜に沸くオランダファン、もちろん僕も。
 チェコのようにもう一点入らないかと必死で応援するもむなしく、1−1のまま試合終了。まあオランダは今日の出来からすれば、ドイツ相手に引き分けで御の字だったかもしれない。次節のチェコ戦がオランダの行方を決める。なんとか体勢を立て直し、強いオランダを再建させてもらいたい。
 
ギリシャ 1−1 スペイン △
 ギリシャのしぶとさには驚いた。スペインは一戦目と同様、多彩な攻撃をしかけて試合の主導権を握る。前半なかば、ラウールとモリエンテスのコンビがようやく機能し、先制点を奪取する。しかしその後は追加点を奪えず、後半に入って交代出場のホアキンがワールドカップを思い起こさせる華麗なドリブルをみせても、状況は変わらなかった。
 そして、事態を好転させてくれるかとの期待を浴びてバレロンがピッチに入るが、その直後、スペインディフェンダーの隙をつくロングパスに合わせてギリシャにゴールを決められてしまう。スペインはさらに切り札フェルナンド・トーレスを入れるが、追加点はとうとう奪えずじまいだった。引き分けに終わったものの、調子の上がりきらないスペインのもどかしさと、ギリシャの健闘がクローズアップされる試合となった。
 
ロシア 0−2 ポルトガル ○
 やったぜ、ポルトガル! ファンの言葉はそれにつきるだろう。
 第1戦を見て、今大会のポルトガルはだめだ、と烙印を押した人は多かったに違いない。僕も二番目に応援するチームにあげてはいるが、今の調子じゃ応援するのも気が乗らないなあ、とスペインを2番に上げようかと考えていたところだった。
 そこへ、今日の試合である。往年のスペクタクルサッカーが戻ってきたように華麗なパス交換をくりかえすイレブン。精神面というのはこうまでもプレーに影響するものかと目を疑った。
 たしかに、スタメンは4人も変わった。それでも、前試合で途中から出場したデコであったり、ディフェンダーだったりと、スタメンを入れ替えたから攻撃が良くなった、とは思えない。チーム関係者を含め、各人に思うところがあったのだろう。すっかり別チームのようになって、あのポルトガルが帰ってきた。
 フィーゴがとにかく素晴らしかった。好調時のキレのあるドリブルで左右のサイドに襲いかかり、何度もチャンスを演出した。デコの出来はまあまあと言ったところ。それにしても彼はいつ見ても情けなさそうな顔をしている。
 交代で出場したベテランのルイ・コスタも、今日は素晴らしかった。独特のリズムで出すパスは、ついに決勝点につながる攻撃を生み出し、さらにゴールまで自分で決めてしまった。クリスチアーノ・ロナウドは、前試合でもところどころで才能の片鱗を見せていたが、今日も動きは悪くなかった。またまたダメだったパウレタに比べると、なおいっそう活躍が光った。

 さあ、波乱のA組。ロシアのグループリーグ敗退は決まったが、それ以外の3チームは1点差で並んでいる。最終節で、グループリーグ突破の2チームが決まる。
 
イングランド 3−0 スイス ●
 イングランドはこの試合を落とせば決勝進出がなくなるだけに、固かった。とにかく動きがぎこちなかった。そんな閉塞状況を打ち破ってくれたのが、若きエース、ルーニーだ。18歳7ヶ月24日でのゴールは、大会最年少らしい。年齢に似合わぬ風貌で貫禄さえ漂う彼は、点を決めてもそれほど喜びを表面に出さない。だんだん彼のことを応援したくなってきた。リオ・ファーディナンドの欠場で不安視されたディフェンスは安定しているようだし、これでジェラードとオーウェンの調子があがってくればイングランド浮上の芽も出てくるのだが。
 スイスは、一戦目よりも内容に乏しかった気がする。期待のフォワード、フライもなりを潜め、シャプイザにいたっては影すら見えなかった。一戦目と同様退場者を出し、10人での戦いとなったのも痛かった。
 
クロアチア 2−2 フランス △
 よくやった、クロアチア! 信じられない逆転劇でイングランドを倒したフランス相手に、一時はリードまで奪い、最終的に引き分けに持ち込んだクロアチアに拍手を送りたい。
 あいかわらずフランスは、調子がいいのか悪いのかよくわからないチームだ。ジダンはコーナーキックからのボールを振り返りながらヒールで流すという超絶プレーを見せるなど、全体を通して”乗って”いる。しかし、アンリがいけない。時折見せる体のキレには目を見張るが、とにかくゴールが決まらない。ちなみに今大会でフランスは流れの中でのゴールがまだ一本もないのだ。全てフリーキックやペナルティキック、さらに相手ディフェンダーのミスなどからの得点ばかりである。
 クロアチアについては、ラパイッチ、プルショの二人が目立つ。ペルージャで中田とプレーしていた頃のラパイッチは騒がれるほどの選手ではないと思っていたが、今大会では一戦目からいい動きをしている。今日のPKも、イングランド戦で一本止めているバルテズが相手なのに堂々とゴール隅に鋭いボールを蹴りこんだ。この1点でクロアチアは目覚めた。ワンタッチパスが回りはじめ、積極的にゴールを狙う攻撃をしかけていく。追加点はすぐに生まれた。ゴール前でパスを受けたプルショに対し、フランスディフェンダーのデサイーがまさかのキック空振り。プルショがその玉を蹴りこみ、2−1と逆転に成功する。
 その後、クロアチアがキーパーへのバックパスのミスから失点を喫するが、このプレーのトレゼゲは明らかにハンドだった。それでもゴールは認められ、2−2で試合は終了。フランスにとってこの結果はそれほど悪くはないものの、次へ向けての修正はかなり必要になるだろう。いっぽうのクロアチアは勢いがついただろうから、次節、イングランドにとっては難敵になる。
 
ブルガリア 0−2 デンマーク ○
 大会が進んでいくと、どうしてもだれる頃合いが出てくる。もうしわけないが、僕にとってはこの試合はあまり重要ではなかった。デンマークが終始押し気味に試合を進めていたが、それほど魅力的な攻撃でもなく、退場者が続いて試合途中でキレてしまったブルガリアについては何も言うことはなし。ブルガリアはこれでグループリーグ敗退が決定。デンマークは勝ち点4となり、決勝進出に王手をかけた。
 
イタリア 1−1 スウェーデン △
 トラパットーニ監督の采配は、誰が見ても明らかに間違いだった。1点先行して、逃げ切るためにフォワードを下げて守備の選手を入れる、しかもフォワード3人のうち、一番調子の良かったカッサーノ、次に調子の良かったデル・ピエロ、という順番で変えるなんて、普通考えられない。残された今日のビエリに、いったい何ができたというのだろう。なんでイタリアは、トラパットーニやらサッキやら、時代遅れの監督をいつも採用するのかわからない。
 とにかく今日のビエリの出来は最悪だった。いつからあんな凡選手に成り下がってしまったのだろう。ヘディングは下に叩きつける、というのが基本中の基本なのに、すべて上にふかしていた。重戦車と恐れられた2002年ワールドカップの頃の面影はない。
 イタリアで今日目立っていたのは、なんといってもパヌッチだろう。ベテランのこの選手が一番動き回り、攻撃に守備にと八面六臂の大活躍だった。それから、あいかわらずザンブロッタの活きの良さはすばらしい。左サイドをえぐってクロスを上げるプレーは、何度やっても相手ディフェンダーが追いつけなかった。そして、キーパーのブッフォン。失点は彼のせいにはできない。今日もスーパーセーブ連発で、引き分けに持ち込めたのは彼がいたからだ。

 さて、引き分けでグループリーグ突破に大きく前進したスウェーデンだが、今日は前試合に比べて今ひとつぴりっとしなかった。ラーションはあの試合でエネルギーを使い果たしたのか、今日の試合では多くの時間で消えていた。ユングベリも、昔の迫力あるプレーに比べたらまったく物足りない。最後のデンマーク戦でしっかり勝って、攻撃重視のチームとして決勝トーナメントでも活躍してほしい。
 
ラトビア 0−0 ドイツ △
 でかした、ラトビア。対戦カードからすればドイツの勝利は確実かに思われた。僕も、チェコ戦で健闘したラトビアだけどさすがにドイツには通用しないだろう、と思っていた。しかし彼らは堂々と闘い、引き分けに持ち込んだ。
 ラトビアの武器は、なんといってもスピードである。とくにフォワードのヴェルパコフスキス、それから左サイドのルビンスの二人は、いったんゴールに向かって走り出せば相手ディフェンダーを置き去りにする速さを持っている。前半はかなりこれでチャンスを作った。それでも、国際舞台初登場でとにかく最初から飛ばしていったチェコ戦とは違い、力を温存することを心がけていたように思う。初戦で最後にスタミナが切れた教訓を生かしたのだ。そのぶん攻撃に厚みがなくなったとはいえ、試合終了まで得点の可能性は消していなかった。
 対するドイツは、チーム力がチェコより劣ったということなのだろう。とくに、最終パスの精度に欠け、ことごとくラトビアキーパーにボールを奪われてしまった。
 
オランダ 2−3 チェコ ○
 あああ。やってしまった、オランダ。2−0でリードして、今日は意外に楽な試合ができるかも、とここに書くコメントなんかも考えながら観ていたのに。

 オランダファンとしては、怒りがおさまらない。矛先はただひとつ、監督のアドフォカートである。2−1でリードしている後半、まだ30分以上残っている時点で、彼は選手交代を命じた。退くことになったのは、今日絶好調で相手サイドを切り裂いていたロベンだ。僕は最初、ケガでもしたのかと思ったが、そうではなかった。ロベン自身さえなぜ自分が交代させられるのかわからず、がっくりと肩を落として下がっていった。入ったのは、守備要員のボスフェルトである。繰り返すが、残り5分を切った段階ではなく、まだ30分以上試合は残っている時間帯だ。まるで、イタリア−スウェーデン戦のトラパットーニと同じだ。一番有効な働きをしていた選手を交代させたのだ。

 これでオランダのリズムが崩れた。当たり前だ。オランダの攻撃が減り、チェコは楽に仕掛けることができるようになったのだ。再三不安定だったオランダディフェンダーは簡単に崩され、バロシュの豪快なゴールで同点に追いつかれてしまう。
 良くないことは続くもので、オランダ守備陣の一人ハイティンハがこの日二枚目のイエローカードを受け、退場となってしまった。もうこれで、オランダが勝つ見込みはほとんどなくなったと思った。しかし、試合はこのままでは済まなかった。
 時間はまだまだたっぷりとあった。オランダはこの試合、引き分けでも苦しい。前試合に比べれば動きもよくなってきていたので、できれば勝ちたいところである。次くらいは攻撃の選手を入れてくるだろう、ロイ・マカーイかクライファートか、はたまたファン・デル・ファールトか、と思っていると、なんと交代で入ったのはまたしてもディフェンダーのライツィハーだった。しかも、この日ようやく調子の出てきたファン・デル・メイデに替えてである。もう、いい加減にしてくれアドフォカート、と叫びたかった。
 そして遂に後半43分、悪夢の逆転ゴールが決まる。僕はもう、立ち上がることも声を上げることもできなかった。

 それにしてもオランダ、今日の攻撃はなかなか良かったのだ。セードルフがいい起点になっていたし、ダービッツもきちんと自分の仕事をこなしていた。それに対し、ディフェンダーのふがいなさが目立った。1点目を献上する痛恨のミスを犯したコクをはじめ、ファン・ブロンクホルストやハイティンハなど、体のキレが悪いのか知らないが、ボールを持ってもなんとなくぼーっとしているように見えてしまう。実際、つまらないインターセプトを何度も受けていた。ただ一人、スタムだけが正しい判断でボールをさばいていた。

 これでチェコのグループリーグ突破が決まった。出場全チーム中唯一の2連勝である。下馬評以上の活躍ぶりで、優勝候補に挙げられるだけの力はじゅうぶんに示している。D組で残ったチームの勝ち点は、ドイツが2、オランダとラトビアが共に1点で並んでいる。次の試合、ドイツがチェコに勝てばドイツの勝ち抜け決定だ。グループリーグ突破の決まったチェコは大幅にメンバーを落としてくるだろうから、ドイツが負けるとは思えない。オランダは今日のような試合をしていては、躍進著しいラトビア相手でも苦戦を強いられるだろう。かなり苦しい立場に立たされてしまった。

 最後にもう一度言おう。
 アドフォカートでは、駄目だ。
 
スペイン 0−1 ポルトガル ○
 やった〜、ポルトガル! 決勝トーナメント進出!
 勝たなければグループリーグ突破はないという崖っぷちのポルトガル、今日の選手たちの集中はものすごかった。これまでの2試合にあったなんとなく緩慢なプレーは影も見せず、常にボールを支配し、前へ前へと攻め続けた。
 ゲームメイカーとしては、デコとルイ・コスタで今大会同じくらいの出来だと思うが、今日はデコで来た。若さと、チャンピオンズリーグ優勝チームの選手ということで監督に買われたのだろう。今日の動きはなかなか素晴らしく、じゅうぶん期待に応えていた。さらに今日初めてスタメンに起用された、クリスチアーノ・ロナウド。鋭い動きでゴールに襲いかかり、いくつもチャンスを作り出した。彼は間違いなく次代のポルトガルを背負っていく選手になるだろう。いっぽうベテランのフィーゴのほうもいい働きだった。年齢を感じさせないドリブルが今日もまた冴え渡っていた。こんなにいいフィーゴはここ数年見ていない気がする。

 さて、スペインは僕が3番目に応援するチームだった。しかし、2番応援のポルトガル相手ではポルトガルを応援せざるを得ない。たとえこの試合で負けても、ロシア−ギリシャ戦でギリシャが2点差以上で負ければ、スペインが勝ち抜けになる可能性もあったのだ。
 今日のスペイン、悪くはなかった。得意の攻撃的体制で、とくに右サイドからホアキン、あるいは交代後のルケがどんどん切り込んでポルトガルを脅えさせた。初スタメンのシャビ・アロンソ、それからフェルナンド・トーレスも悪くはなかったが、トーレスはすこしシュートミスが多すぎた。それにしても今日もバレロンはスタメンはおろか、出場さえなかった。スペイン最高の選手がなぜこんな不遇の目に遭うのかわからない。不調で結局1点も上げられなかったラウールを外してバレロン、という選択肢もじゅうぶんに考えられたと思う。

 ポルトガルは、ディフェンダーもよくがんばった。前試合で出来の悪かったリカルド・カルバーリョは、今日は集中して守っていた。ジョルジュ・アンドラーデも、ヌーノ・ヴァレンテも、ほんとによくがんばった。とくに最後の10分ほど、ポルトガルは死に物狂いで守った。選手交代が、昨日のオランダやその前のイタリアと同じく、あからさまに守備重視のものだったので非常に心配ではあった(フェルナンド・コウトを投入した時には不安は大きく増した)が、なんとか守りきった。

 初戦でギリシャに負けた時から、開催国初のグループリーグ敗退になるかとやきもきさせたポルトガルだったが、最後に決勝トーナメント進出を決めた。しかも結局、グループA首位である!
 
ロシア 2−1 ギリシャ ●
 僕にとっては、スペインの運命を決める試合という意味合いが強かった。重圧の取れたロシアが開始早々2点を連取し、ギリシャを慌てさせる。それでも早めの選手交代を行い、前半終わり際でギリシャが1点を返す。これが、大きな大きな1点となった。この1点がなければギリシャはグループリーグを突破することはできなかった。今大会、ラトビアと並んで”地雷原”と呼ばれているギリシャ、決勝トーナメントではどのような戦いを見せるのだろうか。
 
クロアチア 2−4 イングランド ○
 よっしや、イングランドも決まり!
 引き分けでも勝ち抜けが決まるイングランドだったが、決して受け身にならず、積極的に攻撃をしかけていったのが奏功した。
 久しぶりに見ていて喜ばしいゲームだった。1点を先取されてもなんとなく余裕が感じられた。ただ、3−1から1点入れられて3−2にされた時にはすこし焦ってしまった。イングランドは、ロスタイムに入ってから2点を失う力のある(?)チームである。しかし、彼らはすぐに追加点を上げた。これでようやくチームに安堵が広がったことだろう。

 なんといっても今日はルーニーに尽きる。1試合で2ゴールは、この前の試合と同じだ。これで合計4ゴールと、一気に得点ランキング単独トップに躍り出た。ゴール前でも慌てず、決めないといけないところではきっちり決める。これがオーウェンとは全く違う点だ。しかも、パス回しも巧みで、攻撃の起点にさえなっていく。イングランド久々のスーパースター出現の予感がする。決勝まで進出するようなら、この大会はルーニーの大会として記憶にとどめられるだろう。
 イングランドで次に良かったのは、アシュリー・コールだ。3試合を通じて彼はコンスタントな働きをしている。左サイドを巧妙なステップワークで守り、しかも攻める時にはいつの間にか前線にやってきている。いいリズムが作れない時に状況を打開する力もある。今のイングランドには欠かせない選手である。

 クロアチアはフランスに引き分けるなど、決して悪いチームではなかった。とくにプルショの動きはあのシュケルを彷彿とさせる。若い世代がようやく国際レベルにまで達してきた印象を受けた。
 ちなみに今日も、早めに守備重視と思われる選手交代がイングランドにあった。おいおい大丈夫か、と危惧したが、これは要するに、イエローカードをもらっている選手を次試合のために下げたという意味だったらしい。確かに、この試合でもう1枚イエローを受けてしまうと次の試合に出られない。今やルーニーのいないイングランドは考えられないだろうから、この選手交代は納得だった。
 
スイス 1−3 フランス ○
 このB組は混戦で、現在最下位のスイスもこの試合で勝てば決勝トーナメント進出が決まる状況だった。ジダンのゴールでフランスが先行したあと、スイスが追いついたシーンでは盛り上がった。スイスも、もしかしてという気持ちが沸いたことだろう。しかし、最後は地力の差が出てしまった。アンリがようやく得点できたのは、フランスにはいいニュースだろう。結局この組は、フランスとイングランドの勝ち上がりという順当な結果に終わった。
 
イタリア 2−1 ブルガリア ●
 イタリア、グループリーグ敗退決定!
 0−1でリードされながらも追いつき、後半ロスタイムで奇跡的な逆転ゴールをカッサーノが決めるも、デンマーク−スウェーデン戦の結果により、決勝トーナメントへの道は閉ざされた。1996年大会でも、イタリアは同じ辛酸を舐めている。今大会でも、決して他に劣るチームではなかったのに。
 やはり僕は監督を交代させるべきだと思う。メンバー選出からして頭が古すぎる。
 
デンマーク 2−2 スウェーデン ●
 試合自体にはさほど興味を持てなかったが、イタリアの動向を決める一戦ということで注目していた。2−2以上の引き分けになれば両チームが勝ち抜け、ということは事前にさんざん言われていたが、まさかその通りになるとは思わなかった。ラーションとトマソンがやはり素晴らしい。デンマークは、2002年ワールドカップでもフランス・ウルグアイをおさえてグループリーグ首位となったチームだ。決勝ではどんな戦いを見せてくれるのだろうか。
 
オランダ 3−0 ラトビア ●
 いやったあ〜〜〜〜っ!!!
 オランダ、決勝トーナメント進出!!!

 ベスト8最後の座を射止めたのは、ドイツでもラトビアでもなく、我が最も応援するオランダであった。
 今日は面白いように攻撃をしかけ、ほとんどラトビアにプレーをさせなかった。ファン・ニステルローイは2点を入れて、得点ランキングトップに並んだ。ロッベンのドリブルは冴え渡り、ダービッツは相手のチャンスをことごとくつぶしてオランダのチャンスに変えた。交代で入ったロイ・マカーイは、やはりその実力を見せ、すぐに得点を決めて結果を出した。しかし、これだけのストライカーを控えにとどめておくというのは、ぜいたくというかもったいないというか、それだけ選手の層が厚いというか。
 まあ今日の試合は盤石だった。ラトビアは前2試合ほど危険な香りがなかった。ベルパコフスキスをしっかり封じ込まれ、ルビンスのスピードもなりを潜めた。

 それにしても、オランダは精神的にもろいチームなのに、こういうピンチには意外に強い。今大会の予選プレーオフでも、1戦目で負けたのを2戦目でくつがえしたのだった。
 決勝トーナメント、初戦で当たるのはスウェーデンだ。曲者だが、経験のないチームはこのあたりで崩れるものだから、ここはすんなり勝って準決勝に進んでほしい。

 けっきょく僕の応援している4チームのうち、スペインを除く3チームが決勝トーナメントに進んだ。喜ばしいかぎりだけれど、その3チームが同ブロックに配置されてしまった。
 
ドイツ 1−2 チェコ ○
 いやあ、ドイツ、グループリーグ敗退である。1位通過が決まってメンバーを大幅に落とした2軍のチェコ相手に負けてしまった。これは前大会とまったく同じパターンで、あの時も1位通過を決めていたポルトガルのBチームに負けたのだ。2002年ワールドカップの準優勝がまぐれと見るべきで、ここ数年のドイツの停滞ぶりはひどい。フェラー監督は、僕は前から今ひとつだなあと思っている。素晴らしい選手が必ずしも素晴らしい監督にならない、というのは歴史を見ても明らかなことだ。
 それにしてもチェコ、恐るべし。このチーム編成でドイツに勝ってしまうとは。そして、3試合すべて逆転勝ちである。この力は本物だ。

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