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Kei Kitamura



「やめろ……クソッ…離、せっ…」
「…るせぇ」



 抱き締めたい


 ただそれだけが心を支配していた。



 男だとか合意ではないとか

 そんなものは何の歯止めにもならなかった。


 組み敷いているのがサンジだと言うだけで、身体中の血液が沸騰するかのように熱く滾る。




 目にはゾロのバンダナが目隠しをするように巻かれ、後ろ手にサンジのネクタイで縛られた身体は、俯せに半裸の肢体をくねらせる。膝に絡まったままのズボンが足枷になり、蹴りを繰り出す事も出来ず、サンジはただ身体を捩り拒絶の言葉を吐くことしか出来なかった。
 夜中のキッチンでいきなり拳を振るわれた。殺気すら感じさせず、何の感情も読みとれないゾロの不意打ちに、サンジは身構える事すら出来ず、そのまま昏倒してしまった。
 気が付けば灯りを落とされたキッチンに、身体を拘束され転がされていた。それだけでなく、衣服を半分剥ぎ取られ背後から押さえ込まれている。
 自分が何処にいるのかさえ分からないような暗闇の中、首筋に掛かる息は荒く、身体をまさぐる手は熱く、何が起こっているのかを把握出来ず、サンジは夢を見ているのかと暫く現実と夢の境を彷徨っていた。
 口の中の錆た鉄の味が血だと気付いた瞬間、全てを思い出す。


−−ゾロ……!


「なっ…何、して…」
「……」
 ゾロの手は肌を彷徨うだけでなく、胸や股間を荒く掠めていく。荒い獣のような吐息は首筋を掠め、肩口にキツク噛みついては、滲んだ血をザラリと舐めていた。
「やめろ……クソッ…離、せっ…」
「…るせぇ」
「っ…!」
 強く股間を握られ、サンジの咽が鳴る。かさついた節くれ立った指が、幹を上下に扱く。優しさの欠片も見当たらない、愛撫とも呼べない其れは、セックスではなく、暴力だった。
「やっ…やめろっ…テメェッ…」
 暗闇だと思ったのは目隠しをされていたせいで、隙間から漏れる光で、キッチンには灯りが付いたままであると気付く。
 自分がどんな姿で組み敷かれているのか、この灯りの下でゾロはその姿を見ているのだと思うと、羞恥が込み上げてきた。
「な、んだよっ…ぅ…んで、こんなっ……」

 こんなのはただの暴力だ。
 屈服させる威力も無く、怒りと憤りだけが増長される。





何故……?




苦しい…         


くるしい……  




……ゾロ





「ーーーーーっぁっ…」



 馴らされることもなく、秘所に突き入れられる劣情に、声もなくサンジが首を仰け反らせた。
 荒れ狂う凶暴な何かに突き動かされ、受け入れる事を拒む其処に捩込み、サンジの細い腰を掴み揺すり上げる。
「ひっ…ひぅ……っ…っ…」
 掠れた声、秘所から漏れる卑猥な音が響く。



 どうして。


 どうしてと、それだけが頭の中にあった。



 何故、この身体は自分を拒む。




 饐えた匂い

 鉄の匂い




 ただ

 抱き締めたかっただけなのに。






 狂気の波に飲まれてしまう……


2003/1/10UP




すみません。とりあえず謝っておきます。
強姦…。
いや、もう何もコメント出来ませんね。
Kei