Sad eye
Kei Kitamura
ねぇ……
淋しいの…?
−− いや
どうしたの?
−− どうもしないよ
どうして、泣くの?
−− 泣いてなんか、いないよ
どうして、
そんな悲しそうな目をしているの…?
「…に、考えてる?」
「ぁ……」
身体中を舐め回され、撫でさすられ、楔を奥深くまで埋め込まれた状態で、サンジの思考はどこか遠くへ浮遊していた。
フワフワと彼方に飛んでいたサンジを呼び戻したのは、耳に吹き込まれた荒い息と低く響くゾロの声。ゾクリと背筋を駆け抜けた痺れは、快感。
「んだ…、テメェか……」
「いい度胸じゃねぇか」
耳を嬲る舌がガサガサと音を立てる。耳元で囁かれるゾロの声は、脳に直接語りかけられているようで、ビリビリ響いてサンジは身体を震わせた。
「…っ…」
「犯ってる最中に違う事考えてんじゃねぇ」
「っあ!…ふ…」
ゾロが腰を掴み揺すると、深く刺さっていた楔が硬度を保ってサンジの内壁を圧迫する。既に中で放たれたゾロの欲望が音を立て、飲みきれなくなった秘所から溢れ出す。
「何、考えてた…?」
「…るせぇ…ンな事気にするタマかよ…テメェが」
考えていた訳ではない。
昔身体を合わせた女性に言われた言葉が、脳の中でリフレインしていただけだ。
あれは年上の髪の長い女だった。黒髪が細い背に垂れ、長い爪に覆われたしなやかな指がサンジの身体を彷徨う。
そんな昔の事が、ゾロと寝るようになってから頻繁に目蓋の裏に浮かび上がるようになった。
そっぽを向いて拒絶するサンジに、ゾロは苛立ちを感じずには居られない。
「気に入らねぇ……」
「う、あっ!ああっ!あっ…ひっ……」
激しく腰をグラインドさせ、抜ける寸前まで引き抜かれた楔を同じ速度で突き入れる。足と腰を抱えられ激しい抽送を繰り返されて、サンジの身体は受け入れる快楽に翻弄された。
仰け反った喉が白い。汗の流れる白い喉が淫猥で、その喉仏に牙を立てたい衝動がゾロを襲う。
「何を…思っていた…?」
「る、せ…って……ってる…」
緩やかな動作に切り替えたゾロが、サンジの首筋に強く吸い付いた。サンジの腰を支えていた手を脇腹に沿って撫で上げ、上下する胸にある飾りを親指で押し潰す。
甘い喘ぎを漏らす唇は唾液に濡れ、テラテラと光り艶めいている。噛みつくように口づけ、更にサンジの口腔内に唾液を流し込んだ。
「っ…しつけぇ…よ…入れて、出して、入れて、出して、そんだけで…オワリだろうがよ…っ…」
「この口だけは色気がねぇな」
「…あってたまるか…クソマリモ…んな色気が欲しけりゃ…は、ぁ…陸に上がった時レディにお願いし、てろっ…」
浅く息を付きながらサンジの罵詈雑言が続く。
「つか…テメェじゃレディも嫌がるだろう、から…っ…一人で好みの顔思い浮かべながら、自分で抜くんだな」
クックッと喉を鳴らしてサンジが笑う。
ゾロが一人で抜く姿を想像すれば、笑えるだろう。
誰を思い、行為に耽るのか、そんな事はどうだっていい事だ。
「……」
「ん、だよ?」
唇が触れる寸前で顔を静止させ、瞳の奥を覗き込んで来るゾロに、サンジは笑いを止めた。
深淵を探るような視線に、サンジは目を逸らせない。
ドクドクと心臓は早鐘を打っているのに、ギチギチとゾロを飲み込んだ秘所は鼓動を繰り返しているのに、全てが止まってしまったかのようだ。
「お前…泣きそうだ…」
「!!」
ビクッと、ゾロが驚く程にサンジの身体が跳ねた。見開かれた瞳は、信じられない物を見るようで、青く深い色が揺らめく。
「悲しい事を思い出してたのか?」
「……っ」
「何が悲しいってんだ…?」
ゾロが言葉を重ねる度、組み敷いた細い身体が震え出した。
生まれたての仔猫が震えるように、細かく揺れるサンジの身体。
揺れる瞳から涙がこぼれ落ちた。
ねぇ……
淋しいの…?
Fin
2002/6/18UP
衝動で書いた話です。
何処とも、何とも繋がりのない、単品です…。
*Kei*