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/// JE TE VEUX ///

Kei Kitamura

 息づかいが漏れ聞こえる。


 深夜。ふと目が覚めて用足しにバスルームへと向かった。
 バスルームには灯りが点いていて、思わず舌打ちをする。

−−こんな時間に風呂に入ってんのは、コックしかいねェじゃねーか。

 扉を叩こうと悩んで躊躇したその時、向こう側から聞こえる息づかい。くぐもって上擦ったような微かな声。

−−…まぁ、奴も男だし。

 風呂場で抜くなんてことは、健康な男ならそんなコトもあるだろうと、諦めて踵を返した。
「……っゾロ…」
 微かな、ほんの微かな声で呼ばれた自分の名前に驚き、扉をまじまじと見つめる。
 今、確かに自分の名前を呼んだ。
 波の音と、時折聞こえる水音に紛れて、息を詰める艶めいた声。
「ん……ゾ、ロッ……ぁ」

−−俺がオカズかよ…

 いつも抱いている時に見せるサンジの顔が脳裏に浮かぶ。
 頬を紅潮させ、全身を震わせて乱れる姿は、見ているだけで充分過ぎる程にゾロを煽る。白い肌が桜色に染まり、胸の赤い実が上下する様とそこかしこに散らばるゾロが付けた紅い花。

「ぁ…ああっ…は、ぁ……
 サンジが達したのだろう。切羽詰まった嬌声が扉の向こう側から聞こえて、暫く荒い息づかいだけが響いていた。
 その姿を想像してゾロの下半身に熱が集中する。

 勢いよくその扉を開くと、ギョッとした顔でサンジが目を見開く。ユニットバスに半身まで湯に浸かり、まだ息を整えることが出来ないでいた。
 サンジの姿は思い描いていた通り、薄紅に染まった全身から壮絶なまでの色香を漂わせていた。汗とも滴とも言えない水滴を全身に纏っている。
 何が起こったのか分からないといった表情で固まってしまっているサンジにゾロが意地の悪い笑顔を向けた。
「…匂うな…」
「…っ!!」
 途端にサンジの頬がこれまで以上に染まり、ゾロから視線を外し俯いてしまった。
「抜いてたのか」
「…どうでもイイだろうがよ。まだ入浴中だ。便所ならもう少しガマンしな。すぐ出るからよ」
 言葉では強がりを見せたが、ゾロの視線に絡め取られ湯船から出ることも出来ず、ただじっとゾロが出ていくのを待っていた。
 出ていくこともなく、逆に扉に背を預けてサンジを見つめていたゾロに、サンジが痺れを切らした。
「…んだよっ。早く出てけよっ」
「別に気にするこたねーだろ。上がるんだろ?早くしろよ」
「……クソッ」
「裸なんていつも見てんだろーがよ。何が恥ずかしいんだ?」
 その言葉に煽られて勢いよく湯船から立ち上がり、栓を引き抜く。ゴボコボと音を立てて湯が流れていく。
 ゾロに背を向けて近くに置いてあったタオルに延ばした手を、ゾロの大きな其れに掴まれた。

−−何でこんなにエロい身体してんだ、コイツ…

 細く白い身体。薄い胸。しなやかに伸びた足。

−−すげェ…くる…。

 ゾロがゴクリと喉を鳴らす。
 指先からポタポタと落ちていく滴が、足許に敷かれたマットへと吸い込まれていく。
「…にすんだよ…。離せよっ!」
 急に掴まれた手を振り払うように手を引いたが、ゾロの力に敵うハズもなく逆に其れを引かれて正面に向かい合う格好になってしまった。
「誘ってるんだろ?」
「…え?」
「お前の身体が、俺を誘ってるって言ってるんだよ」
「…っ!バカなこと言ってんじゃねェ!離せっっ!!」
 足許の安定しない場所で暴れた為バランスを失ったサンジの身体は、ゾロの胸に倒れ込んで来た。濡れた身体はゾロのシャツを濡らした。腕を掴んでいたゾロの手はサンジの裸の背中に回り、もう片方の手は腰を辿りながら股間へと降りて行った。
「やっ…ヤメ、ロッ!」
「すげェ反応してるな…」
 サンジの隠したがっていたモノを強めに握りしめると、そのまま緩く揉みしだく。それだけで逃げることも敵わなくなってしまったサンジの身体は、小さく震え出し、ゾロの肩に額を押しつけてきた。
「っ…ゃ…離、せ…」
「今更だろ?…ほら…」
「ひ…ぅ…んっ……」
 強く握っていた手を弛め、下から撫で上げるように擦ると艶を乗せた声でサンジが啼く。強弱をつけて上下に扱いてやると、サンジの腰がゾロに押しつけられる。風呂とさっきまでの自慰で火照ったままの身体が、更に熱くなっている。震える指先でゾロのシャツを掴み、熱い息を忙しなく吐き出しては、声を漏らす。普段はサラサラと揺れる金髪が、今はしっとりと水分を含み頬に張り付いている。
 艶めかしさに誘われるようにゾロは唇をサンジの耳に寄せると、耳朶を咬みながら卑猥な言葉を囁く。
「気持ち良かったかよ?俺のコトを思って抜くのは…?ん?」
「あっ…ん…ぃや…」
「ココも自分で弄ってやったか?」
「やあっ!あ、んっ…ひぅ…」
 胸元で色づく赤い実を手のひらで円を描くように揉み込むと、途端にサンジの声が大きくなり、ビクビクと身体を跳ねさせた。悪戯に撫で回し、指で摘むと押さえきれなくなった喘ぎ声がひっきりなしにサンジの口から漏れだした。
「いいんだろ?ココを弄られるんの好きだよなぁ?」
「あんっ!ゃ…ぁぁ…あっ、はっ…」
 サンジ自身と胸への愛撫と言葉での責めに、膝がガクガクと震え立っていることも困難になってきていた。タイルに押しつけられた身体がズルズルと沈んでいく。
 髪から流れる滴が頬を伝う。滴と涙と唾液が混ざり顎を伝って床に染みを作っていく。
 既にサンジのものかゾロのものか分からなくなった荒い息が、バスルームに響く。

  何…やってんだ…オレ……

 足を開いて牡を間に挟み込み、強請るように腰を揺らす。
 口元からは止め処なく喘ぎ声が零れ出る。
 吐く息は熱く艶を滲ませ、背筋を這い上がる快楽に身体を委ねる。

  浅ましい…

  奴の手を、身体を求めてヒクつく秘所を隠すことも出来ず、見せつけるかのように身体を開いていく。


「恥ずかしくねェか?」
 笑いを含んだゾロの声。
 もう全てが遠い所から聞こえてくるようだ。
「…ゃあ、んっ…あ、あ…」
「いい格好だぜ…?」
 ゾロの息も荒い。
 秘所に含まされた指を何度も前後に揺すられる。増やされていく指に、足がピクリと跳ねる。内部を掻き回す指はバラバラに蠢き、サンジの快感のツボを掠めては奥へと進んでいく。
「ああああっっ!」
 内部を蹂躙していた指が一気に引き抜かれる感覚に、内壁は収斂し今まで圧迫していたモノを欲して開閉を繰り返す。
「ゃ…もぉ…っ…ゾロォ……」
「厭らしいな…」
「はぁ…んぅ…」
 焦らされる。中がゾロのモノを欲している。失われたモノを補うように自分の手を伸ばしヒクついている蕾に指を這わせたが、その指も触れただけでゾロの手に阻まれる。
「い…やぁ…あぁ…もぉ…もぉっ!」
「すげェ…クる…」


  ……ゾロ、も?

  オレのこの姿に煽られている?

 掴んだ手をゾロ自身の股間へと導かれる。
 其処には脈を打つ熱い塊。

 潤んだ瞳で、この情事の間見ることの無かったゾロの顔を見た。


  獣の瞳…。


「オ、レが…ほし、い…?」
 股間に添えられた手で、ゾロの熱い欲望をなぞる。
「ああ…欲しい」
 膨れあがったゾロの欲望を引きずり出し、手を添えて受け入れる蕾へと導く。
 触れただけで背筋を快感が突き抜ける。
 サンジが放った精で湿った蕾の周りに擦りつけるだけで進入ってこようとしないゾロに、焦れて腰が揺れる。
「ぁ…早く……」
「俺が欲しいか?」
 目を合わせ、サンジがゾロに訊いたのと同じコトを聞き返してくる。サンジは欲望に濡れた瞳をゾロに向け、薄く口を開き、舌をひらめかせて口付けを強請る。
 今日初めてのキス。
 触れるだけで、すぐに離れていく唇。
 触れるか触れないかギリギリの所で留まるゾロに、サンジは答えを返す。



「ゾロが…欲しい」

FIN


2001/11/19UP

ああ…恥ずかしいったらナイわね。
でも裏の裏に持ってくる程のモノではなかった気が…。
まぁ、「I need you」の続きって感じで読んで貰えれば宜しいかと存じますです。
*kei*