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-KURENAI-
Vol.2


−− な、んだ…?

 自分の身に何が起こっているのか一瞬分からなかった。
 いきなり足下を掬われ、床にぶつけた肩の痛みに気を取られていたので、手足の自由を奪われ拘束されるまでの間、馬鹿みたいにされるがままだった。
「え…な、何…?」
 訳も分からず見上げれば見慣れた船内と、目の前には剣士の顔。
 闇に鈍く光る瞳が、獣のようだ。
 獲物を狙い、仕留める為に見据えられた瞳。
 ザワザワと胸の奥がざわめく。
「ちょ…オイ…何、してる…?」
 羽織っていたシャツのボタンが弾け飛ぶ勢いで服を脱がされていく。ベルトは引き千切られ、下肢までもが露わにされる。
「な…オイ!!テメェ!!何しやがるっ!…っ!」
 素肌に触れてくる掌が熱かった。
 剣を握る事を生業にしている剣士の手は、それと分かるように硬い。
 胸や腹をまさぐる大きな掌。
 触れてくる掌は熱く、探るように慈しむようにシャツの間から肌を撫でられ、胸の奥のざわめきは一層酷くなってきた。
「や…んう…っ?!」
 騒ぐ口が煩いとでも言うように、外されたネクタイを押し込まれる。

−− なに、が…起こってる…?

 暴れる身体をゾロ自身の身体でねじ伏せられ、荒い息で胸元に顔を寄せられ、触れた濡れた感触にサンジの身体が大きく跳ねた。熱い、滑った舌が肌を這い回る感触に、ザワザワと心も頭も犯されていく。
「うーっ…ん、んっ…」
 やめろと、やめてくれと、声にならない声で訴えた所で、ゾロの手は、口は、サンジの身体を探るのをやめようとはしない。乳首を吸われ、指で捏ね回され意志に反して身体だけは高ぶって行く。
「ふっ…ぅ…」
 下肢の間に息づく熱が、掌に捕らえられ思いの外腰が跳ねた。ゆうるりと撫でられる感触がとても頼りなく、らしくない触れ方だと思う。無骨でこんな風に乱暴に組み敷いたゾロの、腫れ物に触るようなやり方に違和感を憶えた。
 訳が分からないまま視線を向けると、じっと顔を見ていたゾロと視線が絡む。
 闇を宿した瞳。
 鈍色に光る瞳は敵と対峙した時のように真摯で、サンジはその真意を読みとろうとするが、そろりと手を動かされ霧散した。
「っ…ぅ…ン…」
 強くなる愛撫に目の奥がチカチカする。
 緩急を付けて上下に動いていただけの指が、括れを撫で、指の腹で先端の窪みから漏れだした雫を塗り込めるように動くと、知っている感覚が腰の辺りを這い上がってきた。

−− 嫌だ…いや、だっ…

 ゾロの手でイカされる。
 彼の手に吐き出す事が嫌だった。
 追い詰め、追い上げ、追い落とす。
 そんなやり方で自分を辱めようとするゾロの手で、感じている自分が許せなかった。
「んぅ…んんっ」
 何度も何度も首を振る。
 それでも、彼はやめてはくれなかった。
 それどころか奥に潜む蕾にまで手を伸ばされる。
「っ…!」
 息を飲んだ瞬間、頑なに閉ざされた窄まりに指が突き立てられた。サンジ自身が零した滑りを借りて、ヌルリと一気に埋め込み、一気に引き抜く。
「…っ!ぅ…ん、んっ…」
 何度も、何度も繰り返し内壁を擦られる。

−− 気持ち悪ィ…

−− 気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪いっ…

 奥を撫でられる感触は、脳の内側を犯されているようで、サンジはその身を小刻みに震わせた。
 数本の指が誰も触れた事の無いような場所を犯す。
「…ふっ」
 指が抜かれ、足を高く掲げられ、熱く滾ったゾロの欲望が其処に押し当てられた時も、震えが止まらなかった。身体を二つに引き裂かれるような痛みを伴い、ゾロの熱がサンジの奥に埋め込まれる。
「ーーー…」
 脈打つ熱棒が身体の奥に潜む。
 目を開けてなどいられなかった。
 ゾロの荒い息づかいとか、上から滴る汗とか、全て靄の中に居るようで、ただ身体を揺すられるだけ。



 なんで…?
 どうして…?
 仲間ではなかったのか?
 ケンカはするが、背を合わせて闘うことが出来る仲間ではないのか?
 こんな、劣情をぶつけられる相手としか思われていなかった…?



「ぅ…ふっ…ぅ…」
 悔しくて、情けなくて、泣いてなんかやるもんかと思う。



「サンジ…」



 初めて呼ばれた名前に、サンジは瞠目した。

−− な…んで…

 何故この男は、こんな時に、こんな状況で自分の名前を呼ぶのだと。
 改めて見たゾロは、眉間に深い皺を寄せ、まるで苦しいのだとでも言いたげな表情でサンジを見ていた。陵辱しているゾロの方が、何故そんな顔をしているのかサンジには分からなかった。
「…サン、ジ」



 欲望のまま辱められ
 言葉も無く思う様揺さぶられ
 そうして、サンジは意識を手放した。



  **********



 力を失った身体からズルリと自身を抜くと、中で放った精液と鮮血が、混じる事無くドロリと床を濡らした。挿入の際、サンジの身体に傷を付けてしまったのだろう。
 紅い、血が闇の中でも鮮明に見えた。
 青ざめた頬に幾筋かの涙の痕。
 必至で涙を堪えている様が遠い記憶のように思い出される。
 力無く横たわるサンジの身体を強く抱き締めた。


 欲しくて
 欲しくて

 抱けば手にはいると思った。



 女にだらしなく、男に対しては限りなく凶暴で、罵る言葉は汚い。横柄で傲慢にも思える態度で接するクセに、世話好きで、誰も見ていない所で、誰も気付かないような所で、凄く優しい。
 誰に対しても、平等に優しい。
 ケンカも一種のコミュニケーションだと、毎回ケンカを売って来るサンジに言われ、成る程と頷いた。だが、それも誰に対しても同様だった。
 それがとても嫌だった。
 こんなモヤモヤとした気持ちは初めてで、訳もなく苛立ち、強硬手段に出てしまった。



 この天の邪鬼で、そのくせ素直な、無邪気に笑うコックが、どうしても欲しかった。



 抱いて、手に入ったのだろうか。



「…サンジ…」

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2004/5/23UP

終わらねぇ、終わらねぇ…。
終わらす気あんのか?ああ?な感じで、ハァ…
スミマセン。ホント、スミマセン(汗)

*Kei*