三者(弁護団、裁判所、検察)協議

経過

第1回09年9月10日(門野博裁判長) 裁判所は弁護団の証拠開示勧告申し立てに対して、検察側の意見を10月末までに出すよう求め、その際、開示対象の証拠の範囲を検察手持ち証拠に限らず捜査機関全体を探して入手可能な証拠も日1時対象に含まれるとの考え方を示した。検察側は10月30日、意見書のなかで、証拠開示について「あるかないかにかかわらず、開示の必要性がない」と反論。殺害現場とされる雑木林でのルミノール検査報告書について「不存在」と回答した。弁護団はこれに対する反論所と証拠開示の必要性を訴えた鑑定意見書を出して再審にとって証拠開示が不可欠であることを訴えた。

第2回09年12月16日 裁判所は8項目の証拠開示勧告を行い、ルミノール検査について「不存在」というのなら納得のいく説明が必要との考え方が示された。

8項目の内容 1,殺害現場とされる雑木林における血痕反応検査の実施およびその結果に関する捜査書類一切(検察官は殺害現場のルミノール反応検査報告書について存在しないと言っているが、存在しないならその理由の説明を求める) 2,捜査官が、殺害現場に隣接する畑で農作業をしていた小名木さんから3回目に事情聴取した際の捜査報告書ないし供述調書。 3,殺害現場とされる雑木林の隣で事件当日、農作業を行っていた小名木さんを取り調べた捜査官の供述調書案、取り調べメモ、長所案、備忘録など。 4,1963年7月4日付実況見分調書に記載されている現場(雑木林)を撮影した8ミリフィルム。 以上犯行現場関係 5,死体鑑定書や1963年5月4日付けの(死体発見時の)実況見分調書に添付された写真以外の被害者の死体に関する写真。 以上、死体関連 6,石川一雄さんが○○製菓の工場に勤務していた当時の借用書など筆跡鑑定等のために収集した石川さんの筆跡が存在する書類 7,石川さんが逮捕・拘留中に書いた本件脅迫状と同内容の文書など、石川さんの筆跡が存在する文書 以上、筆跡関連 8,石川さんの取り調べにかかる捜査官の取り調べメモ、取り調べ小票、調書案、備忘録等 以上、取り調べ関連

 第3回(2010年5月13日)岡田雄一裁判長 検察は開示勧告を受けた8項目のうち、ルミノール検査報告書、雑木林を撮影した8ミリフイルム、死体の写真の3項目について「不見当」とし、その他5項目について36点の証拠開示を行った。この開示された証拠の中に、1963年5月23日付けの石川さんの上申書が含まれており、これは47年ぶりに日の目を見たまったく新しい筆跡資料である。弁護団はこの年12月、新たな筆跡鑑定2通を提出した。

 第4回(2010年9月13日) 弁護団は「不見当」とされた3項目の証拠について釈明を求めるととに、犯行現場を特定する捜査書類や石川さんの着衣の血痕検査に関する捜査書類の開示を求めた。 第4回の三者協議で検察側は検討中として回答を保留しました。

 第5回(2010年12月15日) 検察は、犯行現場を特定する捜査書類や石川さんの着衣の血痕検査に関する捜査書類は「不見当」とし、弁護団の求めていた第3回協議で開示した筆跡資料や録音テープに関連する証拠を追加で開示しました。弁護団は当時の埼玉県警鑑識課員から事情聴取した捜査書類の開示を求めました。 その後、意見書とともにスコップの指紋検査の報告書の開示を求めました。

 第6回(2011年3月23日) 検察は元鑑識課員に検察官が事情聴取した報告書3通を開示し、「犯行現場でのルミノール検査は行われなかった可能性がある」とした。スコップの指紋検査報告書については検討中とした。弁護団は石川さんの再逮捕時の弁護士との接見妨害に関する証拠開示と、鞄、万年筆、腕時計、手ぬぐいに関する証拠開示を求めた。その後弁護団は、第6回協議で開示された検察官報告書によって、犯行現場とされた雑木林でのルミノール検査が行われたのは明らかとし、あらためてルミノール検査報告書と、検査を依頼した指示文書、捜査指揮簿、庶務日誌などの開示を求めました。 またスコップの指紋検査報告書と被害者の自転車の指紋検査報告書の開示も求めました。 また小名木さんの証人尋問を求めるとともに、新たな「法医学鑑定書」を提出した。

 第7回(2011年7月13日)小川正持裁判長 検察側は新たな検察官に替わり、一転、開示勧告を求めた証拠すべてについて証拠開示の必要はないとする意見を述べ、証拠開示を拒否する態度を示した。裁判所は再検討を促した。 弁護団はこの年8月、あらためて@スコップの指紋検査報告書と関連する証拠の開示、A殺害現場が雑木林であるという「自白」を裏付ける捜査の書類一切の開示、B「自白」によって発見されたとして有罪証拠とされた3物証(万年筆、カバン、時計)にかかわる証拠の開示を求めた。

 第8回(2011年9月28日) 検察はスコップの指紋検査報告書を「不見当」と回答してきた。裁判所は万年筆、カバン、時計の三大物証に関する証拠開示を検討するよう検察側に求めた。

 第9回(2011年12月14日) 検察は意見書を提出するとともに、3物証に関わる捜査書類や関係者の供述調書などとスコップ付着物鑑定に関する証拠を開示。 しかし、単独犯行「自白」以前の犯行現場を特定する捜査書類や万年筆の置き場所の「自白」図面は不見当と回答した。
検察側は3月30日、筆跡と法医学鑑定意見書を提出(検察は追い詰められている。法医学鑑定は有名な警察御用学者石山のもの)。 弁護団は4月19日、再審請求補充書とともに3物証、「犯行現場」「出会い地点」や目撃証言、手ぬぐいなどについての証拠開示を求める開示勧告申立書、雑木林の隣で農作業を行っていた小名木さんの証人尋問の早期実施を求める要請書を提出。

第10回(2012年4月23日)
検察側はスコップの捜査に関する書類と筆跡資料19点を証拠開示。

 

◇第11回三者協議について(速報)
                            部落解放同盟中央本部

 10月3日、午後3時から東京高裁内で狭山事件第3次再審請求の第11回三者協議がひらかれました。東京高裁第4刑事部の小川正持裁判長をはじめ担当裁判官、東京高等検察庁の担当検察官2名、弁護団からは、中山主任弁護人、中北事務局長をはじめ12人の弁護人が出席しました。
 弁護団は、第10回三者協議前の4月19日付けで、証拠開示勧告申立書、証拠開示に関わる意見書を提出し、殺害現場についての捜査書類、スコップの捜査について、また、スコップ関係の証拠で、番号が抜けているものを指摘し開示を求めていましたが、これらについて、検察官は、この日の三者協議で4点の証拠を開示しました。開示された証拠は、事件直後の捜査報告書1通とスコップ関係の3点です。弁護団は今後、これら開示された証拠を再審請求に活用していくために分析、検討していくことにしています。
 しかし、一方で、検察官は、目撃証言や3物証(万年筆、鞄、腕時計)、いわゆる「秘密の暴露」にかかわって弁護団が求めた証拠開示について、今回の意見書で証拠開示の必要性はないとする立場を表明しました。弁護団は高裁の開示勧告以来の積み重ねをふまえて反論し、裁判所も柔軟に対応するよう検察官に促しました。
 また、弁護団は、検察官が領置した証拠物の番号が飛んでいるものについて、開示と内容の特定を求めて、9月7日付けで証拠物の標目の開示勧告申立書を提出していました。検察官から回答はありませんでしたが、これら弁護団が求めた証拠開示について、裁判所は柔軟に検討するよう促しました。
 弁護団は、三者協議に先立つ9月26日に、腕時計についての新証拠と補充書を東京高裁に提出しました。提出された新証拠は、時計修理歴44年という専門家鑑定人によるバンド穴の使用状況についての報告書などで、被害者や被害者の姉が使用するはずのない2番目のバンド穴の使用頻度が高いことを明らかにし、自白にもとづいて発見されたという時計が被害者が使用していたものではない疑いを示すもので、弁護団は時計の発見が「秘密の暴露」とはいえないと主張しています。
 弁護団は、8月、9月に、スコップ土壌について検察官意見書に再反論する大橋第2意見書、筆跡について検察官意見書に再反論する魚住第2意見書、佐竹鑑定書などの新証拠を提出しました。また、この日にも、捜査、逮捕の問題点についての新証拠と再審請求補充書、関連する証拠の開示勧告申立書を提出しました。
 三者協議では、これらの新証拠について説明し、裁判所は検察官に意見を求めました。脅迫状の筆記インクの科学的検査や「犯行現場」の隣で事件当日農作業をおこなっていたOさんの証人尋問についても、裁判所に再度求めました。
 弁護団は、検察官意見書に反論する法医学鑑定や取調べテープに関わる証拠を来年春にかけて提出する予定であることを伝えました。証拠開示や時計の新証拠、事実調べ要求についての検察官の意見も今後出されることになります。

 これらをふまえて、次回の三者協議は来年1月下旬におこなわれる予定です。証拠開示と事実調べを実現するために、さらに運動の輪を広げ、世論を大きくしていこう!

1月30日に第1 2回三者協議がひらかれました。

 第1 2回三者協議では、検察官は、弁護側の要求にたいして、手拭い、腕時計、自白の秘密の暴露に関わる捜査報告書等1 9通を開示しました。
弁護団は、開示証拠を精査するとともに、これらをふまえてさらに証拠開示を求めます。未開示の証拠物については今回は開示されませんでしたが、具体的に内容を特定して再度、開示を申し立て、裁判所もこれらの開示に対応するよう促しました。
Oさんの証人尋問などの事実調べについては、今後出される検察官の意見書をふまえて裁判所が判断することになります。また、弁護団は、準備中の新証拠を4月末に提出、検察官も意見書を提出し、これについても、今後、鑑定人尋問をおこなうかどうか、裁判所が判断することになります。
次回の三者協議は5月におこなわれますが、おりしも狭山事件は事件発生から半世紀を迎えます。冤罪50年を広く市民 にアピールし、さらに証拠開示と事実調べをおこなうよう世論を大きくしていかなければなりません。
半世紀を迎える5月にむけて、全国各地でさまざまな取り組みをすすめていただくようお願いします。

13回三者協議

  5月8日、午後4時から東京高裁内で狭山事件第3次再審請求の第13回三者協議がひらかれました。
 ことし3月に就任した東京高裁第4刑事部の河合健司裁判長、4月に就任した担当裁判官、東京高等検察庁の担当検察官、弁護団からは、中山主任弁護人、中北事務局長をはじめ10人の弁護人が出席しました。東京高検の担当検察官2人も4月に交代していました。河合裁判長をはじめあらたな裁判官とあらたな検察官とのはじめての三者協議となりました。
 弁護団は、三者協議に先立って、5月2日付けで2通の証拠開示勧告申立書を提出しました。1通は犯行に使われた手拭いの捜査に関する証拠の開示請求です。ことし1月に開示された手拭い捜査に関わる資料を精査し、さらに関連する捜査資料の開示を弁護団が求めたのに対して、3月27日付けで、東京高検の検察官は当時の捜査資料など26点の証拠をあらたに開示しました。
 弁護団は、これら開示証拠を分析し、さらに捜査資料等の開示を求めました。もう1通の証拠開示申立書は、1月に開示された証拠を分析し、「秘密の暴露」にあたるとされた自白内容に関する当時の捜査資料の開示を求めたものです。
 弁護団は、この日の三者協議で、2通の証拠開示申立の重要性を説明しました。また、昨年来、求めてきた欠番の(検察官が付した領置番号の抜けている)証拠物の開示請求についても、検察官からの回答がいまだにないとして、あらためて求めました。
 これに対して、東京高裁の河合裁判長は、証拠開示についての従来の裁判所の姿勢を踏襲するとしたうえで、弁護団が求める、未開示証拠物、手拭い捜査関連証拠、秘密の暴露関連証拠の開示請求に柔軟に対応するよう検察官に促しました。
  弁護団は三者協議に先立って新証拠と補充書を提出しました。5月2日付けで、殺害方法に関連して検察官が提出した意見書(2012年3月)に反論する法医学者の鑑定書、犯行態様の実験にもとづく意見書など5点の新証拠を補充書とともに提出、さらに5月8日付けで小野瀬雅人・鳴門教育大学教授による第2鑑定を提出しました。これは開示された逮捕当日の石川さんの上申書などを脅迫状と比較し、共通する漢字の特徴を分析、文字の知識も書字技能の熟達程度も大きく異なることを指摘し、同一人が書いたものではないと結論づけた筆跡鑑定です。
 また、脅迫状・封筒の筆記インクをX線分析器を使って鑑定するよう求める鑑定嘱託申立について検察官は2013年3月に実施する必要なしとする意見書を提出しました。それに反論する意見書も5月2日付けで提出していました。
 この日の三者協議では、各弁護士から、これら提出した新証拠の意義を説明するとともに鑑定人尋問などの事実調べを強く求めました。これら事実調べを実施するかどうか、あらたな裁判長、裁判官が今後検討することになります。

21回

2015年1月検察は未開示を含み物証のリストを開示した。開示された日は22日で、リストに示された証拠物は279点。このうち44点は、検察側がこれまで存在を明らかにしていなかったもので、石川さんが書いたとみられるはがきもある。

22回

3月34日、検察は証拠物はすべて東京高検に集められているので一覧表に記載されたもの以外の証拠物はないと回答した。埼玉県警や地検に証拠物があるのではないか、という弁護団の申し入れに拒絶の対応をした。

23回
5月28日、弁護団は3月23日付けで手拭いに関して初期の捜査書類などの開示を求めていましたが、検察官はそのうち捜査報告書2点を5月25日付けで開示しました。これで開示された証拠は180点になりました。
また、2月23日付けで証拠物の一覧表(領置票)で明らかになった航空写真など5点の開示を求めていたのに対して、航空写真については前回の三者協議で開示されましたが、残る4点の証拠物については、石川さんの筆跡が存在するものはなく、プライバシー侵害のおそれがあり、必要性・関連性がないので開示すべきでないとする意見をくりかえしました。
これに対して裁判所は、証拠物は開示してほしいという立場であり、プライバシーの問題があるというのであれば、裁判所に提出し、裁判所が判断するという方法を提示し、検察官は検討するとしました。

24回

7月27日、裁判所は従来から、いわゆる「秘密の暴露」に関する証拠はできるかぎり開示してほしいと検察官に促している。植村・新裁判長からはこの基本姿勢を踏襲することが表明された。植村裁判長は検察官に検討を要請し、万年筆の捜索・発見経過に関する証拠開示について、検察官はこれまでの経過をふまえて検討するとした。

第25回

弁護団が開示を求めてきたポリグラフ検査のチャートが開示された。

26回

12月21日、「脅迫状を届ける途中で自動三輪車に追い越された」「脅迫状を届けたときに被害者宅の隣に駐車した車を見た」との石川さんの自白に対する弁護団の証拠開示勧告申し立てについて、検察側は「不見当」を繰り返した。

27回

3月4日、今回の三者協議では、検察官は、「万年筆」「財布」「手帳」についての開示請求については検討中としたものの、その他の証拠については不見当との回答をくりかえし、高検以外の証拠物の一覧表については、必要性がないとして開示におうじませんでした