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旅・冒険

go tomorrow(Syria1990) by say-umi

幼児(3歳前後)から
ぶたぶたくんのおかいもの
作/土方久功(福音館書店)
 これは何歳になっても楽しめる本です。試しに我が家の中学生2人に読み聞かせてみたところ、2週間たった今でも、ふと「ぶたぶた...」と口ずさんでいるほどです。

 題名の通り、ぶたぶたくんはお母さんに頼まれて、初めて一人でおかいものに出かけます。「ぼく ひとりで いけるよね。なんども おかあさんと いって しってるものね」など、要所要所でぶたぶたくんが話す言葉の中に、不安げな様子から得意げな様子まで、細やかな感情の動きを読みとることができます。

 おかいものに出かけた先は、パンやさんとやおやさんと、それから...。どのお店も、そんじょそこらのただのお店ではありません。作者は、子どもの頃の感覚をよくここまで覚えていたものだと感心しました。ふと、自ら幼い頃に行ったお店の雰囲気を思い起こしてみると、パンやのおかみさんは体つきが卵みたいに丸っこくて無表情だったし、文房具やのおじさんは四角い顔で鼻毛が長く、やおやのおじさんは眉が太くて、とても大きなしゃがれ声で話していました。そう、どのお店の人も、この本に出てくるお店の人のように、何かしら変わっていて、なんとなく不思議な雰囲気があり、ちょっと怖かったものです。

 それにしても、最後に地図が書いてあるのがまた嬉しい心遣いです。読者と同様ぶたぶたくんにだって、ぼくは、どうやって行って、どうやって帰ってきたんだろう? と、なにか釈然としない気持ちがあったに違いないのです。それが、簡単な一枚の地図によってふわっと満たされ、この地図の上で、何度も何度も繰り返し、スリルに満ちあふれた冒険だったであろう初めてのお買い物を反芻して楽しむことができるのです。

最後に一つだけ残念なこと。何度も反芻して楽しめるのがこの本の醍醐味なのだけれど、一カ所だけ、読者に釈然としない気持ちが残ってしまうところがあります。それは、「いけに さかなが およいでたっけ...」とみんなでおしゃべりしながら歩くシーン。私は初めて読んだときにここでつまずいて、すぐにページを戻って調べてみました。こども達に読み聞かせてみたときにもやはり、私が本を閉じるやいなや、2人はすぐさま本を手に取りページをめくって確かめていました。どこでどう間違ってしまったのでしょうね。飛行機とことり、編集の過程で何かあったのでしょうか。本当に残念です。

とはいえ、この本の面白さが消えるわけではありません。幼い子どもから大人まで、純粋に楽しめる不思議な魅力に溢れた絵本です。ひとりで読むときにも、ぜひ大きな声で音読してみてください。(2006.5)

フレディ3 ハムスター救出大作戦 ES
作/ライヒェ 訳/佐々木田鶴子 絵/しまだ・しほ(旺文社)
 危機が迫っているとき、どういう行動をおこしたらよいのか。その行動は、今まで自分が慣れ親しんだ方法ではないかもしれない。フレディは、危機せまった野生のハムスターを救出すべく奮闘する。(2002.11)

ホビットの冒険(上・下) 選者S
作/J.R.R.トールキン 絵/寺島竜一 訳/瀬田貞二(岩波書店)
 ここ数年の間に私にとって3度目のホビットの旅です。ロード・オブ・ザ・リング2の上映が始まるので、あちこちで指輪の文字を見るためか、またしても読みたくなってしまったのです。3度目なので途中退屈するかと心配しましたが、それも杞憂に終わりました。1度目よりも2度目、2度目よりも3度目の感動が大きかったのには驚きです。1、2度目にも私は十分楽しんだはずなのですが、もしかしたらその時には次々に起こる出来事を追うので精一杯だったのかもしれません。3度目となった今回の旅では、時の経過と地理の広がり、ビルボの心理的変容、それらを私なりに体験できました。旅の終わりのガンダルフのビルボに対する感嘆の思いもようやく実感できました。私の読解力にて1度で理解することは難しかったようです。いつ4度目を読むことやらわかりませんが、きっとその時には今以上に大きな感動を覚えるのでしょう。楽しみです。
 この本を読み終えれば、さて準備運動は終了です。続く大作、指輪物語にとりかかりましょう。(2003.02)

ビルボの別れの歌 選者S
作/J.R.R.トールキン 絵/P.ベインズ 訳/脇明子(岩波書店)
 やっぱりこの本はホビットの冒険を読み、感動さめやらぬうちに見るといいですね。そして、ビルボが度々あの冒険を思い返して物思いにふけるように、私たちも時々、あの旅を思い返してこの本をひろげましょう。(2003.02)
ホビットの冒険・指輪物語