児童書の世界へ

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かさどろぼう
作/シビル・ウェッタシンハ 訳/いのくまようこ(ベネッセ)
 キリ・ママおじさんの村では、傘を持っている人がまだいませんでした。ある日、キリ・ママさんは町ですてきな傘を買って帰ります。ところが帰る途中にコーヒーを飲んでいると、傘がなくなっているのです。おじさんはがっかり。おじさんはそれでも懲りずに何度も傘を買って帰りますが、結果はいつも同じです。さて、傘はどうなってしまったのでしょうか。最後の最後にその理由がわかったとき、大人も子どももみんなニッコリ笑ってしまいます。

 色彩や人々の様子はとてもエキゾチックなのに、日本人の私たちには、どこかしら懐かしさも感じられる不思議な雰囲気をもっています。

 スリランカの絵本作家であるシビル・ウェッタシンハの「かさどろぼう」は、残念ながら絶版になっています。ぜひとも復刊していただきたい一冊です。

かさどろぼうを追いかけて
作/エレナ・エスティス 訳/谷口由美子(あかね書房)
 私が大好きな作家、エスティスの作品です。ある日、図書館の傘立てから大切なかさがなくなってしまいます。それは世界に一本しかないお父さんの特別な傘、少女チュウは果敢にも、電車に乗りフェリーに乗り継ぎ、かさどろぼうを追いかけます。

私に、ここまでの勇気があるでしょうか。少女チュウの勇気とその行動力には脱帽です。この本を読みながら、ドキドキハラハラ彼女と一緒に日常から少しはずれて冒険をするのは、とても楽しいものです。

 傘は使い捨て、ビニール傘は誰でもリサイクル、などと平気で言われる昨今ですが、このチュウの傘のように、大切な一本だってあるのです。傘立ての傘は、どうぞ間違えずにお持ち下さいね。

小学生(中学年頃)から
水の伝説
作/たつみや章 (講談社)
 泣き虫弱虫で都会の学校に馴染めずに山村留学で林業の村に来た少年が主人公です。ホームステイ先の同級生タツオが兄貴分として引っ張っていってくれるので山の生活にすっかり慣れたようにみえたものの、心の中ではお客様でしかなかった少年が、大雨による山崩れをきっかけに当事者にならざるを得なくなっていきます。そして、河童と出会い「女」と間違えられたことから、とうとう事件の渦中に巻き込まれてしまいます。頼りにしていたタツオとの断絶により、以前の弱虫光太郎に戻ってしまいそうになりますが...。

 『ぼくの・稲荷山戦記』『夜の神話』との環境問題三部作のひとつです。この三部作は現代の深刻な環境問題を、日本人が古来からもつアニミズム的感性を刺激することによって訴えかけます。自然から切り離された世界に育ち、人々が信仰心を覚える機会がなくなってしまった昨今、たつみや章の作品は一貫して古来より続く自然と共存する智恵、生きる支えとなる信仰心を問うています。

小学校中学年でこの三部作を読み、高学年以降に古代少数民族を扱う『月神の統べる森で』のシリーズ、『イサナと不知火のきみ』等を読めば、思春期以降に人の心の隙間に入り込もうと狙う新興宗教やカルトに対抗するワクチンにもなりうるのではないかと思います。

(作者のたつみや章さんは、「有言実行」で活躍していらっしゃる現役熊本市議会議員とのことでビックリ!)

2007.2.5

あめのひ
作/ユリー・シュルヴィッツ 訳/矢川澄子(福音館書店)
 ママこれ知ってる? あたし知ってるよ、植木鉢で、みんなせいのびしているんだよ。(娘6歳頃)

絵が美しく手元に置いておきたい作品なのですが、この本も残念なことに絶版です。

雨にまつわるひとりごと

雨、雨、降っちゃやだ

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