題名の通り、ぶたぶたくんはお母さんに頼まれて、初めて一人でおかいものに出かけます。「ぼく ひとりで いけるよね。なんども おかあさんと いって しってるものね」など、要所要所でぶたぶたくんが話す言葉の中に、不安げな様子から得意げな様子まで、細やかな感情の動きを読みとることができます。からすのかあこちゃんに会ったときには、読者である私たちも本当にホッとします。
さて、ぶたぶたくんのおかいものに出かけた先は、パンやさんとやおやさんと、それから...。どのお店も、そんじょそこらのただのお店ではありません。作者は、子どもの頃の感覚をよくここまで覚えていたものだと感心しました。ふと、自ら幼い頃に行ったお店の雰囲気を思い起こしてみると、パンやのおかみさんは体つきが卵みたいに丸っこくて無表情だったし、文房具やのおじさんは四角い顔で鼻毛が長く、やおやのおじさんは眉が太くて、とても大きなしゃがれ声で話していました。そう、どのお店の人も、この本に出てくるお店の人のように、何かしら変わっていて、なんとなく不思議な雰囲気があり、ちょっと怖かったものです。
それにしても、最後に地図が書いてあるのがまた嬉しい心遣いです。読者と同様ぶたぶたくんにだって、ぼくは、どうやって行って、どうやって帰ってきたんだろう? と、なにか釈然としない気持ちがあったに違いないのです。それが、簡単な一枚の地図によってふわっと満たされ、この地図の上で、何度も何度も繰り返し、スリルに満ちあふれた冒険だったであろう初めてのお買い物を反芻して楽しむことができるのです。
最後に一つだけ残念なこと。何度も反芻して楽しめるのがこの本の醍醐味なのだけれど、一カ所だけ、読者に釈然としない気持ちが残ってしまうところがあります。それは、「いけに さかなが およいでたっけ...」とみんなでおしゃべりしながら歩くシーン。私は初めて読んだときにここでつまずいて、すぐにページを戻って調べてみました。こども達に読み聞かせてみたときにもやはり、私が本を閉じるやいなや、2人はすぐさま本を手に取りページをめくって確かめていました。どこでどう間違ってしまったのでしょうね。飛行機とことり、編集の過程で何かあったのでしょうか。本当に残念です。
とはいえ、この本の面白さが消えるわけではありません。幼い子どもから大人まで、純粋に楽しめる不思議な魅力に溢れた絵本です。ひとりで読むときにも、ぜひ大きな声で音読してみてください。(2006.5)