児童書の世界へ

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幼児から
はははのはなし
作/かこさとし (福音館書店)
 かこさとしの科学絵本には、幼い頃にずいぶんお世話になりました。小さな子どもが一番最初に興味をもつ「科学」は、自分の身体のことです。知らないことを知って安心したり、ドキドキしたり、身近なことだからこそとても興味深く読むことができます。その中でも「歯」をみがくことの大切さ、なんでも食べることの大切さを教えてくれるこの本は、歯磨きを必要とするようになった2歳以降の子どもと一緒に読むのに最適です。少し大きくなった子だと、鏡を見て自分の歯と比べてみたり、本数を数えてみたりと、興味は尽きません。

→ずっと正座していると、どうしてしびれるのかがわかる「ちのはなし(堀内誠一)」も併せてお勧め。大人でも面白い。

小学生(低学年)から
はがぬけたらどうするの?―せかいのこどもたちのはなし
作/セルビー・ビーラー 絵/ブライアン・カラス 訳/こだまともこ (フレーベル館)
 歯が抜けたらどうするのか、世界各地の習慣が絵とともに紹介されています。「抜けた歯」を通して、様々な国のお国柄が見える楽しい本です。小さなこども達の国際理解は、こんな風に身近なところから始めるといいですね。(2006.6)

プレゼントに最適!プレゼントに最適!
4〜5歳のお友達へ
海べのあさ
文/Z・トペリウス(フィンランド) 絵/おのちよ 訳/万沢まき(アリス館)
 『サリーのこけももつみ』に続くサリーの歯が初めて抜ける朝のお話。海辺に暮らす暖かな家庭とその生き生きとした生活が描かれ、潮の香りが漂ってきそうな絵本です。大人の世界に、ごく自然に同居して生きる子ども達の姿を描いています。

 私たち大人は、大人の世界から子どもたちを隔離してはいないか、私たちは子どもたちの入り得ない、不自然な大人の世界を築いてしまってはいないか、子どもと大人との強固な架け橋を、きちんと用意しているか...などと考えるのにもいいかもしれませんが、それ以前に、海辺の暮らしや、家族の暖かさをほのぼのと楽しめる絵本です。

幼児(4〜5歳)から
ねずみとおうさま
文/コロマ神父 絵/土方重巳 訳/石井桃子(岩波の子どもの本)
 初めて歯の抜けた幼い王さまは、その晩ねずみのペレスとともに不思議な体験をします。

 初版が1953年ということで、なんともレトロな絵と言葉遣いですが、そこにホッとさせられます。幼い子ども達の生活にまで乱暴な言葉が溢れる昨今、せめて絵本の中では美しい言葉に触れさせてあげたいものです。

幼児から
ほしになったりゅうのきば―中国民話
文/君島久子 絵/赤羽末吉(福音館書店)
 龍のきょうだい喧嘩によって、空に裂け目ができてしまい、世の中はその裂け目から降る雹や雨で暗く荒んでしまいました。その裂け目を閉じるために、石から生まれた若者サンが立ち上がり、困難な旅に出ます。

 頭に浮かぶ映像や声に出す音の響きががとても美しい本です。思いの外長いし、読むのにもそれなりに時間はかかりますが、読んでいて退屈をする箇所がどこにもありません。繰り返し場面場面がどれも印象的で、ワクワクさせられます。大きな本を縦に使い、見開きいっぱいに描かれた岩山は迫力があり、花に乗った娘がその上から音をたてて降りてくる様には、身が震えるような神秘さがあります。

 しかし、サンに牙を抜かれる龍は痛そうです。まさに「龍の目にも涙」です。

子どもの言葉より
私、この本の内容はそんなに好きだったわけじゃないと思うけれど、山の上から声がこだまみたいに響いてくる「いかーん いかーん いかーん」のところとか、ママの読み方のせいかなぁ。すごく印象に残っているよ。(2006.5 中三娘)

 この話の発端である龍の喧嘩の原因は、桃の取り合いです。古来より中国では、桃が霊力をもち、不老長寿の薬効をもつと考えられてきたといいます。個人的にも、あのやわらかな色合い、形、色、香りは女性のやわらかさや神秘性をイメージさせるように思います。日本において桃の節句は女の子の厄よけや健康を祈願するものですし、英雄の桃太郎はまさにその桃から誕生します。

 この民話では神にも等しい存在である龍がそういった桃をめぐって争うことにより、世界の均衡が崩れ、結局は痛い思いだけをした龍が惨めな思いをして小さくなっています。何か、現代でも似たようなことがあちこちで起きているようではありませんか。

また、そんな崩壊した世界を救うことのできる英雄が、石から生まれた若者というのも興味深いです。石から生まれたと言えば、やはり中国の孫悟空が頭に浮かびます。どんな逆境にも立ち向かえるだけの人間離れした力をもつ英雄は、やはり人間以外の、自然の力によって生まれた何かである必要があるのでしょう。

古くから伝わる民話は、ただの作り話ではなく、その奥底に計り知れない多くのことを隠し持っているので、大人でもたいへん興味深く読めます。

幼児(4〜5歳)から
ロージー、はがぬける
作/マリアン・マクドナルド 絵/メリッサ・スイート 訳/松野正子(冨山房)
 ロージーは、抜けた歯を妖精にあげたくありません。どうしたらいいでしょう。ロージーはお父さんと一緒に考えます。

 ロージーの本は、「ロージー、いえでをする」でも同様に、家族との触れあいが暖かく、読んでいて安心できます。

幼児から
歯がぬけた
作/中川ひろたか 絵/大島妙子 (PHP研究所)
 子どもにとって、歯が抜けるのは一大事件です。抜けた歯に血がついているのを歯ブラシでゴシゴシ洗ってみたり、手に転がしてその感触を楽しんだり、皆がそれぞれに不思議な自分の分身を愛しんだ経験があるのではないでしょうか。この本の主人公のぼくも、そんな一人です。団地に住むぼくは、屋根にも縁の下にも無縁だけれど、ぬけた歯を愛でて、思う存分楽しんでいます。

 初めて歯が抜けるのが怖くて不安になっている子や、歯が抜けるのが嬉しくてたまらない子に、歯の抜け替わる一大事件を、この絵本とともに楽しく迎えてみてください。

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